間接照明が柔らかく室内を照らす中、細く白い喉を仰け反らせ一人の少女が呻き声の様な声を上げていた。
「くうぅ!効くのぉ、暫く聖地に籠っていたせいか染みるのぉ!」
とは言っても陰惨な雰囲気は微塵も無い。
ここは白の叔父ことママが経営するおかまバー、名はかるちゃあショックの一角であり、少女こと
「吞みすぎるなよ」
「わははは、久しぶりの宴に無粋じゃぞぉ」
白はそんな三只眼に釘を刺すが古今東西、興に乗った酔っ払いにその様な忠告が聞いた試しが無いということは経験上理解していた。
(三只眼吽迦羅は二日酔いになるのか?向こうでは妖怪が二日酔いになったというのは聞いたことがないが)
面倒くさい酔い方をする三只眼にどうでもいい事を考えて白は逃避を図る。
「ほれ、白も呑まんか!八雲が居るとパイの意識が強ぉて中々、表に出てこれんのだ。今日ぐらい付き合っても良かろう!」
三只眼はそんな白に気付く様子もなくグラスの酒を次から次へと呷っていった。
「はぁ……人間の暮らしを幾ばくかしたせいか、こういった娯楽が恋しくてのぅ。いい気分じゃあ」
「……」
頬をほんのりと染め三只眼はご満悦に語る。綾小路ぱいとして暮らした四年は聖地で一人きりで暮らした時とは比べものならないくらい忙しかったが、それ以上に楽しかったと。
「そうか、ほら」
楽し気に語る三只眼を見ながら白はなんとなくぱいの事を思い出し、三只眼にグラスにボトルを傾ける。
「おっとと」
「偶には付き合ってやる。八雲は弱そうだしな」
「言ったな」
どこか嬉しそうに三只眼は笑うとお返しとばかりに白へと酒を注ぎ返す。
「二言は無いさ、それに私は強いぞ」
ぐいっと白はグラスを煽ると、これまた口角を僅かに緩ませるのだった。
何処か似通った部分の有る二人が気分良く酒を飲み交わしている中、ママと
「なるべく平和に過ごして欲しいが中々、難しいのかねぇ」
「
黄の言葉にママは眉間にしわを寄せた。ただ隣に住む育児放棄気味のガキ。それがママが八雲に抱いてた最初の感情だ。だが、同じ年頃の白を育てていたということもあり、なんとなく世話をしていたらいつの間にか情が沸いてしまっていた。
不死になったり、バケモンに襲われたりと色々と心配事はあるが、見捨てるという選択肢はママの心中に最初から無い。
「先の
「ほ、本当か?それなら助かる。香港なら八雲達も土地勘が有るし、こっちも僅かだが伝手があるから安心だ」
「えぇ、こちらも以前の事件の恩も有りますし、願ったり叶ったりです」
にこりと黄は笑顔を向ける。
(聖地に引き籠っていたパイを太歳の封印を解くという危険を冒してまで誘き寄せたのだ。このまま帰ってもらっては困る)
実は此度の事件の黒幕は何を隠そう黄であった。
鬼眼王亡き今、パイをその座へと祀り上げ、そして自分は第二のベナレスと成り代わる。それこそが黄のひた隠しにしてきた望みである。
最初はパイを焚き付け三只眼同士争わせ、闇の勢力を二分化させ鬼眼王を滅ぼそうと目論んでいたのだが、その鬼眼王が居なくなったのは黄にとって好都合であった。
しかし、そのパイが自らが禍の中心になるのが分かっていたのか、聖地から出てくる気配は無く八雲を害して誘い出すというのも、八雲の近くには白という厄介な女がいる。妙に勘が鋭い彼女に安易な方法で使えば瞬く間に吊り上げられるのは自分だという確信が黄にはあった。
そこで太歳の封印を解くことで東京自体を危機に陥れたのだ。封印を解く労力は並ではなかったが、パイがのこのことやってきたことで、その苦労も報われるというものだ。
「それならパスポートやらなんやらはこっちで組のもんに手配させとくわ」
「えぇ、後は八雲君の友達へのサポートもお願いしますね」
分かったぜとママは勢いよく飛び出していく。組という物騒な言葉が漏れ出ていたが気にするものはいない。
その後、ママは咲子達に八雲は借金が理由でこの街を去ったと咲子達を言い包めた。刃傷沙汰や体が燃えていたなど、どう考えても異常事態のそれを自分が死んだことにして逃げるための演技だったとなんとか押し通しのけたのは、バーのオーナーならでは口八丁なのかはたまたヤクザ時代の機転を利かせたのかは定かではない。
次の舞台への繋ぎ回。
四谷さんの出番は白によって消滅してしまいました。
四谷さんファンの方すみません。
次回は飛行機編。うしおととらも3×3アイズも飛行機は……。