どうやらこの世界は俺の知っているものとは違うらしい   作:名誉アトランティス二等市民

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第零+Ⅰ話 箱舟の街

 

 

――――西暦2011年。

年月の経過は早いもので、今では俺も立派な古代文明(アトランティス)の調査員である。

あれから色々あった。

教授に振り回されて世界中の遺跡巡りに連れまわされた――――――――この教授の行動力は凄まじく、さすがに大西洋深くに沈む海底遺跡の調査にまで駆り出された時にはどうなるかと思った。どうにもこの教授は国内での知名度は無い癖に、世界的な古代文明研究の第一人者であるというのだから驚きだ。

まあ、そんな彼に気に入られたのは俺にも好都合だった。

おかげさまで、こうして国連の特務機関である『NERV』にまで所属できたのだから。

 

この世界は、俺の知る『エヴァの世界』でないことは俺自身が実際に目にしてきたものが示している。

では、この世界には『使徒』の脅威は無いのか?

『サードインパクト』に該当する人類の危機は存在しないのか?

しかし、そうではないことを数多くの遺跡や資料を目にしてきた俺は知っている。

『死海文書』、そして『使徒(アポストロ)』の存在。

件の『死海蒸発事件』を引き起こした原因、『第一使徒(A=01)アダム』。

 

そう、この世界にも『使徒』が存在していたのだ。

それだけではなく『セカンドインパクト』とは形は違えどアダムが起動している(・・・・・・・・・・)

これが示す事実。

それは、『エヴァンゲリオンの物語』の幕が開けたということだ。

 

 

俺は今、建造中の大規模要塞都市『第三新東京市』にいる。

つい先日、仮運用され始めたNERVの地上施設への勤務が決まったためだ。

俺は、これまでの経験で培ったアトランティスの技術への知見を買われ、新設される『使徒対策部』に配属されることになっている。

 

 

――――思えば遠くまで来てしまったものだ。

 

 

建造中の都市の中心にそびえ立つ、一際高い建造物『セントラルタワー』のフロアから夕陽に染まった都市の全景を眺める。

この第三新東京市も俺の記憶とは大きく異なっている。

都市構造は、このタワーを中心にして円形に広がっており、その外縁を防御壁によって囲まれている。

円形の都市に、中心に巨大な塔。

そう、この都市はあの海底に沈む巨大遺跡『アトランティス』を参考に建造されている。

今いるこの『セントラルタワー』だってモデルはあの『バベルの塔』。

しっかりと砲撃機能も備わっている。

更に、都市防衛機能には最新技術の『バリヤー』や、『電子熱線砲』などが惜しみなく使われている。

眼下に広がる『原作』から大きく乖離する光景に、思わず黄昏れてみたくもなるものだ。

 

ここまで過剰とも思える武装を施してもなお、対抗できるか怪しいのがこの世界の『使徒』、アポストロ(・・・・・)なのだ。

 

この世界では宇宙開発が進んでいない。

 

その理由は何か。

空を飛ぶ翼も、星を渡りうる動力も、それを扱う技術さえこの世界の人類は既に獲得している。

それでも宇宙進出ができない理由。

 

それこそが使徒(アポストロ)である。

 

初めは、西暦1961年にアメリカが主導して行った『アポロ計画』だ。

彼らの打ち上げた月面探査船は、その途中まで順調に進み、そして月を目前にしてその消息を絶った。

かろうじて回収できた消息を絶つ寸前のデータ、それには乗組員が「船が何者かに攻撃を受けた」と報告する姿、そして船外を漂流する謎の影が収められていた。

米国はそれを受け、国連に調査を依頼。

国連は無人、有人問わず様々な方法で月軌道の調査を行った。

そして国連が得たのは、月軌道を高速で周遊する謎の人工物の存在と、月軌道を超えて外へ出ようとすればその人工物からの攻撃によって撃破されるという結果だった。

国連はその人工物、後に『第三使徒(A=03)ザフキエル』と呼称されるそれを排除しようと様々な手を打つがことごとく失敗に終わる。

当時の、そして現在でも人類の保有する最高火力である『重力子爆弾』、(Graviton)弾とも呼ばれる超兵器ですら傷一つ与えられなかったのだ。

その原因は使徒(アポストロ)の保有する非常に強力なバリヤー、絶対的(Absolute)耐久力(Tolerance)を持つフィールド、『AT(Absolute - Tolerance)フィールド』である。

 

先人に曰く「バリヤーに勝てるのはバリヤーだけだ!」

 

その言葉の通り、ATフィールドの突破には同出力以上のバリヤーが必要になる。

しかし当時の人類にはそこまで強力な出力のバリヤーは作れなかった。

 

外宇宙への道を閉ざされ、泣く泣く地球にこもることしかできなかった人類。

 

 

しかし状況が変わる。

 

 

西暦2000年。

死海で発見された、巨大なヒトガタ。

そう、アダムの発見だ。

 

アダムの発見、それに伴う死海文書の解読は人類に多くの知識を与えた。

使徒(アポストロ)の正体が、第一始祖民族(アトランティス人)の残した戦闘兵器群だということ。

それは、世界各地に眠りその総体は28体であるということ。

そして、人類が使徒(アポストロ)に対抗する方法、すなわちATフィールドの仕組みなど。

 

それら知識によって人類は総力を挙げ対使徒決戦兵器を作り上げた。

『エヴァンゲリオン』である。

 

 

そして現在、西暦2011年。

 

新都市開発計画を利用して、世界中に散在している使徒(アポストロ)。それを誘引するための戦闘都市が俺の目の前で建造されている。いずれ戦火に焼かれる事が決定された街。それがこの『第三新東京市』なのだ。

 

人類が宇宙(ソラ)を取り戻すための戦い。そのために流される血はどれほどのものか。

 

都市の地下深くで起動準備に入っている使徒誘引装置は、四年後に稼働する。

そうすれば残る27体の使徒(アポストロ)を倒すまでは、再び平和が訪れることはない。

 

 

――――それでも、戦わなければならない。

 

 

人類が、永遠にこの星の中で生きていくのは不可能だ。

未来のためには、いつか誰かが使徒(アポストロ)と戦わなければならない。

それがたまたま今だったというだけのことだ。

 

もちろん、戦いによって踏みにじられるものも多くいるだろう。

脳裏を過るのは『原作』で起きたいくつもの悲劇。

 

だが、そのために俺はここにいるのだ。

 

原作通り(バッドエンド)になどさせはしない。必ずみんなで笑える大団円(ハッピーエンド)を手にして見せる。

 

 

俺はわずか四年後に迫った『原作』を、少しでも良いものにするために決意を新たにした。

 

 






『死海蒸発事件』
国連はエヴァンゲリオンの製作に当たって、当初は発見されたアダムをそのまま流用して作成する予定だったが、それはアダムのコアの暴走により失敗。
死海周辺は生命体が全て白塩化し、その際に生じた熱量により死海は蒸発。
アダムもろとも周辺の研究設備が消滅したとされる。

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