星空の刃 作:鮫牙社長
やっぱ善逸大好き、すこ……。
それではどうぞ。
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「はぁ……朝日はまだ!?」
さっきの戦闘から1時間が経過する。私が決めた作戦が『朝日までとにかく走り、時折木の影に身を隠して休みながら、別の場所に移動する』といった物だ。
走る事で"速さ"が増せば、その分日輪刀にかかる力は桁違いに上がる、それが力が弱い私の最も得意とする戦法だった、そしてそこから生まれたのが、先程の"星の呼吸"だ。速さを武器に、星の如く敵を切り裂く。元より星が大好きだった私にピッタリな呼吸だった。
「……でもさすがに、呼吸1発分使うと体力がかなり消耗するな。このまま何も無ければいいけど。」
走ってくる鬼は、とにかく避ける、避けるのが難しい時は勢いに身を任せ頸を斬る。この師匠の日輪刀なら、走ってる時だけなら斬れる、その分の体力消費は否めないが、ずっと立ち止まって殺されるぐらいなら断然マシな方だろう。
「あんだけいた最終選別希望者……今何人くらいだろう。悲鳴の数から推測して、既に5、6人は減ってるかな、結構早いね。」
「でも選別希望するくらいなら、私より絶対に力強い人が多いはずだよね。というか、ここにいる鬼って確か2、3人しか食ってない鬼ばかりじゃ……」
そんな時だった、私のいる場所より少し先の方から一人の希望者が逆方向から走ってきた。先程の青い袴と狐のお面の少年でもなく、金髪の少年でもない、ただの緑色の袴を着た少年だった、私はザッと立ち止まり、話を聞いた。
「な、何かあったの?」
「し、知らねぇし聞いてねぇよ。でけぇ鬼がいたんだ。2体だ、1体は狐の面をした少年が対峙してるけど、いずれ死んじまうし……後の1体は訳わかんねえよ。まるで狼だ、鬼なんかじゃないような……そいつに皆食われちまった。お、お前も逃げた方がいいぞ!!」
「大きい……鬼?」
言うだけ言って少年は去っていった。そういえば避けてきた鬼は私を追いかけてるのだろうか?となれば何れ彼が見つかってやられてしまうだろう、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
「大きな鬼、ねえ。出会わなかったら御の字だけど、後の1体が、放棄されっぱじゃあねえ。」
私は溜息を着き、身体を整える。いつでも戦える準備を整え、私は再び走りだした。とにかく1時間は安全に過ごせそうな場所……せめて大木の裏だ。あるか分からないが、まずはそこを目指そう。
走る度に悲鳴の数が酷くなっていく、やはりおかしい。弱い鬼しかいないのなら、そんなに悲鳴は少なくない筈だ。てことは、先程の少年が言っていた事は真実なのだろうか。
「狐のお面をした少年は多分生きてると思うけど、あの時、鬼と対峙してたし……。最終的に生き残るにはその鬼とも対峙しないと行けない。つまり誰かが斬らないと行けないわけだ……っあ!!」
私は立ち止まり、日輪刀の柄に手をかける。……見えたんだ、ここから十数メートルといった辺りで、希望者が数名が食われていた。眼が悪かったら突撃していたところだ。でも気配がない、足音もない。さっき彼処で希望者を食っていた筈だ。
「どこだ……? どこにいる?」
刹那……後ろ直ぐから声が唸った。
「……二ヒ、可愛い少女。」
「!?」
私は前方に飛び跳ね、振り返った。しかし、姿が見えない。いや、いたんだ、いたはずなんだ。でもいない。まさか、先程少年が言っていた、大きな鬼の残り1体か?
「どこにいるの? 出てきなよ!!」
「ニヒ、じゃあ要望通り出てやるよ、お前は食われるだろうがな!!」
「後ろか!!」
日輪刀を引き抜き、後ろで開かれていた牙をいなす。しかし力が弱いため、私はすぐに奥へと吹き飛ばされた。
「うっ……」
「いいねえ、反射神経がいい……。欲しいなあ、その反射神経、その眼、その顔……。」
「……っ」
私は初めて鬼の姿を見た。身体は本当に犬……いや、狼のようだった。でも違うのは、身体中至る所に人の顔が埋められている事だった、明らかな異型、鬼の共通点だ。
「ここには色んな人がやってくる。腕試しに丁度いい……二ヒヒ、そして俺は気に入った顔や運動能力を持つ者がいたら、真っ先に欲しくなる。狼は群れで行動するからなあ、仲間は多い方がいいのさ!!」
「そう、でも私は仲間入りなんて御免だね。」
「二ヒヒヒ、嫌でも仲間になってもらう、ゼェ!!」
鬼はすぐ眼前から消え去る。速い……助けてくれた時の師匠程ではないが、それでも凄く速い。修行していた頃の師匠は、こんな速さは出さなかった。
(集中するんだ……"眼"で追えば、いつか隙が見える……)
敵の足跡……軌道……呼吸……それら全てを追う。そして此処ぞという所で"彗星"を打つ、これに尽きる。
「オイオイ、来ねえのかぁ。だったら、もう食っちまうぞ!!」
「……ここだ!!」
敵がくる、その寸前のタイミング……相手の速さを予測するんだ。
――全集中 星の呼吸 壱ノ型 "彗星"
私は敵の頸目掛けて彗星の如く日輪刀を奮った……が、その刃は頸を斬ることなく、その寸前で止まった。
「……え?」
「おおっ、今のは早かった……すごい早かった。でもなぁ、足りない、まだ足りない、ナァ!!」
「ぐっ!!」
食われる、その寸前私は牙に足をかけ、それを勢いよく蹴り飛ばして後ろに後退する。
「"彗星"が……止められた?」
「二ヒヒヒ、お前さん、少しは上を見た方がいい……もしかして、自分より速いやつを見たことがなかったのかぁ?」
「……」
確かにそうだ……。私は師匠以外に速い存在を見た事がなかった。
――私は目の前には今……上がいるんだ。