星空の刃   作:鮫牙社長

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早めに書きたくなりました、許してください……

それではどうぞ


3話 その身は共に歩んで培った。

「ニヒヒッ、ほれほれどうした、さっきまでの威勢はっ」

 

「う……」

 

痛い、逃げようと地を蹴りあげ駆け抜けようとしても、すぐに追い抜かれ、蹴りの一撃がくる。こればかりは避けようがなかった、単純に私が弱いだけの話だ。蹴りをくらい、その隙に手の日輪刀を振るおうにも、直ぐに鬼の拳が私の腹や顔に振り下ろされ、無力化される。この一連の行為で私はすぐにわかった、こいつは人間を喰らい、人間を殺すのに慣れている。強さと身体に植え付けられた顔の数が、それを物語っていた。

 

「さぁて……そろそろ動けなくなってきた頃かなあ、ニヒヒ。」

 

「……」

 

「お前さんは、今まで戦ってきた奴らの中で1番強かった……でも結局は俺に殺される……そういう運命だ。俺はな、これ以上鬼殺隊を生み出さないって誓ったんだ……ニヒヒッ、そうすれば、今いる鬼殺隊だけを殺せば、俺ら鬼が支配する世界の完成だ……ニヒヒ」

 

「なんで、傲慢な。」

 

「そういう存在だ、俺ら鬼っていう物は、それじゃ、さようなら、二ヒヒ」

 

食われる、私の目の前で奴は大きな口を開いた。身体が動かない、既に1日に呼吸を2回も使った、しかも短期間に。

 

終わるのか?

 

こんなにあっさりと?

 

師匠と共に歩んできた時間はなんだったのだろうか。

 

「嫌だ、私は……」

 

「最期まで威勢がいいなあ、でも無駄だ、ほら、身体、動かないだろう」

 

私を掴む腕はさらに強くなる。身体が軋み、骨が折れる音がする。……私はナメていた、こんなにも鬼が強い物だなんて。

 

鬼の口の中に足が入る、ああ、もう無理だ。日輪刀もさっきの痛みで落としてしまった、今の私は奴に対抗する力なんて物はもっていない。

 

「……ごめんなさい、師匠。」

 

そうして、私の身体は奴の口の中へ、すっぽりとハマっていった。

 

……――

 

「し、師匠、もう、無理です」

 

なんだ? 私の声だ。

 

「ちょっとちょっと!! こんなんでへこたれてんの? あんた、今まで運動とかしてこなかったの?」

 

「す……すいません。」

 

走馬灯って奴だろうか?

 

「まったく、ほら、手貸すから、立ちなさい。そんなんじゃ、鬼一体の頸すら斬れないよ。」

 

「うう……」

 

そうだ、師匠はいつも厳しかった。私が修行中に限界が来て、膝をついた時も、師匠は私を叱りながら、立ち上がらせた。それでも疲れた時は、水をくれたり、空を見上げて星を見せてくれたりした。何時も修行は深夜の山奥でやっていたから、修行中は何時どんな時も星を見る事が出来た。そんな時、師匠は言ったんだ。『ここから見る星が一番好きなんだ』と。

 

「星が見えるから、修行はいつも夜にやるんですか? あれ、そういえば師匠、昼間は外出たりしませんよね。」

 

「ああ、うん。昼間はやる事がないからねえ、ホラ、鬼って夜に活動するでしょ? だから、昼間に探したりすると無意味だから、夜まで身を休めて、そして夜に鬼を探しに行くのさ。」

 

まあ、そんな事はもうどうだっていい。私は食われたんだ、もう……どうでもいいんだ。

 

……

 

「……諦めるのかい?」

 

師匠……。

 

「君は事ある事に『もう無理ですー』って、言ってたねえ。」

 

ごめんなさい、というか何しに? ていうか、何処にいるの? 確か、師匠はあの時……。

 

「何処に、か。ふふん、内緒。」

 

そんな……。

 

「でも大丈夫。私は君の近くに必ずいるよ。ほら、言ってたじゃないか。『私はずっと傍にいる』って、何時どんな時も……。」

 

何時……どんな時も……。

 

「そう、だから心配いらないよ。私と君は、いつ、どんな時も……」

 

――同じ星空を見ているよ。

 

――……

 

「ニヒヒ、あー噛まずに丸呑みっていうのも、案外いい物があるなあ、さあて、これであいつも俺のなか……ん?」

 

……言ったはずだ。

 

「私"達"は、仲間になるつもりはないって!!」

 

口を素手で切り裂き、その一瞬開いた隙間を潜り抜ける。呼吸というのは、身体向上のための最終手段のような物だ、決して、剣技だけの物ではない、ならば、それを応用すればいいだけの話だ。

 

「俺の口からっ、なんなんだこれは。ま、まあいい、どうやら完膚なきに潰してやらないと、気が済まないようだ、ナァ!!」

 

敵が来る、眼前から一瞬で消える。またこれだ、どこから襲いかかってくるか分からない、高速の一撃。でも、斬らなければならない。これ以上、ほかの希望者が犠牲にならないためにも、そしてなにより……。

 

「師匠が、見ているから。」

 

改めて夜空を見上げる、ああ、綺麗な星空だ。師匠も、何処かでこの星空を見ているのだろうか、何処かは教えてくれなかったけど。

 

「ニヒヒ、終いにしてやる!!」

 

私は目を閉じ、師匠の速さを想像する。本当に、光速その物だった、決して捕らえる事の出来ない、光速の斬撃。

 

敵は()()だ。なら、私はそれを越え、()()になればいい。集中しろ、私はここで死んでは行けない。それでは、師匠にあの世で顔立て出来やしない。

 

「だからここで、お前を斬る!!」

 

「ニヒヒ、出来るかなあ、お前さんは俺の頸を斬れなかった、遅いからだ!! 遅い剣なんて、俺に届く筈がない!!」

 

「だったら、それを越えるまでだ!!」

 

くりだせ……奴に見せつけるんだ。

 

師匠の……師匠と共に歩んで培った……師匠の光速を!!

 

――全集中っ!!

 

――星の呼吸っ!!

 

――惨ノ型っ!!

 

「"天刑(てんけい)"!!」

 

果てどない轟音を轟かし、私は奴の頸を斬った。惨ノ型 "天刑"は、星々の神が下す刑罰の様に、直線上にいる敵に避ける事の許さない斬撃をくりだす。

 

――必殺の剣技。

 

「あれ、俺、斬られたのか? 地面が、逆さになっている、嘘だろ? あいつの剣を……俺は捌けなかった。遅い筈の、あいつの剣を……!!」

 

鬼は罵倒の声を上げながら、塵と化していく。私は振り返り、それを見届ける。それと同時に私はドッと疲れが押し寄せてきた、膝から崩れ落ちる。

 

「あ、あれ、どうしてだろう、身体が、動かないや。」

 

そうして、私は昇ってくる朝日を目にしながら、眠りについた。

 

目覚めた頃には、『星の呼吸 惨ノ型 天刑』の事も、すっかり忘れていた。

 

この剣技は恐らく、師匠が私に与えてくれた、全力の力を振り絞りくりだす、奇跡の様なものなんだろう……。

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