星空の刃   作:鮫牙社長

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7話 果樹戦線

森の奥へと進む、時折大木がまた飛んでくる。私は善逸を引きずりながら走り、飛んでくる大木を、避けては斬り捨てる。しかし、善逸を連れているから、いつもの速さは出ない。まさか、最初の任務で思わぬ障害が出るとは思わなかった。

 

「善逸、お願いだから自分で走ってよ……。」

 

「無理無理無ー理!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃうよお!!」

 

「ああもうっ」

 

師匠の刀と善逸、自分の身に重みがかなり伸し掛る、そのせいで先程から数回、大木の屑が皮膚を掠めている、あと少しズレていたら、眼もやられていた所だ、眼はやられちゃダメだ、私の唯一の取り柄だから。

 

「手を離したら死ぬ、離したら死ぬ、さっきから、嫌な音がばっか聞こえるんだ!! 四方八方からカナキリ音の様な嫌な音がさあ!!」

 

「カナキリ音?」

 

私は走りながら耳をすませる、そんな音は一切聞こえない、善逸は耳がいいのだろうか?

 

なら私も自分の取り柄である眼で、周囲の様子を伺う。薄暗くても、私の眼なら周囲の状況を理解できる。この大木を飛ばしている鬼を見つけることが出来れば、御の字だろう、私の眼は強いんだ。

 

「よく凝らしてみるんだ……きっと何処かにいる。」

 

前……後ろ……右……左、注意深く状況を探れ。森の奥、さらに奥、気配のする方へ……。

 

……

 

「……見えた!!」

 

「何!! 何が!!」

 

「走るよ!!」

 

「待って、あ!! 離れた、まって!! まってえええ!!」

 

私は鬼が見えた方向に全力疾走で走り抜く、善逸の腕が離れてしまったが、この際関係ない、言っちゃ悪いが、身体の重みが消えて清々する。これなら、大木の屑が皮膚をかすめることは無いはずだ。

 

足を進める事に、大木の速度が早くなっていく、相手も勢いよく後退しながら、大木を飛ばしているのだろう。だったら、こっちが出迎えてやるしかないようだ。

 

「全集中……。星の呼吸 壱の型!! "彗星・加速"!!」

 

地面を"彗星"と同様に蹴りあげ、速度を上げる。通常の"彗星"とは違い、攻めを捨て、速度を上げることだけに改変した壱の型だ。非常に万能で使い勝手もいい。するとついに、鬼の顔を捕らえることが出来た。

 

「ぬお!?」

 

「頸をもらうぞ!!」

 

「させない……!!」

 

鬼は左腕をバッと右に広げる、すると私から見て左方向から右方向に向かって近くの大木が曲がり、迸った。私はガバッと刀で受け流す物の、やはり力で押し負け、逆方向の大木に激突する。

 

「大木は俺の思うがままだ。」

 

今度は激突した大木が曲がり、私の頭上目掛けて飛んできた、私は柔軟に身を任せ、身体をギリギリまで曲げながら、前方に後退する。大木はそのまま地面に激突した物の、すぐに私めがけて軌道修正した、その速さは尋常じゃない。

 

「……っこの!! 壱ノ型!!」

 

私はあらぬ体制から"彗星"を使い、飛んでくる大木を切り裂いた。大木は真っ二つに折れ、地面に落下した。でも、今回これで3回目の呼吸だ、かなり身体に負担がかかる。

 

「痛……、完全に折れたかなあ。」

 

「よく避ける、だが何時までもつかな。」

 

――血鬼術 硬血大木(こうけつたいぼく)

 

「血鬼術……!? おあっ!!」

 

地面から赤きに大木が飛び出してくる、私は高くジャンプしたが、判断が少し遅れていたのか、間に合わずそのまま大木に捕まってしまった。

 

「こんなもの……!!」

 

私は被害を免れた右腕で師匠の日輪刀を抜き、大木に突き刺した。しかし……

 

「……!? 硬い。」

 

「硬血大木はな、我が血を纏った特別な大木だ、そう簡単に傷つくわけなかろう……さて、身体が潰れるのは何時ごろだろうな……。」

 

「うぎっ……」

 

最終選別の時の鬼以上の力強さだ。これが、鬼。私は改めて痛感した。これが鬼の強さなんだと、最終選別の時にいた鬼は、本当にただの端くれなのだと。

 

「このままじゃ。」

 

「この果樹園は、俺の血鬼術を最大限に生かせる、良い場所だ。押し潰してやる。」

 

締め付ける大木の強さが段々増していく、最初の任務でこれか、さすがは鬼殺隊、殆ど容赦は情けはなしだ。常に本気で戦い、よわければ死ぬ。まさに、弱肉強食の世界だ。

 

「負ける……っ」

 

――……

 

「宵待さぁぁん、どこにいったんだよお……」

 

なんなんだよ、守ってくれるんじゃなかったのか? 俺はどうしたらいいんだよ。滞ることの無い怒りと不安が込み上げてくる、ここは暗いし鬼が出る。即ち、死の場所だ。

 

「どうしたらいいんだよっ、1人じゃ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 

1人で叫ぶ。答えなんてものは帰ってこない、そりゃ宵待さんどっかいったからな、クソっ、クソクソクソっ。

 

ガザ…… その時、草むらが揺れた

 

「ぎゃあああああああああ!! 何、何、何!!」

 

恐怖のあまり、今にも失神しそうだが、俺は恐る恐る振り返った。そこにいたのは……

 

「……あぁん? 金髪のガキィ?」

 

鬼だった。

 

「ぎゃああああ!! 鬼ィィイ!!!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!! 死ぬ!!」

 

「はぁ、てめぇ、誰が鬼だ、顔見ろ!! 顔!!」

 

「鬼じゃん、鬼の形相じゃん!!」

 

「な……っち、てめぇ、斬り捨て……いや、てめぇ鬼殺隊か、っち、斬れねぇじゃねぇか。隊律違反だ。」

 

その鬼の形相をした野郎は背中、腰、足とありとあらゆる所に刃関連の武器を担いでいた。動きにくいだろうが、そいつは軽やかにこちらに、距離を詰めてきた。

 

「オイ、鬼はどこだ、さっさと吐け、こちとらなぁ、上からお前らの監視役を言い渡されてよお。まったく、面倒だよなあ、オイ、吐けよ、吐かなきゃ斬る。」

 

「今隊律違反っつったよなあ!! 自分のいうことに責任もてよぉ!! あっち、あっち、さっき宵待さんっていう鬼殺隊士も向かったよ!!」

 

「ほーん、一人で向かうたぁ、中々骨のある奴じゃねえか。わかった、一応礼はいっておく、そして俺の名は鬼じゃねえ、実蔵 源三(さねぐら げんぞう)だ。いずれ、柱となる男だ。」

 

そう名乗ると、男は辻斬りの如く去っていった。

 

「お、俺も向かったほうがいいよな……うう、行きたくねえよお……」

 

俺も駆け出し、男の後を追った。元凶とはいえ、女の子一人でいかせたのは、やはり罪悪感がすごいからだ。




・星の呼吸 使用者:宵待 阿坐彌
星の如く素早くなるために鍛えあげられた呼吸。

壱の型 "彗星"
弐の型 "流れ星"
惨の型 "天刑"
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