星空の刃   作:鮫牙社長

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8話 果樹戦線 弐

「うあっ……」

 

呼吸を3回使い、善逸を庇いながら走っていたのが仇となったのか、大木にしめつけられる度に、身体にかかる痛みに拍車がかかる。この感じは絶対に肋骨の骨何本か折れているな……。

 

「空中を蹴るんだ……まずは、この状況から抜け出すんだ……星の呼吸、弐ノ型!!」

 

空中を蹴りあげ、流れ星の如く加速を試みた。しかし、 大木は離れる事はなかった。赤き大木の色の濃さが次第に増していく。こいつ、どれだけ血を送るつもりなんだ?

 

「離れろ、この、離れろって、うっ……」

 

「無駄な足掻きだなあ、私はこの時の表情が一番好きなんだ。ほれ、どうだ。もう喋ることもできないだろう?」

 

「ぁ……ぅ……」

 

心臓が押し潰されそうだ、あと少し縛られたら完全に破裂する。その前に抜け出さなければ、抜け出す、でも、どうやって? "流れ星"も"彗星"も通じない、この大木は硬いんだ、硬いものでも斬れる刃があれば……。

 

「さあて、そろそろ終わらせようか。果樹園の肥やしとなるがいい。」

 

「ぁ……」

 

縛り付ける強さがさらに増す、もう、無理……。

 

「オイオイッ!! やっぱりあぶねえ所じゃねぇか!!」

 

誰だ? 善逸か?

 

「硬そうだな、だが、硬ければ硬いほど、それは俺の獲物だ!!」

 

――全集中!!

 

――()の呼吸!!

 

――肆ノ型!!

 

桃太郎討鬼伝(ももたろうとうきでん)!!」

 

「何っ!!」

 

「あ……」

 

突如現れた黒色の髪をした青年は背中の太刀と足に着けた小さい鎌の2本を両手に持ち、大木目掛けてそれらを振り下ろした。濃い血色に包まれた大木は真っ二つに切り裂かれ、私は解放された。

 

「ゲホッ……ケホッ……あ、あの、ありがとうございます。」

 

「あん? 礼なら鬼を狩って返せよ、ホラ、そこにいるだろうが」

 

「俺の大木を斬りやがったなあ!!」

 

「くっ……」

 

鬼は再び四方八方から大木を飛ばす。解放されたはいいが、縛りつけられた事で、かなり肋骨を折ってしまった、走ると折れた箇所が痛む。

 

「くっ、呼吸が出せないっ」

 

「ああん? 呼吸が出ないだあ? 出ないなら素の力で斬れ、腰につけてんだろ? 日輪刀がよお」

 

「でも私、力弱いし。」

 

「二刀あるだろうが、今片手で日輪刀持ったろ、短時間でいい、頸を斬るときだけ、二刀に持ち変えろ、それで斬るんだ。」

 

二刀に……。私は片方の腰に付けた師匠の日輪刀に目をやる、私と師匠の日輪刀は普通片手で持つようには、出来ていない。おそらく、時鋼さんも想定すらしていないだろう。そんなこと、本当に出来るのだろうか?

 

「……物は試し?」

 

敵の間合いに詰めるには、まずこの大木をどうにかしなければならない。でも、うっと惜しいなら斬ればいい、この大木は赤くない。

 

――全集中 星の呼吸 弐ノ型 流れ星

 

さっき善逸を守った時の感覚で、大木を辻斬る。本当は、赤い大木も斬ることができれば、御の字だが今の私にはそんな力はない。

 

「クソっ、やっぱり普通の大木じゃダメだな。」

 

――血鬼術 硬血大木(こうけつたいぼく)(いばら)!!

 

(来た、赤い大木、今度は四方から!!)

 

赤い大木は斬れない、そのため避けながら間合いを詰めなければならない。難しいが、それで何とかするしかない。幸い敵の腕の動きで、大木が飛んでくる位置は予測できる、眼がいい分、その動きは遠くからでも判断できる。

 

(右!! 上!! 左!! 右……!!)

 

「おいおい、斬らねぇのか!!?」

 

「力が無いから、赤い大木は斬れない!!」

 

「はァ!!? てめぇ、そんなんで鬼殺隊になったのか? っち、運のいい奴だな。しゃぁねえ、一人でここに突っ込んでいった意気を見込んで、少し手ェ貸してやる。」

 

――全集中!!

 

――刃の呼吸!!

 

――肆の型・五月雨!!

 

「桃太郎討鬼伝・三獣(みけもの)!!」

 

「……凄い。」

 

「何だと……?」

 

わたしの目の前にあった大木が次々に消えていく。動きひとつは決して早くは無いものの、足の速さを捨て、振り下ろす刃一つ一つに渾身の威力を叩き込んでいる。これなら、行ける!!

 

「ありがとう、さあお前もこれで最後だ。」

 

「うぬっ……」

 

私は師匠の日輪刀に手をかざす。引き抜こうとすると、片手にかかる刀の重さと相まってかなりの負担がかかる。でも、柄に手をかざすと、まるで横に師匠がいるかの様な感覚に陥る、師匠と一緒に戦っているんだっていう錯覚にも……。

 

「行くよ、師匠!!」

 

――全集中

 

――星の呼吸

 

――肆ノ型!!

 

七夕演舞(たなばたえんぶ)!!」

 

師匠と私、二つの日輪刀が()()()()()()()()()()()()()振り下ろされ、奴の頸を斬り裂いた。七夕の日にしか会うことの出来ない織姫と彦星の二人が舞う演舞のように、優雅に舞い、相手を二刀で切り裂く今考えた……

 

――師弟の剣技

 

「大木が……大木が、ふざけるな!! ここで人をたくさん食えば、あのお方に認められた筈なのにぃぃぃ!!」

 

「はぁはぁ、待ってよ、二人ともぉ……ん? ぎゃああああああ!! 鬼!! 鬼がいる!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃううう!! あっ……。」

 

鬼が塵となり消え、遅れてやってきた善逸が突如気絶する。

 

「……こいつ、本当に鬼殺隊か?」

 

「分からない……。」

 

とりあえず、私は日輪刀を腰につけ直して、善逸を背負った。

 

「私が背負うから、とりあえず外に出よう」

 

「だな。まったく、監視役も楽じゃねえな」

 

「え? 監視役!!?」

 

「名乗ってなかったか、俺は実蔵 源三。階級"(かのえ)"の鬼殺隊だ、よろしくなっ」

 

「は、はい、よろしくお願いします。」

 

私と源三は、外に向かって歩みだした。しかし、実蔵さんはこの時、謎の違和感を覚えているのであった。




・星の呼吸 使用者:宵待 阿坐彌
星の如く素早くなるために鍛えあげられた呼吸。
派生先:雷の呼吸

壱ノ型 "彗星"
(壱ノ型 "彗星・加速")
弐ノ型 "流れ星"
惨ノ型 "天刑"
肆ノ型 "七夕演舞" NEW

・刃の呼吸 使用者:実蔵 源三
あらゆる刃の力に身を任せ、怒涛の威力で相手を斬るために編み出された呼吸。
派生先:岩の呼吸

壱ノ型 ????
弐ノ型 ????
惨ノ型 ????
肆ノ型 "桃太郎討鬼伝" NEW
(肆ノ型・五月雨 "桃太郎討鬼伝・三獣") NEW
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