我らが帝国に栄光を!   作:やがみ0821

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秋津島皇国関連とかその他諸々は全部捏造です。


全面攻勢

 1926年7月23日

 

 ウィリアム・ハルゼー大将はつい思う。自分は夢でも見ているんじゃないか、と。

 その理由は今年の3月から始まったドラスティックな変化だ。

 

 彼が旗艦とするヨークタウン級空母であるエンタープライズと姉と妹であるヨークタウン、ホーネットが少し離れた位置を航行しているのが遠目に見える。

 

 第38任務部隊として編成された彼らは、ヨークタウン級空母3隻及びエセックス級空母3隻の合計6隻を主力とし、サウスダコタ級戦艦4隻及びアイオワ級戦艦2隻、そして多数の巡洋艦と駆逐艦により護衛されていた。

 

 彼の部隊は太平洋艦隊に所属しているが、欧州方面へと派遣された大西洋艦隊所属のスプルーアンスが率いる第58任務部隊はより大規模(・・・・・)だ。

 エセックス級空母4隻とその拡大発展型であるユナイテッド・ステーツ級空母4隻を主力とし、アイオワ級戦艦4隻、モンタナ級戦艦2隻や多数の巡洋艦、駆逐艦で護衛されている。

 

 ハルゼーが中佐のときに駆逐隊司令として着任し、旗艦に定めた駆逐艦の艦長がスプルーアンスであった。 

 ハルゼーは彼を当時から冷静な性格と優れた頭脳を持つ卓越した人物と評価していた。

 それ以来、公私に渡ってちょくちょくと付き合いがあり、友人と言える関係だ。

 

 だからこそハルゼーは戦闘以外の面倒事が多そうな欧州方面はスプルーアンスが適任だと考え、作戦部長のキングから問われたときに、太平洋が良いと迷わず答えていた。

 

 ふと彼はつい1週間前、皇国海軍との協議の為訪れた横須賀で見た光景を思い出す。

 

「皇国海軍め、確かに数は少なくなったが、その分強くなっていやがった」

 

 陸軍に予算を取られ、海軍の規模は縮小した、それは確かに正しかった。

 事実、多くの戦艦や巡洋艦などがスクラップ処分されたのだが――それらは全て艦齢が古いものばかりであった。

 戦艦4隻、空母7隻を皇国海軍は主力としているが、そのうち2隻――赤城と加賀――は費用を抑える為に戦艦からの改造で、2隻は試験的な意味合いが強く――飛龍と蒼龍――本格的な空母と言えるのは翔鶴と瑞鶴、そして一連の経験から拡大発展させた大鳳だった。

 

 合州国海軍とやり合うには少なく、連邦海軍ならオーバーキルできる程度の戦力を整えているが、これには皇国の事情も絡んでいるようだ。

 

 海戦の主役は戦艦だ、という主張は根強くあったが、皇国は連邦を主敵として定めている。

 沿岸部なら戦艦の主砲弾が届くが、より内陸部の敵を叩くのは戦艦では物理的に不可能であり、ならば空母と航空機を整備した方が良い。

 何よりも、海軍がそうしてくれるなら陸軍としても協力するのはやぶさかではないという言質が取れた為、陸軍に恩を売れるチャンスとして海軍は空母の増強に舵を切った。

 それでも強力な戦艦は欲しいようで、空母部隊に随伴可能な大和型戦艦を4隻も――大和、武蔵、信濃、紀伊――揃えている。

 明らかに16インチ砲ではない――18インチか、もしかしたら20インチ――ものを三連装3基9門も搭載した巨大戦艦に、プラスマイナスで言えば、マイナスなんじゃないかと値段を想像してハルゼーは思う。

 

 もっとも、合州国海軍を拡大させてくれたのは皇国海軍ではなく、帝国海軍だ。

 特に1920年度から帝国海軍は中小艦の整備、そして1924年の開戦直前には戦艦と空母を8隻ずつ、護衛の中小艦艇や潜水艦を多数建造すると発表した。

 それは開戦後大きく膨らみ、空母の数は12隻にまで増えたのだが――今ではその建艦計画の大半がキャンセルされ、計画は風船のように萎んでいた。

 それによって浮いた予算はもっぱら、研究開発に回されているらしい。

 

 合州国は太平洋と大西洋における安全保障の為という名目で両洋艦隊法を成立させ、このときに多数の戦艦と空母、そして中小艦艇の建造や航空機の開発・調達が始まった。

 

 サウスダコタ級やアイオワ級、モンタナ級やエセックス級にユナイテッド・ステーツ級はその一貫として建造されたものだ。

 なお両洋艦隊法成立に前後してパナマ運河の大拡張が始まり、将来的に幅の制限が解消されることが期待できたので、アイオワ級は設計が変わった程だ。

 

 折しも帝国の国力増大と技術的発展から、合州国だけでなく列強諸国が少しでも差を縮めようと苦心していたことも手伝って、技術の研究開発は加速した。

 

「司令官、そろそろ攻撃隊を出します」

 

 いつの間にかやってきていたカーニー参謀長の声にハルゼーは軽く頷いてみせる。

 

 ヤンキー・ステーションと名付けられた、事前に設定した遊弋地点に艦隊は到達していた。

 

「しかし、カーニー。作戦名はもうちょっと何とかならんかったのか?」

 

 問いにカーニーは肩を竦めてみせた。

 今回、ヤンキー・ステーションから連邦の極東地域における基地や軍港、陣地を空爆する。

 その作戦名は『イーグルクロー』だった。

 

 

 だが、ハルゼーの心配は杞憂に終わった。

 F8Fに護衛されたAD-1スカイレーダー、ボーイングF8B――欧州での戦いで戦闘爆撃機が流行っていた為、制式採用された――は連日空爆を繰り返し、それを見た皇国海軍の将兵達が合州国と戦わなくて良かったと安堵する程だった。

 

 

 

 一方、陸ではそれとは真逆のことが起きていた。

 

 

 

 皇国陸軍の魔導師部隊は独特であり、中でも九州の南部地方で編成された部隊は特にそうであった。

 

 丸に十文字を部隊マークとして定めているこの部隊は――島津隊というらしい――合州国の魔導師達からすると狂気の沙汰だった。

 

 皇国魔導師に共通している特徴として、彼らは小銃だけでなく、腰に刀も吊るしている。

 島津隊も陣地攻撃や多人数を攻撃する時は他の魔導師部隊と同様に小銃による爆裂術式を使う。ところが、攻撃に回せるだけの魔力が尽きてからが違う。

 なんと彼らは刀を抜いて、猿みたいな叫び声を上げながら敵兵に斬りかかっていくのだ。

 

 この剣術らしきものの威力が凄まじく、銃を横にして受けたとしても、じわじわと押されて体を斬り裂かれてしまう程だ。

 

 おまけに帰還は不可能と見るや、彼らは降伏するのではなく死ぬ間際まで戦って、最後にスパッと死ぬか敵兵を道連れに自爆する。

 

 更に島津隊は大昔の戦争のように個々人が部隊マークを示した小旗――旗指し物をしており、敵兵は彼らが来ると必死に抵抗するか、戦意を喪失して逃げ出すかのどちらかだった。

 噂によれば政治将校や督戦隊よりも島津隊の方が怖いという連邦軍兵士は少なくないらしい。 

 

 

 皇国軍と戦わなくて良かった――

 

 そんな感想を極東に展開した合州国陸軍部隊や魔導師部隊は抱いた。

 

 

 

 

 6月22日早朝より帝国陸軍は連邦との国境、その全てにおいて作戦名『バルバロッサ』が開始された。

 先陣を切ったのは各地に配備された砲兵軍団及び各師団所属の砲兵による砲撃だ。

 この前日である21日には最後の仕上げとして、空軍は10トン爆弾と燃料気化爆弾を満遍なくばら撒いていた。

 そこへ1kmあたり150門を超える重砲とロケット砲が投入され、砲撃は昼過ぎまで続いた。

 

 実際に戦闘部隊が進軍を開始したのは午後1時過ぎで、彼らを空軍の近接支援機及び戦闘爆撃機が上空より支援する。

 

 前線陣地はすぐ突破されていき、より後方に築かれた陣地に連邦軍は大きな消耗を強いられながらも撤退した。

 

 しかし、その動きを逃す帝国空軍ではなく、近接支援機と戦闘爆撃機が飛び回って見つけた敵部隊を次々にふっ飛ばしていく。

 帝国陸軍による進撃は順調で、行く先々で多くの住民達から歓迎を受けた。

 住民達に帝国軍が気前良くパンをはじめとした食料を振る舞ったことが大きな理由でもある。

 

 帝国軍部隊の進撃と同時に手ぐすね引いて待っていた陸軍建設大隊が道路と鉄道の整備に取り掛かり、順調にその作業は進んでいた。

 

 

 そのような最中で、敵前線の後方へと浸透する多数の魔導師部隊があった。

 

 大半の部隊は司令部をはじめとした軍事施設攻撃の任務を与えられていたが、中には特殊な任務が与えられた部隊もあった。

 

 

 ターニャ率いる第203航空魔導大隊はその特殊な任務を割り振られた部隊だ。

 彼らは休暇を兼ねた教導任務を終えた後、連邦軍にとっては後方にあたる地域の政治犯収容所を襲撃、警備していた連邦軍部隊を壊滅させつつあった。

 

 彼らの回収は空軍が請け負う。

 しかし、そのやり方は魔導師でないとできないものだった。

 

「できるとは思うが、本当にやるとは思わなかった」

 

 ターニャの言葉を聞いて、ヴィーシャをはじめとした部下達は同意する。

 

 魔導師が1人もしくは2人の人間を抱えて、空を飛んで輸送機に戻る。

 言ってしまえばそれだけだが、まさか実戦でやろうなんて言い出す輩がいるとは思わなかった。

 

 敵魔導師の脅威がない為にできる芸当だ。

 連邦軍には魔導師部隊が未だ存在していない。

 先の革命の際、多数の魔導師達が帝国へ亡命したことや、残った僅かな魔導師達も政治犯として収容されてしまった為に。

 

 編成したくともそもそも連邦内にいる魔導師が極めて少ない為、大したことはできないと判断されていた。

 

 とはいえ、これは戦後のルーシーにおける帝国への国民感情の為にも、やらなければならない任務だとターニャは確信している。

 他の即応軍魔導大隊も同じ任務に就いており、救出される人々はそれなりの数になるだろう。

 

「そういえばメアリーの奴は大丈夫なんだろうか……勝ち戦で教え子に死なれたら、気分が悪い」

『あの子とは文通してますけど、元気にやっているみたいですよ』

 

 ヴィーシャのまさかの発言にターニャは驚くが、よくよく考えれば2人は同じくらいの歳だったと彼女は思い出す。

 

『今度の休暇、ベルンで買い物をしますけど、少佐も一緒にどうですか?』

「買い物にはあまり良い思い出がない……店員に着せかえ人形にされたことが昔にあってな」

 

 ターニャの発言に大隊全員が予想できたらしく、笑い声が少しだけ聞こえてきた。

 

「今、笑った奴らは全員、前へ出ろ。名誉ある死をくれてやる」

 

 ごめんなさーい、とヴィーシャの情けない声が聞こえてきたので、ターニャは勘弁してやることにした。

 

 




雑な外交関係まとめ

悪の権化、全人民の敵、世界の敵(神様達仏頂面)

ルーシー連邦の共産党


連邦寄り中立(悪の心に目覚めかけている人達)

中国の軍閥(2、3個くらい)



大正義自由と民主主義陣営(すごくつよくてかっこいい)(神様達もこれにはニッコリ笑顔)

帝国
合州国
イングランド
スコットランド
ウェールズ
アイルランド
協商連合(宣戦布告だけ(・・)はしていない)
イルドア
秋津島皇国


民主主義陣営寄り中立(自由と正義の心に目覚めかけている人達)
森林三州誓約同盟
イスパニア共同体
イラン
その他、世界各国
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