注意
今回お館様の過去を滅茶苦茶捏造して書いてありますのでキャラ崩壊している可能性があります。
勿論誤字やら描写のおかしな所への指摘はどんどんして下さるとありがたいです…確認して投稿するんですけどどうにもソレが多くて…。
「……必要ない」
そう言った
ただそこに在るというだけの部品の一つでしかなかった。
__なるほど、この子が。
髪は鴉が如き濡れ羽色、磁器人形のような貌は一切の情を感じさせない。
どこか居るだけで温度が下がっていくような、冷ややかさ。
肌は白く、また傷は無い。
曲がりなりにも
歳は十五だと聞いている。
自分の一つ下、だがその佇まいは年頃の男児のソレではない。ただ空虚、それに尽きる。
__どうしたって、思うところはあるはずなのにね。
思わず苦笑する、このような手合いにあったのは初めてだ。
過去、わたしと会った者は其々の反応があった。
こんな童に使役されているという事実に怒る者。
未だ幼いわたしを見て嘆く者。
改めて鬼殺に向き合い、より一層の忠義を誓う者。
_皆、巡り巡った想いの丈をわたしにぶつけてきた。
それが嬉しかった。怨嗟であれ感謝であれだ。
そして誰一人として鬼殺隊を抜けると言ってきた者はいなかった。
こんな、病弱なわたしについて来てくれる…その事実がただひたすらに嬉しくて、悲しくて、遣る瀬無かった。
わたしは怨む。
遠い祖先を怨む。
鬼を、鬼舞辻無惨を怨む。
_いつかわたしが…わたしの
惡鬼滅殺。
その一字を皆、心に刻んでいる。
それは隠や耀哉のように鬼と戦えない者たちも同様だ。
忘れるなかれ、忘れるなかれ、この想いは決して間違っていないのだから。
_だがどうだろう、この子にはそれがない。
およそ鬼殺隊……それも数多の修羅場を潜り抜けてきた甲の隊士とは思えない程に煉獄景寿郎には忌むべき
僅か一言、言葉を交わしただけで分かる無機質さ。
__徹頭徹尾、他人事。つまるところ、この子には理由がない。
鬼殺隊で在る必要がない。鬼を殺す理由がない。この場にいる…その意義すら、ないのだ。
それ自体は悩ましいところだが不自然なことではない。
親を鬼に殺され、さりとて仇をとる程の激情はなく、金銭的、身寄りのなさも相まって育手に引き取られ、止むに止まれず剣士を目指した者も居た。
そう、かつて過去には居た。
__けれどそういういった優しい子は、往々にして長くは生きられない。
最終選別で大勢死んだ。
初任務でまた死んだ。
階級が上がり、任務の難易度が上がると死んだ。
鬼に同情して死んだ、油断して死んだ、徐々に狂っていき、やがて死んだ。
毎日毎日産屋敷へと訃報が届いた。
__生き残るのはいつだって強い者だ。
耀哉は思う。
_決断でき、意思は固く、心技円熟にして…なお『天』に愛されていなければならない。
そういった者が『柱』となるのだ。
だから柱は皆から尊敬されている。他の誰よりも鬼殺隊に貢献しているからだ。
誰よりも鬼を狩り、人を救っているからだ。
そしてその根底にあるものは姿形は違えど『怒り』だ。
__もうこれ以上、他の誰かが悲しい目に遭わないように。
その為に、鬼殺隊はある。
だから彼のあり方は異様の一言だった。
_心は在らず、しかしてその技【至高】の領域……あるいは無惨に届きうるほどの剣の腕。
現炎柱をしてそう言わしめる逸材。
それを聞いた時耀哉は思った。
この折、全てが動き出す、と。
煉獄景寿郎をはじめとして停滞していた時の歯車が回り出す、その薄ぼんやりとした未来を、感じた。
__悲願成就の要石、運命の担い手。
だが…否、この場合やはりと言うべきか。誰よりも神域に踏み込んだ少年は、やはり【ヒト】ならざる何かだった。
槇寿郎の見舞いの後、耀哉は景寿郎について調べた。
来歴、任務記録、人となり、趣味嗜好、交友関係、何から何まで。
通常、当主が一隊士にそこまでの時間を費やすことはない…ましてやその当時の景寿郎の階級は丁だ。殉職が日常茶飯事の鬼殺隊ではそれなりの戦力足り得るが、あくまでそれなり。
隊士の頂点に位置する柱やその者等から見出され、稽古指導を受けている継子のような直弟子でもない限り、目をかける必要性は低い。
勿論皆大切な
数多の亡骸を踏み越え、鬼を狩る者達を指揮する存在。
それはただ下の者を慮るだけでは到底為すことができない重要な役目だ。常に冷静に大局を見据え判断をすることを義務付けられ、そう育てられて来た。
__だからこそ我々はこうして絶えることなく続いている。
天上の意思が如き俯瞰意識を持ち、盤上の駒をただ繰るように次の一手、さらに次、そのまた次へと想いを繋いでいかなければならない。
__嘆き悲しむことは慣れる事はないだろう。いつだって誰かが死ぬのは辛い事だ。
__だからこそ、終わらせる。わたしの代で、必ずこの絶え間ない悪夢を終わらせてみせる。
そうこども達の墓前に誓った。
それが十三の時。最愛の妻と出逢った時だ。
「君は少し…昔のわたしに似ているね」
「………?」
心なしか
#
当主を継いだのは十歳の折、父が死んだ翌朝だった。
覚悟はなかった、唐突の死だった。
他の兄妹に比べてわたしは心が弱かった。親の死には随分動揺した、頭が回らない、泣き叫びたくなった。
だが悔やむ間も無く、様々なしがらみがわたしへと襲いかかってくる。
重圧、目の当たりにした死へ恐怖。
己の為すことはなんだ?
どうすれば鬼舞辻の尻尾を掴める?
そもそも上弦の鬼すらここ百年斃した記録がないのに?
そもそも斃せるのか?
柱はそれに匹敵するのか?
どうすればいい?
怖い
怖い
怖い
忘れろ。一旦は忘れるんだ。
確かなことは一つ。
今からわたしは当主だ。
わたしが【お館様】だ。
ならば、やることは一つだ。
仮面を被る。
割れることはなく、色褪せず、不変であり、旗印の【貌】を被る。
この身は人にあらず、ただ鬼を狩る存在と成り果てるのだ。
刀は振れず、鬼と相対することも、有効な武器や術を開発する頭もない。
__ならば何が出来る…矮小なわたしはにやれる事はなんだっ。
悩んで、飽きるほど悔やんでもソレ以外は思い当たらなかった。
_まだだ、他に何か、なにか無いのか……。
本当は幼き当主は分かっていた、己の効率的な使い方を。そしてそれは残酷なまでに他人任せになるであろうことも。
即ち、鼓舞。戦場へ向かい、鬼を狩る隊士達の士気を上げること。
勇気付け、さあ再び行くがよいと叱咤激励すること、ただそれだけ。
それだけしか、できない。
ばきり。
__頑張ったね。
うるさい。
__よく、分かるよ。辛かったろう。
味わったことも無いのにか。
__君が生きててくれて良かった。
わたしは死ねばいい。
_わたしは、そう思うよ。
思ってもいない。こと、だ。
ばきり。
かたはしから傷を縫い、罅を整えればほらまた直ぐに元どおりだ。
踊る、わたしは踊る。仮面を被った継ぎ接ぎの道化は今もこうして人を騙している。
そうして一年、二年と【お館様】として過ごすたびにわたしはおかしくなっていく。
自分よりも遥かに屈強で、頼り甲斐のある剣士達が死んでいく。
どうする事も出来ないもどかしさばかりが募っていく。
_いっそわたしが、ただのこどもなら。
あるいはそんな生があるのならば、どれほど楽だったろう。
その思いが心中を支配し、生きる意味を見失いかけたのが十三の頃。
_私が全て受け止めましょう。
あまねと出逢ったのはその頃だった。
#
産屋敷家は代々短命だ。それは遠い祖先である鬼舞辻無惨が発端の、命を蝕む呪いが原因である。
どんな名医に診せても匙を投げられたそれは、神主曰く無惨を斃す以外に完治するすべはなく、少なくとも鬼狩に心血を注げば一族は途絶える事はないそうだ。
唯一の延命方法は神職の一族から妻を娶ることで、その日わたしは初めてあまねに会いに行った。
気が重かった…そもそもそんな事を考える余裕が当時のわたしには無かった。
どうやらお互いの家での合意のもと、わたしとあまねは随分前から許婚だったらしく、それを知らされたのは会う一月前だった。
__何処とも知れぬ場所で彼等は戦っているというのに…わたしは見合いか?
自嘲する、心底くだらない。もう何もかもがどうでもよくなりつつあったが、隊士達への申し訳なさは常にあった。
__断ろう、その方が相手にとってもよいだろう。
こんないつ死ぬかも変わらない男と一緒になるなど不幸だ。なにも此方の事情に付き合わせることはない。
待ち合わせ場所へ着くと其処には一人の女性がいた。
__ああ、この人はきっと強い方だ。
きりりとした眉に、此方を見つめる眼は私を捉えて離さない。ぴん、と張った背筋は育ちの良さを窺えると同時に生来の気の強さが滲み出ている。
「貴方が……産屋敷耀哉様でしょうか?」
鈴の音の様な清涼感のある声だ。十七と聞いていたが身長の差も相まってそれよりも歳上に見える。
「ああ…そうだよ。君があまね、だね。早速で悪いのだけれど__」
わたしは、あまねにこの縁談は、貴女が嫌というなら断ろうと思っていると告げた。
我ながらなんとも卑怯な言い草だったが、同時まだ僅かばかりの見栄があったわたしは判断を向こうに委ねた。伸るか反るかは貴女次第だと。
それとも見栄など可愛いモノではなくやっぱりわたしは捨て鉢になっていたのだろうか?
「……理由を伺っても?」
今思えば、もう限界だったのだろう。この役割を演じることに。
たったその一言でわたしの仮面は外れかけた。
其処から先はあまり思い出したくはない記憶だ。気づけばわたしはあまねに心中を打ち明けていた。
__毎日人が死んでいくんだ。
初めの言葉に脈絡はなかった。唐突なその発言にもあまねは嫌がることなく続きを促してきた。
__わたしの知らないところで、誰にも看取られずに死んでいく事も、わたしが最期まで付き添っていたこともある。
__勿論こんな組織だ、死人が出るのは当たり前。無事帰ってくる可能性の方が低いことは分かっている。
彼等は鬼と戦いに行くのだ、武器を携え、化物へと自ら進んで向かっていく。極論それは生死の狭間で生きているようなものだ、つかの間の安らぎを永遠のものにする為、隊士達は死地へと赴く。
いつの日か、何の不安も無く夜を明かす為に。もう、誰かが夜に怯えなくていいように。
__そうやって歴史を紡いできた、だから今がある。それは……ああ、分かっているっ。
もう、溢れる言葉を止めることはできなかった。
__けど、けどわたしはっ……わたしは何もできなくて。
「はい」
__刀を満足に持つことも、ましてや振るうことなんて出来やしなかった!皆が危険に晒されず鬼を斃すような術だって思いつかないっ。
「……ええ」
__できることと言ったら精々声をかけてあげることだけ…頑張ってね、君たちならできるってっ、ただ…そんなことしか、【言葉】しか吐いてやれない。
もう口調すら取り繕えなかった、壊れていく、剥がれていく、産屋敷九十七代目当主【
__けれどもみんなが言うんだ、今際の際に『お館様、ありがとう』って。何がだ!何がありがとうだっ、なにが『貴方に会えて良かった』だ!わたしはなにもしてない、できてない‼︎
必死に隊士の前では取り繕っていた笑みも今やどうやっていたかすら定かではない。
__みんな、わたしを置いて先に行くんだ。満足したように、悟ったように……看取った者は誰も彼もが感謝する。こんな鬼一匹、狩れないわたしに感謝するっ‼︎
想いは止まらない、留めなく、限りなく、溢れてやまない。
もうどうでもいい。
鬼舞辻も呪いも鬼殺隊だってどうでもいい。
どうして、わたしばかりこんな目に。
__辛いんだ、投げ出したいんだっ!こんなものの…こんなことのためにわたしは【生きている】んじゃないっ‼︎そうだ……いっそ、代わりにわたしが死ねばよかったんだ!
__バチンッ。
不意に痛みが走る。
一つは心に、一つは顔に。
「黙って聞いていれば……随分身勝手な言動をなさいますね」
頬を叩かれた。
「泣くのは良いでしょう、嘆くのも後悔するのも構いません」
_泣いていたのか、わたしは。
打たれた頬の痛みをどこか他人事のように感じながら、滲んだ視界であまねをみる。
「耀哉様はまだ十三、誰かに縋りたくなるのは当然です。けれどもソレは違うでしょう?」
あまねに抱き締められる、鼓動が聞こえる。どくどくと一定の間隔で刻まれるその音に乱れはない。どこまでも誠実に、言葉を噛み砕き、彼女は応えてくる。
「『こんなこと』などと二度と言ってはいけません。貴方の心中がどうであれ、亡くなった方々にその言葉は確かに救いになっていたのです」
思わず反論しそうになると、それを察したのかより強く身を寄せてくる。わたしは恥ずかしさも忘れ、ただその温度を感じていた。
「あなたの命を無下に扱うと言うことは、彼等の生きた証を否定するということ。分からないのですか?鬼狩などやろうと思えば一人でも出来るのです、何も鬼殺隊に入る必要はありません」
__……それは、どういう。
ようやく絞り出した言葉は疑問だった。じゃあ彼等は一体何のために戦っている、どうしてそこまでやれるのだ、何が彼等を駆り立てる。
その【こたえ】はなんだ。
「あらゆる怨嗟と希望を一身に受け止めて、年端もいかない幼い子供が矢面に立って指揮しているのです。それに応えるのはそんなにおかしなことなのですか?」
__ああ、そうだったのか。
「もっと自信を持ちなさい。貴方は十分、誰かの役に立っています」
__その一言でわたしは救われた。
「可哀想な人……【お館様】はそれ程皆を勇気づけたというのに。
__もう、いいんだ。
そう、こたえは出た。わたしが何のために生きるのか、それは本当に簡単なことだったんだ。
難しく考える必要はなかった、こんなことになるまで放っておくべきではなかった。
肩をそっと叩くと、あまねは腕を離してくれた。唇が触れ合うような距離で見つめる彼女はとても綺麗だった。
紡ぐ。
「さっきのことばは、取り消していいかな?」
お館様ではなく
「結婚してほしい。………わたしのために生きてくれ、あまね」
そういうと彼女はわたしと会って始めて笑って答えた。
「はい……喜んで。貴方もどうか私のために生きてください」
__人は一人では生きていけない。
当たり前のようでその実、わたしはまるで理解して居なかった。
彼等にわたしの言葉がどれほど有り難かったのかを、どれほど心の支えになっていたのかを。
『お館様、ありがとう。貴方に会えて良かった』
__こちらこそありがとう、君たちにこんなにも慕われて、わたしは幸せだ。
まだ整理はつかないけれど、とりあえずの目標は決まったよ。
【好いた相手と歳を取る】こと。
__ささやかだけど、意外と難しいだろう?
誰に言うわけででもなくただ、想う。
これからのこと、いままでのこと。
踏み越えた屍の分だけ、わたしは【生きる】よ。
皆に会いにいくのはもう少し先になりそうだ。
#
「……驚かせてしまっただろうか?」
手を払われたことに嫌悪感はない。誰だって見ず知らずの人がいきなり【友達】になってくれなどと言ってきたら困惑するだろう。
_それとも後者の言葉かな?
景寿郎を調べて分かったことはそう多くはなかった。
それは周囲の人間が彼のことをあまり知らなかったことに起因する。
煉獄家で生まれ、幼児期から他の子供よりも明らかに早く言語を習得し、五歳になる頃には大人と変わらぬ程流暢に言葉を話したという。
その落ち着き払った姿を当時の同年代の近所の子らは気味悪がって近づくこともしなかったそうだ。
__なんだか不気味な童でした。遠巻きに儂らが畑作業やらなんやらをしているのをただぼうっと見とるような子供だった。
使いを生まれ育った村へやり、話を聞くと大人ですらそう証言するのだからその異様さがが垣間見える。
__昆虫のような子だった。どこか此方をじっと観察しとるような、妙な静けさを感じた。
だから先程の自分が言った言葉は本心ではあるが、全くその通りだとも言い切れなかった。
_反応を見る限り、景寿郎は対人経験が極端に少ない。恐らく誰かに自分が興味を持たれ、話しかけてくることは殆ど無かっただろう。
三月前の槇寿郎との会話を思い出す。
『あの子は……人の心が無いのです』
__それは違うよ、槇寿郎。
そう、どんな者にも心はある。あらねば人は生きてはいけないからだ。
ただその心を晒け出せる環境と、声に耳を傾けてくれる人がいなかった為こういう結果になっているだけ。
__ただこの子は少し、心が深いところに眠っているだけだ。
「すこし、二人で話をしようか」
景寿郎以外を下がらせる。槇寿郎は何か言いたげな視線を寄越したが、やがてとぼとぼと出て行った。
__どれだけのことができるかわからないけれど、やってみよう。
かつて壊れかけた自分を
「先ずは君のこと聞かせてくれないか?」
この子にも生きる意味が必要だ。
「なんでもいい、思いのままに話してほしい。飽きるまで聞こう、今日は体の調子が良いんだ」
人は一人では生きていけないのだから。
追記
情報修正ありがとうございます。一部表記を変更しました。