場面の都合上ここで切りました。
一応これからの無一郎回が過去編で一番原作に近い話になりますのでここでの景寿郎は『色々と』経験した後となります。なのでその差を楽しんでもらえると幸いです。
「立て」
__疲れた。
「まだ、やれる筈だ」
__もう、体力の限界だ…呼吸をするたびに肺が軋んで痛い。
「その程度なのか…いや、違うだろう。お前は誰よりも強くならねばいけない、さあもう一度だ」
__別に…強さに拘りがあるわけじゃない、僕はお館様の役に立てればそれでいい。
「時透……お前は回帰せねばならない。身につけた技を、霞の呼吸を風の派生などと『嘯く』のはやめろ」
__何を言っているのだろう…貴方の言葉は何一つ分からないよ。
「才に振り回されるな、技を磨き、技を知り、技を身体に刻み、そして技を超えろ………もっと自由に動け、型を崩せ」
__僕はこれまで、こうしてやれてこれた。別に変化が欲しいわけじゃない……どうでもいいんだ。
「動きが硬い、余計なことを考えるくらいならもっと内に目を向けろ」
__……僕にはできないよ、どうせすぐに忘れるんだから。
「……構えろ、もう一度だ」
__でも、どうしてかな。自分でもよく分からないけれどこの人には…
「
眼前の男の雰囲気が、がらりと変わる。腰を落とし刀を抜き放たんとする姿はどこか鬼気迫るものがあり、瞳はじっと此方を見つめている。
しかし表情は読み取れず、磁器人形のように固まっていて、その発する圧との差が不気味でならなかった。
__この人だけには、負けたくないや。
未だに自分のことは思い出せないし、正直流されるまま気づけば『此処』まで来ていた。
鬼を斃すのはそれ程苦労しなかったし、何よりあの人の為に働くことを苦だと考えたことは無かった。
『混乱しているだろうが今は、とにかく生きることだけ考えなさい』
あの人_お館様はそう言ってくれた、だから自分は『とりあえず』生きてさえいればいい。
__そう思っていたのに。
身体を起こす、全身が悲鳴を上げているようだ。歯を食いしばって必死に呻きを押し殺す。
よろよろと稽古用の刃を潰した刀を構え直す自分を、彼はじっと待っていた。
痛みを無視して息を整える。
__あと一度だけ、なら。
下手な小細工は目の前の男には通用しないことは先程嫌と言うほどに思い知らされた。
__手数は要らない、余計な撹乱も意味はないから……たった一撃だ。
その一撃に、今できる全てを。
幸いにして相手は待ってくれている。ならばゆっくりと、神経を研ぎ澄ませ、無駄な動作を削ぎ落とし、ただ流れるように。
__うん、できる。
その時、たった一瞬だが時透無一郎は自分でも知らぬまま口元が綻んでいた。
「霞の呼吸、
わざわざ口に出す必要はない、だからこれはただの意思表示だ。
受け身な自分の、ささやかな衝動。
__僕は、貴方に認められたいのかな?
この人に抱く感情は形容し難い、それは怒りか、憧憬か。
それすらも分からぬまま、時は過ぎ。
「
「
影は、重なる。
結果はやはり__彼の勝ちだった。
首に、寸止めされた刀が添えられている。無一郎はそれをちらと見るとそのまま床に倒れ込んだ。
精根尽き果て、意識を失う直前に思ったことは二つ。
__なんで、こんなことになったんだろう。
確かな後悔と。
__でも
僅かな喜び。
__楽しかった、かな。
書いておかないといつまで経っても原作に入らないような気がしたので今後の展開をば。
時透無一郎
↓
胡蝶姉妹(主にカナエ)
↓
煉獄杏寿郎及び甘露寺蜜璃
↓
原作入り