炎々と生きる   作:たぬきち祭り

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イメージは出来ているのに中々文字へ落とし込むことが難しい……文章力が欲しいこの頃。

今回の話で、しばらく景寿郎の父親との絡みは無くなります。

またぞろ繋ぎ回で短いですが、よろしくどうぞ。


縁は軋む

「……着きました。鬼殺隊本部、産屋敷邸です」

 

意識が覚醒する。隠の言われるがままにして、どれだけの時が経ったのだろうか。

 

「…ああ」

 

目を開けると何処とも知れぬ場所に私はいた。辺りを見渡しても思い当たる景色がない……人工物も眼前の屋敷を除いてほかに存在しなかった。

 

ただ山中にぽつりと屋敷が、ある。

 

隠の案内の元、私はお館様の住まう屋敷へとたどり着いた。道中は薬で眠らされ、複数の隠が交代で私を運んだと言うのだから余程隠匿に力を入れているのだろう。

大凡の位置の目星をつけようにも、屋敷以外に特徴的なものは見当たらなかった。

 

「では私はこれで失礼します。ここからは別の者が案内致しますので」

 

そう一言呟くと隠は道などない山の中へ消えて行った。

しばらく待っていると、不意に門が開き中から先程とは異なる隠が現れる。

 

「煉獄景寿郎様ですね?」

 

「……相違ない」

 

「奥へどうぞ、しばし客間で過ごされますよう……炎柱様の到着を待って、お館様へ謁見していただきます」

 

隠がそう言うと屋敷の中へと通される。内部は広々とした空間で、仮にここが戦場になったとしても十分な広さが確保されていた。

 

「では…ごゆるりと」

 

#

 

 

 

 

「少し遅れたか……久し振りだな景寿郎」

 

客間でしばし待機していると不意に襖が開き、父が顔を出した。

 

 

「父上……お元気そうで、何よりです」

 

三月振りに見る父は粗方傷も治りきり、剣士として動くのに支障がない程度には回復していた。

 

横にあった座布団を勧めると父は私から少しばかり離れた位置へと陣取る。

 

「……どうだ?」

 

父が胡座をかき、隠が持ってきた茶菓子に手をやる。その視線が私と交わることはない。

 

__どうだ、とは。

 

問いかけに応えようにも漠然とし過ぎて何のことやら分からない。

 

「先日、甲になりました」

 

溜息をつかれた。額に手をやる父は、頭が痛むようでそのまま言葉を紡いでいく。

 

「はぁ…いや…文にも俺が知っている事は書いてあっただろう。そうではなく……その、息災だった、か?」

 

_どうやら私の身を案じているようだ。

 

生憎とこの身にそれ程の価値はない。そのような言葉は私には分不相応だ。

 

「無用な心配かと」

 

「何だと……?」

 

父の眉が跳ね上がる……どうやら私は【また】間違えたようだ。

 

「親が、子の心配をして何が悪い。……無用だと?俺が一体どれ程の思いで…」

 

父はふるふると肩を震わせ、目付きは段々と険しくなっていくる。歯を食いしばるその姿は、怒号を放つのを必死に我慢しているようだった。

 

_分からない。

 

 

 

 

 

「ならば何故、此方を見ないのですか?」

 

 

 

 

そう言うと父から怒気は霧消した。

 

「父上……私の【眼】をみてください」

 

私の言葉に父はたじろぐ。

 

「いや……それは」

 

声量はどんどんと落ちていき、その瞳の焦点は合っていない。

 

「貴方は昔、私に『人と話す時はちゃんと相手の目を見て話せ』と教えました」

 

肩が震えている…だがそれは怒気からくるものでは無く、先程の勢いはとうに失せ、いまや父は小さな童の様な有様だった。

 

__何故そんなに怯えているのだ?

 

辛うじて首は此方に向いているが、それもいつまで続くか分からない。

父の呼吸はだんだんと荒くなっていく。

 

_別段、おかしなことは言っていない筈だ。

 

口を開く。

 

「父上……」

 

「な、んだ?」

 

父を見る、観察する。状態を把握する。

 

_まだだ、まだ大丈夫だ。

 

この前は訳もわからず逃げてしまったが…そもそも下弦の壱討伐の時でさえ数年ぶりに会ったのだ。

会話がぎこちなくなるのは至極当然のこと。

 

_父も私も、器用な方ではないのだ。

 

だからしっかりと聞こう、分からないことはいけないことだ。

家族は仲良くするものだ。

 

ああ…それができればきっと。

 

きっと母も喜んでくれるだろう。

 

杏寿郎も千寿郎も快く、あの家へ迎入れてくれるだろう。

 

 

もうこれ以上、父を困らせたくはない。

 

 

__それは、私の本意ではないのだから。

 

 

その(こえ)は呪いとなって槇寿郎(ちちおや)を蝕む。

 

景寿郎(むすこ)がその事実を知るのはこれよりずっとあと、実に七年後のことである。

 

 

 

__ああ…心が浮き立つような気持ちだ。

 

_そうだ、まだ遅くはない。

 

私は大丈夫だ。

 

今までも、そして、これからも。

 

 

__歩み寄ろう。

 

痛みはもう、失せていた。

 

_その初めの一歩だ。

 

 

 

 

 

「私が『人』ではなく【いかれ】だから、貴方は目を合わさないのですか?」

 

 

 

 

 

再び灯つつあった(あい)は、捻れ曲がった献身(あい)によって掻き消えた。

 




補足ですが、景寿郎は連日の鬼狩で少しハイになっています。
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