蜘蛛の対魔忍の受難   作:兵庫人

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三十九話

 今回の任務は最初から嫌な予感がしていた。

 

 任務の内容は魔族の武装勢力の拠点を偵察して、そこを襲撃する襲撃部隊のサポートをするという、いつもと同じ慣れた仕事。

 

 襲撃部隊はきららに翡翠、佐那さんと対魔忍としては珍しい実力と忍びとしての判断力を合わせ持つ(きららは最初こそは怪しかったが)優秀な対魔忍ばかり。

 

 これだけを見れば失敗する可能性と命の危険が非常に低い楽な任務に思えるのだが、ここに「秋山凛子」という要素が加わった瞬間、俺の中で今回の任務の難易度が一気に跳ね上がった。

 

 確かに凛子は優秀な対魔忍だ。

 

 俺と同じまだ高校一年(ちなみに同じクラス)でありながら逸刀流の剣術は達人クラスだし、千里眼から瞬間移動まで幅広く応用が利く空遁の術にも目覚めていて、正面からの戦闘では俺なんかが十人、二十人束になっても敵わないだろう。その上正義感が強く、仲間思いであるため周囲からの信頼も厚い。

 

 しかしその反面、凛子はその戦闘能力と反比例しているかの如く、策を弄した戦いの才能がない。全くない。悲しいくらいない。

 

 俺は今回の任務とは別に、過去三回凛子と同じ任務に就いた事があるのだが、その三回のうち二回の任務で彼女は敵の罠に引っかかって捕まっているのだ。しかもその罠がちょっと気をつければ気づける子供騙しな罠なのに、そこに一直線に自分から飛び込んでいくのだからフォローのしようがない。一応その罠に引っかかって捕まった二回は俺が救出しているのだが、もし俺の救出があと少し遅ければ、凛子は原作のゲームと同じく十八禁的な責め苦を受けていただろう。

 

 そりゃあ、原作のゲームで穴だらけの杜撰な侵入計画を立てて自分から性奴隷になったり、敵の罠にあっさり引っかかって肉便器になりますよ……。

 

 しかも彼女は先程も言ったように戦闘能力が非常に高くて周囲からの信頼も厚く、だからこそ彼女の暴走を止められる人物が少ないからタチが悪い。

 

 そして秋山凛子が任務に加わった事で俺が感じた嫌な予感は、任務開始からわずか十分後、見事に的中するのであった。

 

 

 

 任務開始から十五分後。俺と銀華、きららと翡翠に佐那さんの五人は今、敵の拠点から一キロ程離れたビルの屋上にいた。

 

「……頼人先輩。秋山先輩はどんな様子ですか?」

 

 俺の隣にいる銀華が話しかけてくるが、その声は明らかに疲れている様子だった。そしてきらら達三人もまた、疲れたような表情をしているのが見ないでも気配で伝わってくる。

 

 今の俺は敵の拠点に潜入させている電磁蜘蛛と視覚を同調させており、電磁蜘蛛の眼から拠点の様子を見ながら銀華に質問に答える。

 

「駄目だな。秋山の奴、完全に気絶して敵に捕まっている」

 

『『ああ……』』

 

 俺が電磁蜘蛛の眼から見た光景を説明すると、銀華達四人が同時に頭を抱えた。

 

 何故任務開始から僅か十分と少しで、凛子だけが敵に捕まっているのか簡単に説明すると次のような展開となる。

 

 一、敵の拠点を偵察していた電磁蜘蛛が、拠点内部にある倉庫で対魔忍らしき捕虜が捕まっているのを発見。

 

 二、俺が敵の戦力と拠点に対魔忍が捕まっていることを報告すると、それを聞いた凛子が対魔忍の捕虜を助けるべく空遁の術で敵の拠点に単身で突入。そして敵の大多数を瞬殺。

 

 三、敵の大多数を瞬殺した凛子は、敵の生き残りの確認もしないまま倉庫に直行して捕まっている対魔忍を助けようとする。しかしその対魔忍はすでに敵に洗脳されていて、対魔忍が隠し持っていた麻酔針を刺された凛子は意識を失って、生き残っていた敵に捕まってしまう。

 

 これがこの十分に起こった出来事である。

 

 確かに一人で敵の大多数を瞬殺する実力は凄いと思うし、捕虜になった対魔忍を一刻も早く救いたいとする気持ちも立派だと思うが、もうちょっと考えて行動しろと凛子に言いたい。というかせめてきらら達と一緒に行動しろよ。そしたら麻酔針を刺されて意識を失っても敵に捕まらずにすんだのに。何の為に部隊を組んであると思っているんだ?

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