荒くれ者「ようこそ、地獄の入り口へ!」
MAO「!?」
マカデミアンオーガ通称MAOがけものみちの異世界に召喚される前にこのすば世界に行っていたらというお話。
一話完結の一発ネタです。
MAOさんのキャラや口調が掴みきれてないかもしれませんがご容赦下さい。

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MAOさんがメインの三人娘を差し置いてヒロインっぽいムーブをかましてて草生えたので初投稿です。
MAOさんのキャラや口調が掴みきれてないかもしれませんがご容赦下さい。


けものみち×このすば MAOがイオアナにジャーマンスープレックスをかますまで

「クソッ! 何がケモナーマスクロスだ!」

 

 リングネーム、マカデミアンオーガ通称MAOは苛立っていた。

 長年辛酸を舐めさせられた宿敵、ケモナーマスクとのタイトルマッチ戦。

 これまでの借りをまとめて返してやると意気込んで試合に臨んだというのにその試合中に彼は消え去ったのだ。

 

 最初は演出の類いかと思っていた。何故なら彼は衆人環視の中、何の遮蔽物も無いというのに突如謎の光に包まれたかと思ったら次の瞬間には跡形もなく消え去っていたからだ。

 

 だが待てど暮らせどケモナーマスクが現れることはなく、試合は中止。いや、それどころかこの日以来彼は一切の消息を絶ってしまったのだ。

 

ーー許せねえ。

 

 試合の最中に逃げ出すなんてレスラーの風上にも置けない奴だ。

 今度こそはケモナーマスクをマットに沈めてやると心に誓っていたというのに決着を着けることなく試合を放り出すなんて。

 

 これまでのケモナーマスクとの闘いがMAOの脳裏を過る。

 奴を倒す事だけを考え、ひたすらにトレーニングを重ね、挑んでは倒され挑んでは倒されを繰り返した日々。

 次こそは、次こそは……何度この言葉を口にしただろうか。

 

 だがその望みはもう果たされる事は無い。

 そう思うと無性に涙が込み上げてくるのを感じた。

 

 あの日以来何もする気力が湧かない。いや、全くというわけではないのだが……

 いつの日かケモナーマスクがひょっこりと戻ってきた時の為にトレーニングは欠かしていないし、警察やマスコミ等にケモナーマスクに関する情報に変化は無いかを逐一確認に行ってもいる。

 だが結果はなしのつぶて。気がつけばベッドの中で泣きわめいている始末だ。

 

 流石にこれはおかしいと思い、医者の診察を受ける事にした。

 そしてその診断結果がケモナーマスクロス。

 

 当然MAOは否定する。だが医者の診断は変わらなかった。彼はケモナーマスクに執着し過ぎているのだと言う。

 

 だがそれが分かったからといってもどうしようもない。

 医者のアドバイスに従って柄でもない編み物なんてのもやってみたが無意識の内にケモナーマスクの模様を編んでしまう始末だ。

 

ーーもう一度奴と闘いたい。

 

 レスラーとしての衣装に身を包み、鏡の前に立つ。

 致し方ない。今日も奴との闘いをイメージし、トレーニングに励むとしよう。

 

「!? これは……!?」

 

 そう思った時、突如MAOの体が光に包まれた。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「ん? あんた誰よ?」

 

 MAOは気がつくと青い髪の女性の前にいた。

 まるで女神のような美しさだな、と自然に彼は思った。だが、ソファに寝転がってポテチを摘まんでいるだらしなさ全開の姿を見てやっぱり気のせいかと思い直す。

 

「お前こそ誰だ。いや、そもそもここはどこだ?」

 

「私は全国一億人のアクシズ教徒達が崇める御神体にして日本を担当するスーパーエリート女神のアクア様よ」

 

ーーチリーン

 

「……何だ今の音?」

 

「な、何でも無いわよ! ……いけないいけない、嘘を見抜く神器しまっとくの忘れてたわ

 

「?」

 

 自称スーパーエリート女神のアクアはコホンと一つ咳払いをすると語り出す。

 

「ま、まあ、一億人はちょっっっっっっっっっっとだけ盛りすぎたかもしれないわね。ここは若くして亡くなった日本人の魂が送られてくる場所なんだけど……」

 

「なっ!? 俺は死んだのか!?」

 

ーー死因、ケモナーマスクロスに起因する過剰なトレーニング。

 

 翌日の朝刊にそんな記事が載る事を想像してMAOは頭を振る。

 流石にそんな死因は嫌すぎる。

 

 

「うーん……私のくもりなき眼によるとあなたは死んでるようには見えないんだけど……ちょっと待っててね」

 

 そう言うとアクアは魔法陣のような物を展開したり、何かの書類と思われるものをパラパラとめくり目を通す。

 端々からポンコツ感が溢れる彼女ではあるが、スーパーエリート女神を自称するだけあってそのスペックは非常に高い。

 僅かな時間で彼女はこの事態の原因を突き止めたようだ。

 

「原因が分かったわ! 流石私ね! ドヤッ!」

 

 ……だが、やはり若干の残念感が今一拭えないな、とMAOは思った。

 

「で、結局どうなってるんだ?」

 

 MAOが疑問を口にするとアクアは胸を張りドヤ顔全快で話し始める。

 

「どうやらあなたは今正に異世界に召喚されようとしてたみたいね。だけど運悪くこっちの異世界転生システムと混線しちゃったせいでこっちに来ちゃったのよ」

 

「はあ……?」

 

 異世界召喚だの転生だの言われても正直ピンとこないというのがMAOの感想だ。

 

「普通ならこんな事無いんだけど、それぞれが違う異世界だから予測のつかない異常がたまーに起こるのよ。この間なんて覆面レスラーが本来呼ばれていない雑種犬と一緒に召喚されるなんて事があったらしい……」

「その話詳しくっ!!」

 

 かなり食い気味にMAOは詰め寄った。

 これにはアクアもドン引きである。伊達にケモナーマスクロスとか言われていない。

 

「えぇ……? 詳しくって言われてもケモナーマスクとかっていう覆面レスラーと雑種犬が私の担当している世界とは違う異世界に召喚されたって事ぐらいしか分からないわよ」

 

「充分だ」

 

 逃げた訳では無かった。

 彼は……ケモナーマスクは決してあのタイトルマッチから逃げた訳ではなかったのだ。

 それだけで、MAOにとっては充分だった。

 

「一つ頼みがある」

 

 行方不明になっていたケモナーマスクの所在が分かった以上やる事は一つ。

 

「俺をケモナーマスクが行った世界と同じ世界に送ってくれ」

 

 今度こそ奴と決着を着ける!

 今までの屈辱を何倍にもして返してやるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理なんですけど」

 

「え?」

 

 

 ケモナーマスクロス解消ならず!

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 話によるとどうもこのままの状態で元の世界や召喚されようとしていた世界に送るのは非常に危険らしい。

 

「最悪体と魂がまとめてボンッてなるわよ」

 

「ボンッ!?」

 

 流石にボンッとなるのはMAOもごめんであった。決着を着けるどころの騒ぎではない。

 

「取りあえずこっちの異世界転生システムに沿ったルートで送るのが一番安全なハズよ。しばらくすれば混線が解消されて本来召喚されるハズだった世界に召喚されるからそれまで待てば問題ないハズよ」

 

「その本来召喚される世界っていうのがケモナーマスクの行った異世界なんだな?」

 

 アクアはコクリと頷いて肯定する。

 

 ハズという言葉を多用する辺りが非常に不安ではあるが目を瞑ろう。流石にボンッとなるよりかはリスクは低いハズだ。

 MAOはそう考え、異世界転生システムとやらのルートに乗ることにした。

 

「じゃあ異世界転生システムに則ってあなたに特典を与えましょう。ちなみに今のオススメは童子切っていう刀……」

「馬鹿野郎! 俺が凶器を使うレスラーに見えるのか!」

「…………」

 

 意気揚々と異世界転生特典の紹介をしようとしていたアクアは出鼻を挫かれて一瞬不満気な表情を浮かべる。

 

 だが、気を取り直すと別の切り口から特典をオススメする事にした。

 

(この人レスラーだったのね……口ぶり的に武器系の特典は嫌がりそうね。けど能力系の特典、それもレスラーにとって垂涎の能力ならどうよ!)

 

 アクアにとって数少ない女神感の出せる仕事だ。ここを逃すつもりは彼女には毛頭無かった。

 

 

 

「なら、戦闘中に負ったダメージが次の戦闘の時には全回復する能力なんてどうかしら! レスラー的に言うと試合中に負った怪我が次の試合までにすぐ回復する能力よ!」

 

「そんなものレスラーにとって標準装備だ!」

 

「…………」

 

 アクアの顔が再び不満気になる。アクアは何だかもう面倒くさくなってしまった。元々飽きっぽい一面もある彼女はこれまでとはうってかわって投げやりな態度でこう言った。

 

「じゃあ、神器でもなんでもないの“タダ”の“普通”のトレーニングアイテムセットでも持ってけばいいんじゃない?」

 

「おお! それはありがたい!」

 

「…………」

 

 気合いを入れて紹介した特典がノータイムで断られ、テキトーに言った特典かどうかすらも怪しいアイテムで喜ばれる。

今一納得のいかないアクアであった。

 

「……他にも色々説明とか有ったけどもう面倒くさいからこのまま送り出すわ。異世界の言語や文字は分かるようにしとくから安心して。最悪頭がパーになるかもだけど」

 

「は!? パー!? おいそれどういう事だよ!? 説明しろ!」

 

「出ていって! 私は忙しいんだからさっさと異世界に出ていって!」

 

ーーこんのアマァ!

 

 何が忙しいだ。さっきポテチ食って寝そべってたじゃねーかと思いながらMAOは光に包まれ、異世界へと送り出された。

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 目を開けるとそこは異世界でした。

 

 そんなどこかで聞いたようなフレーズを頭に浮かべながらMAOは異世界に降り立つ。

 頭がパーになるとか、とてつもなく不吉な事を言われたがMAOが認識する限りでは一応はそういった様子は無さそうだ。

 ほっと胸を撫で下ろし辺りを見回す。

 

 さて、異世界に来たのはいいものの、どうしたものだろうか。

海外旅行等と違ってガイドも居なければ事前知識も一切無い。

 

 行動指針としては再度召喚されるまで取りあえずこの世界で過ごすといったアバウトなもので具体的な計画も特にない。

 

 MAOが悩んでいると何者かに声を掛けられた。

 

「どうした若いの? そんなに辺りを見回して道にでも迷ったか?」

 

 その男は一言で言うなら“荒くれ者”であった。

 いかつい顔にモヒカンヘアー、鍛え上げられた肉体は半裸に肩当て、サスペンダーという変わった服装に包まれていた。

 

(何だこいつは? 悪役系レスラーか!?)

 

 内心面食らいながらもMAOは男の問いにこう返した。

 

「だ、誰が迷子だこの野郎! この俺を誰だと思っていやがる!」

 

 実際には道に迷うどころかこの街がどこの国のどの街なのかすらもまだ知らない有り様なのだが……

 

「へっ、命知らずめ! だが嫌いじゃないぜ。窮地にこそ意地を張れる男って言うのは」

 

 男は踵を返すとこう言った。

 

「ついてきな。お前に相応しい場所に連れていってやる」

 

「あ、ああ……」

 

 荒くれ者の男のただならぬ雰囲気に当てられ、MAOは思わず声を上擦らせてしまう。

 

(何だこの男は……? まるで初めてケモナーマスクと対峙した時のような圧倒的な存在感を感じる……!)

 

 本来ならこのような相手についていくなど危険極まりないが不思議とこの男ならば信用出来るような気がしていた。

 

(なんとなく他人のような気がしねえしな)

 

 後日この荒くれ者の男が単なる機織り職人と知って唖然とする事になるとは、この時のMAOは微塵も想像していなかった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 そして幾分かの月日が経った。

 

ーーようこそ、地獄の入り口へ!

 

 そんな言葉とともに荒くれ者の男が連れてきたのは冒険者ギルドという場所だった。

 

 荒事の多い冒険者は血気盛んなお前さんにはうってつけだと奨められMAOは冒険者として活動する事にした。

 

 実際レスラーとして鍛えてきたMAOにとって体一つでモンスターに立ち向かう冒険者は向いていたのかメキメキと頭角を表し何時しかこのアクセルの街で知らぬ者はいないほどの凄腕冒険者として名を馳せる事になった。

 

 ……正直空飛ぶ野菜やら畑で取れるサンマとやらには辟易はしていたが。

 

 だがMAOにとってそれらの事は全てどうでもよかった。

 

「クソッ! いったい何時になったら再召喚されるんだ!」

 

 そう、あくまでもこの世界は再召喚されるまでの仮の場所。

だというのにいまだに再召喚される気配は微塵も無かった。

 

 鳴りを潜めていたケモナーマスクロスも再発しつつあり、ケモナーマスクの模様が入ったマフラー、セーター、ニット帽を編んでしまう始末だ。

 やけくそになってそれらの作品を編み物コンテストに出してみたらまさかの優秀賞を受賞。

 

 ……ちなみに最優秀賞を受賞したのはどこぞの宴会芸の女神であるがケモナーマスクの事で頭がいっぱいになっているMAOは気がつく事は無かった。

 

 そしてさらに時が経ち、とうとう待ちに待った瞬間が訪れる。

 

 MAOの体が光に包まれ、本来喚び出されるハズだった世界へと召喚されたのだ。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「来たか異世界の魔王よ」 

 

 MAOは気がつくと紫色の髪の少女の目の前にいた。

 高級そうな服に身を包み、部下と思しき者達に傅かれているその姿はまるで貴族令嬢のようだなとMAOは思った。

 

「我が名は魔王の僚属である四大侯爵の1人、ドラキュリアス・ロスト・ワレイ・イオネスコ・アドリアン・ウルジカの娘、ドラキュリアス・ロスト・イオアナ・イオネスコ・アドリアン・ウルジカ」

 

 状況から考えて彼女が召喚主だろうかと思いつつ彼女の話を聞いているとふと女神アクアの話を思い出す。

 

『この間なんて覆面レスラーが本来呼ばれていない雑種犬と一緒に召喚されるなんて事があったらしい……』

 

「…………」

 

 MAOは無言でイオアナと名乗った少女に歩み寄る。

 

(異世界召喚なんて荒唐無稽な事をするような奴がそう何人もいるとは思えない。つまりケモナーマスクを召喚したのもこいつという事だ)

 

 さらにイオアナの背後を取り、腕を回して彼女の体を抱えた。

 

「闇の暗黒神に魅入られし異世界の魔王よ、共に勇者を倒すべくたた……か……おい、何をしている?」

 

 ーーつまり俺と奴の決着を邪魔した元凶は……

 

「お前かあああああああ!!」

 

「きゃああああああああ!?」

 

 そしてMAOは渾身のジャーマンスープレックスをイオアナへとぶちかました。

 

「「「イオアナ様ああああ!?」」」

 

 哀れイオアナのスカートは捲り上がり、下半身丸出しという乙女にあるまじき姿を晒してしまった。

 

「イオアナ様の高貴な尻が丸出しに!?」

 

「誰か早く隠して差し上げろ!?」




正直に言います。イオアナにジャーマンスープレックスをぶちかまさせたくてこの作品を書きました!
アニメでやってくれると思ってたのに……


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