世界を渡る正義の味方と人類最後のマスターの旅(仮題)   作:くれしぇんど

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全然内容が進んでないんですが、このままあと数話ほど序章=日常編をはさんで本編に入ります。あらすじ詐欺で申し訳ないですがあと少しお付き合いください。


序章2 第二のマスターの誕生

「おはようございます。先輩。相変わらずねぼすけさんですね」

 

そんな声で目が覚める。まだ重い瞼を上げると可愛い後輩が私をのぞき込んでいた。

 

「おはよう。マシュ」

 

私も挨拶をして軽く体を伸ばす。地面で寝てしまったからか、体が少し痛い。士郎さんと話していたらいつの間にか寝落ちしてしまったみたいだ。なぜか私の体には、特異点にあるはずのない薄めの毛布が掛けられていた。

不思議に思い士郎さんを探して辺りに目を走らせても彼の姿が見えない。

 

 

「あれ、士郎さんは?」

 

「今、近くの小川で水を汲んできてもらっています。さきほど衛宮さんとお話ししたのですが、すごく親切で素敵な方ですね」

 

「やっぱマシュもそう思うよね!でも一体何者なんだろう」

 

「実は、衛宮さんはカルデアの解析でも魔力反応すらほとんど検知されなくて、ドクターによると先輩と私の目を通して辛うじて観測できるようなちょっと変な存在らしいです」

 

ますます疑問が尽きない。1950年に完成したらしいカルデアの発明の一つ。事象記録電脳魔ラプラスの観測をはねのけてきたモノは、今迄の旅でもそれこそ魔術王や聖杯を持つ魔神柱など規格外の存在しかいなかった。ただの魔術師であるはずの士郎さんがそんな存在であるわけがない。彼がもしも魔神柱だったとしても、魔獣に囲まれた私を助けたのは道理に合わない。そのまま見殺しにしていればグランドオーダーは終了し、人理の焼却は確実なものとなっていただろう。

 

「そもそもあんな何もないところで大怪我をしてたおれている時点でなんだかおかしいよね」

 

士郎さんがそこらの魔獣にはやられそうもないほど強いのは知っているし、あんな普通なら即死するような怪我を負うようなことがそうそうあるとも思えない。異常な傷の回復力といい、一夜明けて考えてみると、士郎さんがどれほどおかしな存在であるかがわかってきた。マシュやドクターに話してみても、二人とも彼については全然わからないと言う。そうこうしているうちに士郎さんが水くみから戻ってきたみたいで、落ちた木の枝を踏む足音が聞こえてきた。とにかく彼が悪い人ではないのはわかるから、今は保留ということで一応の結論を出すことになった。士郎さんに目をやると水の入ったバケツと共に矢の刺さった野兎を二匹連れていた。士郎さんは私に気づくと軽く手を振る。

 

「お、立香。起きてたのか」

 

「おはようございます。それは…野兎ですか?」

 

「ああ。水を汲んでたらちょうどいいとこに出てきたからな。矢をつがえてこう…びゅっとな」

 

そう言って矢を射る振りをする。ウサギを地面におろした士郎さんはどこからか包丁を取り出すと、慣れた手つきでウサギの毛皮を剥ぎ、下ろし始めた。いつの間にか昨日の焚火には火がつけてあって、水を温めている。あっという間にウサギを下し終わった彼は、持っていたバッグの中から香草らしい何かを取り出してウサギと一緒に揉み始めた。あまりの手際の良さに、思わずマシュと顔を見合わせる。

 

「先輩…これは…」

 

「凄い…タマモキャットやブーティカさんにも劣らない手際の良さ。いや、ひょっとすると二人以上かも…」

 

「ぜひともカルデアキッチンに欲しい所ですね」

 

実はここ最近英霊が増えてキッチンの料理の供給が追い付いていない状況だったのだ。娯楽の少ないカルデアにおいて食事はスタッフと英霊双方にとってのありがたい娯楽である。段々とかぐわしいスパイスの香りが鼻腔をくすぐりはじめ、昨日から何も入っていなかったお腹が鳴った。それを聞いた士郎さんは少し笑って

 

「もうすぐできるから、お腹がすいてるならこれでも食っててくれ」

 

と言って私とマシュに一個づつリンゴのような果実を投げた。お礼を言ってそれにかじりつくと、シャリっと子気味良い音を立てながら果汁が口内を潤す。果実を食べ終わったころにはウサギは焼き上がっていて、先ほどよりもさらに香ばしい香りに食欲が一段とましてくる。思わず垂れてきた涎を拭い、苦笑した衛宮さんが出来たぞといい終わるや否や、私とマシュはウサギにかぶりついていた。パリパリとした皮と対照的に、肉は鳥のもも肉よりも柔らかく、噛むたびに迸る肉汁と共に先ほどから漂ってきていたスパイスの香りがこれでもかというほど私の口内を蹂躙する。控えめに言って衝撃的な美味しさだ。隣りを見るとマシュも幸せそうな顔で肉をほおばっている。

 

「あぁ…先輩。特異点でこんな料理が食べられるなんて…私、生きててよかったです」

 

「ふぉんとおいしひゅぎる…ひぃあわふぇぇ」

 

「おいおい、食べながらしゃべると行儀悪いって習っただろ。でもそんなに美味しそうに食べてくれるなんて料理人冥利に尽きるよ」

 

士郎さんはゆっくりと肉を食べながら嬉しそうに顔をほころばせた。

 

結局私達はものの数分で食べ終わってしまった。その後に簡単にドクターとダヴィンチちゃんから現状についての情報を聞いた。士郎さんとマシュは私が寝ている間にすでに聞いていたらしくて、もう食事の片づけを始めている。その情報によると、この特異点は聖杯はおろか魔神柱すらかかわっていない極小の特異点で、ドクター曰くどうして特異点化したかも分からないほどの規模らしい。また、私がここまで飛ばされた理由もわからないそうだ。特異点の中心はここからそう離れていない洞穴で、そこでは多少大型の魔獣の生体反応が検知されているという。

 

数十分後、出立の準備を終えた私たちは色々なことを話しながら目的の洞穴に向けてゆっくりと歩きだした。今迄解決した特異点での出会いと別れ。命を懸けた戦い。召喚し、絆を結んだ英霊たちのこと。そして私たちのカルデアの日常について。私もマシュもそこまで話が上手い方でもないのだが、士郎さんは時々合いの手をはさみながら真剣に聞いてくれたので、ついつい話に熱が入ってしまった。だが、最初の特異点、冬木の話をした時に、一度だけ士郎さんの顔が苦しそうにゆがんだことがあった。もしかしたら彼自身があの冬木と何か関係があるのかもしれないが、私達がいろいろと質問しても、士郎さんは自身のことについてはほとんどはぐらかし、聞くことはできなかった。また、彼がこの特異点にいた状況を聞いてみても、意識を失って気が付けば倒れていたなんて、なんだか疑わしいことを話しただけだった。それでも士郎さんとの話は楽しいもので、そうこうしているうちに、あっという間に目的地の洞穴に到着していた。途中時々魔獣の小さな群れに遭遇するだけで、ほとんど戦闘らしい戦闘もなく、びっくりするほど順調についてしまっていた。そのまま洞穴の中に入ってみても、ドクターが言っていたように多少大型の魔獣がいるだけで、マシュと士郎さんがあっさり制圧してしまう。

 

「なんだかすごくあっけなく終わったね」

 

「そうですね。今までの特異点でもこんなにあっさり終わったのはないかもしれません」

 

「これで特異点とやらの原因は解消できたんだろ?これからどうなるんだ?」

 

士郎さんがそういうのを聞いて、私はあることを完全に失念していたのに気づく。そう、士郎さんは特異点が崩壊した後どうなるのかということだ。この特異点は人が住んでいる様子も見受けられないし、おそらくはこのまま只の何もない平原に戻る。そうなると他の世界から流れ着いたらしい士郎さんは一体どうなるのか。ひょっとしたらこのまま、特異点とともに消えてしまうのではないか。そんな嫌な想像が私の頭をよぎった。

 

「私たちはこのままカルデアにレイシフトして戻るんですけど…」

 

「そういえば…衛宮さんはどうなるのでしょうか?」

 

私と同じことに思い至ったらしいマシュが心配そうに士郎さんの顔を見る。士郎さんは表情を特に変えず沈黙を貫いている。するとドクターから通信が入った。

 

「確かに、彼が並行世界の漂流者で、偶々この特異点に迷い込んでしまったのならどうなるかはわからない。最悪、すでに崩壊が始まっているこの特異点ともに消滅してしまう可能性もある…」

 

最悪なことに私の想像通りになる可能性が浮上してきた。

 

「嘘っ…なにか、何とかする方法はないの!?」

 

「例えば、私たちのようにカルデアにレイシフトしてもらうっていうのはできないのでしょうか」

 

「残念ながらそれができる可能性は極めて低い。彼はカルデアの人間ではないし、藤丸君たちのように量子化されてレイシフトしたわけでもない、生身の存在だ。英霊たちのように召喚することもでいないんだ。そもそも、レイシフトを行うには適性がいる」

 

「で、でもここに飛んできた私や冬木での所長のように生身で跳んだ例はあるでしょ!」

 

私は必死に叫ぶ。だが、立体映像のドクターは悲しそうに首を振った。

 

「君も所長も共にカルデアスを通してこちらから飛んでいる。それも極めて高いレイシフト適性を有していて、だ。特異点からこちらに引き寄せるような逆のレイシフトも、所長のように存在が極めて曖昧な場合は可能かもしれないけど…わ、何をするんだいレオナルド!」

 

いきなりドクターの立体映像が乱れ、ドクターを押しのけてダヴィンチちゃんが映し出された。心なしかすごく興奮しているように見える。

 

「いやー、すごいね!世界最高の天才である私もこれには驚いたよ。なんとそこの彼、調べてみるとレイシフト適性が異常な数値を持ってるね。しかも、ラプラスの観測上は存在と非存在が重ね合わさってる、いわば虚数存在というべきものみたいだ。つまり、なんと都合のいいことにに逆レイシフトが成功しうる条件がぴったりあってるってことさ!!」

 

ますます驚かされた。嬉しい事なのだが、こんな都合よく行くものなのかと訝しむ。それでも嬉しくてつい口角が上がってしまう。隣りを見るとマシュも同じ気持ちらしい。二人で士郎さんの顔を見る。しかし、その表情はまだ変わっていなかった。暫く沈黙の後、彼が口を開いた。

 

「俺なんかが行っても大丈夫なのか?そっちは人理を救う戦いをしているんだろう。自分で言うのもあれだが、こんな得体の知れない男を招くのは危ないだろ」

 

それを聞くや否や端末からダヴィンチちゃんの声が聞こえてきた。

 

「その点に関しては問題ないね。ここには強力な英霊がたくさんいるし、君が何者であっても彼ら全員を相手にして勝てることはありえないだろう?それに、大丈夫だとは思うが来るなら最初は監視をつけさせてもらうしね。それよりもマスターとしての戦闘経験や、モニター越しでも伝わってくるその料理の腕といい、ぜひともカルデアに来てほしい人材だよ」

 

私やマシュもそれに同意して言う。

 

「もし士郎さんが一緒に戦ってくれたらとても心強いし、頼りになる。でも、人理修復はきつい戦いだし、人類全員を救うっていうプレッシャーもかかる。だから、戦わずにただ来てくれるだけでもいいから!」

 

「はい。私としても是非カルデアであの料理をまたいただきたいものです」

 

それを聞いていた士郎さんは暫く黙っていたが、ゆっくり口を開いて

 

「なら、未熟者だがよろしく頼む。そっちがいいならサポートもマスターとしての戦闘も勿論行うよ。個人的に、人を救うための戦いってのはなんだが惹かれるしな」

 

と言ってにっこりと笑った。

 

 

 

 

―—―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

それ以来、衛宮さんは第二のマスターとして私達のカルデアの一員となった。

そして今ではマスターとしても、料理人としても絶対に欠かせないメンバーとなったいる。ついでにだらけがちな私の生活態度を正してくれる、しっかり者のお兄ちゃんみたいな存在だ。ちびっこサーヴァント達もみんななついているし、士郎さんからはなんだか甘えてしまうフェロモンみたいななんかが出ているのだろう。でも顔はまだ少し幼さを残しているし、時々天然なのかポカをやらかすので、なんだか親しみがわく。それもあってかマシュも今では衛宮先輩と呼んでいるし、私も自然とため口になってしまった。

 

お兄ちゃんといえば、いつだったか彼と魔法少女のイリヤとクロとあとアイリさんとの間でちょっといろいろあったんだっけ。クロとアイリさんに迫られてたじたじな士郎さんはとっても面白かった。他にも女性サーヴァント達に花嫁修業をつけたり、ケルト集団に強制的に修行つけさせられたり、BBちゃんに軽い調子で絡まれてたらものすごく戸惑ってたり、パッションリップとメルトリリスを見て死ぬほど驚いていたり――――――

 

 

色々と思い出していたらコンコンと二度、マイルームのドアがノックされた。

時計を見るといつの間にか7時を回っている。ああ、そろそろ晩御飯の時間だ。

 

「立香ー、ご飯だぞ」

 

士郎さんの呼ぶ声が聞こえる。私は元気に返事をしてベットから飛び起きる。パブロフの犬もさながらにもうよだれが出てきてしまう。一体今日のメニューはなんだろうか。私はスキップしながらマイルームを出て、食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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