通りすがりの警察官だ、覚えておけ 作:だぶる
そもそも【メンタルクラッシャー】だとか【破壊者】だとかアイタタタな渾名で呼ばれる一因になったのは、愉快な同期のせいだ。
7年前、忘れもしない11月7日。
肌寒い季節になり、鍋でも食べて体を温めようなんて呑気なことを思考していたおれの肝を盛大に冷やかしやがった。
防護服まじ重いし熱いし着んのだりぃ今日この頃。なんたってダブルエースだし、余裕で解体できるっしょ!間違いナイトプールYeah
噂で聞いた当時の
当然、それは俺の耳に入り、駆けだしの新人監察官だった俺は問答無用で呼び出した。
「お前に服務規程違反の疑いがある」
「......どっから聞いたのマモちゃん」
「それは言えない。......で、どうなんだ?」
「ん~......」
「......まぁ、疑わしきは罰せずって言うからな。そのうち言い逃れできないブツを突きつけてやるから安心しろ」
「え~......なにそれこえーよ。ま!そんな日、来ないと思うけど」
一瞬、ピリッと空気が張りつめたが、久々に会った顔馴染みの同期だから穏便に忠告と話し合いをした。
そして、11月7日がやって来る。当日、俺は上司にきっかり説明し許可を貰って、爆弾解体現場へ同行した。
道中、爆発物処理班の皆さんに遠巻きにされ、ちょっと居心地がわるかった。じろじろと「なんで監察のヤツがここに?」「どうも萩原のことで嗅ぎ付けたらしい」「......あぁ」とこそこそ目でアイコンタクトしている時点でお察しである。
そして現場で
「げっ!まじで来たのマモちゃん」
ぎょっとした顔でチャラ男こと萩原がいた。
「どういう風の吹き回しだ?萩原。今日はちゃんと防護服着てんのか」
そこに同期でダブルエースの片割れの松田がやって来た。
「......
ジロッと二人を見やると
「シッ!じんぺーちゃん!俺だってたまにはちゃんとするってーの!」
萩原はムッとした口調で言い返している。
「
萩原はしまった!と冷や汗を流したような顔をしたが、俺の瞳は笑ってないほど冷酷だったようで、「あのときのハギはまな板の上の鯉みてーだった」とは松田の談である。
***
「萩原君と言ったかね......真守君の同期だと聞いたが」
「たしかに彼は同期ですが......いえ、あえて言いましょう。
彼の正体はまごうことなき 露 出 狂 だったのです」
ざわつきが起こった。
「不適切な表現なら言い換えます。
脱 ぎ 癖 が酷い方だった」
萩原の眉がピクッと動く。
「失礼しました、言い換えます。
「一部だけ英語変換すんのヤメロ!」
とうとう我慢できなくなったらしい萩原が声を上げた。
「彼は普段から浮わついてチャラチャラしている軟派男ですが......」
「マモちゃんフォローする気ある?あるの?めっちゃ貶してくるじゃん!!」
眉を八の字に下げた萩原が涙目になっているが、お前はもう少し反省しろ。
「......ですが、腕はダブルエースの片割れと呼ばれるほど、確かなのは事実です。
優秀な爆発物処理班の一員ですが、そもそも彼の脱衣癖という悪癖のきっかけは、この防護服にあります」
防護服を用意し、説明する。
「彼は日頃からこの防護服に対して愚痴を溢していたと証言があります。実際に検証したところ、彼の言い分は概ね理解できる。
この対爆スーツは爆発の熱風から身を守るため、寸分の隙間もない構造であり、各処理ポケット金属製の防護板収納。さらに大がかりな装備のため、一人での着脱は無理。重量は40キロもあり、防護服の中は冬でもサウナ状態。というわけで、5分以上の着用はかなりキツイものです。
萩原が違反をしていたのは事実で、今回の事件で彼は負傷しました。療養と謹慎を兼ねて、それと新たな対爆スーツの改良と完成のために彼に
***
「何だよ!あれ!!俺を変態呼ばわりして!!」
恨めし気に萩原に睨まれる。
「調子に乗って天狗になっていた浮かれポンチはさぞ気分がよかっただろうなァ?それとも成層圏まで狙い撃たれでもしないと目が覚めないか?」
こんな風にギャンギャン騒いでいるが、萩原は死にかけたのだからこれくらいの暴言は吐きたくもなる。
警察にとって、萩原のしでかしたこの不始末の一件は対爆スーツの見直しという点で良い発火材になった。
表向きは
上手く阿笠博士に話もつけられたし、どうせなら松田も巻き込んで、警察監修の発明グッズを量産してもらおうか。俺の【いのちだいじに】計画は順調でなによりだ。
「あぁ......怪我、早く治せよ。心配してるんだからサ。」
イイコちゃん100パーセントの爽やかな笑みを浮かべてポンと、彼の肩を軽く叩いて去っていった。背後から「ム カ ツ ク!!」というハギの恨み節と事の顛末を聞き付けた松田の爆笑が届いた。
なお、これ以来 萩原は【ダブルエースの脱衣癖の方】とか【爆処の変態(笑)】と呼ばれることになる。