ゴブリンスレイヤーRTA 小鬼殺し√   作:ラスト・ダンサー

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クソ邪神に弄ばれた青年のお話。

追記:リザルトを編集。ゴブスレさんはみんなのヒロインだから……。


我が神は去りて:青年は再び走り出した

 小鬼の大群との戦場となった牧場。むせかえるような血の臭いがまだ各所に残る中、冒険者が小鬼の死体を一ヶ所に集めており、協力した商会などの民間人がそれをどうやって廃棄するのか算段を立てている様子が見られた。所々にはまだ生々しい鮮血の飛び散った後が残っており、昨晩の戦いの壮絶さを物語っている。

 

 小鬼王(ゴブリンロード)は打ち倒され、複数体出現した小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)と小鬼の軍勢は殺し尽くされた。死傷者も運の悪い数人だけ。迎撃は成功し、街は守られた。勝利に誰もが安堵し戦後処理に追われる中、必死に走っている一人の白磁等級冒険者の姿があった。新米戦士である。彼は剣も棍棒も盾も一党の見習聖女に投げ渡すようにして預け、ただひたすらに走っていた。その背中には帯で固定されたままぐったりと力無く揺れるバケツ頭、疾走戦士が担がれていた。

 

「しっかりしろよ!クソッ!」

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 時は僅かに遡る。逃げるように走り去った疾走戦士の姿に嫌な予感を感じ、後を追った新米戦士達が見たのは、小さな山のような体躯を誇る小鬼英雄だった。大剣を担ぎ、冒険者から奪い取った鎧を着こんだその姿は凶悪の一言に尽きる。そして、それと対峙するのはやはり疾走戦士だ。

 

「おいおいおい……!あんなのどうやって倒すんだ!?」

 

「……あれに≪火矢(ファイアボルト)≫効くかしら」

 

 一瞬臆した新米戦士達だったが、良く見れば小鬼英雄は大きな傷を負っている様子だった。銀等級冒険者に匹敵するとされる小鬼英雄を相手に善戦している様子に一同は驚いたが、疾走戦士は別の小鬼に包囲されており、数的不利に陥っているのが見えた。果敢に攻め続ける疾走戦士であったが、攻撃後の隙を突かれて背後から組み付かれるのを見た瞬間、新米戦士は剣を引き抜いていた。

 

「あのままじゃマズイ!俺は突っ込んで奥のをやるから手前のを頼む!」

 

 察しのいい女魔術師が詠唱を始めたのを確認した新米戦士は、剣と棍棒の変則二刀流で構えると走り出した。組み付いたゴブリンは短剣を振り上げ、皮鎧の隙間へとそれを突き込んだのが見えた。背後では詠唱が完了し、≪火矢≫が手前にいたゴブリンを焼き殺した。疾走戦士の背後で勝ち誇るゴブリンに新米戦士は棍棒を叩きつけて殴り倒すと、深々と逆手に持ち変えた剣を突き立てた。ゴブリンはしばらく弱々しくもがいていたが、やがて動かなくなった。それを確認した新米戦士はゴブリンを足蹴にして剣を引き抜こうとするが、中々抜けない。

 

 あれ、なんか前にもこんなパターンなかったっけ?

 

 そして闖入してきた間抜けな冒険者を叩き斬ろうと大剣を振り上げながら突っ込んでくる小鬼英雄。まずい、安直に紐で手首にガッチリ固定しすぎて剣が咄嗟に外せない。まさか剣を手放せなくて困る日が来るなどとは、思ってもみなかった。避けられない、これは死んだか?

 

「良く来てくれた……最高のタイミングで貸しを返しに来たな。感謝するぞ、貴公……」

 

 気が付けば新米戦士は疾走戦士に庇われており、疾走戦士の盾は事も無げに小鬼英雄の一撃を弾き返していた。そして弓のように引き絞った腕から戦槍の一撃が放たれ、小鬼英雄の首元へと深々と突き刺さり、赤い噴水が吹き出す。そのまま力の抜けた小鬼英雄はぐらりと大きくよろめくと地響きを立てながら大地に伏した。その目にはもうなにも映っていない。酷く澱んだ黄色の眼球は何もない中空を向いていた。ようやく剣を引き抜くことに成功した新米戦士は小鬼英雄が倒され、腰を抜かした小鬼を容赦なく叩き殺して周囲の安全を確保する。増援の気配はなし。どうなることかと思ったが、無事に終わって何よりだ。疾走戦士の方を見れば、彼は盾を片手に仁王立ちしていた。突き込んだ戦槍は小鬼英雄に刺さったままになっている。

 

「やったな!おい!小鬼英雄を仕留めるとか……」

 

 やっぱりお前はスゴいよ、と続けようとした言葉は出なかった。疾走戦士は静かに膝をつくとそのまま前のめりに倒れた。血塗れで判り難いが、鎧の隙間に大きな刺し傷があった。先ほど組み付かれた際にやられたのだろう。

 

「と、とりあえず治癒の水薬(ヒールポーション)を飲ませた方がいいか……?」

 

「先に解毒薬(アンチドーテ)よ!ゴブリンはある程度の集団になると武器に猛毒を塗るって言われたでしょ!」

 

 あたふたしながら疾走戦士の雑嚢を漁り、治癒の水薬を取り出そうとしていた新米戦士を見習聖女は脇をどついて退かせると、迷いなく解毒薬を取り出した。それを疾走戦士に飲ませようとして数秒後、彼女は固まった。

 

「どうしたの?早くしないと彼が……!」

 

「どうやって飲ませよう……」

 

 そこへ、ようやく痛みから復帰した新米戦士が横から顔を出して言った。

 

「はぁ?そんなの普通に飲ませれば」

 

「バケツ……じゃない兜が邪魔で飲ませられないのよ」

 

「外せばいいだろ!?」

 

「外れないのよ!?」

 

 言われて試してみれば、疾走戦士の被ったバケツ……グレートヘルムはどれだけ引いてもびくともしない。なんだこれは呪いの装備か!?疾走戦士が邪神に魅入られているという噂は本当だったのか!?新米戦士と見習聖女がああでもないこうでもないと言い合うのを横目に、女魔術師はヤケクソ気味に以前見た彼の食事風景を参考に、顎下の隙間から解毒薬を捩じ込んで無理矢理流し込むことにした。ガボッゴボゴボッ、という窒息しかけたような音がしたが、飲み込んだようなのでまぁいいだろう。ついでに治癒の水薬も突っ込んでおく。

 

「おい!?大丈夫か!?大丈夫なのかそれ!?」

 

「応急処置は済ませたわ。後は彼次第ね」

 

 見れば、条件反射で痙攣していたことで生きていることが確認できていた疾走戦士は、いつのまにかピクリとも動かなくなっていた。

 

「ちょっとちゃんとしたところで処置してもらってくる!!装備よろしく!!」

 

「ちょっ、待っ」

 

 乱雑に装備を外して地面に放り出し、帯で疾走戦士を背負って固定すると新米戦士は走り出した。トドメを刺したのが自分達ではないと証明するため、もとい疾走戦士を救うために。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

 小鬼王撃滅を記念してギルドの酒場で祝勝会が開かれていた。各々が酒を飲み、料理を食らい、語り合う賑やかな雰囲気の会場の片隅でどんよりとした辛気臭い様子の新米戦士の一党が居た。

 

「いや……ホントなんか、申し訳ないです」

 

「なーに、ちっとばかし短剣で刺されて毒をくらっただけじゃろ。しかも倒れたのも疲労からって話だって?お前さんらのせいではなかろうて」

 

「応急処置をして連れて来られたことを感謝こそすれど、恨むような御仁ではないと拙僧は愚考いたしまする」

 

 鉱人道師と蜥蜴僧侶が暗い表情で落ち込む新米戦士の一党をむしろ良くやったと慰めるが件の疾走戦士が目を覚まさないので、責任を感じているようだった。ちなみに茶々を入れるであろう妖精弓手は宴会会場のど真ん中で騒いでいるのでこちらにはいなかった。その傍らには疲れから眠りこける女神官に寄りかかられるゴブリンスレイヤーの姿もある。

 

「ほれ、かみきり丸もなんか言ってやってくれんか」

 

 話を振られたゴブリンスレイヤーはふむ、と少し考え込んでから言葉を選ぶように語りだした。

 

「誰にでも、失敗はある。俺も、駆け出しの頃は失敗ばかりだった」

 

「ほう」

 

 駆け出しの頃を語るなどとは珍しいと鉱人道師が興味津々といった様子で耳を傾けた。

 

「失敗したなら、それを繰り返すな。そこから教訓を得られればいい」

 

「……!はい、ありがとう……ございます」

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

『はい、というわけでお疲れ!こっちの都合で振り回しても文句一つ言わずに従ってくれた君の信仰心に感謝です!』

 

 我が神の声が聞こえる。男のような女のような、抑揚のあまりない平坦な声が。

 

『これでRTA、もとい試練は完了しました。もうあれこれと君に指示を出すことはしないと思う。君は自由だ。あとは好きに生きていい』

 

 もう、次の試練はないのか?自由とは何をすればいいんだ?

 

『なんでもさ。君は冒険者を辞めてもいいし、続けてもいい。実家に頭を下げて商人に戻ったっていい。なんなら混沌の勢力に与しても構わない。君を縛るものなんか本来は存在しないんだ。ただ、縛られているからこそ得られているモノを失うのがこわいだけで。君の人生なんだ。君自身が決めなよ。人生とは本来そういうものなんだ』

 

 縛るものなんか、本来は存在しない……最後は自分で決めなければならないのか…………それは恐ろしいことだ。自分一人では、何をしたらいいかわからなくなってしまう。

 

『君が望んでいた人生を選ぶ権利を持つって、自由ってそういうことさ。何事にも権利と義務と責任が伴うんだよ。けど、君はもう選ぶ力を持ってる。自信も持ちなよ』

 

 選ぶ……力?私に?言われたことに従うしか能のない私に?

 

『指示されたとはいえ、君は目まぐるしい速度で成長し続けた。それは元々、君に備わっていた力があったからだ。使い方はもうわかるだろう?』

 

 私は…………。

 

『さて、時間だ。君の人生の行く末に幸あらんことを』

 

 待ってくれ、まだ…………。

 

『大丈夫、君はもう一人で走れるよ』

 

 目が、覚めた。ギルドの二階にある宿屋の自室だ。無様を晒した自分を、きっと新米戦士が運んでくれたに違いない。重かったろうに。後で礼を言わなくては。体を起こし、調子を確かめる。毒の短剣を捩じ込まれたにしては随分と快調だ。自分のことながら、呆れた頑丈さだ。装備も回収され、部屋に置かれている。

 

 つい癖で耳を澄ますが、もう我が神の声は聞こえない。下から響く宴会の喧騒がくぐもって聞こえるだけだ。だが、不思議と不安はなかった。私は我が神の試練を乗り越えたのだ。それに比べればこれから待ち受ける苦難など取るに足らないものばかりだろう。

 

「私は、もう一人で走れるさ」

 

 おもむろに、愛用のグレートヘルムを取り外す。バケツだなんだと言われるが結構気に入っているのだ。グレートヘルムを脇に抱えたまま、自室を出る。今日が、私が本当の意味で人生を歩みだした日だ。

 

 

 △▼△▼△▼

 

 

「ん?誰だお前……?ってそのバケツ兜は!?」

 

「みんな見てみろ!!ゴブリンスレイヤーに続いてバケツ頭も兜を取ったぞ!!」

 

「あれ呪いの装備じゃなかったのか……」

 

「外せるものなのね……」

 

「クッソ、ワンチャン女に賭けてたんだが外れた!!」

 

「お前そう言ってゴブリンスレイヤーも同じように女に賭けてたよな」

 

「没個性だけど整ってるわね……ちょっと童顔なのがポイント高い」

 

「若いツバメ好きの奴とか怖……衛兵さんこっちです」

 

「というか本当に15だったのか。てっきり三十路手前くらいかと」

 

 まぁ、こういうのも悪くはない。




リザルト

等級:青玉等級
冒険者レベル:5

達成実績

【一端の戦士】
戦士の職業レベル5に到達した

【痩せ我慢】
忍耐技能を習熟まで習得した

【盾使い】
盾技能を習熟まで習得した

【タフガイ】
頑強技能を習熟まで習得した

【盾の名手】
敵の攻撃を盾で受け無傷を10回成功させた

【よくあることだ】
仲間に被害を出しながらもゴブリンの巣を攻略した

【下水の掃除屋】
下水路に出現する怪物を累計50体討伐した

【暴食に打ち勝ちし者】
暴食鼠を討伐した

【話が長い】
オーガの前口上を遮った

【人喰鬼の将軍】
特殊イベントのオーガ戦で生き残った

【お前の帰る巣はない】
小鬼王戦で被害を最小限に留め、大勝利を収めた

【だんだん楽しくなってくるわけだ】
ゴブリンを累計100体以上討伐した

【それで英雄とは片腹痛い】
小鬼英雄を討伐した

【小鬼殺し3号】
3人目の小鬼殺しに相応しい成果を上げた

【ゴブリンか?】
小鬼殺しルートをクリアした
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