主人公君の名前がわかります。
水の中から現れた主人公と灯里達との出会いが始まります。
水だ……青年は水の中に居た。
「………」
先程の光に、突然水の中から現われた青年。
舟(ゴンドラ)に乗っている少女達はビックリした顔で青年を見つめている。
「……あのー、すいません……よかったらゴンドラに乗せてくれませんか?」
何時までも、水の中に居るわけにもいかないので、青年は少女達に声をかけた。
「……はっはひ!大丈夫ですか!?」
青年の問い掛けに少女達は我に返る。
「ちょ!灯里!こんな怪しい奴乗っけるの!?」
「はい、でっかい怪しいです」
ゴンドラを青年に近付けようとした灯里を藍華とアリスが止める。
「でも、このまま水の中に居たら大変だよ」
季節は冬も深まっているそんな時季に水の中に人が居るのだ。
「それに、アリア社長の知り合いみたいだよ?あの人」
「へっ……?」
「ぷいにゅー!」
アリア社長を見ると頻りに青年に声をかけているようだ。
「ぷぃぷいにゅー!!」
アリア社長は灯里を急かすようにパタパタと手を振る。
「はひ!今助けますね!!」
灯里はゴンドラを漕ぎ始める。
「はぁー、助かったよ。ありがとう」
ゴンドラに引き上げられた青年は苦笑いをしながら少女達にお礼を言う。
「いえ。でも早く服を乾かさないと大変ですよ」
「……ああ、そうだね。まさか、こんなに寒い時季だとは……雪が積もってなくて良かったよ」
灯里に心配されて青年は困ったように呟いた。
「……先輩方、この人でっかい変です」
アリスは青年を見て言う。
青年の外見は、銀色がかった水色の髪に青い瞳。
背は高いが顔つきは中性的……いやどちらかと言うと女顔だろう……。
青年の外見は問題はないが、アリスが一番に気にしているのは青年の顔立ちではなく、服装だった。
この冬になり始め風も冷たい日に、長袖でのTシャツにジーンズだけでコートなどの上着を着ていない……。
明らかに、青年は冬の服装ではないのだ。
「でもー……」
灯里が何か言い掛けたその時。
「ぷいにゅー!」
「アリア!!久しぶり!」
アリア社長はずぶ濡れにも関わらず青年に嬉しそうに抱きついた。
「あっ……あの、アリア社長とお知り合いなんですか?」
灯里はおずおずと、青年に聞く。
「ああ!アリアは友達だよ。ねっ?」
「ぷいにゅー」
青年の言葉にアリア社長は同意するように鳴く。
「キミ達、水先案内人(ウンディーネ)だよね?ARIAカンパニー、姫屋、オレンジぷらねっと……だね?」
「はっはい!私はARIAカンパニーの水無 灯里です!こっちが姫屋の藍華ちゃんとオレンジぷらねっとのアリスちゃんです!」
青年の質問に灯里は自己紹介をしながら答える。
「こりゃ!灯里!!何勝手に答えてんのよ!」
藍華が怒る。
「ええー!だって〜」
「今、でっかい怪しいって言ったばっかりですけど…」
アリスは呆れた顔をしている。
「あはは!面白いねキミ達。僕は秋原 碧(あきはら あおい)宜しくね?」
三人のやり取りが本当に可笑しかったのだろう、青年―……碧は笑いながら自己紹介をする。
「……で、アンタがアリア社長の友達ってのは分かったけど、何で水の中から出て来てるのよ?」
「あっ藍華ちゃん!」
藍華のタメ口質問に灯里が慌てる。
「うーん……ちょっと説明しにくいかな……?」
流石にこの状況は説明しても信じてもらえるか……碧は考える。
「……さっきのでっかい光と関係があるんですか?」
アリスが碧に聞く。
「光……?ああ、まぁね」
「にゅっにゅつ」
「……アリシア?ああ、そうだね。」
碧はアリア社長の声にはっとした。
「この人……アリア社長とお話してます?」
「ほへー?アリア社長の言葉分かるのかなぁ」
「……まさかぁ」
三人がヒソヒソと話をしていると。
「あの、キミ達さアリシア・フローレンス、晃・E・フェラーリ、アテナ・グローリィって子達知ってるかな?キミ達と同じ会社なんだけど」
「…………」
碧の質問に灯里達はポカンとした顔をする。
「……どうしたの?」
碧は三人の反応を見て不思議そうにしている。
「あっいえ、ちょっとビックリしちゃいました……アリシアさん達は私達の先輩ですよ」
はっとしたように灯里は答える。
「アンタ。何、当たり前のこと聞いてくんのよ……姫屋の晃さんを知らないわけ無いでしょ!」
「アテナ先輩の事を会社で知らない人は居ませんよ」
「えっと……じゃあ先輩って事はアリシア達って……一人前(プリマ)なんだよね?」
「……………」
碧の質問に灯里達は固まった。
「…??」
碧はまた不思議そうな顔をする。
「アンタ、アリシアさん達……いや、水先案内人(ウンディーネ)のこと知らなすぎでしょ!?」
「あっ藍華ちゃん…!」
「藍華先輩落ち着いてください……この人、私達の制服を見て会社名は知ってるんです。それにアリシアさん達の事も聞いてるんです知らない訳ではないと思いますよ?」
アリスに言われて、藍華はムッとした顔をして碧に話しかけた。
「……質問していい?」
藍華が口を開く。
「うん?」
碧が頷く。
「水先案内人(ウンディーネ)についてどの位知ってる?」
「……水先案内人(ウンディーネ)はネオ・ヴェネツィアの観光案内をする唯一、女性がなれるゴンドラ漕ぎの職業で、ネオ・ヴェネツィアは水路が多いからその水路を使い観光案内をするから、水先案内人って言うんだよね?」
「じゃあ、私達のランクについても知ってますか?」
アリスが口を開く。
「うん。水先案内人(ウンディーネ)には三つのランクがあって見習いの両手袋(ペア)、半人前の方手袋(シングル)、一人前の手袋なし(プリマ)ってランクがあるよね。お客をゴンドラに乗せることが出来るのは手袋なし(プリマ)で指導員が居れば方手袋(シングル)でもお客を乗せることができて、両手袋(ペア)はお客をゴンドラに乗せることが出来ないんだよね?」
「じゃあ……水の3大妖精をご存じですか?」
灯里が口を開く。
「……?知らないな」
碧は首を傾げる。
「なぬっ!?こんなに水先案内人(ウンディーネ)の知識があって水の3大妖精を知らない!?」
藍華が信じられないっと声を上げる。
「水の3大妖精は一人前(プリマ)水先案内人(ウンディーネ)の中でも特に技量がある三人の一人前(プリマ)の事なんです。卓越した能力と実績から水の3大妖精として讃えられているんですよ」
灯里が説明をする。
「……その三人の一人前(プリマ)って」
「とぉーぜん!アリシアさん達の事よ!」
藍華が得意げに言う。
「……………すっ」
「はひ?どうしました?」
「凄い!!アリシア達はそんなに凄い一人前(プリマ)になっていたんだ!!」
碧はまるで自分のことかのように嬉しそうに笑っていた。
「……本当に知らなかったんですね」
アリスが呆れた顔をしながら呟く。
「ねぇ!僕をARIAカンパニーに連れて行ってくれないかな?」
「ほへ?ARIAカンパニーにですか?」
「うん、僕の事を説明するならアリシアが居たほうが良いと思うし」
「あっでも……」
灯里は困った顔をする。
その意図が分かったのか碧は苦笑いをする。
「……残念ながら、僕はお客にはならないと思うよ?」
少女達の手を見ると、灯里と藍華は方手袋、アリスは両手袋だった。
つまり少女達は半人前(シングル)と見習い(ペア)、お客をゴンドラに乗せることは出来ないのだ。
「それ以前に、アンタ怪しいから。アリシアさんに会わせれるワケないでしょ」
藍華がじろりと碧を睨む。
「ありゃ?うーん……僕はアリアと友達だし、アリシア達とも友達なんだよ」
「……友達なのにアテナ先輩達が一人前(プリマ)になってること知りませんでしたよね?」
アリスがジトっと怪しそうに碧を見つめる。
「僕が住んでる所はそーゆー情報が分からない場所なんだ。勿論、アリシア達に連絡も出来ないしね」
残念そうに碧が答える。
碧は考え込んでいる灯里の目の前に立つ。
「じゃあ、こうしない?僕はアリシア達と友達だ。それに後輩のキミ達とも友達になりたいと思うよ!だから……よかったら僕と友達になってくれませんか?」
ニッコリと碧は笑い灯里に手を差し出す。
「はひ?お友達……ですか?」
灯里は目を丸くする。
「……まさか、灯里の友達論理を先にやる奴が居るなんて」
藍華が驚きと呆れを含んだ視線を碧に向ける。
「……ダメかな?」
碧は困ったように首を傾げる。
「いっいいえ!!じゃあ、お友達です!」
そう言って灯里は笑顔で碧の手を握る。
―……その時。
(えっ……この子から猫妖精(ケット・シー)の力を感じる……まさか)
「……どうしました?」
じっと灯里の顔を見つめる碧。
灯里は不思議そうに首を傾げる。
「あっ……いや。灯里ってケット・シーに会ったことあるんだね?」
「ケット・シーって……あの猫の王様の?」
藍華が怪訝そうな顔をする。
「はっはひ!?なっ何で知ってるんですか??ケット・シーさんをご存じで!?」
碧の問い掛けに灯里は混乱しながら話す。
「うん、まぁね。灯里って色々な事を素直に……素敵に感じることが出来る子なんだね?良い事だよ」
碧は灯里の瞳を見ながら話す。
「……こんな形で、ケット・シーに気に入られた子に逢えるなんて思わなかったよ。この出会いに、この奇跡に感謝だね!」
「はっはひ!」
碧と灯里はニッコリ微笑む。
「何だかよく分かんないけど、恥ずかしいセリフ禁止ー!!」
「ええー!」
「ありゃ?」
藍華のツッコミに二人は困った顔になる。
「……兎に角、話が進まないのででっかい怪しい人ですけど、ARIAカンパニーに連れていきますか?」
今まで黙っていたアリスが灯里に聞く。
「うっうん、もうお友達だし、早く服を乾かさないと風邪引いちゃうもの」
そう、碧はずぶ濡れのしかも薄着だ。こんな冬の日にこの状態では風邪を引いてしまうだろう。
灯里はゴンドラを漕ぎ始める。
「ぷいにゅー!!」
暫くゴンドラを漕いでいると、アリア社長の悲痛の鳴き声がこだまする。
見ると、アリア社長のお腹に火星猫の子猫が噛り付いていた。
「アリア!?」
碧はしがみ付いてきたアリア社長に噛り付いている子猫を離す。
「……この子は?」
子猫を自分の顔まで持ってきて碧が尋ねる。
「オレンジぷらねっとのまぁ社長です、そっちに居るのは姫屋のヒメ社長ですよ」
灯里が説明をする。
「水先案内人業界はアクアマリン……海難避けの象徴として青い瞳の猫を各会社の社長にしてるんですよ」
「うん……知ってるよ、あっ、確かにまぁの瞳も青いね。小さくて分からなかったよ」
碧がじっとまぁ社長の顔を見ていると。
「まぁ!」
―がぶりんちょ!
「おわ?」
まぁ社長が碧の頭に噛み付いた。
「まぁくん!?」
アリスが慌てて離そうとする。
「「まぁ社長がアリア社長のお腹以外に噛み付いた!?」」
灯里と藍華も驚く。
「あはは、いきなりあまがみしないでくれよ〜まぁ」
「「「えっ?」」」
三人が不思議そうに碧を見る。
「僕は平気だよ、そんなに痛くないし。あまがみしてるだけみたいだよ?」
まぁ社長を頭に付けたまま碧は笑う。
「……アリア社長のもちもちぽんぽん以外に気に入ったんですか?」
アリスは信じられない顔をした。
そしてまた、灯里がゴンドラを漕いでいると…。
きゅー……きゅー……
「あれ?」
灯里がゴンドラを漕ぐのを止める。
「どしたん?灯里?」
藍華とアリスが灯里を見つめる。
「今、猫さんの鳴き声がしたような気がして」
灯里はキョロキョロと周りを見る。
「んー?こんな岬の何処から鳴き声がするのよー?」
「……でっかい謎です」
皆も辺りを見渡す。
「―……あっあれ!」
碧が上を見ながら叫ぶ。
見ると岬の崖っ淵に一匹の火星猫がしがみ付いていた。
きゅー……!
火星猫は必死に助けを求めるように鳴いていた。
火星猫は今にも崖から落ちそうだった。
「灯里!」
「うん!」
藍華の声に灯里は火星猫に向かってゴンドラを漕ぎだす。
だがー……。
「灯里先輩、遅いです!このままじゃ猫が水の中に落ちてしまいます!」
揺れるゴンドラにしがみ付きながらアリスが叫ぶ。
「分かってるけど、潮の流れが複雑で進みにくいの!」
灯里は懸命に漕いでいるが中々ゴンドラは進まない。
「……ねぇ、灯里!僕にゴンドラ漕がしてくれないかい?」
碧が真剣な顔で灯里に頼む。
「アンタ何言ってんのよ!この岬は潮の流れが複雑で難しいのよ!?」
藍華が叫ぶ。
「うん、分かってる。お願い灯里!」
碧の真剣な眼差しに灯里は。
「……どうそ!」
オールを碧に渡した。
「ありがとう!」
そういうと碧は立ち上がりゴンドラを漕ぎだす。
ゴンドラはぐんぐんスピードを上げていく。
「嘘……」
「わぁ……」
「でっかい凄いです!」
ゴンドラはかなりのスピードを出しているが、全然揺れていなかった。
「き……ゅー」
火星猫が力尽き崖からずり落ちる。
「セーフ!!」
その瞬間、間一髪でゴンドラは火星猫の真上に着き、火星猫を碧がキャッチした。
「大丈夫?」
碧が火星猫に聞くと。
「きゅー!」
火星猫は元気良く鳴いた。
「良かったですね!」
「うん!」
アリスと灯里はホッとしたような顔をして碧の手の中に居る火星猫を見つめていた。
「……でも、コイツ何者なのかしら、こんなにゴンドラを漕げるなんて」
「あっ」
藍華の疑問に灯里はアリシアの言葉を思い出した。
『ゴンドラの操縦技術だったら、あの頃の私達以上だったかもしれないわね』
(……彼、操縦技術、アリシアさん達のお友達……まさか碧さんが……)
「あのっ!碧さん!もしかして昔ARIAカンパニーで働いてましたか?」
灯里の質問に碧は微笑み。
「うん、働いていたよ」
と言った。
2話目終了です!
次の話からアリシアさんが登場しますよ!
文章に変なところがありましたらご報告くれると有りがたいです。
それでは読んでくれてありがとうございました。