アリシアさん登場です。
少々ゲームの遠い記憶のミラージュの話もあります。
それでは、どうぞ碧との話にお付き合いください。
助けた火星猫を岸辺に下ろし、碧はゴンドラを漕ぐ。
久々のゴンドラを漕ぐ感じに碧は楽しそうな顔をする。
「……まさか、アンタが灯里が言ってた先輩だったとは……」
「でも、水先案内人(ウンディーネ)の知識はそれなりにあるようですし……この、操縦技術。納得するしか……」
取りあえず、なぜ水の中から碧が出て来たのかはARIAカンパニーに着くまで保留にしてもらい。
碧はARIAカンパニーに向けてゴンドラを漕いでいた。
最初は灯里が漕ぐのを代わろうとしたが、アリスの『碧さんが漕いだ方が早いのでは?』っと一言でそのまま碧が漕ぐ事になった。
実際、碧は早くずぶ濡れの体を何とかしなければならない状態だった。
冬の風は冷たい……悠長にしてると本当に風邪を引くだろう。
だが、碧はゴンドラを漕ぐのに夢中で濡れていることを忘れているようだった。
「灯里、なにボーッとしてるのよ?」
「そうですよ、会いたかった先輩に会えたんですよ?」
灯里は碧を見つめながら固まってしまっている。
「あっ……だって、だって……会いたかった人に出会えたんだよ……すごい、この広い火星(アクア)の中でこんな不思議な形で出会えたんだよ……奇跡が起きたみたい……」
「恥ずかしいセリフ禁止!!」
「ええー!」
灯里の言葉に藍華がビシッっとツッコミを入れる。
「あははっ!」
突然、碧が笑いだす。
「なっ何よ?」
「ほへ?」
「いや、藍華って晃に似てるなって思って」
「はぁ!?私が晃さんに似てる!?私は晃さんみたく鬼じゃないわよ!!」
「……藍華先輩、本人が居ないからって恐ろしい事言わないでください」
「あー……でも分かるかも。禁止ーって、晃さんもよくアリシアさんに言ってるもん」
灯里が笑いながら語る。
「そんな事ないでしょー!!」
藍華の叫びに、碧達は笑った。
「―っくしゅ!」
碧がくしゃみをする。
「……大丈夫ですか?」
アリスが碧に少し心配そうに訊ねる。
「ははは、うん。やっぱりこの状態ではキツいね、雪が降ってないだけましだけどさ……今って何月なの?」
「今は23月よ」
藍華が答える。
「アクアが何月なのか調べてこなかったんですか?だから、そんな薄着なんですか?」
灯里の疑問に碧は。
「……うん、まぁね。それにしても23月か……冬になりたてだね。」
このアクアの1年は地球(マンホーム)の二倍だ。つまりは1年は24ヶ月あることになる。
「……寒いし、ちょっとゴンドラのスピードあげるね?」
碧はそういうと、オールを握りなおし、ゴンドラを漕ぐ。
「ほへー……アリシアさんから聞いてたけど、本当にスゴい…」
ゴンドラはかなりのスピードを出しているがゴンドラはまったく揺れていない。
「そう?凄いかな?僕、暫くゴンドラ漕いでないし……」
「操作技術はかなりのものだと思いますよ?こんなにスピード出したら普通はでっかい揺れます」
「んー、そうねぇ」
「はひ!碧さんスゴいですよ!」
「……さん」
碧がポツリと呟く。
「碧さん?」
考え込んだ顔をした碧に灯里は不思議そうな顔をする。
「……あの、さ。よかったらその、『さん』付け止めてくれないかな?」
「はっはひ!?なっ何でですか!?」
「……何故ですか?」
灯里とアリスは困惑しながら碧を見る。
「あっ……いや、別にただ、さん付けが慣れてないだけだよ。藍華みたいに喋ってくれると有り難いと思うんだけどな」
「でっでも、碧さんは先輩になるわけですしっ!」
「でも、友達でしょ?」
灯里の言葉に碧はニッコリと笑う。
「あによ?碧って敬語とか慣れてないの?」
「はわわ、藍華ちゃん呼び捨て……」
「碧だって、私達の事を呼び捨てでしょ?」
「うん、僕は構わないよ。歳が近い人に敬語……いや、さん付けされるのは慣れないかな?」
碧は苦笑する。
「……私はでっかい無理です。年上の人には敬語を使うのは常識です。だからさん付けは慣れてください」
アリスはキッパリと言う。
「あはは、そっか。別に無理にとは言わないよ、灯里もー……」
「…………碧、くん」
「えっ……?」
碧は思わずゴンドラを止める。
皆が灯里を見る。
「あの、呼び捨てじゃないけど……碧くんで良いか……な?」
少し恥ずかしそうに灯里は聞いてくる。
「……うん!アリガト灯里!」
碧は嬉しそうに笑った。
藍華は呆れながら。
「はいはい、恥ずかしい空気禁止!」
「ええー!」
「あははっ!」
碧はまた可笑しそうに笑った。
「わー……ARIAカンパニーだ……懐かしいな」
碧が漕ぐゴンドラは一軒の海の上に浮かぶ建物に向かっていた。
その家には大きな看板が掲げられており看板には、ARIA COMPANYっと書かれていた。
「じゃあ、アリシアさんに碧くんの事を伝えてくるね!」
ARIAカンパニーのゴンドラ置き場にゴンドラを止めると灯里は我先にと階段を上がって行った。
「こりゃ!灯里!!」
「灯里先輩……はしゃいでるみたいですね」
「元気な娘だねー灯里って」
碧はゴンドラの係留ロープを括り付けながら灯里の背中を見て呟く。
「……アンタはマイペースね。濡れてるんだからアンタも早く行きなさい!」
「体……冷えきってますよ。風邪を引いてしまいます」
二人に怒られながら碧も階段を上がる。
「アリシアさん!!」
「灯里ちゃん。お帰りなさい」
勢いよくドアを開けて入ってきた灯里にアリシアは微笑みながら迎える。
「はっはひ!ただいまですっ。あの……私、会っちゃったんです!」
「あらあら、誰に?」
興奮しながら話す灯里に対してアリシアはニコニコ微笑みながら聞く。
「彼にです!あっあの、服が濡れてるから早く乾かさなきゃいけなくて……」
「彼?彼って……?」
慌てながら話す灯里を見てアリシアは微笑んでいるが少し困った顔をする。
「ぷいにゅー!」
「……灯里、慌てながら話をしたって伝わらないよ。落ち着きなよ?」
「えっ……?」
アリア社長を抱き上げながら、家の中に入ってきた人物を見てアリシアは目を丸くする。
「……アリシア、だよね?久しぶり!大きくなったねー」
「えっ……えっ?あ……碧、ちゃん!?」
碧はアリシアを見て嬉しそうに微笑む。
対してアリシアは碧を見て驚いた顔をした。
「アリシアさんが慌ててる!?」
「でっかい珍しいです!」
遅れて入ってきた藍華とアリスがアリシアを見て驚く何時も、何があっても『あらあら、うふふ』と笑顔を絶やさない彼女が慌てているのだ。
驚いているアリシアの前に碧は立つ。
そして……。
「久しぶり。アリシア!」
そう言ってアリシアの頭にぽんっと自分の片手を置く。
灯里達は碧の行動に驚いたが、アリシアはだんだん落ち着いた顔になり。
「……お久しぶり、ね。碧ちゃん!」
アリシアは笑顔で自分の頭に置かれた碧の手を取った。
「あらあら、本当にずぶ濡れね。またあの岬から来たの?」
「そうなんだよー。まさか、こっちが冬だとは思わなかったし。また水の中から来ると考えてなかったしね、一応リュックには水除けの術はかけてたんだけど……自分自身にかけるの忘れててさ」
自分の背負っていたリュックをアリシアに見せながら碧は苦笑する。
「あらあら、取りあえずお話よりも先にお風呂ね。このままじゃ風邪を引いちゃうわ」
「助かるよ、あっ、でも着替えはどうしようか?一応あの時の服は持ってきたんだけど…夏服だし。サイズも少し小さいんだよね…背が伸びちゃったせいで」
自分のずぶ濡れの服とリュックを見ながら碧が聞くと。
「服なら、あるわよ」
うふふ、と笑いながらアリシアは答える。
「僕の……制服もあの時のままなら小さいよ?まぁ着れるとは思うけど」
「大丈夫よ、心配しないでお風呂入ってきてね」
「うん、じゃあ……お言葉に甘えるよ」
微笑むアリシアを見て碧は納得し風呂場に向かう。
碧の背中を見送るとアリシアは灯里に。
「……灯里ちゃん、悪いけどアリア社長と一緒に灯里ちゃんの隣の部屋から服を取ってきてくれないかしら?」
「ほへ?隣の部屋ですか?そういえば入ったことないですね。服って碧くんが着る服ですか?」
灯里の言葉にアリシアはあらあら、と言いながら。
「もう、碧ちゃんと仲良くなったのね?」
「えっ、はい!お友達になりました!だから……『碧くん』です。さん付けは苦手だって言ってましたし」
灯里の言葉にアリシアは微笑み。
「うふふ、相変わらずね碧ちゃんは。ええ、服の場所はアリア社長が知ってるわ。アリア社長、お願いしますね」
「ぷいにゅ!」
アリア社長は任せろと言わんばかりに胸にぽんっと手を当て二階に向かう。
「あのー……アリシアさん。碧って何者なんですか?」
藍華の質問にアリシアはあらあら、と言いながら。
「それは、碧ちゃんがお風呂から出て来たらお話しましょう?今、ココアを作るわね」
「生クリームのせココアですか?」
アリスの目がキランと光った。
「ええ、皆も暖まってね」
そう言うとアリシアはキッチンに向かう。
「はいっ♪アリシアさん!!」
藍華は上機嫌になり、アリシアはまたあらあらと笑った。
「……あのさ、アリシア」
風呂から上がった碧は不思議そうにアリシアを見る。
「なぁに?」
アリシアはニコニコ笑っている。
灯里はすごく素敵な物を見るような顔をし。
藍華は苦笑をしながら碧を見つめ。
アリスは呆然としながら碧を見ていた。
「……何でサイズがピッタリな制服があるんだ?」
そう、碧が着ているのはARIAカンパニーの水先案内人の男性用制服(冬服)だった。
「うふふ、驚いた?実は前の制服以外にもう一着仕立て直していたのよ」
「はぁ……何でまた?」
「だって、前に背がまだ伸びるんじゃないかって話してたでしょ?だから少し大きい制服も作ってたのよ。着る機会があって良かったわ」
ニコニコしながらアリシアは嬉しそうだった。
「あー……そうだったんだ。あっココア……、アリガト」
碧は納得しながらアリシアからココアを受け取る。
「あのー、そろそろこの状況を説明してもらえますか?」
「でっかい謎なんですけど……」
藍華とアリスが不思議そうに碧とアリシアを見る。
灯里はボーッとしながら一言。
「碧くん、制服似合う……」
「確かに、碧さんも違和感ありませんね」
「確かにまたこんな格好する奴を見ることになるとは思わなかったけどって……灯里、後輩ちゃん、黙って。」
藍華はため息をつく。
「また?」
ため息を吐いた藍華に碧が不思議そうに聞いた。
「……前にARIAカンパニーに泊まってた奴がアンタと同じ格好させられてたのよ……まあ、アイツは夏服だったけどね」
「……へぇそれは……お仲間が居たとは思わなかったよ」
「うふふ、碧ちゃん皆もこっちに来て座りながら話ましょう?」
「あっ……うん」
なんとも言えない顔をしている碧に暖炉の前で人数分のクッションを用意しているアリシアは笑顔で皆に声をかけた。
碧とアリシア、向かい合わせに灯里達が座る。
「どっから説明すれば良いかな?」
碧は考え込むがアリシアが。
「まず、何処から来たのか……そこから話すべきじゃない?大丈夫よ灯里ちゃん達なら信じてくれるわ」
「……信じる?」
灯里は首を傾げる
「さっき水の中から光を見たって言ってたよね。僕がこのアクアに来たのはその光が原因なんだ、僕はマンホームから来たんだ……ただ」
「ただ……?」
「僕はマンホーム暦で2013年……大体300年前から来たんだ」
「…………ほへ?」
「…………は?」
「…………え?」
灯里、藍華、アリスはポカーンっとした顔をした。
「あはは、皆固まってるねぇーでも本当の事だからね?」
ニコニコ笑いながら話す碧。
「……本当に?」
藍華が真剣な顔で聞いてくる。
「うん。本当だよ……灯里は分かるかな……僕は猫妖精(ケット・シー)の力でこの時代に来たんだ」
「ケット・シー……でも、何で……?」
灯里の質問に碧は少し考え込み。
「さぁ……?前にアクアに来た時も、今回も……最初は理由は教えてくれなかったんだ。多分、『その時』が来るまで教えてくれないと思うよ」
碧はココアを一口飲む。
「……その時、ですか?」
アリスが首を傾げる。
「うん……多分このアクアに何か起こるんじゃないかと……思う」
「……また、前みたいなことが起きるのかしら?」
アリシアが深刻そうな顔をする。
「あー……どうだろう?でも……何とかなるんじゃない?前だって何とかなったんだし」
ニッコリと碧は笑う。
「……あのー、アリシアさんそれってどういう事でしょうか?」
藍華がよく分からないという顔をする。
「ああ……それはね、前に僕がアクアに喚ばれた理由が……アクアに大きな時空の歪みが出来て、このアクアのバランスが崩れそうになったんだ……結果的にはケット・シーが僕を喚び出した理由は時空のバランスを正すためだったんだ」
「……そんな事があったなんて……でっかい知りませんでした」
アリスは目を丸くする。
「あー……まぁ、知ってる人はアリシア達数人くらいで後はいないと思うよ?」
「ほへー……それって津波よりも凄いことなのかな?」
「津波?アクアで津波なんか起きたのかい!?」
「ええ、碧ちゃん落ち着いてね?確かに大きな津波だったけど思ったより大きな被害はなかったのよ」
「はひ!迅速に避難が出来たんで、ケガ人も建物も流されたりとかは殆どなかったですから」
「そうなんだ……良かったよー」
アリシアと灯里の説明に碧はホッとしたように息を吐いた。
「でも、その時空が歪むって事で何で碧が喚ばれるのよ」
色々ずれてしまった碧の話を藍華がまた聞き返した。
「ん?それは僕の魔力が強いからだと思うよ、あの時結果的には自然に集まってしまった魔力的な力がアクアの時空を歪めそうになってたからさ」
さらっと碧が言う。
「「「魔力?」」」
灯里達の声が重なる。
「うん、僕は魔法使いだから」
目を丸くしている灯里達に向かって碧はニッコリと笑った。
3話目終了!
大雑把ですが碧の過去の理由が判明しました。(急すぎたでしょうか?)
中途半端ですが次に続きます!
タイトルで察してくれてると思いますが碧君は魔法使いです。
次の話はその事について触れていきますよー。
文章に変なところがありましたらご報告くれると有り難いです。
それでは読んでくれてありがとうございました!