鎧の勇者の成り上がり   作:JOKER1011

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少しグロ注意


第12話

「さて、早いとこケリつけてやるよ。」

 

「面白いわね、私もこの姿は聞いてないから楽しめそうだわ!だけど!」

 

グラスは一瞬消え、来人の目の前に移動する。

 

「はあっ!」ドガッ!

 

来人にハイキックが炸裂する。

 

「そんなもんか?」

 

「嘘‥でしょ‥?」

 

完全に不意を突いた一撃は来人の右手にしっかりと受け止められていた。

 

「ハイキックってのはな‥こうやるんだよ!」

 

足を掴む手を離した瞬間、来人の高速のハイキックがグラスの側頭部を捉えた。

 

「ああっ!」

 

すんでのところでガードするがグラスは衝撃を逃がしきれず、地面をゴロゴロと転がる。

 

「輪舞破の型・亀甲割!」

 

グラスが開いていた鉄扇を閉じて突きの動作をする。

 

すると鉄扇から光の矢が飛び出して来人に迫る。

 

「甘い!」

 

来人はすっと肩をずらす事で避ける。が矢はもう一つ飛んできており、左肩に突き刺さる。

 

「あら?甘いのはどちらかしら?」

 

「このやろu‥」

 

その時、来人は脳に向かって電流が走っていく感覚を覚える。

 

それはあの日、テレビで見ていたものと一緒だった。

 

(マ、マズイ‥!これは‥!)

 

来人はすぐにベルトからハザードトリガーを引き抜こうとしたが、遅かった。

 

引き抜く前に電流が脳に達してしまい、頭と両腕がダランと垂れ下がる。

 

「あら?もしかしてそれが暴走ってやつかしら?暴走だなんて短絡的な動きで私に勝てるとでも?それっ!」

 

グラスはまた鉄扇から光の矢を放つが、来人には刺さらない。

 

無駄のない洗練された‥まるで瞬間移動をしているかのような動きで避けながら着実にグラスに近づいていく。

 

「嘘でしょ!どうして!どうして当たらないのよ!」

 

暴走する来人の動きに合わせて光の矢を放つ。時には偏差射撃を試みたりしているが、それを見透かされているのか全く当たらない。

 

流石に力を使いすぎたのか、膝に手をつき、肩で息をするグラス。

 

しかし、来人は空高く飛び上がっていた。

 

ふと、グラスの全身にゾクっと鳥肌が立つ。

 

ゆっくりと顔を上げるとライダーキックの体勢の来人が眼前に迫っていた。

 

避けることができず、ノーガードでお腹辺りにヒットし、体をくの字に曲げながら吹っ飛ぶグラス。

 

岩に思いっきりぶつかり、血を吐くが、高速移動で来人が近づいてきているのに気がついた。

 

自分を砕こうと振り下ろされた拳を避け、標的を見失った拳が後ろの岩を粉々に砕く。

 

当たったらマズイと距離を取ろうとするが、肩を掴まれ、思いっきり顎を殴りつけられる。

 

グラスは軽い脳震盪になるが、なんとか両足を踏ん張って持ちこたえた。

 

だが、容赦のない膝蹴りが鳩尾に刺さり、胃の中の物が逆流し吐いてしまう。来人にも少しかかったが、気にすることなく顔を掴まれ、膝が顔面に突き刺さる。

 

(こいつ‥人体の急所を的確に‥殺される‥)

 

来人はグラスと戦う際に仮に敵だとしても女性を相手にしていた為、どこか遠慮しながら戦っていた。だが暴走をしたことでそんな気持ちなど起こるはずもなく、リミッターも外れたことで桁違いのパワーに目覚めていた。

 

グラスは逃げようとするが、それよりも速く来人は瞬時にハザードトリガーのボタンを押し、レバーを回す。

 

来人から紫色のオーラが漏れ出し、右の拳がグラスの鳩尾に突き刺さり、体がくの字に曲がる。だが、すぐにもう1発が背中に刺さり地面に叩きつけられる。

 

叩きつけられた衝撃で地面をバウンドするが、すぐにキックが飛んできて、グラスは吹き飛ばされる。

 

「ううっ‥‥」ボタッ‥ボタッ‥

 

(に、逃げなきゃ‥殺され‥る‥)

 

「私は‥死ねない‥あの子を‥助けるまでは‥」

 

ヨロヨロと立ち上がろうとするが、すぐに頭を掴まれ、無理やり立たされる。

 

グラスは何とかその手を振り払おうとするが、振りほどけない。

 

なおも抵抗を続けるグラスに見向きもせずに来人はまたハザードトリガーのボタンを押し、レバーを回す。

 

すると抵抗を続けるグラスに電流が走り、力が抜ける。

 

抵抗しなくなったのを見たからなのか、定かではないが来人は掴んでた手を離し、構える。

 

ready!go!

 

そして無抵抗のグラスの喉に右のキックを叩き込んだ。

 

その衝撃でグラスは地面を転がり、動けなくなってしまう。

 

来人は追い討ちをしようと走って近づく。

 

グラスはその時、殺される恐怖に震えていた。骨も何本かは確実に折れた。

 

そしてポロっと涙が流れるのを感じた。

 

(私‥ここで死ぬんだ‥)

 

どんどん来人が走って近づいてくる。

 

それをターニャ達は岩陰に隠れて見ていた。

 

(あたしが止めないと!来人はあたしを信じてくれたんだ!)

 

「あたしが!止めなきゃ!」

 

ターニャが隠れていたところから飛び出す。

 

「ターニャ!戻れ!」

 

仲間の制止を振り切り、隠れていた所から飛び出し、仲間の名を呼んだ。

 

「ライト!」

 

ターニャが叫んだ。叫んだことで自分が標的となる。だが、それでいい。

 

その声に来人がゆっくりと振り返る。

 

だが今の来人には敵味方の区別は付いておらず、ただ動くものを破壊する殺戮マシーンと化していた。その為、振り返ったのもただ声がしただけであるし、もちろんターニャを敵と判断し、襲いかかる。

 

ターニャは怖気付きそうになるが、来人から言われた事を思い出す。

 

(いいな?ターニャ。いくら俺が眼に映るものすべてを破壊する殺戮マシーンと化しても眼に見えなかったら意味がない。だから透明になってハザードトリガーを奪い取れ。いいな?お前にしか頼めない事なんだ。)

 

「う、うわあああああああ!!!!!」

 

ターニャは叫びながら走り、透明になる。そして距離を詰めてきた来人の攻撃をスライディングで股下を越える事で回避する。

 

そして標的を見失った事で再度グラスの方に振り向いた。だが来人はその場で動かなくなる。

 

ターニャが透明化を切り、姿を現わす。その手には先程までベルトに刺さっていたハザードトリガーがしっかりと握られていた。

 

それは来人のベルトからハザードトリガーを抜き取る事に成功した事を意味する。

 

「やった!取った!」

 

そのハザードトリガーを取られた事で、ビルドは元の赤と青に戻り、変身は強制解除され、来人はバタッとその場で倒れる。

 

だが意識は失っていない。

 

「グラス!もうアンタの負けだよ!」

 

「ええ‥その‥よう‥ね‥」

 

地面に倒れたまま、そう言うと徐々に体が透け始め完全に消え去った。

 

それと同時に空が元の色に戻り、亀裂も閉じた。

 

それは波が収まった事を物語っていた。

 

その後、回復した来人は気絶した勇者たちを村人達に引き渡すと、村人達はすぐに治療院に引っ張っていった。

 

「なあ、俺たちの方が治療されるべきだよな?」

 

「だよな、だが諦めろ。俺たちは嫌われもんの勇者だからな。」

 

尚文の苦言に来人が笑っていると、ザッザッと音を立てながら兵士たちが走ってくる。

 

「おい!盾と鎧!三勇者様はどうした!」

 

「三勇者?ああ、あそこの治療院だろ。」

 

「急いで勇者様とその仲間を運び出せ! 早急に城下の治療院へ送るのだ!」

 

「気は確かか?奴等はあっさりやられたから軽傷のはずだ。それより被害に遭った村人の中には重症を負ってる奴もいるんだ。そっちを優先するべきじゃねえのか?」

 

「勇者とその一行を最優先するのは、我が国、そして世界の為だ!」

 

「あ、そう。世界平和のためには村人の犠牲は仕方ないんだな。」

 

「あと、その勇者の括りには俺たちが含まれてねえ事もよーく!分かったよ!さっさと連れてけよ。俺たちは忙しいんだ。」

 

俺たちは兵士達に背を向けて帰ろうとした。

 

「待て、お前ら。王がお呼びだ。城にこい。」

 

「嫌だね。」

 

「同じく。どうしても連れて行きたいなら無理やりにでも連れていくんだな。もちろん全力で抵抗させてもらうが。」

 

「ぐっ‥」

 

盾と鎧の勇者に対していつも横柄な態度を取る兵士達であるが、正直この二人と戦って勝てる訳がない。それが分かってるからこそ、こう言われてしまっては強く言えないのである。

 

「お願いします。どうか来て頂けませんか?」

 

俺たちと一緒に来ていた兵士が必死に頼み込む。

 

「‥‥分かった。行ってやる。だが俺たちはお前の命令を聞いたわけじゃねえ。この若き兵士の顔に免じてだ。」

 

そうして俺たちは城へ向かった。

 

そして城に着くが、俺たちは玉座ではなく一旦別室に通されて待機を命じられる。

 

ナメてやがる。

 

そしてしばらく経ってから、呼ばれ、玉座へ向かう。

 

「まず、此度の波を沈めてくれた事を感謝するぞ、鎧。それと忘れておったが、この前の賊の討伐の報酬を渡しとらんかったな。今回の波での尽力の分の報酬と合わせて何が欲しい?申してみよ。」

 

「は!私が聞いた話なのですが、今は亡きセーアエットと名乗る騎士が治めていた領地があるとか‥?」

 

「よく知っておるのう。確かにある。まあ、今は領主が死んでからは誰も住み着いておらんがのう。」

 

「ならば、その領地を頂きたいとうございます。」

 

「あそこをか?ふむ、よかろう。使うが良い。これ、この者に土地の権利書を持って参れ。」

 

「は!」

 

そうして俺に領地の権利書が渡される。

 

「それと全く遺憾だが。盾よ、波を沈めてくれた事、感謝する。まあ、お主が一役買った事に関しては信じておらんが。」

 

「‥‥」

 

「抑えろ、尚文。」

 

「それでだ‥盾のお前に問いたい。ワシはもちろん嘘じゃと思っておるが。」

 

「お主の能力じゃ。盾、お前の力で盾が真っ黒に燃え出し、三勇者が手こずった相手を恐るべきパワーを誇って倒したと聞いている。どうやったのか、教えろ。もちろん嘘偽りなく話せよ?まあ、盾のことじゃから嘘をつくのは分かっておるがな。」

もう、だめだ。俺が抑えられねえ。

 

「こら、クズ!てめえ一体誰のおかげで波を退けられたのか分かってんのか?あ?分かってんなら、ちったぁ讃えろや!グチグチ言いやがって!文句あんなら殺すなりなんならしてみろや!ゴミ!」

 

「なん‥だと‥!貴様!このワシに向かって‥クズだ、ゴミだと‥!なんだ、その口の聞き方は!」

 

王が怒鳴ったのを合図に俺と尚文を兵士たちが囲み、武器を構えてくる。

 

「抜いたな?抜いたって事は殺される覚悟ができてるってことだよな!!!ゴラァァ!!!」

 

 

「者共!!!構わぬ!!!打ち首じゃぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

 

兵士たちはその声を聞いて一瞬武器を持つ手に力が入るが、動けなかった。

 

何故なら、この兵士達は過去に来人が槍の勇者と第1王女をいとも簡単に半殺しにしたところを見ていたからだ。

 

更に今回の波で三勇者が敵わなかった敵を、この二人は倒したと聞いている。

 

いくら王に対して忠誠を誓っていても、自分が可愛いのだ。

 

「サガーク!」

 

来人が王のもとへ歩きながら叫ぶと蛇が飛んできて、腰に巻きつき、ベルトと化す。

 

「変身。」

 

ジャコーダーをバックルの横に挿し、引き抜く。

 

仮面ライダーサガに変身した来人はジャコーダービュートを構えながら王のもとへ歩く。

 

「な、何をしておる!ワシを守らんか!」

 

王は叫ぶが、誰も動かない。

 

「王の判決を言い渡す‥‥‥」

 

「王じゃと‥!血迷うたか! グェッ!」

 

王は鼻を鳴らすように笑うが、ジャコーダービュートが首に巻き付く。

 

「死だ‥‥」

 

「と、言いたいところだが、殺すにも満たん。」

 

そう言うと、一瞬キュッと締めてから解放する。

 

「オエッ!ゲホッ!ゲホッ!」

 

「せいぜい屠られる豚のようにいつ殺されるか怯えながら暮らすがよい。さらばだ。」

 

「いくぞ、尚文。」

 

「ああ。」

 

「待て‥盾と鎧。このままで済むと思うなよ?必ず‥」

 

俺は今度はジャコーダーロッドに変え、もう一度王の目の前に突きつける。

 

「必ずなんだ?殺しに来たければ殺しにこい。ただし、その分、貴様の寿命が縮まると思え。」

 

俺たちが歩くと兵士たちが自然に道を作っていく。

 

俺たちがドアを開け、閉まった時に中から「許さんぞ!盾と鎧!!!」と聞こえてきたが、知らん。

 

負け犬の遠吠えだ。

 

俺は変身を解き、尚文と共に別室に待たせている仲間のもとへと歩いていく。

 

俺たちは階段を降りたところで、貴族の女性っぽい人とすれ違う。

 

高そうな扇で口元を隠し、これまた高そうなドレスを着た女性だ。

 

顔はよく見えないが、これだけ豪華なんだ、整ってるに違いない。背格好からして、年齢はおそらく20代後半くらいかな?あと、髪の色が紫だ。

 

「此度の活躍、お疲れ様でした‥でごじゃる。」

 

ぽつりとすれ違い気味に呟かれた。

 

ごじゃる?

 

俺たちは立ち止まり、その女性を見る。

 

女性の後ろを小さい頃のラフタリアや人型のフィーロくらいの女の子が付いて行っている。

 

髪の色が青っぽい。横の女性同様あんまり見ない色だな。

 

身なりも良い子供か?

 

ただ、なんとなく誰かに似ている。そう、メルティにそっくりだ。

 

本人か?

 

じゃあ、横にいるのは女王か‥‥?は!ナイナイ。ありえねえ。

 

俺たちは珍しいものを見たなと話しながら別室へと歩いて行った。

 

「よう!待たせたな!」

 

バッチリ声真似しながらドアを開ける。

 

「似てんな、来人。だが‥どっちかというと‥◯者よりだな。」

 

「あのレジェンドは無理だ。真似できねえ。」

 

「全くだ。俺も生まれ変わるならあんな声になりてえ。」

 

「なんの話をしているのですか?」

 

ピーターが怪訝な顔で俺たちを見る。

 

「いや?こっちの話だ。それより変わったことなかったか?」

 

「ああ、これですか?」

 

よく見たらミコとナーガとターニャが気絶した兵士に座っていた。

 

ああ、やりやがったんだな。アイツら。

 

「なんか、いきなり攻撃してきたから、後頭部掴んで床に叩きつけたら、ちょうど良い椅子に早変わりさ!」

 

「俺は壁だ。ほら、くっきりと跡が付いてるだろ?」

 

ナーガが指差す方を見たら、少し血が付いていた。

 

「ターニャも?」

 

「え!?いやいや!あたしはそんな事できないよ!ただ、後ろに回って首を叩いたら気絶しちゃったから‥そ、それに!座ったのだってミコさんに勧められたから‥」

 

尚文は何かに気づいてラフタリアに苦言を言う。

 

「それで?どうしてフィーロも座ってんだよ。ラフタリア。」

 

「わ、私は止めたんですよ!?でもミコさんとピーターさんが!」

 

「あのね?ピーターおにいちゃんと!ミコおねえちゃんがすわっていいって!」

 

「エクレール‥お前だけはストッパーになると思ったのだが?」

 

「止めたさ!でも多勢に無勢だ!」

 

「まあ、いいよ。怒ってねえ。攻め込んできたコイツらが悪い。だろ?みんな?」

 

「ああ!」

 

「「「ええ!!」」

 

「「うん!!」」

 

「私たちが間違ってるのか?」

 

「‥そのようですね。」




変身
ビルドラビットタンクハザード
サガ

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