来人改め、ライトは扉を開けたことによる光に視界を奪われ、光がなくなると魔法陣の前に立っていた。
ここが盾の勇者の成り上がりの世界か。
「おお、勇者様方ッッ!この世界をお救い下さいッッ!!!」
「「「「は?」」」」
状況の分からない4人は声を揃えてそう答えるしかなかった。
ライトはこうなることを聞いていた。女神からだ。
あの女神、俺にこの世界を説明するとか言ってネタバレしていきやがった。
とりあえず、盾の勇者のナオフミが不憫な目に合うんだよな?
「それはどういう事だ?俺たちは見たところ、突然ここに連れてこられて困惑している。出来る事なら丁寧な説明を頼む。」
ライトの落ち着いた声に安心したのか、ローブの男は落ち着いて説明をする。
「色々と込み合った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました。」
「この世界は今、存亡の危機に立たされているのですッ!勇者様方、どうかお力をお貸しくださいッッ!!」
ローブを着た男は頭を深々とさげてライト達にお願いする。
「そうだな、まずは話を‥‥」
「嫌だな。」
「そうですね。」
「俺たちは元の世界に帰れるんだよな?話はそれからだ。」
「もうちょっと詳しく説明してもらえないか?」
ライトの言葉を遮るようにして、4人は答えた。
「あの‥ええと‥」
予想外の言葉にローブを着た男もタジタジになるが、構わず、言葉は続く。
「人の同意なしに、いきなり呼び出した事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」
「仮に、世界が平和になったら、用済みとばかりにポイっと元の世界に戻されてはタダ働き同然ですしね。」
「それで?こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ? 話によっちゃ俺達が世界の敵に回るかもしれないから覚悟しておけよ?」
3人ともが自身の武器を突きつけてローブを着た男を威嚇している。
しょうがねえ、助けるか。
俺はローブを着た男を庇うように前に立つ。
「まあまあ、落ち着けよ。とりあえず話くらい聞こうぜ?それから判断してもいいんじゃねえか?な?」
「そ、そうです。まずは王様と謁見して頂きたい。報酬の相談や、その他諸々の重大な話はその場でお願いします。」
「なんで、そいつの肩を持つ。」
「そうですね。」
「お前そいつとグルじゃねえよな?」
「グルなわけねえだろ。俺だって戸惑ってるが、この人に、とやかく言っても仕方ねえだろ?それに異世界召喚大好きだろ?少なくとも俺は大好きなジャンルだ。」
「ふん。」
「まあ、嫌いではないですけど‥」
「確かに俺も好きなジャンルだが、まだ認めた訳じゃねえからな?」
まったく。なんでこいつらは初対面の相手に対して、ここまで上から目線になれるんだよ。なんなんだ、コイツら。全員ヤンキーか?いや、ヤンキーにもいい奴いるから偏見か、今のは。
だが少なくとも俺は初対面の相手に対してのっけからタメ口や横柄な態度はできねえな。
そして、彼らはそう言いながらもローブの男の中の代表のような男が道を示した為、それに着いて行き、暗い部屋を抜けて石造りの廊下を歩く。
しかし、窓から見えた風景に5人は息を飲んだ。
どこまでも空は高く、中世ヨーロッパの様な街並みが広がっていた。
「「すげぇ‥」」
ライトはナオフミと被り、お互いに顔を見た。
こうして、歩いて行くうちに謁見の間に彼らは辿りついた。
「ほう、こやつ等が古の四聖勇者か。しかし、鎧などあっただろうか…ワシの記憶違いだろうか?」
謁見の間の玉座に腰掛ける老人がライト達を値踏みして考えながら呟いた。
なんか、すっごく偉そう。なんか、世界を救ってくる勇者に対して120G、たいまつ、まほうのかぎ、かぎしかくれないどっかの王様みたいな奴だな。
臣下は何か王に耳打ちをしているが、その内容を知る術はライト達にはない。てか、聞こえるわけないだろ。
てか、アイツ俺の事、チラチラ見ながら喋ってねえか?おれおっさんにモテても仕方ないんだけど。
「面をあげい!」
俺たち5人が顔をあげたのを確認して王は言う。
「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。」
こいつか。女神のネタバレの中にあった要注意人物の一人。
「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向かいつつある。」
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「終末の予言に、次元の亀裂.......」
王の話をまとめると、まずこの世界には終末の予言なるものが存在するらしい。
予言によれば、いずれ波というものが幾重にも繰り広げられ、その波の齎す災害を退けねば世界が滅ぶという。
その予言の年が今年であり、予言の通り、古より存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ち出した。
この龍刻の砂時計は波を予測し1ヶ月前から警告するという機能を持っている。
伝承では1つの波が終わる度に1ヶ月の猶予が生まれ、また襲いくるという。
当初、この国の住民は予言をあまり信じていなかったが、予言通りに厄災が降り注いだ。
次元の亀裂がこの国、メルロマルクに発生し、凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出してきたという。
その時は国の騎士と冒険者により辛くも乗り切ることが出来たが次の波は更に強力なものになる。
このままでは対処しきれないと考えた国の上層部は伝承に則り勇者召喚を行ったというのが事のあらましだ。
言葉がきちんと通じるのも、伝説の武器の能力によるものらしい。
まあ、知ってるけど。と、いうか俺の‥恐らくベルトって伝説の武器か?ニチアサの武器の間違いだろ?
「話は分かった。つまり勝手に召喚した召喚された俺達にタダ働きしろと言いたいのだな?」
「都合の良い話ですね。」
「……そうだな、自分勝手としか言いようが無い。滅ぶのなら勝手に滅べばいい。俺達にとってどうでもいい話だ。」
だから、また、こいつらは‥はぁ‥百歩譲ってローブの男達に上から目線なのは分かるよ?でも相手は王だぞ?何?俺がおかしいの?
「だからさ、お前ら。目上の人に対する尊敬の気持ちとか無いわけ?」
「しかし、コイツらが文句を言うのも分かります。それでなのですが、私達が世界を救うに当たって国からの援助とかは、ありますか?それさえ、分かればまだコイツら納得するかなと思うので。」
「鎧の勇者よ。安心せい、もちろんある。」
そう言うと、王はそばに控える大臣に目線を送る。
「はい。もちろん、勇者様方には存分な報酬は与える予定です。」
それを聞いた、ライト以外の4人は小さくガッツポーズをする。
「他に援助金も用意できております。ぜひ、勇者様たちには世界を守っていただきたく、そのための場所を整える所存にございます。」
「では勇者達よ、それぞれの名を聞こう。」
「俺の名前は、天木練。年齢は16歳、高校生だ。」
剣の勇者、天木練。体格は165cmと小柄で、線は割と細い。
顔は整っており、茶色がかった黒髪のショートヘアで切れ長な瞳に白い肌、雰囲気は寡黙な印象を受ける。
「じゃあ、次は俺だな。俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ。」
槍の勇者、北村元康。体格は175cmくらいで、線は割としっかりしていた。
顔は整っているが天木練と比べると、やや男らしく、金髪の長髪でポニーテールにしており、少し軽薄そうな印象だ。
「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳、高校生です。」
弓の勇者、川澄樹。体格は160cmと勇者の中でもっとも小柄で、線も細く華奢といった感じだ。
顔は整っており、天木練よりも中性的で、黄緑がかった金髪が若干天然パーマが入ったウェーブヘアーで、物腰は穏やかながら芯は強そうな印象。
「次は俺だな、俺の名前は岩谷尚文。年齢は20歳、大学生だ」
年上だったのか、こいつ。
「俺は伊達来人。年齢は17歳、高校生だ。」
「ふむ。レンにモトヤスにイツキにライトか」
「王様、俺俺!」
「ああすまんな、ナオフミ殿」
露骨すぎんだろ、こいつ。
「大方、分かった。それでじゃ。ええと、ライト殿。そなたは鎧の勇者らしいが、鎧はどこじゃ?」
「え?あ、はい。おそらく。この鉄の胸当てかと‥」
「ああ、それじゃな。なるほど。」
そう言いながら控えている大臣に視線を送る。
大臣が俺に小さな光の玉を飛ばし、納得したような顔でうなづくと王に耳打ちをする。
「‥何?確かに鎧の勇者と出る?真か?お主が言うのじゃからそうなんじゃろう。分かった。とりあえず勇者として扱うとしよう。」
なんかボソボソ言ってるが‥?
「では皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視してもらいたい。」
そう言うが、全員が止まる。ステータス?
俺は試しに目の前の虚空を触るが、何も出ない。ただ空を切っただけだ。あれ?詰んだ?
「えっと、どのようにして、見るのでしょうか?」
樹が王に問いかける。
「何だお前ら、この世界に来て真っ先に気が付かなかったのか?」
王の代わりに練が呆れた表情を浮かべながら、そう答えて、続ける。
「何となく、視界の端にアイコンがないか?それに意識を集中する様にしてみろ。」
練に言われるがまま視界の端にあるアイコンに意識を集中するライト。
すると、軽い電子音がしてパソコンのブラウザの様な画面が大きく視界に映る。
『名前 伊達来人
職業 鎧の勇者 Lv1
装備 仮面ライダーの変身アイテム
異世界の服
スキル 全ダークライダーに変身可能。』
‥‥‥うん?全ダークライダー?
ダークライダーって‥悪役‥?
やりやがったな、あの女神。
「Lv1ですか.......これは不安ですね。」
「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな。」
「と、いうよりも、なんなのだコレは?」
「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ。」
「なるほど。」
「それで、俺達はどうすれば良いんだ? この値は不安すぎるぞ。」
「勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたいのです。」
「強化? この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」
「いえ!伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうです。」
「伝承ね。その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」
元康はくるくると槍を回しながら話を進める。
「俺達5人でパーティーを結成するのか?」
来人は聞く。
「だったら俺と錬と元康が前衛で、樹と尚文が後衛だな。みんな、とりあえずそれでいいか?」
「お待ちください勇者様方!」
「ん?」
これから冒険に出ようとする勇者達を引き留める大臣。
「勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になります。」
「それは何故ですか?分散せずにみんなで戦えば良いのではないのですか?」
「はい。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様達だけで行動すると成長を阻害すると記載されております。」
「本当かどうかは分からないが、俺達が一緒に行動すると成長しないのか?」
そんな説明を受けていると、皆、伝説武器のマニュアルとヘルプを見つけた。
『注意、伝説の武器同士を所持した者同士で共闘する場合。反作用が発生します。』
へー、本当だ。
『ただし鎧は例外です。』
は?
「どうやら俺には関係ないらしい。」
ライトは笑いながら答えた。
「嘘だろ!?」
「まじかよ」
他にも武器の使い方等が懇切丁寧に書かれているのをライトは見つけたが、皆後回しにするようだ。
「となると仲間を募集した方が良いのか?」
元康の呟きに王が反応する。
「ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく。別々に旅立つとはいえ、波の時には肩を並べて戦うのじゃ。各々交流をしておくと良いぞ。」
「ありがとうございます。」
その日は皆、王の用意した来賓室で休む事になった。