「ぬぉぉぉお」
「やっぱり観光地なだけありますね。」
「染み渡るぅぅぅぅ」
「お前の所のリザードマン‥というかリ◯ードン。えらくおっさんに見えるんだが。」
俺達が風呂にゆっくり浸かりながら体を伸ばしていると、尚文が笑いながら言う。
「あ?俺は、まだおっさんじゃねえ。ドラゴンはお湯に浸かる文化はあんまり無いんだ。大概池とか湖なんだよ。」
「そうなのか?勉強になるな。」
尚文が顔にタオルをかけて頭を湯船のへりに預けた。
「これ、いつになったら外れんだよ‥」
「ああ、元康。よっぽど気に入ってんだな、それ。」
「来人。頼む。これは尚文のものだって認めるから呪いを解いてくれ。」
「いやにあっさりだな。」
「‥‥認めるさ。マ‥ビッチがお前らにやったことを考えてみたら‥これが盗品だって事も納得がいく。すまん。」
「‥ふぅ。いいぜ。」
俺はパチン!と指を鳴らす。
「ほら、脱いでみなよ。」
「お!脱げた!ありがとうな、来人。」
「俺に言うな。尚文に言え。」
「‥あ!ああ、そうだな。ごめんな、尚文。」
「‥‥ああ。」
そのやりとりしていると錬と樹が自身の仲間達を連れて入ってきた。
「ごしゅじんさまー!」
ピューン!
垣根を越えてフィーロが男湯に入ってきた。
「な!?フィーロ!!君はなんてことを!早く帰りなさい!」
「やー!」
ピーターが立ち上がり、そして瞬時に下半身を隠しながら怒り、女風呂の方に言う。
「おい!ターニャ!早くフィーロをそっちに連れ帰ってくれ!」
「何言ってるのよ、兄さん。私がそっちに行ける訳ないでしょ?大丈夫よ。ほら、お風呂にプカプカ浮かぶアヒルのおもちゃだと思ったら?」
「それは無理だ。」
「でへへ、フィーロちゃんと混浴‥」
あ、元康の野郎。
「ねえ、フィーロちゃん。できれば天使の姿に‥」
「や!」
「そっか、残念だな。ところで諸君。」
「仲間交換をしたが、どこの誰が可愛かったとかあるか?」
「は?」
おいおい、こいつは何を言ってんだ?もっと見るところがあるだろう。
「俺の好みは‥やっぱビッチとラフタリアちゃんとフィーロちゃんとリーシアちゃんとターニャちゃんかなぁ。」
チャキ!
「武器を下ろせ、ピーター。てか、持ち込むな。」
「まぁ、確かに‥奴は悪くはねえが‥」
「そうですね、顔は整ってますよね。」
おいおい、錬も樹もアレがいいのか、アレが。
俺と尚文は特に奴の何がいいのかが分からない。
これからもきっと。
「それにしてもラフタリアちゃんは性格がキツイな。」
「ええ、そうですね。せっかく顔は良いのに、残念です。」
「全くだな。」
「フィーロ、そろそろお姉ちゃん達の所に戻るね。」
「ああ、さっさと行け。」
尚文がそう言うと、ピューと飛んで行った。
「さて、出るか。」
「俺もそうするか。」
俺と尚文、ピーター、ナーガが立ち上がると、元康がこう言ってきた。
「なあ、尚文。お前はラフタリアちゃんとどこまでいったんだ?来人もだ。お前のチームも女性が3人いるんだから一人くらいそんな関係の奴がいるだろう?」
「無いな。」
「俺もだ。」
「嘘だ!来人の所は知らねえから言えないが、ラフタリアちゃんはあっただろ!なんかこう‥迫ってきたとか。」
言われてみれば‥確かにラフタリアは尚文に好意を抱いている。それは分かる。何かしらのアプローチはしているはずだ。
「覚えてない。」
「だったら‥服だ!服をお前の前で脱いだとかだ!それはなかったか?」
「ああ、それだったら‥」
尚文が言うには‥昔尚文が薬を調合している時に先に湯を浴びてきたラフタリアがタオルを外して見せてきたらしい。
しかし、尚文には違いが分からず、だが何か言わないといけないと思い、こう言ったらしい。
「まあ、大分良くなったんじゃないか? 出会った頃とは雲泥の違いだな。」
それだけ言ったらしい。
鈍感か!
「この鈍感野郎!!!」
それは元康も同じだったようで尚文に拳を振るう。
パシッと尚文は受け止め、言い返す。
「なんのつもりだ。」
「それは露骨なアピールだろうが! 据え膳を食わないとは不届き者が!」
「何を言っているんだ。さっきから言っているだろ? ラフタリアは子供だ。しかもクソ真面目のな。そんな事を考えているはず無いだろ。」
こいつ、やべえ。ガチだ。俺は元の世界ではあんまりモテなかったが、そんな俺でも分かる。それは完全なアプローチだ。ラフタリアだって襲われるくらいの覚悟はあったはずだ。
「悪いな、尚文。今回ばかりは擁護できん。元康が正しいかもしれん。だが手を出さずとも、もっとあっただろう。」
「はぁ?」
俺の''手を出さずとも''の部分が引っかかったのか、元康が驚愕する。
「いやいや、考えてみろよ。尚文の所は少数精鋭だぞ。ここで関係をもって大事な戦闘の時に妊娠して動けません!なんてなってみろ。終わりだぞ。」
「そりゃ、そうだけどよお。」
元康は、ため息をつきながら空を見上げる。だが、ふと我に返り男湯と女湯を隔てる垣根の方へ歩いていく。
「おい、何をしている。」
「黙ってろ。男のロマンだ。」
「おい、ロマンは認めるが、やめろ。ほら樹も止めてくれ。」
「全くです。けしからんですねえ。」
そう言いながら樹も垣根の方へ歩いていく。
お前もかよ。
「ふん、くだらん。」
そう言う錬も湯船から出ず、横目でチラチラと垣根の方を見る。
良かったな、女王。勇者の結束は固まったぞ。
「彼らには悪いですが、覗きに関してはアナスタシアとターニャに報告します。まあ、しなくてもターニャにはバレるでしょうけど。」
ピーターは冷静に念話で二人に報告し始める。
俺たちが着替えて、脱衣所から出るとアナスタシアが立っていた。
「報告感謝するぞ、グリーシャ。」
それだけ言うと消えた。
俺たちがジュースを買って涼んでいるとラフタリアがドタドタと走ってきた。
「尚文様!」
「どうした、ラフタリア。覗きが見つかったか?」
「え?はい、勇者様達が正座させられてミコさんとエクレールさんとアナスタシアさんに尋問されてます。」
「会議に出られるくらいにはしといてくれよって伝えといてくれ。」
「分かりました!」
そう言って出ようとした時、ラフタリアがボソッと言ったのが聞こえた。
それは、こうだ。
「尚文様なら見られてもいいのに‥」
うん、ガチだな。
それから予定が遅れて1時間後、勇者会議となった。
俺が中に入るとみんな着席していた。
だから俺は空いてる席に座り、影が喋り出すのを待った。
「よう、お前ら。覗きはどうだった?収穫はあったか?」
「これがあったように見えますか?」
「俺は見ていない。ただ長風呂してただけなのだがな。それよりも元康だ。」
元康の方を見ると頬に大きく平手の跡が付いていた。
「いやぁ‥はは!これも醍醐味だね!」
「チッ‥」(死ねば良かったのに。)
おうおう、アナスタシアから殺気がwww
「私もピーターになら‥ぶつぶつ‥」
お前もかよ。
「さて、これから五聖勇者による情報交換会議を行うでごじゃる。司会、進行は私。影が務めるでごじゃる。」
「議題はもちろん。明日から本格的に始まるカルミナ島の活性化についてでごじゃる。」
その発言に対して驚愕したように元康と樹が立ち上がる。
「おい、どういうことだよ!」
「まだ活性化は始まってなかったってことですか?」
「何を言っておるでごじゃる。私は今、本格的なと言ったでごじゃる。本格的なのは明日から数日でごじゃる。」
「そこで!勇者達の情報交換の場を設けたでごじゃる。」
なるほどな。俺たち全員この武器について知り尽くしている訳じゃない。自分が気づいてなくても相手は気づいてること、そしてその逆もあるかもという訳か。
だが、コイツら正直に話すか?
コイツらはどうも未だにゲーム感覚っていう感じが抜けないんだよな。
てかさ、アレ‥
俺は錬達の武器に括り付けられているストラップに注目していた。見ると尚文も同じように見ている。
「なあ、お前らそれなんだ?」
「知らないのですか?」
「ああ。」
うそ、知ってる。
「これを付けていれば獲得経験値が上がるんだ。」
「これで俺たちは強くなれるぜ!」
「来人さんも買った方がいいですよ。」
まさかと思い、尚文の方を見ると尚文は首を横に振る。
なるほど、粗悪品か。あの商人、勇者だといって贔屓はするつもりはないようだ。てかあの中に高品質なんてなかったと思うし。
「では、最初に一時的に交換した仲間について話し合うでごじゃる。」
その言葉を待ってたとばかりに錬と樹が口を開いた。
「尚文に来人。お前ら仲間の教育くらいちゃんとしろよ。」
「そうですよ。よくあんなので今まで死ななかったなって思いますよ。」
早速かよ。
俺が口を開こうとしたところで尚文が口を開いた。
「すまんな。うちのラフタリアはちょっと理想が高いんだ。勇者らしくない行動を見たら怒るんだ。」
「俺たちがしていないとでも?」
「ああ、錬は連携不足、樹に至っては‥嘘ついたろ?」
「なら!来人さんは!」
「話を振ってくれたようだから俺も言わせてもらおう。俺も尚文と全く同じ意見だ。アイツらはラフタリアほど理想は高くないが元々それなりに戦える奴ばかりだ。動きがおかしいと思えば言ってくるのは当たり前だ。実際に俺も何回か言われたぞ。特にピーターとエクレールから。」
「でさ?お前らがそこまで言うなら俺も言うぞ?お前らの仲間の変な所言うぞ?」
「どうぞ。」
樹が何か問題でも?と言いたげな顔で言う。
「お前、仲間内に序列作ってんだろ。しかも自分たちこそが正義で、それ故に何をしても許される、正義を執行するのに犠牲はつきものだって言ってたぞ。しかもずっとお前の偉業ばっかり話してたぞ。ウザすぎて途中から聞かなかったぞ。」
「俺も大変だったぞ。しかも中にはまだ俺を犯罪者みたいに扱う奴らがいたぞ。」
「それは俺も感じた。仲間に慕われてるのはいいかもしれないが、あれは異常だ。」
「礼儀は正しいけど、あれは宗教だ。しかも序列のせいでリーシアちゃんが不憫だったぞ。」
俺に続いて、尚文と錬と元康が苦言を言う。
ほう、やっぱり錬と元康も異常さが分かったか。
「正義を執行する上では仕方がないことです。それに序列ですか?そんなものありませんよ?」
苦しい言い訳だ。話にならん。
「まあ、せいぜい変な宗教だけは作るなよ?三勇教みたいなやつとか。」
「作る訳ないでしょ!」
「次に錬だ。どうした、お前の仲間。異常に距離感を感じたぞ。」
「確かに。''私たちはどこで戦えばいいですか?って言われたぞ。」
「俺、最初それ聞いて言葉が出なかったぞ。」
「ええ、僕も同意見です。話を聞いていて思いましたがあれは仲間というよりは部下です。」
「つまり言いたいことをまとめると‥」
尚文が言いたいことをまとめようとする。
「正直あれ一個がパーティと言った方がいいかもしれん。お前いなくてもいけるぞ?」」
「何を言っている?俺がいなくても戦えればいいだろ?」
一理ある。錬が戦闘不能になる可能性もあるからな。だが、お前のは、それとは違う。
「確かにそうかもしれないがお前のはやり過ぎだ。あんなんじゃいざという時に連携なんか出来る訳がねえ。」
「で、元康のところだが。」
今のところ、影に聞いた話だがビッチのやつ、俺と尚文のところ以外では猫被って大人しかったらしいからな。
「応援してますって言われましたが、なんです?あれ?」
「俺がここで戦っていてくれって指定したのに宿にいたぞ。アイツら。」
アイツら‥俺以外のところでもやったのか‥
「何か変か?俺たち勇者は誰よりも前に出て戦うのが普通だろ?特に俺は槍だ。前線職だ。」
「そうですけど、あれは度を越してますよ?本来、弓という後衛の僕が一番前だったんですよ?」
「な、なあ!尚文と来人はどうなんだよ!」
焦る元康が喋らない俺たちに話を振ってくる。
「いいのか?喧嘩になる未来しか見えないぞ?」
「第一、ビッチが俺たち二人をどれだけ憎んでるか知らないだろ?アイツらが何やったかは察してくれ。」
「では、仲間交換の話は以上でごじゃる。各々、指摘されたところは改善できるようにするでごじゃる。」
「納得いかないけどな。」
「ああ。」
「‥‥善処します。」
「分かった。」
「いいぜ。」