それではスタートです。
俺たちはカルミナ島から帰還し、久しぶりに自身の村に戻ってきた。
俺達がカルミナ島に行ってた間に女王の援助と、集まってくれた有志の方達のお陰でだいぶ復興が進んでいた。
そして帰ってから数日後の今日は正式にエクレールがこの村の村長になる式典があった。当初エクレールは断った。
私がなるべきなのか?ここはライトの方がいいのではないか?と。
だが、エクレールは領主の娘だし、この地は俺が権利など諸々引き取ったとはいえ元々セーアエット領だ。なら‥俺のじゃない。
「エクレール・セーアエット殿。貴君をこの村の村長に任命することをここに記す。メルロマルク国女王 ミレリア=Q=メルロマルク」
女王は多忙で来られなかった為、影が持つ水晶越しに女王は祝辞を述べ、名代として継承権一位のメルティが証明書を渡すこととなった。
式典には尚文、ラフタリア、フィーロも参加している。
そして俺は副村長に就任した。
そして俺とエクレールがいない間はセバスが臨時の村長となる事が決定した。
そして俺たちがカルミナ島に行ってた間、色々と変化があったようだ。
まずリファナだ。彼女はもう歩けるようになっており、自分を診てくれた今は亡きポールのようになりたいと医者を志すようになった。
次に魔物や亜人の数が増えてるってところだ。どうやらセバスは使えるものは使おうという性格らしく奴隷商から奴隷や卵を購入しており皆、種族の垣根を超えて田畑を耕し、物を作り、生活していた。
驚いたのはあの日から捕虜にしていた影がすっかり毒気が抜けたかのように村の一員になっていたことだ。
そして、どうやら近々元盗賊団の一人が亜人と結婚するらしい。
そしてエクレール村長、ライト副村長就任の記念として宴が行われた。
皆どんちゃん騒ぎだ。
「うへへ!ライトォ!」
「おい、ナーガ。飲みすぎだ。」
「飲み過ぎ?俺は龍だぞ?酒如きに呑まれるかよ!」ボォォォォ!!!!
「おい!火を吹くな!」
「ははは、ナーガ殿。火はやめときなさい。」
いつのまにかセバスがワインを片手に現れ、ナーガをなだめている。
「セバスさん。飲んでます?」
「ああ、ご心配なく。私は訓練によっていくら呑んでも酔わないようにできております。それもそうですが、ナオフミ殿は素晴らしいですね。訓練をせずに酔わないとは。」
「ああ、俺もびっくりだよ。」
これはカルミナ島で知ったんだが、アイツめちゃめちゃ酒強いのな。
アイツ知らずにバクバクとルコルの実を食ったらしいが、あれって大樽いっぱいの水に一粒入れて、やっと飲める位の酒が出来上がるってのに。
俺もチャレンジしたけど、5個で吐いたぞ。
晩飯のシーフード達が母なる海に還っていったのは悲しかったな。
そうだ、エクレールは?
あ、いた。
仲のいい兵士に囲まれていた。
「すごいじゃないか、エクレール!それにしても村長か〜」
「私も土地欲しいなぁー」
「だったら武功を立てないとな!」
「ははは‥お、ちょっとすまない。」
エクレールは俺が視界に入ったのか輪を抜け俺の方に歩いてきた。
近づいてきて分かったが、呑んでるのか顔がほんのり赤くなっていた。
「よう、エクレール村長。」
「ライト。私は村長になるぞ。そして作るぞ!亡き父上が作ろうとしていた種族の垣根を超えて皆が手を取り合う平和な村を!」
「その意気だ。俺も副村長としてサポートさせてもらうぞ。」
その時だった。
頭の中に念話が響く。
(ライト君!ライト君!)
「すまない、ちょっと野暮用だ。」
俺はエクレールとの話を切り上げ、女神と話す。
(また緊急ミッションだよ。今から来れる?)
(ああ、いいぞ。)
(ありがとう。じゃあ!)
俺は天界に転移した。
久しぶりの殺風景な部屋だ。
いつも通りの女神と向かい合わせの椅子に座る。だが今日は少し違う。女神の横におっさんが座っている。
「‥‥誰です?」
「ああ、紹介が遅れたね。彼は他の世界を担当している神様。元だけど彼も盾の勇者の成り上がりの世界を担当していたんだよ。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それで?俺なんで呼ばれたんです?」
「それは彼が話してくれる。」
「実は私はもう死んだ人を転生させるという仕事はしていないのですが、私は最後の仕事としてあなたのような男性を送り込みました。その名は龍二、太刀の勇者です。彼はあなたのように盾の勇者を助け、仲間を集めて暮らしていました。しかし、彼は‥」
一瞬言葉に詰まるが、また話を続ける。
「神の禁忌を犯しました。元はといえば私がやっと使命から解放されると舞い上がり、その辺りを詳しく説明しなかったからです。そのせいで彼は勇者を辞めさせられ、普通の人間としてまたやり直すことになりました。」
「ですが、彼には非情な運命が待っていたのです。転生した先で嬲られ、以前自分が助けた盾の勇者にまで罵られ、かつての仲間を目の前で殺され、絶望の淵に立たされた彼は‥魔物になりました。それにふつうの人間故に貴方のような創作上の力が使えず、死にたくても不死の呪いをかけられているため、死ぬことさえ許されません。彼は世界を終わらせるまで、その十字架を背負い続けるのです。」
「そして今、彼は魔王になり、世界に反旗を翻し残虐の限りを尽くしています。彼のせいで数多くの人の命が奪われました。その中には勇者も‥こんな事言っちゃいけないのは分かってますが‥まだ剣、槍、弓、盾から犠牲者が出てないのが救いです。」
神のおっさんは急に立ち上がると土下座をし始めた。
「無様な姿を晒しているのは分かってます。私のことを何と罵ってくれても構いません!お願いです。龍二君を‥龍二君をここに連れ戻してくれませんか?連れてきてくだされば彼の記憶なりを消して、元の世界に返します。」
その言葉に反応したのは女神だった。
「待ってください!そんなことしたらあなたが‥」
女神が反論するが額を床につけたまま、おっさんは返事をする。
「ええ、分かってます。龍二君の判決は神の裁判によるものです。覆すことはできません。そこに私が介入して無事でいられると思っていません。ですから貴方や女神さんには責任が及ばないようにします。」
「彼がこうなったのは私の責任です。」
「‥‥‥」
今、神のおっさんは俺に土下座をして、自分はどうなってもいいから助けてくれと頼み込んでいる。
勇者とはいえ、ただの人間の俺に。
「‥‥‥‥分かりました。」
「では!」
「引き受けます。あと現在の世界と、勇者だった頃と現在の龍二という男についてもう少し詳しく教えてください。いいですか?」
「はい!是非!」
「なるほど‥なら‥一人連れて行きたい奴がいます。いいですか?」
「はい、是非。ありがとう‥ございます‥龍二君をよろしくお願いします。」
ボロボロ泣く神のおっさんと、それを慰める女神に見送られ、俺は戻った。
''アイツ''を連れて行こう。アイツなら‥