鎧の勇者の成り上がり   作:JOKER1011

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第4話

関所の門を抜けると、限りない大草原が広がっていた。

 

一応、石畳で道が舗装されてはいるが、少し外れると、一面の緑が眼前を覆う。

 

「では勇者様、このあたりに生息する弱い魔物を相手にウォーミングアップしましょうか。」

 

「そうだね。俺は喧嘩はあるけど、魔物は戦ったことないしな。まあ、どれだけ戦えるかやってみるさ。」

 

「頑張れよー!盾だってやれるって所見せてやれ!」

 

「頑張ってくださいね。」

 

「え?マインとライトは戦ってくれないの?」

 

「私が戦う前に勇者様の実力を測りませんと。」

 

「そうだそうだ!もし俺たちとはぐれた時にも戦えるようにならないとな。」

 

「そ、そうだね…そんな状況になりたくないけど。」

 

しばらく3人で歩いていると魔物が飛び出してきた。

 

「あれはオレンジバルーンですね。弱そうな魔物ですが、気を抜かないようにお願いします。」

 

「つまりス◯イムだ。気抜くなよ?」

 

「まずは俺からだ。」

 

尚文が意気込んで前に出る。

 

「ガアァッ!」

 

凶暴な声と二つの鋭い目が尚文達の姿を捉えると襲い掛かる。

 

「頑張って!勇者様!」

 

「おう!」

 

マインの応援が飛び、それに尚文も答える。

 

尚文は盾を右手に持ち鈍器の要領でオレンジバルーンに向けて拳を振るう。

 

当たったが、決定打にならず、しかもオレンジバルーンはその場で跳ね返り、牙を剥くと尚文に噛み付いた。

 

「いッ!?」

 

硬い音が響いた。オレンジバルーンは尚文の腕に噛み付いているが効果が無いようだ。

 

「オラオラッ!!」

 

尚文はオレンジバルーンをボコボコと殴り続けた。

 

それからオレンジバルーンは軽快な音を立てて、弾けた。

 

「よく頑張りましたね。勇者様。」

 

「ゲームのシールドバッシュみたいに盾で裏拳するような感じで殴るのはどうだ?」

 

「ああ、参考にさせてもらうよ。次、来人。頼んだ。」

 

「任せろ。」

 

そう言い、俺は右手に銃を手に持つ。

 

「銃!?お前‥」

 

俺はそれに答えずに左手にフルボトルを握り、振る。

 

そしてそれを装填した。

 

コブラ!

 

重低音の変身待機音が鳴り響き、俺はお決まりのセリフを言う。

 

「蒸血。」

 

俺はトリガーを引き、黒い煙に包まれる。

 

ミストマッチ!

コブラ!コブラ! ファイヤー!

 

体から花火が飛び散り、俺の姿が露わになる。

 

「俺‥う、うん!こっちの声の方がしっくり来るってもんだ。」

 

おいおい、ちゃっかりエボルトボイス付きかよ。

 

「来人様‥?」

 

「お、おい‥来人‥なんだ、その姿‥」

 

「お?この姿か?これが俺の鎧の一部なんだよ。まあ、ちゃっちゃと片付けるとするかな。」

 

俺は首をコキッと鳴らすと右手にトランスチームガン、左手にスチームブレードを持ち、歩き出す。

 

無抵抗に近づいてくる俺に対してオレンジバルーン3体は噛み付こうと突進を仕掛けてくる。

 

俺は一体目を無言で撃ち抜き、二体目を斬り捨てた。

 

「ラストだ。」

 

俺はすぐにスチームブレードとトランスチームガンを組み合わせてライフルモードにする。

 

「終わらせてやるよ。」

 

俺はコブラロストフルボトルを装填する。

 

コブラ!

 

コブラ!スチームショット!

 

オレンジバルーンに吸い込まれるようにまっすぐ光弾が飛んでいき、炸裂すると特撮でお約束の大爆発を起こした。

 

「上出来ですわ!鎧の勇者様!」

 

「そうか?まあ、悪い気はしねえな。」

 

俺は変身を解いて元の姿に戻る。

 

「ふぅ、これが俺の鎧だ。」

 

「お前、本当にLv1なのか?」

 

それから尚文は俺が倒したバルーンも含めて盾に吸収させる。

 

「お前は吸収しないのか?」

 

「ああ、俺の装備は吸収じゃなくてLvアップで増やしていくらしい。」

 

 

「そろそろ日が暮れますね、今日は早めに帰って、もう一度武器屋を寄りましょうよ。」

 

「そうだな。」

 

「賛成だ。」

 

じゃないと、賭けに負けるからな。

 

「私の装備品を買ったほうが明日には今日行くより先に行けますよ?」

 

空を見上げると夕方を過ぎようとしていた

 

「そういえば、そうだね」

 

「…………」

 

城下町に戻った来人達は武器屋へと再び顔を出した。

 

「お、盾のあんちゃんと鎧のあんちゃんじゃないか。他の勇者達も顔を出してたぜ?」

 

儲けて嬉しいのかエルハルトはニコニコ笑顔で来人達を迎え入れた、よほど儲かったんだろうな。

 

「そうだ、これって何処で買い取ってくれるんだ?」

 

オレンジバルーン風船を見せるとエルハルトは店の外へと指を指す。

 

「魔物の素材買取の店があるから、そこに持ち込めば大抵の物は買い取ってくれるぞ。」

 

「ありがとう。」

 

「で、次は何の用で来たんだ?」

 

「ああ…マインの武器を買おうと思ってさ。」

 

尚文がそう答えるとエルハルトは俺の方を見る。

 

俺が無言でうなづくと、エルハルトは俺にだけ見えるようにサムズアップをしてみせる。

 

「予算額は?」

 

武器屋の親父に尋ねられると尚文は金袋を開けて中身を確認する。手元に残っているのは銀貨680枚だった。

 

「マイン、どれくらいにしといた方が良い?」

 

「…」

 

マインはとても真面目そうに装備品を見比べていて、尚文の言葉は耳に入っていない。

 

マインが選んでいる間、エルハルトが俺に話しかけてきた。

 

「おいおい、マジで買いにきたじゃねえかよ。」

 

「言ったろ?」

 

「ああ、だがまだだ。武器や防具を揃えずに戦って、そのあと武器や防具を求める。当たり前の光景だ。」

 

「確かにな。だが、勝負はまだ分からねえぞ?」

 

「ふ、勿論だ。まだお前が指定した装備を選んでねえからな。勝負といえばだ!暇潰しに値下げ交渉でも受けてやろうか?」

 

「良いのか?」

 

「構わねぇよ。あくまでも雑談みたいなもんさ。どんと、こい。」

 

店主は機嫌が良いのか、人が良いのか、そんな話を持ちかけてくる。

 

「そうか。ならば、遠慮はいらないな。8割引。」

 

「あんちゃん見た目に反してえげつねえな。いくらなんでもやりすぎだろ。 2割増。」

 

「俺がいた世界ではこのくらい当たり前だったぜ?そして、どさくさに紛れて増やして俺が気づかぬとでも?7割9分。」

 

「嘘つけ!それに、商品を見ねぇで値切る野郎には倍額でも惜しいぜ!」

 

「そちらから持ちかけてきた話じゃないか。忘れたとは言わせねえぜ?妥協して9割引!」

 

「チッ!2割1分増!」

 

「おいおい、更に増やすのかい?面白い。ならば、その漢気に免じて12割引。」

 

「ふざけんな!それじゃあ、こっちが金を払う事になるじゃねぇか!しょうがねえな‥5分引き。」

 

「甘い!まだまだ、行けるはずだ!9割2分--」

 

くだらない問答をしていると、マインが選び終わり戻ってきた。

 

持ってきたのは、可愛らしく凝ったデザインの鎧と、来人が想定していたものよりも値が張りそうな剣だった。

 

「勇者様、私はこのあたりが良いです。」

 

本当に俺が予言した装備だった為、目を丸くする。

 

「お?嬢ちゃん。それ値札は?」

 

「え?あ、ないですね。」

 

マインは鎧や剣をクルクルと回しながら値札が無いことを確認した。

 

「ああ、やっぱりな。そこに紛れてたか。実はその鎧と剣だが、すまねえ。非売品なんだよ。それの次に良い商品がこれなんだよ。これで我慢してくれ。」

 

そう言うと、カウンターから出て、商品を持ってくる。

 

マインは鎧のデザインを見て、一瞬嫌な顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。

 

「残念ですけど、これにしますね!」

 

「いくらですか?」

 

「銀貨370枚だ。」

 

「じゃあ、ここは俺が‥」

 

「いや、俺と割り勘にしよう。」

 

尚文が払おうとしたため、割り勘を申し出た。

 

買い物を済ませた来人達は店を出ると宿屋へ移動した。

 

「二部屋で頼む。」

 

「はいはい。ごひいきにお願いしますね。」

 

宿屋の店主が揉み手をしながら、来人達を部屋へと案内する。

 

その後、宿屋に併設している酒場にて、別途料金の銅貨5枚の食事を3つ注文する。

 

森からの帰りがけに購入した、地図を広げながら、来人は尚文とマインと打ち合わせをした。

 

「この辺りが、今日俺らが魔物を狩った森で合ってるんだよな?」

 

「ええ、そうです。そして、明日行くとすれば、この少し先のラファン村の先のダンジョンが良いかも知れませんね。」

 

「ダンジョンか。なるほどな、面白そうだ。」

 

マインの話を聞きながら、地図を頭に叩き込む来人。

 

Lv上げをする際に場所というのはかなり重要になってくる。

 

それは昨日奴らも言ってた事だ。

 

「ところで、勇者様達はワインは飲まれないんですか?美味しいですよ?」

 

食事を頼む時、マインが店員と話していたが、その後一緒にワインが運ばれてきた。

 

他の客のテーブルを見た所、このワインはセットではないらしい。

 

「俺はいいや。」

 

「俺もあんまり酒は好きじゃない。」

 

「そうですか‥残念ですね。」

 

「明日も早いから俺は寝る。」

 

「じゃあ、俺も。」

 

「それじゃあ、私はもう少し飲んでますね。」

 

こうしてマインと別れて来人たちは部屋に入る。

 

尚文は疲れがたまっていたのか、すぐに寝てしまった。

 

 

さて、展開通りなら今夜枕荒らしにあう。本来なら撃退してやってもいいが、展開を変えると後々帳尻を合わせないと世界が狂う。

 

‥‥向こうは俺たちを散々な目に合わせるんだ。イタズラの一つや二つ構わねえだろ。

 

俺はウォズのベルトを巻き、未来ノートを出す。

 

そこにサラサラと書き込み、本を閉じる。

 

そして眠った。

 

次の日

 

 

「おい!起きてくれ!やられた!」

 

「あ?何がだよ?」

 

「俺の装備も金もない!」

 

来たか。俺の装備は‥ある。金もある。

 

やはり尚文だけを狙ったか。

 

すると部屋の扉を蹴破るようにして兵士達が入ってきた。

 

「盾と鎧の勇者だな?」

 

「ああ、それがどうした?サインなら、また後でにしてくれ。寝起きなんだ。」

 

「国王様から貴様等に召集命令が下った。ご同行願おうか。」

 

「召集命令?いや、それよりも俺、枕荒らしに遭っちまったんだ。犯人を――」

 

「さあ、さっさと着いて来い!」

 

「おい、少しくらい話を聞いてやったらどうだ?」

 

「黙れ!」

 

そう言いながら俺の腕を掴む兵士。

 

それにイラッときたため、トランスチームガンを出し、右手からスティングヴァイパーを出して目の当たりで寸止めする。

 

「ひっ!」

 

「なんだ、てめえ。その言い方は。さっさと手を離せ。さもないと両目に刺さるぞ?」

 

兵士は俺を睨んだまま、離さない。

 

「俺は本気だ。」

 

そう言うと、舌打ちしながら手を離した。

 

「さあ、連れてけよ。俺たちを。」

 

 

来人達は兵士達に連れられて歩く。

 

そして王城につき、騎士達が拘束しようとするが、来人がつぶやく。

 

「触るな。少しでも触れてみろ。暴れるぞ?」

 

先程の場面を見ていた騎士達は、少し間をとって囲み、謁見の間に通される。

 

そこには、不機嫌な面持ちの王と大臣、そしてマインや元康、練、樹がいた。

 

「やあ!皆さん、お早いお着きで。それとマイン。君は宿屋にいるものと思っていたが?てか、お前さっきからどうした?」

 

マインは、来人が声をかけると元康の後ろに隠れて、睨みつけていた。

 

そして苦しそうに腹を抑えている。

 

これが俺がやったイタズラ第一号。金と鎖帷子を盗んだ者は我慢ができないほどの腹痛に悩まされ、3日間トイレに行きっぱなしになる。というものだ。

 

ほう、耐えてるのか。だがいつまでもつかな?

 

「ぐっ‥なん‥でも‥ありません‥」

 

その後、無言で走り去っていった。トイレだな。

 

「で?俺達が何かしたか?心当たりが無いんだが。」

 

マインがいなくなったため、王を見つめながら、少し困った様に問いかける。

 

「本当に身に覚えが無いのか?」

 

元康が仁王立ちになり、来人と尚文を問いただす。

 

「ねえな。」

 

「俺もだ。」

 

「本気で言ってんのか!?まさか、お前らがそんな外道だとは思わなかったぞ!」

 

「外道?は?何言ってんだ?てか、その鎖帷子どうしたんだよ。」

 

「これか?昨日マインがプレゼントだって言ってくれたんだよ。」

 

「そうか。」

 

来人の返答を他所に、裁判所の様な雰囲気で話が進んでいく。

 

「して、盾と鎧の勇者の罪状は?」

 

「罪状?何かやったのか?」

 

「黙れ!マインが言ってたぞ!昨日酒に酔ったお前らがマインの部屋に乱入して服を引きちぎると無理やり関係を持とうとしたって!そのあと、あの子はお前らを振り払って俺に助けを求めにきたんだよ!」

 

「何言ってんだ? 昨日、飯を食い終わった後は部屋で寝てただけだぞ。」

 

「嘘を吐きやがって、じゃあなんでマインはあんなに泣いてたんだよ!」

 

「あれは悲しくて泣いてたんじゃねえだろ。完全に腹痛で泣いてただろ。」

 

来人は元康に反撃する。

 

「そうだ! 王様! 俺、枕荒らし、寝込みに全財産と盾以外の装備品を全部盗まれてしまいました! どうか犯人を捕まえてください!」

 

「てか、そもそも俺らは指一本マインには触れてません、証拠はあるんですか?」

 

「黙れ外道共め!」

 

国王は尚文と来人の進言を無視して言い放った。

 

「嫌がる我が国民に性行為を強要するとは許されざる蛮行、勇者でなければ即刻処刑物だ!」

 

「だから誤解だって言ってるじゃないですか! 俺はやってない!」

 

「落ち着け、尚文。俺に任せてくれ。」

 

「マインの証言通りなら、彼女は何かしら痣なり、擦過傷を負っている筈だ。それを確認してくれ。」

 

「それとだ。俺は昨日金と鎖帷子を盗まれても分かるように、ある細工を施した。一つは金と鎖帷子を盗んだ者には3日間トイレにこもりっぱなしになるレベルの腹痛。そしてその盗まれた鎖帷子を俺の許可なく着た者には俺が許可するまで着たら最後、一生脱げないようにした。もちろん無理に脱ごうとしたら皮膚ごと脱ぐことになるだろうな。他には鎖だからランダムで鎖で縛られたかのように行動不能になる呪いだな。」

 

それを聞いた元康は青い顔をして鎖帷子を引っ張ってみる。

 

俺はそれを見たが、あえて気がつかないふりした。

 

「俺たちはやっていない。だが信じられないのだろう?なら全ての波が終われば俺達を殺せばいい。王が考えうる最も残酷な方法で。」

 

「ふむ‥確かに勇者を今殺す訳にはいかん。‥よかろう。それまで待ってやろう。」

 

「それと、これを。」

 

俺は貨幣が入った袋を床に置く。

 

「ここに俺が王に渡された全財産が入っている。多少使ったが。これを王とマインで分けてくれ。」

 

「よかろう。好きにせい。」

 

 

「ふん!強姦魔が偉そうに!罪を認めないつもりか!」

 

「黙れ、マインが尚文から盗んだ鎖帷子を勝手に着ているくせに。違うというなら今すぐ脱いでみろ!」

 

「ぐっ。」

 

 

そこに錬と樹の援護射撃が加わった。

 

「おい、お前それマジで尚文のじゃねえのか?」

 

「な!?ち、違う!マインが買ってきたって!」

 

「ならば、彼がいう通りに脱げばいいんですよ。脱げば。」

 

 

「いや、錬、樹。いいんだよ。こいつが違うって言ってんなら違うんだろう。そうだろ?元康?」

 

「‥ああ。」

 

「と、いう訳だ。俺たちは行く。あばよ。」

 

 




※主人公はエボルトボイスの時だけ、エボルトっぽい口調になります。

変身
ブラッドスターク
ウォズ(変身せず、未来ノートだけ使用。)

※また値切りのシーンは原作のコピー扱いになるかと思いましたが、このシーンは個人的に好きなので、あえて残します。
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