「アイツ‥あれ反則じゃねえのか?」
俺は1人ベンチに腰掛けて考え込んでいた。
「‥‥考えるのやーめた!どうせ倒したし。」
いよいよ、決勝か。ここまで勝ち進んだんだ。どうせなら勝たなきゃ。
(ライト殿。こちらセバス。)
(セバス。こっちは勝った。残すところは決勝だ。そっちは?)
(ええ、こちらも黒風のアジトを突き止めました。これから偵察をして潜入します。それでは。)
と、念話をきった。
「1人かぁ。こういうパターンってありがちなのは、ボスがアジトに居なくて、俺の近くにいるんだよなぁ。」
暇すぎたのか、ついつい俺はゲームやフィクションでよくあることを考えてしまう。
ダメだな、錬達にゲーム感覚で物を考えるな!って言ってる俺がこんなんじゃ。
そして時間が経ち決勝が始まったのだった。
「来場の皆様!本大会最後の試合となりました。片時も目を離すことができない素晴らしい対決となることでしょう!それでは!」
「ブルーゲートよりライト・ダテ選手入場!」
「レッドゲートよりテイラー・ガーディアン選手入場!」
実況の声と観客の声援に後押しされ俺が入り、続け様に対戦相手が入ってきた。
しかし、対戦者テイラーは立ち止まらずに俺の方へと歩いてきた。
そして握手をしようと手を出してきた。
「よろしく」
「お、おう。」
「鎧の勇者様VS稀代の若き魔術師の世紀の一戦!果たして稀代の魔術師に勇者の実力を見せつけて勝つか!それとも稀代の魔術師が勇者を食らうか!」
「試合!開始!」
すぐさま俺はエイムズショットライザーをバックルに装着する。
そしてクルクルと顔の前でプログライズキーを回して止め、ボタンを押す。
ダッシュ!
そしてエイムズショットライザーに入れる。
あれ?
俺はプログライズキーを取り出してもう一度ボタンを押してショットライザーに入れる。
‥‥なんで認証されないんだ?
「どうしたのですか?」
テイラーも戸惑っているのか、俺の事を奇妙な目で見てくる。
‥‥壊れたか。仕方ない。
俺はショットライザーを仕舞い、新たにレイドライザーを巻いた。
レイドライザー!
そして、先程とは違うプログライズキーを出し、ボタンを押した。
ハント!
「実装」
レイドライズ!
ファイティング!ジャッカル!
"Deciding the fate of a battle like a Valkyrie."
(バルキリーのように戦いの運命を決める。)
俺はファイティングジャッカルレイダーに変身していた。
そしてテイラーは杖、俺は大鎌テリトリーサイズを構えて睨み合う。
先に動いたのはテイラーだった。
「行きますよ!シャドーハンド!デザードハンド!」
杖をクルクルと器用に回し俺に杖を向けると空中から黒い手が2つ、地面から茶色い手が2つ現れた。
「やれ!」
空中と地面の計4本の手が俺に一斉に襲いかかってきた。
それを俺はジャッカルレイダーの能力による高速移動で避けていく。
迫りくる手を躱し、とうとうテイラーの目の前に辿り着く。
そして飛び上がり、大きくテリトリーサイズを振り下ろした。
だが!
ガキンッ!!
テイラーに届くことはなかった。
まるで透明な膜に弾かれたかのようだった。
「防御結界‥」
「ご名答。しかし貴方の敵は私だけではない事をお忘れですか?」
その時だった。
背後から迫りくる2本の手に反応できずに掴まれてしまった。
「な!?しまった!?」ガシッ!
シャドーハンドに掴まれた俺は持ち上げられた俺は斜め下に投げつけられる。
そこを待ち構えていたデザードハンドがキャッチし、もう一度上へと投げられる。
そしてまたシャドーハンドに捕まり、今度は俺を握り潰そうと手を握る力を強め始めた。
「グォァァァァァァァァ!!!!!!!」
「ふむ、いつもなら聞こえる骨が折れる音がしませんね。シャドーハンド!地面に叩きつけなさい。」
テイラーの声が聞こえたのか、シャドーハンドが俺を地面へと投げ飛ばす。
このまま直撃はマズイ!いくら俺が勇者補正があったとしても死ぬ!
持ってくれよ!俺とテリトリーサイズ!
俺は地面へと接近する中、テリトリーサイズにエネルギーを貯め始める。
いよいよ地面!
「どりァァァァァァ!!!!!」
俺は地面にぶつかる瞬間、テリトリーサイズを頭の上で振り被り思いっきり地面に叩きつけた。
ドゴォォォォォォォォン!!!!
大地を砕くように思いっきり叩きつけたお陰で足が少し痺れた程度か。
「うん?うおっ!?」
俺が顔を上げるとまさに眼前に大きな砂の拳が迫ってきていた為、俺は拳に合わせるようにサイズを振るった。
ドッバァーン!
砂の拳は斬り裂かれた所から飛び散る。
「くっくっく。相手は砂ですよ?」
テイラーが笑うとフィールドに飛び散った砂が徐々に集まり出し形を形成すると、また手の形に戻ってしまった。
「キリねぇな。」
(ライト殿!)
セバスからの念話か。なんだ、こんな時に。
(黒風のボスの正体が分かりました。巡回していた者を締め上げた所、名前を吐きました。)
(どうやら名前と顔を変えていますね。だから今まで網にかからなかったようです。)
(それでそいつの名は!今どこに。)
(驚かないでください。奴の名はテイラー・ガーディアンです。)
「テ、テイラー‥」
(むっ!今、五感共有で確認しましたが、なんと!)
「おや?何か懐かしい気配がしましたが、貴方でしたか。セバスチャン。貴方‥見ていますね?」
な!?コイツ‥そんなのも気づけるのか。
(そして見た所、あやつの左腕についているのは封じの腕輪。効果を発動する事で相手の能力を封じ込める力を持つもの。)
「ご名答。そこまで分かった貴方にヒントをあげましょう。私の腕輪を壊せば貴方の変身能力は戻りますよ?」
「わざわざ答えを言ってくれるなんて、随分余裕なんだな。」
「ええ、分かったところで私は4つの手と防御結界に守られていますからね。そうそう、クロノ族の女性を今日捕獲しましてね。彼女はいいですね。あの反抗的な態度‥!ますますそそりますねえ!」
クロノ族‥やはりコイツらがルカを!
「さて、私の魔力が尽きるのが先か、貴方がやられるのが先か。果たしてどちらでしょうねぇ?」
その頃、セバス達は‥
クロノside
「皆のもの。今私はライト殿の目を借りて奴の腕輪を見た。封じの腕輪の他にもう一つ右腕にも腕輪をしていた。」
「右の腕輪?私らが討伐しに行った時についてたやつかい?」
「ええ、アルマ。そのようですね。」
アルマ。と呼ばれた黒いフードをかぶった女性の魔術師が杖を握り直しながらセバスに聞く。
「一応見せておくれ。どんな腕輪か。」
「ええ、これです。」
そう言うとしゃがんだセバスの頭にアルマが手を乗せて目を閉じた。
「‥これは‥間違いない。魔力受信機能付きの腕輪だねぇ。」
「って、ことはなにかい?アルマ。あの建物の中に魔力送信機があるってことかい?」
「そうだね、ヘイゾ。間違いないよ。」
ヘイゾと呼ばれた白髪のボサボサ髪の侍が顎をさすっていた。
「このステラ。いついかなる召集にも遅れを取らぬよう日々精進していました。今日こそ黒風を終わらせますよ。」
「うへぇ‥ステラはこの年になっても変わんねえな。まだ精進してんのかよ。」
「ええ、買って兜の緒を締めよ!っとヘイゾさんの生まれ故郷の言い伝えにあるではありませんか。」
「けっ!んなもん興味ねえよ!ところでよ!」
なんなんだ、この人達は。
まず僕のノワールおじいちゃんが元影だってことが意外だよ。あんないつも縁側で陽に当たりながらお茶をすすってのほほんとしてるのに。
「どうしたんじゃ、ラックや。戸惑っておるのう。まあ、仕方ないじゃろうな。こやつらは昔からこうなのじゃから。」
「セバスさんから聞いたんだけどおじいちゃんって僕と同じって本当?」
「うん?ああ、本当じゃ。ワシは生まれつき闘気が少ない。その為、ワシは独自で闘気の無駄のない使用法を編み出したんじゃよ。」
「さて、そろそろセバスが行くと言うじゃろう。」
「では、行こうか。」
セバスさんの声で全員が気合を入れ直し、アジトへと侵入したのであった。