鎧の勇者の成り上がり   作:JOKER1011

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51話

あれから城の伝令によりフォーブレイがメルロマルクに侵攻することがわかり、城内での騒ぎがやがて城下に伝わりメルロマルクは慌ただしい雰囲気に包まれた。

 

そして尚文が目覚めた。

 

「ナオフミ様!」

 

ラフタリアが目覚めた尚文の手を握る。

 

 

「よう、尚文。」

 

「来人か。」

 

「女王とババアは?」

 

「女王は一命は取り留めたが目を覚まさねえ、老婆は‥無事だ。まだベッドから離れられねえがな。」

 

「お前は一部奪われたらしいな、盾を。」

 

「ああ、お前は?」

 

「戻ってきた。いや違うな。奴が返した。」

 

「返しただと?」

 

尚文は驚きながら聞き返してきた。

 

「ああ、返してきた。そのあと確認したが全部使えるようになっていた。それよりもだ。まだこっちには一人七星勇者がいんだろ?」

 

「なるほど。そいつの目を覚まさせるんだな。」

 

俺とラフタリアで尚文に肩を貸しながら女王が眠る病室に入る。

 

そこにはクズとメルティが椅子に座って女王を見ていた。

 

「ナオフミさん、ライトさん。」

 

「悪いが俺達とクズだけにしてくれないか。話がある。」

 

「う、うん‥」

 

「行こう、メルちゃん。」

 

ラフタリアがメルティを連れて部屋から出ていったのを確認して俺はクズを見た。

 

俺達が召喚された日、玉座で踏ん反り返っていた男とは分からないほどに沈んでいた。

 

抜け殻のようなそんな感じだ。

 

「アンタ‥女王から言われたことがあるらしいな。」

 

「‥‥‥‥笑いたければ笑え。愛する者を守れない愚かな私を。」

 

俺の問いに答えないのか分からないが言葉を絞り出すように言った。

 

「いいや。そんな事はしない。」

 

「俺もだ。」

 

俺と尚文がクズを挟むように椅子に座る。

 

「今更、ワシに何ができるのだ。ワシは名前の通りのクズじゃ。ワシのような愚王に国を任せては滅ぶ。お主らに任せる。」

 

「あ?何言ってんだ?お前。」

 

「聞いたぞ!女王はアンタに国を任せると!それでいいのかよ!アンタは愛する妻から託されたんだろ!この国を!だったらやれよ!」

 

尚文も声を荒げだす。だがクズは答えることなく俯いてしまった。

 

「お前の言い分はよくわかった。なあ、尚文。」

 

「ああ、そこまで言うなら俺達がやってやる。フォーブレイを滅ぼしてメルロマルクとフォーブレイは俺達のモンだ。そうなった場合、クズ。お前は真っ先に殺す。想像がつかない程の拷問の末に殺してやる。そうだ、来人。メルティどうする?」

 

「そうだなぁ、性奴隷とかはどうだ?まだ幼いが今から仕込めば上物になるだろ。」

 

「だな。俺達が飽きた後は売っちまうのもいいな。なんせ元王族ってブランド付きだ。そういうコレクターが喉から手が出るくらい欲しがるぞ。それに俺達が一生遊んで暮らせる程の金が入ってくる。」

 

「ああ、決まりだ。それに俺達に歯向かう奴らは国ごと滅ぼしてやればいい。俺がこの手を振るだけで国は一夜で滅びるぞ!」

 

俺達が好き勝手な事を言うのに腹を立て、とうとうクズは立ち上がった。

 

「貴様らの好きにはさせんぞ!」

 

拳を握り俺達に殴りかかった。

 

俺達はそれを避けずにくらった。

 

いてぇな、口の中から鉄の味がしやがる。

 

「ワシが‥ワシが愛したミレリアの‥!妻の愛した国や娘‥この国に住まう民はワシが守る!」

 

「そうだ!その粋だぜ!賢王!」

 

「ならば再度問う。お前の妻は俺達に国を任せたと言ったのか?違うだろう?お前に任せたんだ!杖の勇者にして英知の賢王! お前が……何よりも愛した女の言葉を守れ!」

 

「そうじゃ‥ワシは叡智の賢王にして杖の勇者‥ワシの目は曇っておったようじゃ‥」

 

「じゃが‥それはもう晴れた。ワシがなすべき事は妻のそばでメソメソと泣くことではない!妻の愛したこの国を守ること!過去にワシがした事は到底許されることではない。そなたらもワシが憎かろう。じゃが、そなたらの力無くしては勝てん。力を‥貸してください!」

 

クズは椅子から立ち上がり、ひざまづくと頭を床に擦り付け始めた。

 

「頭を上げてくれ。」

 

「上げませぬ!ワシがお主らにした事を考えれば‥償っても償いきれませぬ!」

 

「もうわかったから。言葉じゃなくて行動で示してほしい。尚文もそれでいいだろう?」

 

「ああ、俺は女王にこの国に協力すると約束した。俺はそれを守るだけだ。」

 

「へっ!素直じゃねえんだからよ。さあ、立ってくれ。俺達の大切な人達を傷つけたフォーブレイを打ち負かしてやろうぜ!」

 

「はい!」ビシッ!

 

俺達に左手で敬礼をしたその時だった。突如、クズの右手が光りだし、光が収まると杖が握られていた。

 

「杖が‥ワシをまた勇者と認めてくれるのか‥」

 

「良かったですね、さてこれからはなんてお呼びすれば?」

 

「いや、クズで良い。これはワシがお主達にした事への一生をかけた償いじゃ。このままで良い。」

 

「わかりました。ではクズさん。会議はもう始まっています。共に行きましょう。」

 

「ああ。行ってくる、ミレリア。目が覚めたワシを見ていてくれ。必ず守ってみせる。」

 

そう言い残し、俺達は病室を出た。

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