城の庭で行われた尚文と元康の決闘は、序盤は尚文が優勢だった。俺も驚くほど。
だが尚文は負けてしまった。実力‥ではなく、横槍によって。
犯人はマインだ。
「ちくしょう!尚文は横槍で負ける。そういうことか!」
来人は女神からネタバレを受けていたが、詳しい内容は聞かされていなかった。
聞かされたのは、尚文と元康が決闘して元康が勝つ。という情報だけだった。
「おい!待てよ!今のは不正だ!お前の仲間が横槍を入れたのを見たぞ!」
「は?お前何言ってんだ?」
「お前の仲間が卑怯にも魔法で尚文を狙い撃ちしたって言ってんだよ!」
「はっ!何を言うかと思えば‥それ負け犬の遠吠えってやつだぜ?てか証拠あんのかよ?」
「お前‥!マジで言ってんのか!ああ?」
「俺たちも見た!その女が卑怯にも魔法を放ったのをな!お前らも見たはずだろ!」
ナーガが、マインが魔法を放ったのを証言し、周りのみんなにも証言を求めた。
しかし、誰一人何も言わずに目を逸らしたり、俯いているばかりだ。
「この人間共‥!」
ピーターが拳を握りしめて怒りに震える。
「モトヤス殿よ。罪人の勇者とその仲間の言葉に耳を貸すことはない。儂が認める。そなたの勝利だ!」
「流石ですわモトヤス様!私信じておりました!」
「あぁ!ありがとうな!」
元康と抱き合うマインの姿を見るだけで吐き気がする。
そうか、こいつら最初からこれが目的だったのか。尚文と決闘した元康を、どんな手を使ってでも勝たせ、尚文のパーティの中で唯一攻撃ができる奴隷出身のラフタリアを救済すると言う名目で奪い取り、尚文の心を完全にへし折るってか。
「見事だったぞ!モトヤス殿!」
「はっ!」
元康のもとに王がやってきて、マインと一緒に勝利を称えだす。
「流石は我が娘マルティが選んだ勇者だ!」
「えぇ、パパ。」
「それにしてもマインが王女様と知った時は驚いたよ。」
「はい!私も世界平和の役に立ちたくて!」
貴様らがやってる事は世界平和への貢献じゃねえ、吐き気を催すほどの邪悪だ。
だが、お前らの計画には誤算があるぞ。それは‥
「尚文様!」
ラフタリアが悲痛な声をあげた。
俺はすぐにそちらを見る。
すると、そこには膝をつき、目に見える程の邪悪なオーラが身体中から溢れ出している尚文がいた。
「尚文!」
俺は尚文に近寄った。
「寄るな!」
俺は思わず立ち止まってしまう。
「俺は…やってない‥やって‥ないんだ‥」
尚文は涙を流しながら、壊れたロボットのように呟き続けている。
尚文‥
俺はまたクズどもの方を見る。
貴様ら‥人の人生をここまで狂わせておいてそんなに楽しいか!貴様らは人間じゃねえ!
その時だった。
パァン!
音がした方を向くと、ラフタリアが元康にビンタをしていた。
「この卑怯者!!!!」
よく見るとラフタリアも泣いていた。
「なっ!?モトヤス様になんて事を!」
「私がいつ助けてくださいなんて頼みましたか!」
「で、でもラフタリアちゃんはあいつに酷使されてたんだろう?それにほかの奴隷だって!」
「貴方がナオフミ様とライトさんの何を知っているのですか!ナオフミ様はいつだって私に出来ない事をさせませんでした!私が怯えて嫌がった時だけ戦うように呪いを使っただけです!ライトさんの事も聞いています!自分たちを平等に人間のように接してくれて、家族とも呼んでくれたと!」
「それが駄目なんだよ!誰にだって権利はある!戦いは本来強要するもんじゃないんだ!それに来人が言う家族なんて言葉もただの戯言だ!」
「ナオフミ様は武器が何一つ使えないのです!ならば!誰かが戦うしかないじゃないですか!それを私は引き受けたんです!それに私はライトさんを見てきましたが、彼が使う家族って言葉は決して戯言なんかじゃありません!」
「だからといって君が、その役目を担う必要なんてないだろ!きっと奴らのことだ!ボロボロになるまで使われるに決まってる!!今はそうじゃなくても、いずれそうなる!!君も!他の奴隷も!」
「ナオフミ様もライトさんも私達を必ず守ってくれます!疲れたら休ませてくれます!!それに私達は自ら進んで仲間になって戦う事を決めました!!」
「嘘だ!尚文と来人はそんな奴じゃ‥そうだ!君達は奴隷紋を結んでいる!そう言わないと呪いが発動するように設定されてんだろ!」
「これを見てまだあなたはそんな事が言えるのですか!だったら貴方は病を患ったいつ死ぬかもしれない奴隷に手を差し伸べる事が出来ますか?」
「ナオフミ様は私が食べたいと思ったものを食べさせてくださいました!病で苦しむ私に貴重な薬を分け与えてくださいました!貴方にそれが出来ますか!」
「ライトさんも同じです!あの人は言っていました。今回は仕方なく彼らと奴隷紋を結んだが、いずれは外す。その時に晴れて俺たちは真の家族になれるんだって!貴方は心の底からそんな事が出来て、心の底からそんな事が言える人間ですか!」
「で、出来る‥!少なくともアイツらよりかは‥!」
「なら貴方の隣には私ではない別の奴隷がいる筈です!それに!ナオフミ様とライトさんの事をよく知りもしない癖に少なくともなんて軽々しく言わないでください!」
尚文‥お前良い仲間に出会えたな。ラフタリアは君の事をここまで思ってくれる、この子がいたら尚文は大丈夫だ。
言いたい事を言うと、ラフタリアは流れる涙を拭いながら、こちらへ歩いてくる。俺はラフタリアの方へ歩く。
「ラフタリア、尚文をこれからも頼んだぞ。」
「ライトさん‥はい!」
「今の彼を救えるのは一番彼と長くいる君だけだと思ってる。」
「私が‥ですか?でも何をすれば‥」
「簡単な事だ。そばにいてやってくれ。尚文が絶望に飲まれそうになった時、寄り添い、手を差し伸べて絶望からすくい上げてくれる存在になってくれ。そういう存在がいて‥自分は一人じゃないって思えた時、人は救われるもんさ。そして。」
俺はそこまで言うと目を鋭くする。
「後は任せろ。尚文の分も君の分も仇をとってやる。」
「は、はい!」
ラフタリアは俺の殺気に当てられたのか、一瞬ビクッとなるが、力強い返事をしてくれた。
俺は王、マイン、元康を睨みながら歩く。
俺から尚文に似たオーラが出てるのが分かる。
その時、システム音声が聞こえてきた。
カースシリーズを解放します。
条件達成により、ディケイド激情態、オーズプトティラコンボ、ビルドラビットタンクハザード、鎧武・闇を解放します。
「なんじゃね?ライト。」
「‥せろ。」
「は?」
「約束だ。元康と戦わせろ。」
「‥ああ、いいぜ。来いよ!」
俺たちは再び舞台に上がり、対峙する。
「お前は騙されてる側かもしれんが、そんなもんでは許されない程、お前はやりすぎた。もうこれ以上‥」
「俺の心を滾らせるな!!!!」
俺はガシャットギアデュアルを出して、ダイヤルを回す。
KNOCK OUT FIGHTER!
The strongest fist! Round 1 Rock & Fire!
「変身!」
DUAL UP! Explosion Hit!KNOCK OUT FIGHTER!
俺は仮面ライダーパラドクス ファイターゲーマーに変身した。
「覚悟しろ、クズやろう。立って帰れると思うなよ。」
「な‥マインが言ってた姿と違う‥だが!覚悟するのはお前だ!返り討ちにしてやる!」
元康が槍を構えて突っ込む。
「乱れ突き!」
尚文にやったみたいに槍の刃先が俺に迫る。
悪いな、全部見えるんだよ。
俺はそれを全て最小限の動きで避ける。
元康はもう一度乱れ突きをしようとするが、またしても鎖帷子の呪いにより動きが止まってしまう。
「今度はこっちの番だ!」
マテリアライズスマッシャーを振りかぶり突き破るように思いっきり腹に食らわせて、吹き飛ばす。
元康はゴロゴロと地面を転がるが、なんとか体勢を整える。
「くそ‥なんで鎧のくせにこんなに攻撃力があるんだよ‥」
マテリアライズスマッシャーの効果により防御を無効化、そして爆発する拳によるダメージを受けたのに元康は槍を支えにしてヨロヨロと立ち上がる。
「なぜだ!なぜ尚文の肩を持つ!お前だけは尚文を切って王に擦り寄れば、許してもらえるはずなのに!」
その言葉を聞き、俺は元康の顎を思いっきり蹴り上げる。
「ガハッ!」
俺に蹴り上げられた衝撃で亀のようにひっくり返る。
「当たり前だろが!俺も尚文もやってねえからに決まってんのが、まだ分からねえのか!!いい加減目を覚ませ!!!」
俺がトドメを刺そうとした瞬間、またしても魔法が飛んできた。今度は量が多い。おそらくリユート村で俺たちに攻撃してきた騎士団のも含まれているだろう。
だが、俺にはちょうどいい盾があるじゃないか。
俺は咄嗟に元康の胸倉を掴み上げ、盾にする事で事なきを得る。
「キャアアァァ!!!モトヤス様!!!!」
まさか来人が元康を盾にするとは思ってなかったのか、マインは悲鳴をあげる。
「鎧の勇者!!貴様卑怯だろうが!」
騎士団長が俺を非難する。
「なんのことだ?俺は盾が転がってたから使っただけに過ぎん。それでも誰が悪いか問いたいなら‥‥近くにいたこいつが悪い。そして‥」
「マインッッ!!!!!また貴様かッッ!!!!!!!!」
俺は変身を解き、カースシリーズによって解放されたベルトを巻く。
すると体から三つのメダルが飛び出したため、それを掴んでベルトにセットする。
キン!キン!キン!
スキャナーがメダルを読み取る音が響く。
その瞬間、俺の目が紫色に変化した。
「変身!」
プテラ!トリケラ!ティラノ!
プットティラーノザウルース!
仮面ライダーオーズプトティラコンボに変身した。
「観衆が邪魔だな‥ふん!」
手を振るだけで周りを全て凍らせ、これ以上妨害が出来ないようにする。
「な!?一瞬でこれほどの氷を‥な!?マイン!!!」
元康はマインを見つけて絶句する。
マインは来人が放った氷に串刺しにされていた。
「安心しろ。傷口を凍らせてるから失血では死なん。だがお前が早く俺を倒さないと死ぬだろうな?」
「貴様!!マインは無関係だろ!」
「まだ分かんねえのか!奴はお前が勝てるようにと横槍を入れてんだよ!お前が尚文に勝ったのはお前の実力じゃねえ!横槍のおかげだ!」
「黙れ!証拠もねえ癖に好き勝手言うな!」
「情けねえもんだよな!21歳になってもまだ、自分一人の力で戦えないなんてな!あ!そうか!お前は槍の勇者だから''横槍''も立派な槍の攻撃だって言いたいのか!失礼したよw」
「黙れ!マインを今すぐ元に戻せ!」
「断る!それより早くしたらどうだ?本当に死ぬぞ?」
「この外道が!」
元康は槍を振るうが、そんな攻撃に当たってやるほど今の俺は優しくない。
槍を掴み、引き寄せると顔面を殴り抜く。
鼻血を吹き出しながら元康は仰け反った。
のけぞらせた事で元康から距離を取れたことを確認すると俺は地面に手を突っ込む。
そこから出てきたのはプトティラコンボ専用武器メダガブリューだ。
「終わりだ!」
斧の形にして振り下ろす。
だが、それを元康は槍で受け止める。
「ぐっ、重い‥な!?力が!」
跳ね返そうと力を込める。しかしまたしても鎖帷子の呪いにより動きを止められ、力が抜けてしまう元康。
「話にならん。」
俺は槍に集中している事でガラ空きになった腹に渾身の前蹴りを叩き込んだ。
元康は吐血しながらも槍を支えにして踏ん張ろうとしたが、それすらも力が入らずに前のめりに倒れる。
「おい、コラ。まだ勝負は終わってねえぞ?」
意識を失った元康をゲシゲシと蹴り続ける来人。
「オラ!さっさと立て!お前からまだ''降参''って言葉を聞いてねえぞ!早くしねえとマインが死ぬぞ?それでもいいのかー?」
反応はもちろんない。それでもゲシゲシと蹴り続ける。
その頃には観衆も、ようやく事態の深刻さに気付き始めた。
ザワザワと声が聞こえ始める。
「おいおい、あれ止めないと死ぬんじゃねえか?」
「誰が止めるんだよ?止めに入ったら俺たちまでやられるぞ?」
騎士団も止めに入りたいが、来人の暴力的なパワー、そして槍の勇者が、ここまでボコボコにされている、しかも王女を人質に取られているせいか、武器に手をかけたまま動けずにいた。
「あ、そう。じゃあ王様!俺の声聞こえてんだろ?早く決闘を止めないと、この斧で元康の首を刎ねて、マインにもトドメを刺すぞー!」
だが、王様から中止の声がしない。
「よし、わかった!残念だったな!元康にマイン!お前ら捨てられたらしいな?じゃあ処刑5秒前! 4!3!2!」
「「はあっ!」」
その時、周りを囲っていた氷の一部が砕け、錬と樹が入ってきた。
「もうやめてくれ!」
「そこまでです!」
二人とも、武器を抜いているが、俺に向けず下に向けている。
「ああ?なんだ、お前ら。あれか?仲間の勇者がやられてるから敵討ちってやつか?いいぜ?元康とマインを葬ってから二人同時に相手してやるよ。」
来人は元康の頭を踏みつけながら言う。
「俺たちは見ている!マインが尚文に魔法を放ったのを!」
「お前らは見たってのか?これだけの観衆がいて誰も答えないのにか?」
「ええ!」
「そうか!だが王からまだ中止の声を聞いてないからな?つまり、まだやれってことだろ?」
そう言いながら、更に力を込めて頭を踏みつける。
「王様!もう止めてくれ!このままじゃ!本当に二人が殺されるぞ!」
「そうです!今回の決闘は盾と鎧の勇者の勝利です!さあ、早く!」
「だが‥鎧はまだしも、何故盾まで‥」
「この国では決闘の際に横槍を入れるのが、正義であり作法なのですか?」
「‥ぬう。分かった!此度の決闘は盾と鎧の勇者の勝利とする!」
「運が良かったな。元康。」
来人は元康の頭から足を退け、槍を持ったままの手を無理やり逆手にして元康の顔の横スレスレに突き立てた。
手首が折れたような音がしたが、知らん。
そして来人が変身を解くことで、氷は溶けてマインが解放された。
「早く元康殿とマルティの治療を!」
尚文のもとへ行くと、ラフタリアに抱きしめられて眠っていた。その顔は憑き物がとれたように穏やかだった。
「「「ライト!」」」
ピーター達が駆け寄ってくる。
「やりましたね!ライト!」
「ああ!見ててスカッとしたぜ!」
「ええ、あなたがやってくれて良かった。私なら迷いなく殺してたから。」
こうして宴は御開きとなった。
変身
パラドクス ファイターゲーマー
オーズ プトティラコンボ
伝説の武器を持っていない来人がなぜカースシリーズを解放できたのかは‥察してください。