GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
鉄塔の森の真ん中を突き進んで、スタート地点付近に戻った。そこでちょうど地面を転がってた……エミールさんと合流した。
「あの、エミールさん、無事ですか?」
「闇の眷属どもめ!」
はい?俺今なんて言われた?
「ここは僕の、騎士道精神にかけて、お前を土に返してやる!」
ああ、俺じゃなくてアラガミか。とにかくそんなわけのわからん宣戦布告をしたエミールさんは、ウコンバサラの顎での突き上げで弱5メートルを宙に舞った……何やってんだ、こいつ?
「おのれ、なかなかやる!だが、今度はこちらの番だ!必殺!エミール-スペシャルーウルトラ、クホッ!」
必殺技とか辞めてください!ロミオさんとかぶるんじゃないですか?!
「ちっ、一人で突っ走りやがって。おい、さっさと片付るぞ稀羅。」
「いや、ここは僕に任せてくれ!僕の騎士道を、君たちに示して見せる!」
騎士道とか長セリフ喋る暇があったら、一発でも入れてくださいよ。見てる側が辛いです。
「こっちも死力を尽くして相手しりゃあ!ゴホッ!」
はて、今度は何メートル飛ばされた?そろそろちゃんと測ってみるか。
「お前の騎士道に付き合ってる暇は無いんでな。さっさとやらせて貰うぞ。」
「まあまあ、あそこまで言うし、もうちょっと様子見てあげれば?」
「……と言っても次のミッションもあるぞ?」
「エミールさんがまたも同じ有様だったらその時に入ろうぜ。」
「ちっ、勝手にしろ。」
エミールさんもかなりお疲れのようで、息が上がっている。
「……ご、ゴッドイーターの戦いは……ただの戦いではない、この絶望の世において…神機使いは…人々の希望の依り代だ!」
おお、いきなり語りだしたぞ?あれか、遺言ってやつか?
「正義が勝つから、民は明日を信じ!正義が負けぬから皆、前を向いて生きる!故に僕は、騎士は、絶対に倒れる訳にはいかないのだ!」
「ちょっといいですか?さっきから倒れまくってるんですけど。」
「ぬおおおっ!」
こっちに貸す耳は最初からなかったみたいで、エミールさんは再度攻撃を仕掛けた。一見またやられそうだが、今度は何だか動きが違う。ほんの少しだけど……速くなってる。予想は正しく、今度は噛み潰しにかかったウコンバサラの攻撃をかわすように空中に逃げた。宙に留まったと思いきや、急降下したエミールさんは渾身の力で神機を敵の頭に打ち込んだ。重い一撃と瞬時に襲いかかった衝撃に、ウコンバサラは特に抵抗すらできずに倒れた……。
「や、やったぞ!騎士道の、騎士道精神の勝利だ!」
「はっ、馬鹿なりに筋は通った奴みてえだな。」
「うおおお!」
空に向かって轟き叫ぶエミールさん。まあ倒したことは本当だし、放っておくとしよう。
「援助があれだと先が思いやられるぜ。」
「ま、俺たちは俺たちのペースで続けるしかなさそうね。てか最初からああやってくれれば良かったものを。」
ギルと顔を合わせ、お互い何かを納得したと首を振った。
* * *
『帰投のヘリが間も無く到着です。お怪我とかは今のうちに申し出てください。』
別に怪我はないけど、違う意味で色々疲れちゃいました。
「全員無事だ。普通に帰れる。」
代わりに報告してくれるギルがありがたい。ただ、その代わりというか、エミールさんの話し相手を任されてしまった。
「諸君!これで証明して貰えたかね。我が騎士道を!」
「あーはい。多分。」
「冴えない顔だな。どうした、悔しいか?己の精神を貫く事出来ず?」
「いえいえ、ちょっと疲れただけです。」
「ほう、そうか。なら良いが。いくら神機使いとはいえ、無理は禁物なのだぞ?」
自分1人でウコンバサラを仕留めたということに、とにかく上機嫌な彼である。その討伐についての突っ込みは数え切れないと思うが。
「おい稀羅、一つ知らせだ。突撃隊からこっちとの合同任務がしたいってよ?」
「合同任務?」
「あっちだけじゃ手に負えない数とな。よって次の防衛ミッションはお預けだ。」
「そのお預けが気にかかるけど……まあ、了解。」
あれ、そういえば……ちょっとまてよ。
「なあ、エミールさんはどうするの?」
「援助に来た以上、無視はできないってさ。」
……頭を抱えたくなる。あれか、また騎士道とかを間近で聞かされなければならないのか。
「(耳栓あったらすごくいいと思うな……)」
「どうした、稀羅?」
「いやなんでもないです……」
「皆!ヘリが来たのだぞ!」
隅っこでこの先を想像し出す自分の頭に拳をいれた。むしろ空にしたほうが、絶対いいに決まってる。
* * *
「今回の討伐対象は、コンゴウ2体にヤクシャ1体。」
フライアへ着くなり、すぐにロビーに召集がかかった。ブラット……あと+αで始まったブリーフィングは、知らねえ奴ばっかを聞かされて理解に苦しむ。
「なあ、ギル。後でその2体の解説頼めるか?」
「おう、いいぜ。」
とりあえず分からないというリスクを減らそう。
「この作戦に部隊を総動員したのは、早期に決着をつけねばならないと判断したからだ。」
「というと?」
「戦域の付近で、例の感応種が捕捉された。現状で種別は判明出来ないが、広範囲の強力な偏食場を発信している。」
むずい単語が続出するんですけど。俺もナナもぽかんと口を開いて聞くしかなかった。
「要するに……感応種が合流したら色々面倒な目に会っちまう。だから隊長さんはその前にさっさと片付けようってご心境だ。俺らはまだまともに奴に対抗できねえからさ。」
「それで……2チームに分かれ、効率よく始末する。コンゴウ2体は突撃隊が担う事にし、ヤクシャを防衛隊に任せたい。」
「エミールさんは?」
「彼はこっちについてもらおう。」
「ふっ、了解した。」
あ、それはよかったです。耳栓買う必要もなくなったわ。
「ミッションは後5分以内に始める事にする。他に質問はあるか。」
感応種が出る前に……か。全体を見渡したところ、感応種という言葉を聞いて、顔の表情から2パターンに分かれた。そいつがどれほど危険なのかを知ってる人と、全くもって知らない人で。多分ろくなことはないっていうのは確かだ。でも3体って……そんな早く片がつくのか?つーかさっきのミッションから全然休んでないし……
「……感応種と出くわした場合は?」
「状況次第、交戦もあり得ると思ってくれ。」
「了解。」
やはり、ただ逃げられるほどの簡単な相手ではないみたいだ。
「……そんじゃ稀羅、ターゲットの軽いラクチャーをするからついて来な。」
「あ、ギル、あたしも!」
「おう。」
ターミナルが4台くっついた2階の所に場所を移した。ギルはその1台を起動させ、幾つかのファイルを開いた。
「基本、人間と交戦記録があったアラガミは、その情報がターミナル載ってる。俺が伝えるのは今回だけだぞ?」
「わりい。」
「気にすんな。まず、ヤクシャか?奴は銃一丁を持った人間型アラガミだ。お陰でその動きも人間にそっくり。遠距離射撃が得意だが、他にも器用に銃を使いこなす。ここまではどうだ。」
人間型なら、脚を先に潰した方が断然楽だろうな。普通の人だって、立てないと何もできないし。
「続けて。」
「オッケー。」
「で、コンゴウ。ああ、ナナはもう交戦済みか?」
「うん、でも隊長があっという間に倒しちゃった。」
「そう?まあ、いいや。猿って動物は知ってるか?そいつの凶暴化したのだと思え。体を惜しみなく使った技と、背中から空気を無理矢理圧縮した弾丸を作り発射する。まあ、攻撃の予備動作とか、攻撃後からの立ち直りが遅いから、そこは狙えるな。」
「概要は掴めたよ。サンキュー。」
「うーん、つまりあたしは猿の相手すればいいのよね?」
にしてもコンゴウを単なる猿に格下げするこの二人って。
「うっし、じゃ行くぜ!」
「「おー」」
* * *
『稀羅さん、ギルさん。帰還から間もないのですが、よろしいのですか?』
鰐の相手の次は、猿と人だ。かなりタイトなスケジュールだとは思うが、不思議に体はあまり疲れていない。
「問題ない。まだ行ける。な、稀羅?」
「こっちもオーケーです。」
『分かりました。くれぐれも無理の為さらないように。』
「了解です。」
ヘリは2台。2部隊ともターゲットの真上から狙う予定だ。
「ヤクシャが終わった後は、コンゴウ討伐手伝いでもする?」
「それがいいんじゃね?」
『いや、2人はそのまま他に小型アラガミの討伐、及び周辺偵察を要請する。』
隊長側のチームに無線が繋がってたせいか、隊長から直々辞令がおりた。
「偵察、ですか?」
『主に感応種が出現するかどうかを確認して欲しい。それ以外にも、中型と大型の出現も警戒して貰う。』
「で、両方の仕事が済んだら即時撤退ってか?」
『ああ、それでいい。よろしく頼む。』
そもそも感応種自体顔を合わせたことがないから、判別できるかどうかも微妙だ。
「運が悪けりゃあ、こっちが最初に感応種に会うかもな。」
「無駄に動きたくないけど。」
『神機使いの皆さん!見えました!アラガミです!』
ヘリーの操縦士さんから無線が入った。ドアをこじ開くと、どうやらかつて図書館として使われた場所に来ていた。そこに、片膝を曲げて座り、左右を警戒しながら捕食をしている、黄色い肌の人間型アラガミがいた。
「あいつの真上から攻めるけど、ギルはどうする?」
「適当にやるぜ……まあ、初撃はこっちがするけどな!」
ちょっと、いきなり飛び降りるのは反則だ。慌てて後を追う。
「待てよ、こら!」
下から吹き上げてきた風が全身を揺らした。そのせい少し動き辛いが、プレデターフォーム展開。
「頂きます!」
先に着地したギルに視線を向けていた奴の顔ごと食い散った。
何かを切ったのと同じ音と、そいつの甲高い悲鳴が、共に鼓膜を刺激した。こいつもあの猫と同様、別に頭が痛くなったりしない。
体を前に回転させ無理矢理首を引っこ抜いた。後ろで鮮血が飛び散り、自分より背が2倍はあるその体が顔の殆どを失ってフラフラしだした。
『結合崩壊を確認!視界を奪いました。』
「気を付けろ!まだ片方の目が残ってる!」
「綺麗に食えねえのかよ、くそ!」
ほぼ4分の1に減ったその顔に赤く光る目が見えた。ヤクシャは手にしている銃を構え、片膝をついてこっちを狙う。だが、ヤクシャが弾丸を放った時は、俺らはもう奴の両サイドに動いていた。
「はっ、おっせ!稀羅、左足!」
「了解!」
腕の下を通ってヤクシャの脇腹に潜り、床に寝かしたその足を水平斬りで砕くと同時に切り落とした。反対ではギルが投げた神機が立てている右足を完全に貫いた。両脚の支えを失い、ヤクシャが倒れ伏す。
『少し……速すぎませんか?こっちから全っく追いつけません。』
「とどめ行くぜ!」
状況の流れについていけないフランさんが不満を一声漏らしたが、今は気にしないでおこう。
宙に跳んでから、首の付け根を狙って突き刺す形で落ちた。色んな物が切れる音がし、ヤクシャの体がビクビクと痙攣を起こした。胸部の長く裂けてしまったそいつの傷から、ギルがコアを回収した。
「っと。どいつもこいつもろくに反撃せずに死んでくれるな。」
「むしろ楽で助かるぜ。」
『小型アラガミ複数!来ます!』
ヤクシャとの戦闘が一騒ぎになったのか。ザイゴートにドレットパイク、オウガテイル、ナイトホロウ。
「ちぇっ、雑魚は雑魚らしくお座りしてろってんだ。」
「ほんとだよ。面倒に邪魔しやがって。」
移動の出来るアラガミが複数で一斉に走ってきた。ここで時間を割くわけには勿体無い。さっさと終わらせて偵察を始めないと……
「とりあえず、生意気なお子さんから……」
既に充電完了のチャージクラッシュをお見舞いする。複数の振動が神機に伝わり、ざっと5体以上のアラガミが無惨にバラバラにされた。
「うおら!」
そんな中でも、ギルの特技の突進が横を瞬時に過ぎた。今回は上半身ごと空に舞う奴も出てきた。
「おいおい、俺は後処理担当かよー」
彼を追いながら、まだ生きている何匹かのアラガミを振りたい放題振りながらとどめをさす。浮遊するアラガミはありがたく、地面に降りて来たので軽くジャンプして床に叩き付ける。
「よし、外に出たぜ!」
先に狭い岩だらけの通路を抜けたギルの声が聴こえた。
「感応種は?!」
「ない!てか何もないな……」
最後のオウガテイルに神機を突っ込んで壁に押しつぶし、外へ出た。多少荒くなった地面が広がる吹き抜けの上には、何一つない。
「これは……分けて偵察した方がよさそうね。」
「俺は一度図書館の方に戻る。ここら辺の偵察頼めるか?」
「どうぞ、お好きに。」
ギルが図書館の方に向かうと、丁度隊長から無線が入った。
『こちら、突撃隊、アラガミ2体の活動停止確認。偵察を行うと同時に撤退準備を進める。各員周辺の索敵を開始。』
複数の返事の声が聴こえる。遭遇せずに撤退できるのかな。吹き抜けには未だ敵の気配はない。
「フランさん、感応種の反応はどこです?」
『先ほど戦域の付近を徘徊してましたが……えっ?』
「……フランさん?」
『全ブラッド隊員へ、想定していた感応種が侵入!チームの一人を狙っている模様です!』
「付近に誰がいるんですか?」
『それが……』
彼女が言いかけた瞬間、無線と自分の後ろから悲鳴がした。
「『ぬおおお!』」
やばい、エミールさんかよ。てかよりによってあの人か?絶対今度は死んじまうぞ?
『何故だ?何故神機が動かない?!』
神機が動かない?プレデターフォームが出来ないって事か?やがてエミールさんが植物園の所から出てきて、彼をを追う感応種の姿も見えて来た。
「……えっ?」
思わず声が出てしまった……その感応種って奴を、俺が余りにもよく知ってるからだ。真っ白な毛が、黒くて筋肉質な体を包み、赤い触手が首の辺りから靡いている。その前脚と後脚はガルムととても似て、銀色に輝いた。そして何よりその顔、黄金に光るその目が埋れた狼の顔……それは……
「ぬわああ!」
その感応種の右腕のなぎ払いに、エミールさんが遠く飛ばされ意識をなくした。だが、今の自分はもうそれがどうでもよくなった。
『稀羅さん!エミールさんの悲鳴がありました。容態を伝えてください!』
「あ……はは……」
ごめんなさい。無線に一々答えられる状況じゃありませんよ、これ。
『稀羅!感応種との交戦に入ったか?!引け!奴は……』
「……やっと、見つけた。」
隊長の指示ももう耳に届きやしない。体の全ての細胞と神経が目の前の感応種に集中する。勘違いなはずがない。あの夢……そう、こいつが……
「てめえだな。」
こいつがあの日……
「勝手に人の頭に……」
俺の……
「土足で踏み込むくそ野郎は!」
家族を殺した!
10年前の記憶と今の俺が重なる。手が痺れるほど、今まで以上に神機を強く握った。体もどんな時よりも精神より速く反応し、気づいた頃、俺は地面を片足で深く地面を抉ってそいつの近くまで迫っていた。
サーて、血の覚醒間近まで到達です。
まだ未熟すぎるこの小説を読んでくださって毎度ありがとうございます。
次回は土曜日の は、や、い、時間帯に出せるようにします。