GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
金属音が空に高らかに響いた。こっちの神機と感応種の前脚が押し合う。
「これで21回……嘘……何だこいつ。」
出した攻撃は一度も致命傷を与えられなかった。切り傷くらいは何度か作ったが、以外は全部かわされた。そういう意味で、こいつの知能レベルが類にないことを思い知らされた。このままではこいつを倒せるのに日が暮れてしまう。それとも俺が殺されるか……
「くそが……」
神機を引き下げ、後退した。一回一回の攻撃を全力でまわしたせいで、体力も限界に近づき、足はとっくに震えて始めた。
反面、奴はまだまだ元気だ。持久戦に持ちかけても勝率が低いだろうな。さあ、どうする。ゆっくり対策を考えていたいものの、ちょっとでも隙が空いたら奴の方から攻めてくる。
「くそがあっ!」
奴が振り出す足と、対称方向に神機を突き出した。またも火花を起こし衝突する。力で敵わないと分かってたから、先に奴の股下に逃げた。
その時、願ってもない不吉な音がした。もしやと思い神機を確認した時はもう遅かった。神機に……ヒビが入ってしまった。
以前フランさんが教えた、危険度という言葉が頭をよぎった。感応種に、ほぼ成体といえる状態。つまり硬度という面でも明らかにこっちより上だ。逆に今まで耐え抜いたのが信じられない。
「まずいな。どうする。」
傷を負った神機に目を逸らしてしまった隙に、接近した感応種が両脚を振り下ろした。
「うわっ!」
何とかかわすも、姿勢が崩れてしまった。その機も譲らず、銀色のアラガミが体を回転させ、尻尾を鞭のように振ってきた。
「くっ!」
左に激痛が走り、体が遠くへ飛ばされた。
「はあ、はあ、っ!」
立ち上がるも、左腕に力が入らない。神機に伴って、こいつまで持って行かれるって……こっちのピンチは向こうも気づいた様で、傲慢とした、余裕な足取りで徐々に距離を縮めてきた。その態度にはただ腹が立った。
「じゃあ……こっちはどう?」
右足で蹴り上げた神機を右腕で振り回した。回転を続けながら、全力でダッシュ。神機に回転力とスピード全部のせ、渾身の力で振り下ろした。鋭い音がし、奴の片方の足の先が砕けた。同時に神機の亀裂がのびる。
呻き声とともに、奴からも右フックが入り、またも左を強く打ち抜かれた。
「かはっ!」
何がかんでもこれはやばい。左腕の感覚が完全に無くなった。内出血でも起こしたのか、腕が腫れ上がって痛みが増した。
ゆっくりとした足音に、少しボヤけていく視界を向ける。また来るね、でもな……これ以上は……。頭でいくら無理だと判断するも、体はまた残った右腕で神機を構えた。神機も自分も、ついに限界だ。次でおそらく最後だ。
でも……悔しい。たった10分に満たない戦闘で……猫の手でも借りたい状況になった。俺が抱いた怒りはこんなもんか?自分だけボロボロになって……何も倒せなくて……
≪なあ、こんなもんか?お前さん。≫
ふと何かが聴こえた気がした。他からでもなく、自分の中から。
≪また2人揃って、あんなに苦しい思いを味わいたいの?≫
この声……俺のだ。いや、ちょっと細いか?でも確かの俺のだ。でも……俺は二重人格とかなかったはず。
≪この一撃にかけようぜ。じゃないと今まで生き延びた意味が全部ぱあーになっちゃうぜ??≫
「言われなくてもそのつもりさ。誰だか知らねえが……お前も手貸せるなら貸せよ。」
何もかも必死になり、いつの間にかその謎の声に必死に話す俺がいる。
≪……言われなくてもそのつもりさ。≫
その声がそう語った瞬間、体に力がもう一度湧き上がる。これってあれか、底力?いや、少し違う感覚。けど、どの道この力を使わざるを得ない。
「……うううっ……」
右腕の筋肉の悲鳴をしのぎながら神機を下に構える。今までとはちょっと違う構え。意識した訳じゃない。自然とこの構えに勿っていく。
異変に気付いた感応種が、すぐに脚に力をいれ飛びかかる。
「……いい加減当たれー!」
完全に押しつぶす気でかかる奴の、その憎らしい面へ向かって、今まで出したことのない軌道で攻撃をした。
振り下げではなく、振り上げ。
すると、赤白い剣閃が共に起きた。何かが当たる感じがし、体は神機の運動に連れられてバランスを崩してしまった。
「……何だ今の?」
顔を上げて周りを見る。感応種が倒れていた。やったか?
しかし期待は虚しく、奴がゆっくり起き上がった。でも顔には……目にかけた長い傷ができていた。運もよく、左目を完全に切り飛ばしたようだ。
感応種が血が止まらない状態でもなお、こっちを睨む。
「へへっ、ざまあ……」
口ではそう言えるも、正直体が言うことを聞かない。正真正銘、さっきのが全力でかつ最後だ。感応種が再びゆっくり迫る。あは、やばいな。遂に食われるか。
自分の死を覚悟した瞬間、先まで無視した無線が鼓膜を叩いた。
『稀羅!もういい!下がれ!』
同時に何処からか飛んできた銃弾が感応種を撃つ。不意打ちのせいで、感応種がふらついた。そしてギルが銃に転換した神機を持って走ってきていた。
「稀羅!無事よね!ここは任せて!」
「すまん、稀羅!遅れた!」
ナナにロミオさん。やれやれ、今まで何してたんだ。救援に来てくれた三人は銃口を感応種に向け、一斉に発射し始める。最初は堪えたが、猛攻な銃撃に感応種は建物の上に避難し、屋上にそびえ立った。引く気か?射程距離の限界か、全員の銃撃も止んだ。
奴のもう片方の目がこっちを睨んできた。すかさず睨み返した。
『次戦場で会ったら、確実にその顔ごとぶっ潰してやるよ。』
やがて、感応種は戦域を離脱した。勝ったのか負けたのかは微妙だ。むしろ己の弱さを目の当たりにされ、最悪な気分だ。
頭から戦闘が終わったのを認めた途端、体の力が瞬時に抜けた。ジュリウス隊長が支えてくれる。
「大したやつだ。よくやった。」
「……それより、撤退を……あと……エミールさんも。」
自分よりも他を気にする暇など本当はないはずだけどな。俺ってやつは……
「エミールは先にフライアへ搬送した。心配するな。」
「それよりおい、お前、左腕大丈夫なのかよ!」
はっと腕を確認すると、通常とは違う角度に腕が曲がっていた。しかも少し傷ができたみたいで血がちょっとずつ滲み出ていた……やっちゃったな。
「内側での骨折か、至急撤退する。フラン、ヘリはついたか?」
『もうすぐです。稀羅さんの容態を!』
「左腕の骨折、数々の打撲傷、体力がほとんど残っていない。」
『分かりました、至急に治療の用意をさせます!』
は、速い対応どうもです。
『稀羅さん…また無茶して。』
無線に小ちゃく流れたフランさんの声が、自分に向けているのか、独り言かわからなかった。
「……すみません。頭に血が登っちゃって。」
『言いたいことは山々すが、まずは帰ってきてください。』
叱るのは勘弁を。今の状態じゃ何もかも入っては抜けてしまいそうだ。ちょうど帰還のヘリが着いたのが幸いだった。
* * *
「治療は以上です。骨折してもある程度処置をしとけば、神機使いさんはたいてい修復します。偏食因子のおかげですけど。」
「……ありがとうございます。」
フライアの病棟にすぐに運ばれ、治療が施された。来る途中で気を失わなかったのが不思議だけど。色んな薬を飲まされ、打撲傷と切傷の手当てをされたが……もっとも重症な左腕には特に処理がなされれいない。不信感を伴う治療が終わると、ブラッド隊の入室が許可された。
「全く、前回といい、今回も無理しすぎです。」
早速フランさんからの叱りがきた。
「……すみませんでした。」
「……そんなに素直だと何も言えないのではありませんか。」
「……相手にならないことを知っての上だったんで。」
そう。切れて頭に血が上りはしたが、心の余裕ってのが一切なかった。焦ったと言ってもいい。
「そう言っている割りに、あいつの顔、見ものだったぜ。やるじゃないか。」
逆にギルは上機嫌のようで。
「血の力に覚醒したのは間違いなさそうだな。」
「……へっ?」
そして突然の隊長の言うことに頭がまわらない。血の力?
「あー、やっぱそうだったんだー、すごいね稀羅、」
「僕もまだってのに。」
「ま、戦力補充になるのは確かだろ。」
みんなはもう納得しましたと顔をする。が、当の俺だけは、
「え、待って。どういうこと?」
知らずのこと。
「稀羅、君は先の戦いで血の覚醒を果たした。自覚がないのか?」
改めて先ほどの戦闘をふりかえる。右腕だけで放った、最後の一撃。確かに普通ならあり得ない、派手な赤白いエフェクトが発生した。
「あの剣閃が、血の力?」
「薄々と気づいている様だな。通常攻撃は、血の力の目覚めで一段と強化された技になる。予想をはるかに超える技に、な。」
確しかにそれまで出してた一般攻撃より、パワーとスピードは圧倒的だった。それが、血の力……。
「自覚がないなら、これからの戦闘で味わえばいい。いずれ、あらゆる技へと変わっていく。」
「もっと頑張れと?。」
「やらねばならないのはこれから沢山だが、今日はまず回復に専念しろ。後日に話す。」
「……はい。」
「それでは俺は報告も兼ね、失礼する。」
「お疲れ様でした。」
隊長が出て行くと、周りのみんなが一斉に話を始める。
「ねえねえ、どうやって血の覚醒できたの?辛い?」
辛い…って。拷問じゃないですよ。
「なあ、稀羅、やっぱ血の覚醒ってそのきっかけになる何かが必要なのか?例えば、劣勢の時とか。」
「ど、どうでしょう。」
早速やばいものに挑戦しそうなロミオさんの目がキラキラしている。
「稀羅の序盤戦は大らかピンチな状態での戦だったからな。一理はあるな。どんな感じだ?血の覚醒って。痛みはあったか?」
「どんなって。痛くはなかったよ。多分。」
一つ一つの返答に頭を抱えそうになりながらも気づいたことはあった。ああ、この3人とも、血の覚醒を心から望んでいるんだな、と。
≪なあ、こんなもんか?お前さん。≫
ふと蘇り自分の中で響いた、もう一人の自分の声。俺はあの時、その声にすがった。力を貸せ、と。その声の主がどこから来て、どういうものなのかは全然気にもせず。それでもその声は力を貸してくれた。
『でもあれがなんなのかわからないままじゃ、後味が悪すぎる。』
今も思う。あれは何……違うな、誰だったのかと。
「ん?稀羅、どうしたんだ、渋い顔して。」
「え……あ、いや、ちょっとぼーっとした。」
いつのまにそんな顔になってたか。
「みなさん、今の稀羅さんはまだ怪我人です。質問は次回でも良いのでは?それに、ナナさん、ロミオさん、ミッションの報告書がまだです。」
フランさんが呼びかけると、血の力について言い争うナナとロミオさんも真っ青な顔になった。
「……そ、そうだね。ごめん、稀羅。」
「わるい、俺も失礼するよ。お大事に。」
「はあ、どうも。」
ナナとロミオさんは慌てて病室を出て行く。しばし黙ってると、
「んじゃ、俺も今のうち休んどくぜ。稀羅なしで防衛ミッションは規則上禁止されてるんでな。」
「お、おう。」
ギルも退室し、あっという間に3人とも出ていった。たった一言にすごい対応だな、お前ら。
「……どうも、フランさん。」
「今の稀羅さんでは……正常にコミュニケーション取りづらいと判断しましたので……、私も言いたいのはいっぱいありますが。」
「空気が読めるってのはまさにこういうことですかね。」
「それはどうかわかりませんけど…まずは怪我を治してください。今日の薬でおそらく一晩で治るかどうかも不明ですが。」
「……寝なきゃいけないんですかね。」
「今度は避けられませんね。」
さらに現実的な負担。不安が拭いきれない。まして、あの謎の声のことも。
「大変お疲れですし、夢も見れないくらい深く眠りにつくのでは、と。」
「理想的な睡眠ですね。」
固定具に固まった左腕に目をやった。未だ力は入らない。これじゃ本も楽に読めないか。
「……寝ますか……」
こんなに寝るかどうかを真剣に選んだのも初めてだ。
「その気になりました?」
立てていたベットを平にする。いざと寝転がると、意外に睡魔が襲ってきた。
「……それじゃ、寝ますんで、その……」
「あ、はい。私も失礼させてもらいます。」
ドアまで行ったフランさんがしばし黙っていたら、ぽつり呟いた。
「その……お困りでしたら、呼んでください。」
「……ええ、どうもすみません。」
軽く会釈するとフランさんも出ていった。沈黙がよぎる病室で、電気を消し、再びベットに寝る。
なんだか心もとなくて、
「夢を見ませんように、いや、悪夢を見ませんように。」
子供を思わせる小さいおまじないの後に目を閉じ、徐々に意識をあの世界に送った。
* * *
次の早朝、目覚めた俺の頭は病室並みに真っ白になっていて、腕もくっついていた。幸い夢は……見なかった。
原作の序盤到達ですかね。やっぱ加工を入れながら進めるってそう簡単でもありませんでした。
読みづらい文章ですが毎回読んでくださって嬉しいです。
多分、このあとオリジナルエピソードを入れる予定です。噛み合うようにはしますが…