GOD EATER「Past you and Now I」   作:Pumpghost

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実は今回の話と、以前の第10話の話のかみ合いのため、10話の小規模の修正を入れました。と言ってもほんの少しなんで気がむいたかたはちらっと覗いてください。


謎の声とブラッドアーツ-Keil Orfis-

目が覚めたあとは、まるでこの前の退院までの流れをリプレイする気分だった。思う他近々常連にでもなりそうね。

そして今、自室でもまた、新しい服を調達するのに手間取っていた。ジュリウス隊長がくれたあの服は汚れすぎて洗濯機行き。

 

「……全部作れないものばっかだし。てか金がねえ……」

 

聴いたこともない材料がずらりと並ぶカタログにため息が出る。ターミナル端末と10分以上の睨めっこのあとに選んだ服とは、何日か前に洗濯したブラッド制服だった。10分も悩んだ意味はどこに?

 

* * *

 

「おはようございます。腕は大丈夫なんですか?」

 

早朝のホールで最初に会うのはやっぱりフランさん。ほんと勤勉だなあ。

 

「はい、まあ、半分様子見ですけど。」

「ミッションはどうしますか?」

 

腕がまた折れるのはごめんだし、小型が揃う簡単なミッションを予約することにした。ついでにギルもアサインしとこう。

 

「ギルが起きたら教えてください。」

「わかりました……、あ、稀羅さん!」

 

呼び止められる。

 

「はい?」

「先日仰ってたヘッドホンのことですが、ありました。外部の音を変えるタイプが。」

「え、どこで探せばいいんですか?」

 

早いわ、もう見つけたか。

 

「こちら……ですね。」

 

カウンターの下から小ちゃい箱が出された。

 

「え、もう買ったって、いくらでした?」

「その……前回の感応種撃退任務の報酬だと思ってください。」

「……ついでにその報酬金額も聞いていいですか?」

 

でかい仕事一つでここまでとは。ついているのかどうやら。

 

「色は……私が選んだのでお気に召さないかもしれませんが……」

 

箱からワイヤレスの黒と赤で配色されたヘッドフォンが出た。暗いベースにアクセントがついて印象がいい。

「いや、この色いいと思うんだけど……」

 

試しに大きさを調節してかけた。

 

「……どうですか?」

「あ、いいですね。フィット感に多少のノイズキャンセルもあるし。フランさんから見てどうですか?」

 

耳を軽く包む感じのいい着け心地だ。鏡がないからフランさんにみてもらってる感じだが。

 

「あ、お似合いだと……(よかった)」

「にして代わりに買ってもらって助かりました。」

「これで少しはミッションが円滑に進めばいいですけど。」

「全然問題なしです。できそうですね。」

 

ヘッドホン内蔵システムをつけたら、外部の周波数を変えたといえ、人の声や物音に特に差異はなかった。

 

「一応アラガミの音声専用ですか?」

「ええ、よって生活面では問題ないかと。」

「としたらもっとすげえ。」

 

昨日の出来事で多少沈んでいたテンションが徐々に上がる。

 

「……では、準備も揃ったことだし、しっかり働いていただきますよ?」

「あ、あれー……」

 

最後だけ撤回してください。お願いします。と言いながらも今まで味わなかった新鮮な感覚に身を委ねた。

 

* * *

 

「よお、稀羅、いいもんつけてるな。」

「おっす、ギル。」

 

ホールでばったり会ったギルの髪に多少寝癖に吹きそうだった。

 

「ミッションにアサインされてたんだけど、お前さん、行けるのか?」

「サポートよろしく。」

「あいよ。んじゃ、こっちも準備済ましたら行くことにするぜ。あとな、稀羅。」

「うん?」

「……ブラッドアーツってやつ、使えそうか?」

「……ごめん、まだわからないかもな。」

「そう?無理強いるつもりはちっともねえから、ほどほどに解放していけ。」

「だな。」

 

去るギルの背中を見送るも、胸騒ぎは収まらない。血の力には解放したものの、正直に不確定な要素が多すぎて使うのを躊躇ってしまう。解放した人はジュリウス隊長だけで、ましてやブラッドアーツ自体についてはあまり研究も進められていない。

……最も、あの謎のもう一人の自分も、本当は何なのかわからない。

 

「たった一つ掴めば全部わかりそうだけどな。」

 

どこから探っていけばいいのかやら。

しばらくぼーっとしてたら、足が先に動き出した。まるで次に行くべき所へ導くように。

 

* * *

 

「やあ、退院したそうだな。」

 

偶然か、それとも無意識に狙ったのか、庭園の大きな一本木の下に、居座っているジュリウス隊長がいた。

 

「どうも。ちょっと頭の整理にきました。」

「そうか、ま、ゆっくりするといい。」

 

隊長の反対側に背をもたれた。時々小鳥の鳴き声が耳を愉しませ、日差しが伸ばした足を撫でてくれた。この庭園のどこからどこまでが自然物で人工物なのか……

 

「……」

「……」

 

そうやって二人ともしばらく黙っていた。

 

「……あのー、」

「どうした?」

 

やっと本能的に庭園に来た訳に気づいた。聞いてみたい、この人に。

 

「血の覚醒って、隊長はどんな感じでした?」

「俺は……戦闘中に急に生じた。君のようにな。」

「……何か聴こえたものはなかったんですか?」

「聴こえたもの?」

「俺は、自分の声が聴こえました。他でもなく、」

「そう……か。俺は残念ながらなかったな。」

「そうですか。」

 

やれやれ、せめてこの人ならわかるんじゃないかなと思ったが。

 

「ただ……」

「?」

 

隊長がもう一度口を開けた。

 

「君と同じようにあと一歩で死ぬところまで追い込まれたのは同じだ。あの時は色々必死だった。もしかしたら、聴こえたかもしれんな。」

「……ははっ、そうなんだ。」

 

心遣いとしてなのかは微妙だが、もしそうだったら、やっぱ優しいんだな、この人。

 

「それじゃ、俺はミッションに行く。今日も頑張ろう。」

「ええ、それと隊長、」

「なんだ?」

 

ついでに浮かんだもの。

 

「初対面で、'名前が気に入らないか?'と聴いたのは、なんでですか?」

「……自分の名前を他人の名前のように言う君が印象的だったからかな?足りないか?」

「……色んな意味で鋭いっすね。隊長。」

 

隊長がこっちを向いた気がしたけど、気のせいかな。

 

「……褒めごとばとしていただく。」

「はい。」

 

そして隊長はエレベーターへ去った。 ……結局、欲しい回答は見つからず、思いの外のことを聞いてしまったかもな。

 

『稀羅、準備オッケーだ。どこだ?』

 

あの隊長みたいにぼーっとしてるとギルからの無線が入った。

 

「庭園。今行くぜ。」

『お?なんか弾んでないか?声、』

「気のせいだよ。」

 

それでも……いざ誰かに言ってみると、少し気が楽なもんだ。治った左腕のうずきはいつの間にか消えてるし。

 

* * *

 

「やれやれ、鎮静の寺かよ、今回は……」

「流石にこの薄着はまずかったか。」

 

小型アラガミ計20体くらいの討伐任務。フィールドは、雪で覆われた古い寺で、腐れ果てたその木製の壁が年月の残酷さを見せつける。修理が終わったばかりの神機を携え、ヘリーのドアを開けると、凍った風が頬を切り刻んだ。ブラッドの制服は下のシャツが薄いもんで、どうもこれだけでは寒すぎる。保険がてら幾つかのジャケットボタンはしめたが。

 

「このステージ、3階構成だっけ?」

「ああ、奴らは主に2階と3階に出現するらしい。俺は2階、稀羅が3階でどうだ?」

「わかった。さっさと済まして帰ろう。凍死にされっちまう。」

『アラガミ反応多数、迅速に討伐願います。』

 

ヘッドフォンの内側に無線があるせいか、さらによく聴こえる。聞き漏れの心配はなさそうだ。

 

「20体全部出てます?」

『はい、くれぐれもお気をつけて。』

「一応聞きますが……ノーダメージ?」

『極力そっちの方で。』

 

要するにそうしろってか……

やがてヘリーが指定ポイントまで来た。高度50メートル以上で無難に着地し、ついたところから梯子を登って、小屋に入る。小屋の壁ごと消えた穴からフィールドを見渡せた。

 

「ここから先が戦闘エリア?」

「おう、んじゃ俺は左から行く。そんで2階。」

「へい。」

『ミッション開始です。』

「「よろしくっす。」」

 

小屋から飛びおりると、少し積もった雪に足がうもる。どうやら年中低気温のせいか、降って積もったらそのまま凍って地面の標高が高まるらしい。噂では永久凍土という説も。

 

「10年後はどうなっちゃうんだよ、まったく。」

 

ギルと反対の右側を進んで階段を登る。すると、ばったりオウガテイルと対面した。

 

『稀羅さん、戦闘開始、オウガテイル堕天種です。』

「っ!堕天種?」

 

慣れない単語につい聞き返した。

 

『ある地域に適応し、体の性質を変えた種です。』

「色が違うのはそのせい?」

 

群青色の装甲が特徴なオウガテイル、特にすごい攻撃はなさそうなのでザクっと倒すことにする。

 

「それっ、」

 

肩越しで降り下ろした一撃で、その変な面を割りながら頭を潰し、そのまま捕食。上半身をなくし、力なく倒れるやつを一瞥し、次の階へ向かう。

 

『アラガミ、活動停止。ギルさん、2階到達し、戦闘始まります。』

「了解。」

 

階段を登りながら、次々に邪魔な小型を右左に片付けながら進む。ふと思ったのは、自分がよくアラガミの頭部を攻撃する、ということ。あと振り下ろしの攻撃が多いということだ。

 

「お、結構いるな。」

 

気づいちゃもう3階。独眼とカブトの雑魚どもが散らばってる。何から狩ったら効率がいいかな……

こっちに気づいて突進してくるカブトどもはとりあえずパス。ということで適当に蹴りを入れながら道を開け、ナイトホロウに接近。

 

「だるいからみんな一片に死にな。」

 

ナイトホロウ群が一の字に見えるポジションに動き、チャージクラッシュを用意する。軸足の左足を固定し、渦渦しいオーラーの神機を地面に叩きつける。幾つもの柔らかい感触と血飛沫を伴い、ざっと5体以上は終わった。

 

『アラガミ、6体停止確認!あの……いきなりすぎませんか?』

 

6か、ま、いい感じ。

血で濡れた頬を拭いてたら、後ろからカブトたちの鳴き声がうざい。またも突進するカブトどもの最前の奴を上から突き刺した。悲鳴一つ出せず沈黙したそいつを群れに投げ飛ばす。衝突するなり、慌てる奴らを頭上からの一撃を見舞いする。一見硬そうな殻も音をたてて全部崩れた。中の筋肉組織もいい音を鳴らし断たれ、二重奏の音が殺戮の衝動をかきたてた。おまけに放った横の一撃でバラバラの死体がばらける。

 

『……え、えっと……』

 

瞬時に切り替わる戦況にオペレーターが間に合わずにいた。

 

「後は……残りの独眼くんか。」

 

走る意味もなくなり、ゆっくりと歩き出した。徐々に上に持ち上げた神機を奴の間近で神機を回し、その横からなぎ払う。

 

『今ので……何体でしょうか……』

 

独り言が漏れてますよ、フランさん……

「3階はこいつで終わりか。」

最後に残ったナイトホロウがブルブルと震えるのがもう目に見えだ。

 

「あれ、もしかして……怖いの?」

 

口ではそういうも、砲弾を放とうとするその黄色い目に、神機を両手に、深く刺した。勢いに地面に刺さった。

 

「……3階終了です。」

『か、確認しました。周囲のアラガミ反応はありませんが……警戒を怠けないでください。』

 

あっさりすぎて向こうも当惑したようだ。でもまあ、所詮雑魚だからここでヘマしてもなあ。

 

『残り、2体だ。わり、少し待ってくれ。』

 

ギルからの無線も入った。

 

「了解。のんびりでいいから。」

 

ズルズルと刺したままの神機を抜く。神機が血に濡れ、卑しく光った。不思議に嫌な感じがしなかっのはなんでだろ。

 

* * *

 

時間が余り、昨日感応種との最後の一撃を出すための構えをした。左腕もあえて使わないように。

 

「ふっ!」

 

前回とほぼ同じように力を入れ、まだ慣れない軌道に神機のせて振る。が……なにも起きない。あの赤白い閃光などなにもない。あれは気まぐれだったのか?

 

「もう一回……」

 

同じ構えをもう一度だけとる。

 

「……なんで何も聴こえないんだ。」

 

頭にしっかり響いていた自分の声は、今は全く聴けない。仕方なく、いつもの自分の構えに変える。そして、

 

「はあっ!」

 

気合とともに地面を振り下ろす。すると、妙に紅い衝撃波を浴びた神機が地面を叩き、ひびをつくった。

……やった?

 

「もう一回……」

 

同じ姿勢、軌道、力。3つの要素が基づき、放った同じ攻撃はまたも紅く光る。

 

「やった……。」

 

二度目で、地面に陥没を作れた。いける、この威力の技ならしばらくはやっていける。

 

『こちらギル、終わった。』

 

夢中になって時間を忘れてた。

 

「ギル……やったぜ。」

『へ?』

 

あちゃ、主語が……

 

「ブラッドアーツ、1種類できるようになったぜ。」

『お、そいつはいいね!次のターゲット狩る時見せろ!』

「おう!」

 

胸に滲む妙な嬉しさがくすぐったい。これでやっと本当の意味で血の力に覚醒したといえる。あの声に頼って覚醒したのではなく、自分で。

 

『んじゃ、1階のところで集合な?フランさん、新手はないよな?』

『はい、お二人とも見事でした。今のうちに帰還してください。』

「了解です。」

 

一気にテンションが上がった俺は、後で気がつくともうあの謎の声など、気にとどめていなかった。

* * *

 

「本当、日に日に伸びて行きますね、神機の扱いが…」

「ああ、ほんとだ、稀羅、お前さん取得が早すぎる。」

「そりゃあどうも。」

 

ミッションの快調にフランさんとギルとで3人で盛り上がる。自分はどっちかというとブラッドアーツを覚えた方が嬉しいが…

 

「ところで次のミッションは何ですか?」

「実は領域から大きく外れたのでキャンセルされました。今は待機です。休んでください。」

「お、それはいい、俺はちょっと部屋に行ってくる。」

「いってら。」

 

用事か、てくてくと去ってくギル。

 

「じゃ、後でミッション出たら知らせてください。」

「はい、お疲れ様でした。」

 

カウンターから離れ、ターミナル端末が集まってるところにむかった。ギルのアドバイスもあって、アラガミの予習でもしておこう…と。

 

「……人物?」

 

データベース項目に入ると、アラガミ以外、もう一個メニューがあった。人物って歴代の人を記録したのか?

適当にズラーっと眺めた。どうやらいろんな支部の人々が混じっているらしく、見慣れない名前が多い。そこで極東支部と分けられているファイルを見つけた。そこには極東支部での引退、現役、失踪、死亡とタグがついたたくさんのフェンリル関係者の名前が並んだ。

 

「死亡判定された人は思ったほど多くはない…か。逆に失踪判定が多いって。」

 

MIA、いわゆる'ミッション行動中の失踪'が3件以上上がってる。逆にKIA'ミッション行動中の死亡'は2件以上。

MIA判定の中で気になる部分があった。幾つかの名簿の中で、今から4年前に、同じ日に失踪された3人。しかもその3人とも同じ部隊だ。

 

「'ナインフォール'……」

 

その3人が所属していたチームが最後に行ったミッションだ。このミッションを機に失踪したみたいだ。

 

「……うん?」

3人の中で特に目を引く名前があった。それは…

 

ケイル-オルフィス

誰だ?

どうもこの名前がかなり気になる。あれ?初めて見るはずだ。なんでだ。

それからざっと30分は悩んだが、頭では何も浮かばず、ずっと同じ文字だけを見続ける俺だった。




何か…あれですね。ちょい面白くない内容になったかもですね。安定しすぎで。他の方がどう思ってくださるか微妙ですが…
そろそろあの子の登場も間もないですね。うん、興奮するる。(べしっ)
それでは次回もよろしくお願いします。
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