GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
今回でブラッドの出会いは終わりです。
『ジュリウス君、ブラッド隊を私の部屋に集めてもらえますか?』
ヤクシャラージャ、シユウ堕天種、小型アラガミ6体。突撃隊のミッション内容は、極東に近づくせいかハードルが上がっていく。にも関わらず疲れた顔一つしないナナとロミオが頼もしい。
「ああ、そうする。」
以前から敬語一つ使わなかった癖の返事。またも召集か。しかも今度はブラッド全員。あの人が何を考えているかは何年も共に過ごした自分でもわからないものだ。
神機の格納庫で皆の神機のステータスのチェックを中止し、無線を入れた。
「ブラッド隊、ラケル先生からの召集だ。直ちに研究室へ向かってくれ。」
複数の了解を耳にしながら、ロビーに出た。ちょうどナナと稀羅が階段を降りていくところだ。稀羅の後ろ姿を見ながら、今朝の彼との会話を思い出した。
『鋭いっすね。』
実を言うと、稀羅との初対面でああ言ってしまったのは、彼がその時、他人の名前を言うってよりは、
'憎い名前'
を口にしたような口調と表情だったから。
また、最後に彼に一言いわれ、振り向いてしまったのは、適当に誤魔化した返答が、案外彼の心に踏み込み過ぎたことを後で気づいたから。それと、彼が案外かなり深刻な顔をしていたからだ。
「あいつには悪いことをしたな。」
後で謝れるならいいが、どうもタイミングが悩ましい。しばらくはギクシャクするかもしれない。
「お疲れ様です。」
「ご苦労。」
フランとの事務的挨拶をかわしながら1階に降りる。エレベーターへ向かおうとすると、後ろから足音がした。職員の方なのかとちらっと振り向いたが、そうではなかった。
「……久しぶりだな。」
声をかけた先は、端正に両側にまとめた銀髪の、一人の女の子だ。誰なのかは一見でわかった。あの頃の面影をしっかり残しながらも成長した、美人の顔になっていた。体もあの頃と比べられないくらい大きく成長している。ま、おおらか10年ぶりなものだ。変わらない方がおかしい。
「ラケル先生の付き添い……じゃなさそうだな。」
日常的な服装だが、それが動きやすくデザインされ、身に引き締まっているのがよくわかる。
「ええ、任務は更新されています。」
その声にまたも懐かしさを覚えた。ほんの少し、ハスキータイプになっている。
「正式にブラッドの隊員として招聘されました。」
召集の訳はこれか。
「貴方もお変わりなく何よりです。」
「相変わらず社交性に欠ける言い方だな。」
「そこはお控えていただきたいと思う所存です。」
軍事訓練の厳しさはここまで人を変えてしまうか。思わず額に手を当てたいところだ。
「ラケル先生のところへ行かれるのですか?」
「ああ、そっちも要件は同じようだな。行こうか。」
さてはこの子と接した皆は果たしてどんな反応を見せるだろうか。
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「ケイル-オルフィス……」
静かに何度も口ずさむ。すればするほど自分に馴染む。
「…変だな」
かつて他人の名前にこんな感情を味わったことはないし、普通ならふーんと見過ごすのに、この名前は見るほど不思議さと不安を増やした。
「……」
「あれー?稀羅?どうしたの?すっごく難しい顔して。」
「……」
「うーん?」
「……」
「……へー、それっ!」
「うわあ!なに?!」
いきなり脇腹をいじられた。主犯はナナ。
「んもう、人が呼んでも無視ってひどいよお。」
「わ、わりい。どうしたの?」
「それ、あたしが言いたいけど?」
「あ…まあ、データベース見てたら、なんだか気になるところがあってさ。」
「どれどれ?」
ナナが割り込み画面を覗く。
「けいる-おる……ふぃす?あれえ、MIAってどういう意味だっけ?」
「任務中の失踪。」
「うそお!まだ見つかってないの?」
「見たいね。」
「にしても極東かあ、嫌ねえ、行きたくなくなっちゃう。」
「失踪が4年前ってのは死んだのと同然かな。」
「きっとそうかも。お腹ペコペコで死んじゃうよ?」
妙にこんな時に当てはまる現実的な答え。
「あり得るな。とにかく、4年過ぎてなお、情報が更新されないって、捜査を辞めたとでも言いたいのか?」
「えー、それはひどいよ!フェンリルってそんなに薄情?」
「どうだろう。」
「それで稀羅はそんな顔してたんだ。心配してるの?この人のこと?」
「心配ってか、気になるね」
きっとナナが言う'難しい顔'ってのはそれ以外の訳がありそうだが。
「でも、今のあたし達じゃこの先の情報はないかもよ?」
「それなんだよね。最後のミッションは書いてあるものの、肝心な内容は白紙だからな。」
「ずるーい!」
「だな。」
『ブラッド隊、ラケル先生からの召集だ。直ちに研究室へ向かってくれ。』
これはまたいきなりですな隊長さん。
「はーい!」
「了解です。」
とりあえず返事はしたものの、ケイル-オルフィスのことが調査の途中で後味が悪い。
「ほら、稀羅!行くよ!」
「お、おう!」
仕方ない。後でまた調べらるといいが……といってもこれ以外に俺が見れる情報があるかな。
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「みなさん、ようこそ。今日は新しいメンバーを紹介で集まってもらいました。」
おいおい。ギルの時とは歓迎が天と地の差だな。だが、ギル本人はあまり気にしていないようにもみえる。
ジュリウス隊長から指令を受け、再びあの不気味な…いや、何と無く嫌な感じの部屋に入った。ま、早速2人でもめているギルとロミオさんを落ち着かせるのに疲れたが……。
「それでは、シエル、どうぞ。」
シエル?
そして研究室のドアがもう一度開き、銀髪の女の子が入ってきた。両サイドに長さを残してまとめた髪型に、白肌、綺麗な顔、引き締まった体。
「……綺麗、」
同性のはずのナナも驚いた表情をしていた。確かに誰もが同じく思える綺麗な女の子だった。
「本日付で極地化技術開発局配属となりました。シエル-アランソンと申します。」
敬礼か。俺らはどういう姿勢を取れっているんだ。
「ジュリウス隊長と同じく、児童養護施設、'マグナリア-コンパス'にて、ラケル先生の薫陶を賜りました。」
お、また出た。マグノリア-コンパス、ラケル博士ってどんだけ人脈を広めているんだ?
「基本、戦闘術に特化した教育を受けて参りましたので、今後は、戦術、戦略の研究に勤しみたいと思います。」
……人生でこんなに難しい言い方を聴いた覚えがない。一個聴き逃したら訳わからないね、多分。
他のメンバーも思っているのは似ているそうで、みんな目を逸らしたいと困った顔だ。
「…以上です。」
気まずさに気づいたか、態度が小さくなった。
「シエル、硬くならなくていいのよ?ようこそ、ブラッドへ。」
ラケル博士が全員を見渡す。
「これで、ブラッドの候補生が皆揃いましたね。血の力を以って、遍く神機使いを、ひいては救いを待つ人々を導いてあげてくださいね……ジュリウス?」
血の覚醒をもって一人前のブラッド隊員と見てくれるってか?ま、覚醒はしたからいいけど。
「これからブラッドは、戦術面における連携を重視して行く。その命令系統を一本化するために、副隊長を任命する。ブラッドを取りまとめて行く役割を担ってもらいたい。」
はて、副隊長?人数的にうまくまとめるためってことか?それならやっぱり……
「これまでの立ち回りと……」
うん、今までの戦闘を考えても……
「早くも血の力に目覚めたことで、お前が適任だと判断した。」
「ギルが合ってるんじゃない?」
ジュリウス隊長と自分の声が重なり合い意味がとれない。って、お前って?その時、隊長が自分に向かって言っていることに気づいた瞬間、
「稀羅、副隊長、やってくれるな?」
「……へ?」
だからさらっと言うなと何度も言ったが。
「うわあ!副隊長!よろしくね?!」
待てください、ナナさん。
「ま、順当だろ。ナナはあれだし、ロミオは頼りないしな。」
「そこはお前がやってくれないと困るよ!ギル!」
「前にも言ったが、俺はベテランでも、先輩とも言われるほどのガラじゃねえ。キャリアはあまり関係ないんだ。」
「彼の言うとおりだ、稀羅。突然の任命に慌てるのはわかるが、理解してほしい。」
「いや、でも、始まって間もない新人を副隊長にしていいんですか?」
なんか横ではロミオさんとギルの喧嘩が始まったか、それよりも、
「せめて戦術に詳しいシエルさんに…」
「シエルはまだ部隊に慣れていない。ゆえに、彼女は誰かに指示を出すこと自体苦手だ。」
うわあ、めちゃくちゃだ。
「だが、ここはあえて願う。承てくれ。」
「……ああ、もう……わかりましたよ。」
ヤケクソ!
「ありがたい、お前らもそれまでにしておけ!」
ロミオさんとギルの喧嘩も落ち着いた。
「チームの現状に疑問が残るが、お前ならできるさ。」
だから、隊長、さらっと言わないで、頼む。
「シエル、副隊長とブラッドについてコンセンサスを重ねておくように。」
「了解しました。」
「それではブラッド各員のさらなる奮闘を期待する。戦場でも今のように規律正しく頼む。」
それぞれの口から了解が出た。
「解散!」
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「おめでとうね、稀羅。あ、これからは副隊長って呼んだ方がいいかなあ?」
「もう勝手にどうぞです。」
自分以外は何だかこの状況楽しんでいるみたいだ。
「まあ、そんなに気を落とすな。大抵の仕事は隊長がこれまで通りやるし、手が足りない時の補助役が自分だと考えればいい。」
「絶対ジュリウス隊長いろいろ目論んでるんじゃないか?」
「さあな、俺にはさっぱりだ。」
研究室を出てから、全身が重くなった感じだ。
「……副隊長、」
忘れる頃にまた頭を痛ませるあのラケル博士の声に加え、副隊長という仕事。
「……副隊長、」
「ん?あ……あ、ごめんなさい!」
しかもまだ現実に慣れない自分は、呼んでいるシエルさんのことも気づけない。
「どうして謝るんですか?」
「そりゃあ、すぐに返事できなかった…から?」
「わかりました。それより、ブラッドのこれからの活動方針を未然に決めたいと思いますが、どうでしょうか?」
「えーと。」
活動方針……か。あれ?確かこれっぽいやつを決めてなかったっけ。
「まあ、必要かもな。シエルさんが入ってきたし。」
あかんな。敬語抜いてるわ。
「そうですか、ならこちらから場所と時刻を指定させていただきますが、よろしいですか?」
「そ、そうね。」
こんなに難しい会話も久しぶり、うん、久しぶりすぎる。
「では……」
『稀羅さん!ギルさん!聴こえますか?』
シエルの声が無線に消された。
「えーと、ちょっとごめん、シエル、無線が…」
『聴こえる、どうした?』
返答どうも、ギル。
『緊急事態です、キャンセルされた討伐対象のクアドリガのことですが、群れをなし、フライアを追っています。数はおそらく3です。』
クアドリガ……先データベースで大型アラガミに分類される種だっけ。
「どれくらい離れてます?」
『もう1kmも残っていません!出撃を急いでください!』
これは、きっとヘリーで降りて即戦闘開始のパターン。
「了解。ギル、先にヘリーチャーターしといて!」
『あいよ!』
さて、俺も行かないと……
『稀羅、突然すまないがちょっといいか?』
隊長、今度はまたなんの無茶を……
「はい、」
『シエルを防衛隊に回してもらえないか?戦力補充にはなるはずだ。』
ちょ、正気かよ!
「回せと言っても、一度も合同任務なしですよ?お互いの戦い方も知らずに、連携しろと?!」
『彼女が君たちを見て馴染む形で動けば何とかなる。頼む。』
確かにギルと俺だけじゃ2 : 3で分が悪い。
「……フランさん。一応シエルさんと無線繋げてください、」
『……入りました。』
「それじゃシエルさん、隊長の指示もあるんでとりあえず今からの緊急任務に付き合ってもらいたいです。任務はできそうですか?」
「……はい、身体に異常はありません。」
「んじゃ、神機持って、ヘリーの搭乗地点まで。」
「了解しました。」
先までいろいろ考えてごちゃごちゃした頭は、いつ間にか戦闘のことだけでスッキリしていた。戦いにしか向いてないのか?俺の頭脳ってのは。
多少虚しく思いながらも、メンテナンスが終わったばかりの神機を取って、ポイントへむかった。
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土煙半端ねえ。
大型アラガミ3体の様子をヘリーから見た時だ。
「今回は最悪撃退もありえるってよ。どうする?副隊長。」
「てめえ明らかに楽しんでないか?その言い方!」
「副隊長、基本指示を、」
あ、はい。やばい2人から副隊長呼ばわりされてる。
「……小型がねえから、全部ねじ伏せる。破砕、効くんだっけ?」
「おう!」
「シエルとギルで奴らの視線をひいて。その間に下の装甲を剥がしておく。」
「その後は各個撃破と?」
「それでいい。主に銃で注意を引けるから。」
「「了解。」」
やばい。すごく慣れない感覚。
「フランさん?」
『状況解説をしますので……稀羅さん、無視しないでくださいね?』
「努力します。」
ヘッドホンはあるし、聴こえるんじゃないかな。
『降下地点、もう間も無くです!』
操縦士からの連絡だ。3人でドアの前に並ぶ。
「くれぐれもあの足は気をつけようぜ。潰されて真っ平になるのはごめんだ。」
「ははっ、だな。」
「了解。」
「……いくぞ、戦闘開始!」
「くっ!」
「っ!」
順次に3人で、砂嵐だとも思われる煙に向かって飛び降りた。
シエルも来た!
後は極東支部まで頑張れば、オリジナル書けそうです。
余談ですが、3月23に共闘祭があるみたいですねえ。
(せっかくGE2あるのに行けない現実。)
うわあ、悔しすぎ。
まあ、来年っすかね。あるなら。