GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
遅れて申し訳ありません。
とりあえず、一つ流しましょうか。
いざと高く登る砂の嵐の中に入ると、案外クアドリガの影が見えてくる。
「なんでもいいから、あたれー!」
半分賭けのつもりの一撃はヒット。どこに当てたのかは知らないが、返り血が飛び、悲鳴がした。
ロオオオ
独特な声。攻撃したのは先方らしく、群れの動きが止まった。煙が落ち着き、クアドリガの形が見える。
それはまるで、戦車を無理やり四つ脚獣に変えたよう、その上には骨だけの人間の上半身らしきものがついてあった。背中に幾つかの箱型の何かを載せており、ほぼ全身が硬い装甲で覆われていた。
『稀羅さん、接触を確認、破砕の稀羅さんが有利です。積極的に前に出てください。』
「なるほど、破砕…ね…」
硬くはあるが薄い装甲はしっかり叩けば割れそうな感じがする。
ロオオッ!
後ろの一体が予備動作なしの突進してくる。
はい?
「副隊長!伏せてください!」
シエルの言われるがままに地面に伏せる。突進中のクアドリガの頭に光線が貫いた。急停止にその体がおいつかず、俺の上を飛び越える形で転んだ。
「す、すげえ…」
まさにクリティカルヒット。ぽっかり奴の頭に穴が空いた。
『敵、ダウンです!オラクル反応が一気に乱れます。』
「うおら!」
そこで降りて来たギルの地面突き、これもまた見事に当たり、首を跳ね飛ばした。
「副隊長、コアを!」
「サンキューです!」
走り出しながらプレデターフォームを開き、装甲ごとコアを食い散らしながら次の奴を狙う。そこで後方の2体のクアドリガの背中の箱……いや、ミサイルポットが開く。
「……聴いてねえぞ、こら!」
ミサイルは垂直降下の仕様みたいで、ざっと20発くらいのミサイルが降り注いできた。
「副隊長、左!」
「わかってる!」
ミサイルの射程範囲から外れるように接近した俺の左から、1体がチェーンの前脚で踏み潰しにかかってきた。
「まずは、てめえな、」
その前脚の懐に突っ込み、変な紋章が書かれた腹の装甲を砕く。痛みにクアドリガは破れた装甲を床に擦りつけながら倒れた。よく見ると、最初の一撃が上半身に当たった奴だ。
「ギル!」
「あいよ!」
ギルの自慢の突進突きが一瞬で横を通りすぎる。その腹の装甲にくぼみができた。
「最後は……へ?」
チャージクラッシュを用意する刹那、奴の装甲が妙に半開きした。
「!みなさん、ミサイルです!」
シエルに言われ、その腹にもう一つのミサイル発射口があるのを見つける。そこから白く光る何かがはみ出した。
「いらないです!」
チャージクラッシュを中止し、神機を掴みなおしてシールドを展開する。そのままその発射口に叩くように押し付ける。
爆発の衝撃と音が全身を揺るがした。だが、実際被害を負ったのはクアドリガ。
コロオオオ
さすがに傷口を火傷されるとそりゃあ痛いか。ま、最初から気にしてないけど。
出血と火傷で、立ち上がる気力すら失ったクアドリガのコアをもう一個いただく。
『2体目活動停止確認、いい感じです。』
「さーて、」
残りはこっちからまだ少し離れたところの1体のみ。
「終わらせる!」
ギルが攻め込む。すると、クアドリガは大きくバックステップをした。
「はっ、下がるだけじゃ刺されるぜ!」
黒く光がまとう神機の推進力でさらにあがる。だが、そこでやっと気づいた。
「ギル!フェイクだ!上!」
「な……うわあっ!」
奴はバックステップと同時に、ギルの突進進路にミサイルを落としたのだ。防御すらできず直撃したギルが、爆発の反動で飛ばされた。
「ち、シエル、ギルの援護を!」
「りょ、了解!」
シエルがギルに向かうと、クアドリガが彼らに向かって突進の構えをした。その間に割り込み、クアドリガに向かって神機を投げ飛ばす。ちょうど走り出そうとする奴の上半身に深く刺された。
悲鳴がし、やったかと思うと、なんと立ち直った。今度はこっちを睨み、ミサイルポットと前面装甲がひらく。
「よくもまあ…」
シエルとギルをつかみ、後方に逃げると、先の地点にミサイルが数発落ちる。だが、腹から出されたミサイルはホーミング型でまっすぐ狙ってくる。
「くっ!」
そこでシエルが放った狙撃がまた綺麗にミサイルを貫いた。空中爆発の煙の向こうの、クアドリガも顔にもかすった。
「副隊長!神機は?」
「後で引っこ抜く。今はあいつの注意を引いてくれ!」
「了解。」
ギルを抱え、さらに後ろに下がった。黒く所々焼き付いた服が気になるが、本人は大して怪我はないようだ。
「ギル、立てるか?」
「ああ、すまん。くそっ。」
「一旦離れろ。ここはシエルとなんとかする。」
「行けるのか?」
「ま、新人同士の連携プレイってことで。最悪、サポート頼む。」
「わかった。」
ギルを壁にもたれさせ、クアドリガの方に走った。シエルが回避行動を繰り返しながら狙撃を試みているが、うまく当たらない。
「シエル!今度はこっちが注意を引く!その間にあのミサイルポットを両方ぶっ潰してくれ!」
「了解です!」
「残りOPは?」
「あと1発はいけます!」
「これ使え!」
OP充電用のアンプルを幾つか渡す。正直、俺にはあんま使い物にならない。
「ありがとうございます。」
神機は奴に突き刺さったままだ。抜くかそれとも何かに利用するか。
「こっちだ!てめえ!」
クアドリガがこっちを向いた途端、またも構えなしの突進をしてくる。横に体を投げ出してかわすも、向こうで奴が体の向きを変えてまたも突進だ。これではシエルもまともに狙えない。
仕方なく接近。そこで、またも腹の装甲が開き、ミサイルが放たれた。
てか、神機ない!
「副隊長!前へ!」
「へっ?」
今度も完璧にシエルが撃ち落とす。とんだ射撃実力だ。煙をかき分けて再び接近し、神機を引っこ抜こうとすると、ある異変に気づく。
「なんだ……この黒い粉は……」
突然クアドリガの周辺に黒色の粉が撒き散らされた。
「これ……この匂い……」
見覚えあるような。
ロオオオッ
そしてクアドリガの気合のような鳴き声……まさか……
「いぎぎっ!」
踵を返し、奴から離れた。奴の周辺に火の海が流れる。そう、あれは火薬。
「自爆でもないのがおかしい…」
そしてその爆発の中心のクアドリガは一切の傷も負わない。
「リロードします、しばし耐えてください!」
残弾1発を使ったシエルがアンプルを叩き割ってその液体を飲み始める。
そこでまだこっちを向いているクアドリガのミサイルが装填された。
「また同じやり方はきついか?」
かわす、といっても今回は援護射撃なしだ。
神機を外すのはやめよう。なら、まずはあの前面装甲のミサイルをなんとかかわす必要がある。どうやって?
そこでなんらかの記憶がフラッシュする。
「思いだせ、どこかで見た空戦映画……そこで、あの戦闘機ってのはミサイルをどんな風に避けたか。」
フェイクの旋回かそれとも迎撃マシーンガーン、それとも全速力で切り離すか。今できるのは、フェイクな動き。
考え終えた時、ミサイルが発射される。
「副隊長!」
まあ、見てな。
動かずギリギリまで引きつける。ほぼ50センチになった時、両手と左足に全神経を集中させて右にステップ。左肩をかする格好でミサイルが外れる。そしてそのまま後ろに少し離れたところに着弾し、爆発。その衝撃波に乗って一気に近づき、突き刺さった神機を横に強く蹴り飛ばした。火薬を撒いていたクアドリガは痛みに負けうずくまった。
『敵、ダウン!今です!』
転がった神機を拾う。
「シエル!撃ちまくれ!」
続いてシエルの正確無比な連射が一瞬で奴のミサイルポットを穴だらけにする。
「締めは、これな!」
充電完了のチャージクラッシュを思いっきり縦に下ろす。巨体があらゆる音とともに半分に割れ、煙を起こし倒れた。
「……終わった?」
「そのようです。」
『3体目、停止確認!状況の報告をお願いします。』
「ギルが軽く打撲、いや、火傷か?」
「俺なら問題ない。」
コアの回収も終え、いつの間にか後ろにいる。
「本当なのか?」
「ああ。」
「……怪我人はいません。フランさん。」
『わかりました。今迎えのヘリーが出ました。あとしばらく待っててください。』
「その前に、他に追ってくるやつは?」
『……ありません、お疲れ様でした。』
「よ、よかったです。」
シエルがその場に座りこむ。ま、あれだけ撃ったもんだし。
「いい射撃、ありがとうございます。」
「え?あ、いいえ。こちらこそ、アンプルの用意がなかったため、大変助かりました。」
「んま、あれは無用物だから、俺には。」
にしても本当にあの正確性はすごい。動くもの自体を当てることだけでも難しいはずだが……。
「俺は、今回は役立たず、か、」
ギルが多少渋い顔になる。
「そうでもねえ。お前じゃないと、俺がやった。」
「いやあ、でも人間より低知能の野郎にフェイク食らうとはな。」
そこでシエルの突っ込みが入った。
「アラガミが低知能だというのは単なる仮説と認識しています。十分人間が騙されるのは想定の上なのでは?」
「……あー、つまり?」
「ま、しょうがないと、あと、良くやったのでは?と言っているんだよ、多分。」
「撃たれてよくやったと言うのかおい、」
「そう発言したつもりは微塵もございません。」
あれ、なんか流れが変だぞ……。
「じゃあ、なんだよ、今のことは?」
「おい、ギル、そこまでにしろ。ヘリーは来たぞ、」
「……わりい。」
「シエルさんもできれば誤解を招くようなややこしい言葉は控えて欲しいな。」
「命令と承ります。」
「……はい。」
ダメだ。当分この人との会話はかみ合いづらそうだ。
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「稀羅!ご苦労だった。すまないな。」
「それが言えるなら今度は免じてあげますよ。」
帰還し、今なおギクシャクする2人の間に挟まれた自分がとても悲しい。
「じゃ、俺は着替えてくる。」
「お、おう。」
「副隊長、先ほどの話ですが…」
ギルが視界から消える途端、シエルが俺の服の袖を引っ張る。
「ブラッドのこれからの方針について、話し合いを要請します。」
「あー、どこで?」
「ラケル先生に研究室を貸していただくことにしました。どうぞ、こちらへ。」
「じ、自分で行けるからそんな引っ張らなくてもさ、」
と言いながらも階段で転びそうになった。
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「まずは、ブラッドとしてのミッション回数を聴きたいのですが…」
「うーん、数回?」
「わかりました。つまりほとんどないということですか。」
「少ないのは事実ね。」
ブラッドになって行ったミッション回数なんてかなり少ないゆえ、病室に2回も行ったもんだ。
「なら、これからブラッドの連携性を重視するため、団体、及び個人での更なる訓練が必要だと存じますが、」
シエルが取り出したのは何らかの手帳。
「ここに、各メンバーに合わせた訓練計画表を記載しています。中に、睡眠8時間、任務4時間、雑業2時間を外し、のごりの時間で座学を6時間、訓練4時間と決めております。」
色々さらっと言われた気がする。なんで隊長も、この子もこんな無茶なことをさらっと言えるんだ?
にも関わらず僕の手にその手帳が握られた。
「というわけでこれからもよろしくお願いします、副隊長。」
くるっと後ろを向いた彼女がドアに歩きだす。
単純に一方的に押し付けられたような。
諦め半分で文字びっしりの手帳を見た時、俺は彼女を呼び止めた。
「なあ、ちょっと、シエルさん。」
「…はい?」
もうドアを開けてるし。
「少し…いや、色々おかしな点があるんだけど。」
シエルはドアを閉じ、眉間にしわを寄せた。
「なにが…ですか?」
「まず…」
この計画表…明らかにやばい。色んな意味で。
「俺の訓練がなぜ'ハンマーを使ったダミーアラガミ20体討伐'なの?」
「同じく重さが中心の武器を扱えば、バリエーションが増すのでは?」
「えーとね、そもそもハンマーはブースターが着いてあるし、チャージクラッシュはバスター専用だ。それに、バスターはどっちかという'切る'という感覚が強い。に対してハンマーは殴るような感じ。いくら重さが中心でも、攻撃のやり方はかなり違う。」
「……それは……」
「あと、ギルの訓練になぜ、ショートが入っているのかな?」
「同じく貫通属性なのでは?」
「そうね、けど…リーチと立ち振る舞いが全然違うよ。スピア使いでもない俺が言うのもなんだけど…」
「あ……」
「あと、なんで俺たちの主武装の訓練内容が一切ないんだ?」
「それは……」
なぜかシエルが黙り込む。もしかして
「なあ、シエルさん。この計画表、いつの物?」
「その……1ヶ月前です。」
「……はい?」
自分にも彼女にもまずいことを聞いた気がする。
いやー、通知は入れましたもののなかなか心苦しい一週間でした。ましてや、己の時間の大半をかけた定期テストがああも無様になるとは…
はっ!いけない!