GOD EATER「Past you and Now I」   作:Pumpghost

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文字数が大変多くなっております。
すみませんが、今回も何卒最後まで読んでくださるとありがたいです。


護衛任務(上)-Blue and Red-

冷たい風がふきぬけ、眠気も少しさめた。

'蒼氷の峡谷'

かつて誰かがつくったダムの跡といわれ、雪山のおくにひっそりと佇んでいた。今や観光地には使えないというが、贅沢な話だ。凍りついたダムと黒と白が混ざりあう雪山は、まさに爽快な調和をなしていた。

 

「副隊長、みんな集まったぜ。」

 

かなり高い地点の丘、ダムとその周りが一望できるここで、ジュリウス隊長とシエルの準備を待っている。

後ろをちらっと見ると、うん、ギルにロミオさんにナナ。全員いた。

 

「OK、あとは合図を待つだけか。」

 

目をふせ、再び無線の神経をかたむけた。

ーーー

 

『神機兵部隊、準備完了です。討伐部隊、どうぞ。』

 

ざっと10分くらいか。

立ちあがって神機をつかんだ。

 

「了解。まずは近くのジュリウス隊長のほうからやって行こう。ナナは先回りしてシエルの方にむかってくれ。」

「あいあいさー!」

「あとは接近中のアラガミを一部かたづけて、のこった1体を神機兵にゆずること。いいね?」

「「了解!」」

 

高いのを承知のうえ、飛びおりる。壁面をかるく蹴る形でおりて、そしてソフトに着地と。

 

「じゃ、いってきまーす!」

「おう!」

 

肩に神機をぶらさげて、ナナは向こうへ走っていった。そして自分は先ほど受けとった変な箱型の、偏食場パルス装置を床に設置した。やがて電源がつく。

 

「偏食場パルス、起動です。」

『確認しました。制限時間は5分です。』

「へい。まわりのアラガミの状況は?」

『はい……小型4体、中型1体がジュリウス隊長から10時方向に50メートルです。種別はオウガテイルとコンゴウ。」

 

「肩ならしにオウガテイルから行きますか?神機兵γ?」

ちなみに無線でのジュリウス隊長は神機兵γ、シエルは神機兵β、あとは無人機のαとδだ。

 

『それがいい、ただ、コンゴウなら問題ないだろ。オウガテイルを先にこっちに送り、コンゴウをおさえてくれ。』

「へい、みんな。聴いたとおりで。」

 

ダムの方にはしって間もなく、2体のオウガテイルが出た。こっちが片方の頭を潰し、ギルがもう一方を串刺しすることでおわり。

もうほんとうに雑魚になったな。

そしてのこりが出てきた。

 

「ギル!コンゴウおさえて、ロミオさん!オウガテイル1体を神機兵まで誘導して、あとは俺が殺る!」

「「了解」」

 

口をひらいてかかってくるオウガテイルに、神機をよこにはめる形で差しこみ、腹のところまで斬り裂いた。さらに上から叩いて背骨をボロボロにし、捕食で回収。

ロミオさんは銃でうまく注意を引きながら、神機兵のところへ向かう。ギルはコンゴウと交戦開始。

 

「ギル!あくまでも、牽制だ。殺すなよ?」

「わかってる!」

 

うまくコンゴウのパンチ攻撃をかわしながら移動を妨げている。こっちもやつの周辺の地面に弾を撃ちこみ、怯ませた。

 

『すげえ!神機兵のやつ、たった一撃でオウガテイル殺しちゃったよ!』

 

ロミオさんの無線だ。神機兵、たいしたもんね。

 

「了解、ロミオさんはこっちへ!ギル、やつを誘導して!」

「了解だ!」

 

さきに自分が後ろにさがり、コンゴウの視界から消えると、コンゴウはギルの方を狙う。とっくにさがったギルは余裕な面で少しずつ逃げていく。コンゴウはただ無闇に彼を追って行った。

 

「フランさん!次は?」

『えーと……中型種!これは…ヤクシャです!稀羅さんから20メートル付近です!』

「隊長!そちらは?」

『コンゴウと接触、ヤクシャには間に合わない。処理してくれ。』

「いよっしゃあ!やっと潰せるやつがきた!」

 

ロミオさん、そう喜ばなくても。

 

「副隊長、指示は?」

「ないっす。適当に足切って潰しましょう。」

「オーライ!」

 

ダムの外から来たヤクシャのその腕を、ロミオさんが水平に斬り、指を何本か消しとばす。うめく間もなく、膝の側面に神機の剣のはらをあて、骨を折る。

 

『ヤクシャ、ダウン!捕食もしくはとどめを!』

 

せっかくだし食ってやろうか。

でかくひらいたプレデターで、やつの左上半身をいただく。食いおわると、またあの力がみなぎった。

 

「ロミオさん、殺していいですよ!」

「任せろ!」

 

銃にきり替え、たおれて地面を向いているヤクシャの顔に銃口をあてたまま派手に一発をかます。

へえ、ああいうのもいいかも。

 

『ヤクシャ、沈黙!アラガミ反応あり!ロミオさんから10メートル?背後です!』

「げえっ?」

 

ダムの外側に背をむけていたロミオさんの後。ダムの下から飛んできたシユウが襲う。

 

「ロミオさん、伏せて!」

「うわああ!」

 

ダムの端に降りたった、やつの胸に蹴りを入れた。予想どおり、偏食因子で強化された蹴りはたやすくやつを下に落とす。そのままやつの体のうえに乗っとり、銃にきり替えた神機を顔にあて、引き金をひいた。

盛大な音とともに散る頭をちら見し、さっさと剣にきり替え、ダムの壁に突いた。

 

「稀羅!生きてる?!」

「生きてますよー!」

 

まあ、けっこう危なかったかも。

 

「いたいた、はい!」

 

半分身を乗りだして手をさしのばすロミオさん。その手を捕まえると、次に体が宙に浮かんだ。

 

「ちょ!もうちょっと優しく引っ張ってくださいよ!」

 

背中で着地……って痛え!

 

「ごめん、」

「いいですから次!」

『ジュリウス隊長の3時方向!小型2体!大型1体!』

「もうお出ましか?ギル!そっちの状況?」

『コンゴウが瀕死状態!小型2体ならおさえられる!』

「神機兵γは?」

『大型確認、種別は……ボルグ-カムラン、厄介だな。』

 

ボルグ-カムラン。確か、鎧の蠍。手に持つ巨大なシールドと尻尾の針が特徴。

 

「援軍要りますか?」

『1人送ってくれ!俺だけでは無理だ!』

「行って、ロミオさん。」

「え、でも…」

「なんとかなる。」

「…わかった!」

『稀羅さん、小型3体、あと…これは、さきのシユウ?』

「けっ、しぶとい!」

 

カブトムシの雑魚がさっそくかかってくるので3体まとめて壁になぎ払う。そこで頭をすっ飛ばしたシユウが半分もない顔でダムにおりる。

 

「鳥の前に幼虫どもだな!」

 

カブトムシのうえに、チャージクラッシュを見舞い、その鎧ごと中身を粉砕する。返り血が口について、つばと吐き捨てた。

 

『稀羅さん!大型もう一つ!12時方向!』

「めんどくせえ!」

 

現れたのは黒猫、ヴァジュラだ。ちょっとスピーディなバトルになりそうね。

さっそく迫るシユウの低空滑走をかかんで避け、続くヴァジュラの電球2個をシールドで弾く。走ってくるシユウの股のしたを滑りながらスタングレネードを転がす。閃光がして、2匹とも頭をふりながら視界をもどそうとする。が、

 

「んな余裕ある?」

 

肩ごしの一撃にブラッドアーツをのせ、顔をかくす、その両手を砕いた。

ゴオオオッ

痛みにひざまずくシユウの頭にもう一度至近距離からロケット弾を放った。今度こそ上がぽっかり空いた上半身は力なく崩れた。ヴァジュラのほうを見ると、そろそろこっちが見えてきたようだ。

 

『シユウ、撃沈!あとはヴァジュラです!』

「なんだかんだで銃が楽しくなってきた。」

 

ポケットのOPアンプル3つをとりだし、神機にぶつけて割り、口に流した。

ギャアアアア

やっとこっちが見えるか、猫ちゃん。

アンプルの破片を投げ捨て、神機を構えた。突進してくるのを右によけながら、よこに一撃。やつの顔に軽くかする。するとマントような鬣が逆立ちし、電気がはしる。

 

「っ、なに?」

 

放電?それとも…?

バックステップをしながら、まるで昨日のクアドリガのように、いくつもの電球をふりまく。

うわっ、それはない。

よこに体をなげてよける。すぐに起きあがり、攻めこむ。

グルルル

頭は回るようで、黒猫は自分の前方に電球をならべ、充電をはじめる。

 

「残念!」

 

その電球のバリアをとび越え、その顔の鼻を地面におしつけ、右手の神機で両眼を突き刺す。

グルアアアア

激しく頭をゆらす黒猫の顔に膝蹴りを入れながら、またも銃に変形。ひらいた口に、深くねじ込み、そこで貯めておいたOPを一気に放射した。やつの全身が一度大きく跳ね上がると、動きがとまった。

神機を引っこ抜くと、血まみれになっていた。

 

「……きったねえじゃんか、てめえ!」

 

ブラッドアーツでその頭の装飾ごと破壊する。さらに血があふれ、服まで濡らした。

 

「あーも。また洗濯かよ。」

 

よもや制服まで……と、こんなこと言ってられないな。

 

「フランさん、始末しました。」

『確認しました、お疲れ様です。ソローでここまでとは。』

「それより、あの偏食場装置ののこり時間は?」

『のこり1分をきりました。もうすぐです!』

「どうも。神機兵γ!そっちはどうです?」

『ボルグ-カムランと交戦中、神機兵δが独自でやろうとしている。』

「行けるんですか?」

『できそうだ、そっちは引きつづきアラガミを排除してくれ。』

「了解!」

『稀羅さん、今のところ反応はありません。体を休めてください。』

「それはいいですね。」

 

プレデターフォームでヴァジュラに食いつかせてその体のうえに座った。黒いもふもふとした毛がなかなかいい感触。神機を握るちからをぬき、次の戦いに備える。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

作戦開始から4分。ダムの向こうは、すでに戦闘で忙しい。

 

「ねえ、シエルちゃん、その人形のなか、暑くないのー?」

 

ブラッドに入って間もない私に、たくさん話かけてくれた同性のひと。

 

「それほど苦しくありません。ご心配なさらぬよう。」

「うん、わかった。とりあえず5分後にみんなが来るのを待てばいいのかな?」

「ええ、そうですね。」

 

まっすぐで明るい性格。自分が持たないようなものを色々持っている彼女が、少し羨ましい。だから彼女と一緒にいれば、自分も少しは変わるかなと期待して、彼女に寄り添った。

 

「にしても、」

「はい?」

「うちの隊長もすごいけど、副隊長の稀羅もすごいなあ。さきの無線きいた?」

「ええ、こっちも慌てさせる、緊迫感溢れる無線でした。それほど奮闘なさってる事でしょう。副隊長が。」

「なんか2体の中型と大型で一気に片付いちゃったみたい。怪我してないのかな?」

「ヘリーがおりてこなかったので、大丈夫なのでは?」

「そうね。よし、あとはあたしたちね!精一杯がんばろう!」

「はい!」

 

副隊長、稀羅-ペル-メルディオ……ジュリウスと似ているようで明らかにどこかが違う気もする。また、彼にも一種の羨ましいところはある。何年もボディガードを勤めても、会話に馴染めない私は、あって間もないはずの副隊長に、ジュリウスとの会話の主導権を、あっという間に取られた。

私も、彼のように誰かの考えにすぐに馴染むことができれば……ジュリウスとは今ごろ、他のことも話せただろうに。

ただただ広がる蒼い空を寂しく眺めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『偏食場パルス装置が停止!のこりの小型アラガミを一掃してください!』

「こっちはとっくに終わりましたよ、と。」

 

黒猫の後にはつまらない小型を、3体ほどしとめた。その間に神機兵側は大型の処理におわったようだ。

 

『制圧完了。』

『うっし、稀羅、終わったぜ。くたばってないよな?』

「ちゃんと足ついてあるよ。」

『一度合流すればどうだ?』

「わかった。」

 

血まみれの神機を肩にのせ、彼らのほうに向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よし、俺は一度フライアに帰投する。稀羅、あとは任せた。」

「そう言うと思ったよ、全く。」

 

神機兵から出た隊長はなぜか少し体が濡れていた。

 

「中に何の液体を入れてるんですか、いったい?」

「まあ、近々教えよう。俺はヘリーがついたらそのまま行く。さきに彼女たちのほうに行ってくれ。」

「了解です。んじゃ、ロミオさんはここで神機兵が回収されるまで護衛してもらえますか?」

「あいよ。」

「それじゃ、ギル、行こうぜ。」

「ああ。」

 

隊長とロミオさんとわかれ、シエルたちがいる北のほうに向けて歩きだした。

 

「にしても最後は1人で担当するとはね、すごいぜ副隊長。」

「そんな褒めるなって。中型もう1体出てると、さすがに疲れはててたよ。」

「まあ、おつかれさん。」

 

その時、いきなり変な音がした。まるで金属どうしを摩擦させているかのような音。小さくも、しっかり鼓膜を刺激する。

 

「ん?どうした、副隊長?」

 

止まった自分を変に思ったのか、ギルが振り返る。ヘッドホンを外す。それでもなお聴こえた。

 

「なあ、変な音しないか?」

「変な音?」

 

おかしい。確かに今も聴こえる。

 

「つかれたのかな?副隊長。」

「いや、そんなことじゃないと思う。ほんとうに聴こえないの?あの金属をこするような音が?」

「わからないよ。」

 

どういうことだ?

 

音が聴こえる方は、ダムの一部が壊れ、沼のようになった海岸だ。

 

「ごめん、ちょいいってくる。」

「お、おい、ちょっと副隊長!」

「すぐ行く!さきに合流していて!」

 

ぽかんとするギルを置きざりに、音が聴こえる方にはしる。海岸の泥は靴をのみこみたいように貼りついてきた。

キイイーン

なんだ、この音。もしかしてアラガミ?

 

「フランさん、今俺がいる付近でアラガミの反応はありますか?」

『いいえ、なにも。』

 

耳がわるくなっただけなのかと思い、踵を返そうとした瞬間だった。海岸の向こう、海を渡ったところに、自然でつくられた洞窟が見えた。

 

「なんであそこに洞窟なんか……え?」

 

思わず声をあげたのは、その洞窟のなかで、こっちを見つめる視線に気づいたからだ。緑に光る、2つの塊が、むこうに小さい点となって見える。

アラガミか?

しかし、点は動かない。耳もとではいまだあの音が響く。

 

「フランさん、戦闘区域の外にもないんですか?」

『ありません、稀羅さん、捜索はいったん中止し、ミッションに戻ってください。』

「……そう、ですね。」

 

まだ動かないあの2点を見つめながらゆっくり下がる。そして、それを待ってたかのよう、2つの緑の点が消え、とてつもなく大きい咆哮がした。

オオオオオオ

これ、もしかしてガルムか?

反射でヘッドホンをかけ直すも、咆哮はすぐにおわり、静寂が訪れた。

 

『稀羅さん!12時方向で、感応種の反応!種別は…アンノウン?』

「フランさん、あいつ、逃げたみたいけど。」

『あ……はい。本当だ。いつの間に?』

 

なんだったんだ、あれ……。

耳鳴りも止んだ。結局どうしようもないまま空に目を向けた時、またの異変に気付いた。

 

「は?なんだ……あれ……」

 

深く蒼いはずの空は…真っ赤な雲で覆われはじめた。




まだまだあとばなしは残っております。
次回は水曜日ですかね。

ないものを一から作るのか大変だという気分をしっかり味わいつつあります。ましてや他の作家さんを敬いたくもなりますね。

いつも読んでくださる方々のためにもこの護衛任務話はしっかりまとめないとですね。
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