GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
面目ないです。
霧散されずに残った死体で、訓練場が埋まり尽くされそうになった。
『50体終了。どうします?追加しますか?』
かれこれ2時間は経った。10体のはずの最初の目標は、開始10分満たずクリア。
「5体追加。一気に。」
『またそんな注文を……』
とか文句を言う彼女だが、しっかりダミーのオウガテイルを出してくれる。
飛びかかってくる1体を刀身の先で突き返しながら壁まで追い込む。勿論デカイ風穴が空いたままエンド。
次に来る奴を、下へ体をスライディングさせてかわし、尻尾を捕食。そのまま大きく2回転振り回す。追い打ちを仕掛けようとした連中は、回転に巻き込まれた。適当に捕食を辞めて放すと、4体まとめてあちらへ。それをチャージクラッシュで全部バラバラにすることで5体討伐。
『終了。追加します?』
「極東支部まであと何時間っすか?」
『えーと、2時間半くらいです。』
だいたいの戦闘感覚は取り戻した。まあ、一部は偏食因子のおかげだとも思うが。問題は次だ。
「ブラッドアーツ」
『ブラッドアーツでしたら何度か拝見させていただきましたが?』
「あれ弱い気がします。」
『え?床に穴を掘るくらいの威力はありましたが。』
彼女が言っているのは、振り下ろしに血の力をつけたやつ。一応名前は決まってない。しかし、あれを訓練で度々使いながら思ったこと、
「何せ、単体仕様になっちまいます。あのままじゃ。」
『それでも中型や大型にはかなり向いているとは思いますが。』
「いや、一撃が命のこの武器じゃ、もうちょっと力を出してもらわないと。」
『2体以上を同時に出させたのはそういう訳でしたか。』
「なんかいい方法がないっすかね」
『チャージクラッシュはいかがですか?先も4体まとめて処理したものですし。』
「でも一箇所に集まってる時にしかできませんよ。ああ言うの。」
『でもそれは縦の一撃ですから。』
うん?まてよ。
「フランさん、今のもう一回。」
『え?縦の一撃ですから……何か?』
「……横に振ってみようかね。」
『あ、それは。』
「できそうじゃないっすか?」
オラクル現象で刀身が2倍になるやつだ。たった一瞬のものじゃ勿体無さすぎ。
『でしたら、もう少しそのオラクルによる刀身を延長させる必要がありそうですが。まして振り回すつもりでしたら。』
「あ……」
確かに、せっかくなら、ね。
「ちょっとやってみます。」
肩の上にとどめることで姿勢を取り、神機を握る手に力を加える。やがて微弱に振動する神機に、赤紫のオーラがまとわりつく。
『それで通常のです。』
そう。そしてここから、
「ふうっ!」
最初にあの技を放ったように、体ではなく、心の奥から解き放つ力を。そしれそれを手の位置まで運ぶ。そして、
『オレンジ?そんな色になりました!』
どうやらオーラの色が変わったようだ。
「長さは?!」
『お見事です!3、いや、4倍?』
「うらああ!」
力を入れたまま左側に落とした神機を、右足と腰を後ろに引くことで遠心力を無理矢理つくり、一気に右側までなぎ払った。最後に肩のところまで持ってくることで力を抜いた。
『今の……すごいです。』
感嘆に浸ったフランさんの声が流れた。確かに形的にはこれでいいんだと自分でも思った。けど、
「やっぱ、実用化には少し工夫を入れないと。」
『そうですね、放つまでの時間がかなり長いです。』
「しかも体力消費も酷いな、これは。」
『でも完成したら、とんでもない技になりそうです。』
「もう一回やってみようか。」
幾つかの改良の要素を浮かべながら、また神機に力を入れた。
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「お疲れ様です。中々見えて来たのではありませんか?」
「はい。コツなら掴みました。あとは実践でいかに活かすかですけど。」
およそ1時間。新しいブラッドアーツ開放はなんとか上手くいった。通常より貯めるための時間が1.5倍になったことを除けば、長さは4倍まで伸び、それを横に振るうことができる。
「とりあえず極東支部まで間もないので、シャワーとかでしたら今のうちに済ましてください。」
「そうですね。」
「あと、そのまま荷物を持って下りればどうです?」
「はい。んじゃ失礼します。訓練の付き合いありがとうございました。」
「せめてこれで稀羅さんが生き残る確率が高まればいいのですが……」
「そこらへんで終わらせてくださいよ。」
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部屋に戻り、洗濯が終わった制服を乾かし、シャワーを浴びた。おまけに汗だくの服も同時進行で洗濯。
今は制服姿。ワイシャツが乾かなっかたらこのまま行くことにしよう。
「そういや、今頃みんなどこまで片付けたのかね。」
少し気になり、一番自分の部屋に近いギルの部屋にお邪魔する。
「お前か?入れよ。」
「わりい、邪魔したか?」
「案外ここに来て数日だからな。たいして溜まってねえさ。服とか小物は多少散らかってたが。」
「前の支部での荷物はあんま無かったみたいね。」
スーツケースはたったの2つ。しかも小型サイズだ。
「ん、ああ。それもそうね。あの頃は自分の部屋にいる時
間は短かったし。」
「任務?」
「いや、メンバーの部屋によくお邪魔した。」
「そんなに仲良かったのか。」
簡単に他人の部屋を行ったり来たりできるって。
「とわ言え、メンバー少なかったからな。当然ちゃ当然になるぜ。」
「そんなもんか?」
「ああ。それより、そっちの荷物はどうだ?まとまったか?」
「今のギルの言い訳を理由にさせな。服1着だ。」
「やれやれ。しょうがないか。」
懐かしさと楽しさをその目に秘めたギルであった。
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そして、いよいよフライアが極東支部に到着。なぜか先に乾いたウェイトレス服装で、片手にビニールを被せた制服を持つことになった。
大きいスーツケース1つだけ転がしながら進む隊長とシエルに、ざっと3つ以上の荷物を両手いっぱい抱えるナナとロミオさん、2つの小さいバックを両手で転がすギルと俺が続いた。
なんだか難民を思いだしっちまうな。この2人は。
フライアの職員さん達と挨拶をしながら一人一人、外へ出て行く。
フランさんはまるでいつものミッションの時のように、カウンターで見送ってくれていた。
「稀羅さん。これ。」
最後に俺との別れ挨拶になった時に彼女が取り出したのは少し厚めのあの本だ。
「私はフライアに残ることにしました。」
「え、本当ですか?」
「はい。神機兵のサポートを任されてしまいまして。」
「あのジジイ。」
「そしてこれ、実は最後までまだ読めなかったんです。本当は、サクッと読み終えて、稀羅さんと話したかったのですが。」
「うあ。それは結構残念。」
「そこで、稀羅さんが最後の内容教えてもらえますか?」
「え?うーん、いいですけど。流石につまんなくなっちゃうでしょ?せめて……」
本の最後のページをめくる。前に彼女に言った英語での文章がずらり並ぶ。
「この2つの対話文だけ訳してみません?」
「そこまでのあらすじは?」
「6つ目の宝に、魔女が会ったというところまで読みましたよね?」
「はい。」
「えーと、魔女は、2匹の鳥。つまり幸福と幸運の鳥に聞きます。幸せになる方法を教えろと。そこで幸福の鳥が言ったのは、一つのヒントです。
『私たちは、お互い近くにいるからいつも幸せになれる。』
と。ただ、その意味を理解できないまま、魔女はまた道を進み、途中でへばってしまいました。」
「え、なぜ?」
「食糧も、力も尽きたからでしょう。しかし、誰かによって、危うく雪山で凍りかけた彼女は助かります。救ったのは、かつて彼女が旅に出る時に最後まで見送った人でした。」
「あ。確か、魔女の弟子!」
「はい。そして再会した時に彼が言うのが、そしてそれに答えた魔女の言葉がこの2つです。」
指で位置を示す。
「でも、その2つでストーリが……」
「そうですね。終わってます。あとはご想像に、と言うことでしょう。」
「結構長いセリフですね。」
「物語の鍵ですから。」
「じゃあ、これを?」
「また会えた時に話しましょう。男の弟子の方は俺がいいますんで。魔女の役を、フランさんが言ってください。」
「面白そうですね。」
フランさんはその本をそーっと閉じてそれを両手で抱いた。
「忘れないで下さいね?」
「自分で言い出したんですからそうそう忘れませんよ。あ、あともう1つ。」
制服をカウンターに置いて、自分の首の辺りに手を入れた。取り出したのは、銀色の細い笛。
「綺麗。」
「短いですけど、6音くらいだせます。」
そして両端を掴んで逆方向にそれぞれ捻る。そしてぱかっと半分に割れた。
「半分になると、2つの音しか出ません。一つ、どうぞ。」
彼女の手に載せる。
「え、いいんですか?」
「色々お世話になりましたからね。心配もかけちゃいましたし。これを、再開した時に俺に見せてください。一曲演奏しますんで。」
「さらに会いにいきたくなっちゃいますよ。これでは。」
「本当は、親父のものですけどね。」
「そうですか?」
「ええ、遺体から辛うじて見つけました。一応それ、糸を通せるやつなんで。こんな風に。」
自分の首にかかった笛の半分を見せる。
「……大事にします。」
「そう言われると嬉しいですね。」
「おーい!稀羅!」
突然ギルの声に俺とフランさんは現実に戻る。
「ゲート開くぞ、はやくしろ!」
「わりい!待ってて!」
ったく。時間ってのは人をここまで急かすもんだ。
「それじゃあ、失礼します。お元気で。」
「ええ、そっちこそ、本当に無理しないで下さいね?」
「へい、そうします。」
「おーい!」
「わかったってば!」
フランさんに軽く会釈をし、ギルの方に走った。ちらっと後ろを見ると、彼女が小さく手を振ってくれていたので、もう一度会釈をした。
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極東支部は地上から何十メートルに及ぶ巨大な壁に守られた円陣の形だった。まるで要塞の外壁を思わせるその作りと、その内側の沢山の家屋のサテライト拠点。
これはそう簡単に壊れそうにないね。
誰もがそう思わせる難攻不落の施設だ。
壁の近くに行くと、2人の極東に神機使いが出迎えていた。
「極東支部第一部隊所属、エリナ-デア-フォーゲルヴァイデです。ブラット隊の護衛に参りました!えーと……」
1人はどう見てもまだ幼い。しかも女。ある意味ナナ以下に幼い子がゴッドイーターに採用されるほど、この支部は危険なのかと疑ってしまう。
薄緑の髪の毛は真っ白な肌で際立ち、まだ子供の面影を残す繊細な顔。華奢な手足と小さい顔がいいバランスを成していた。
そして、
「おお!これは我がライバル、稀羅ではないか!待ちくたびれたぞ!」
げっ。どうも俺はこの声を聞いた途端、透明人間にでもなりたいと願う。
「あ、はい。その……誰でしたっけ?」
「寂しいことを言ってくれるのではないか、戦友!我を忘れたか!エミール-フォン-シュトラスブルクを!」
頼むから『確かに、君は誰なのかね?』と言ってくれませんか。
「あー、はい。そうでしたね。あはは。」
そんなの無理か。
「エミールうるさい!また私が話出した時に割り込まないで!」
「うむ?どうしたエリナよ。我はただ新しい極東の仲間同士で親睦を深めるべく……」
「だから、今言ったでしょ!邪魔しないでよ!私が話してるんでしょ?」
「そう!ここにいるのはエリナ!我が盟友のエリック-デア-フォーゲルヴァイデの妹!すなわち、我の妹だと思ってくれればいい。」
「誰があんたの妹よ!」
ダメだ。どんどん混雑する。
「コホン。」
「あ、」
「む、」
ナイスです隊長。
「わざわざご苦労して頂き、心から感謝します。このまま支部まで案内してもらえないでしょうか?」
「はい!すみません。こちらへ。エミールは一番後ろで護衛。いいわね?」
「よかろう。」
ようやく落ち着いた状況の後、大きい外壁をくくり、支部につながる道を歩く。古びた家屋がよく目に入る。それでも改修作業が進んでいるところも多い。少なくとも俺が元住んでいたサテライト拠点よりは楽な暮らしなのかもしれない。毎日色んなアラガミに怯え続ける日々でも。
「……」
ざっと歩いて5分くらい。たまたま隊長の隣で、先頭を歩いていたら、エリナといった女の子にジロジロ見られた。
「な、なに?」
「貴方がブラッドの副隊長?」
「そうだけど?」
「……(強いですか)?」
横目で妙に小さい声で呟いたので聴こえなかった。
「ごめん、なんて?」
「なんでもないです。ほら、もうそこです。」
彼女が指差した先に、黄色の光に包まれた、黒色で少し背の高いビルがあった。
あそこがねえ。
一見どこでもありがちなビルだ。その意味では、ここが余計な金はかけない節約じみた支部だとも思わせる。
「どうですか?うちの支部。」
「丈夫そうですね。この外壁のことも。」
「あれはきっとフェンリルの支部においては最先端の技術ですよ。」
「へえ、すごい。」
自慢げに言うエリナ、この支部が好きなんだろう。そしてそれは、この支部に助けられたからこそそう思えるのかもしれない。
「ブラッドのみなさんは支部についたら、荷物はこちらに預けてください。各自の部屋まで運びますので。」
「あ、それはどうも。」
「その後はまずは支部長の方にいらしてください。」
「分かりました。って、みんな聴いたよな?!おい!」
念のために後ろに声をかけるが、帰ってくる返事は3人くらい。
うん、だいたい誰なのかは予想がつくな。
残りの2人が心配になってきた。
「ようこそ!極東支部、'アナグラ'へ!」
ビルの入り口前で、エリナの一声が空に響いた。
なんとなく内容の多さに欲張っちゃっているのかもしれませんね。
今度も大量で読むのにお疲れなさったと思います。
こりゃあ本当に減らしたほうがいいのかね。