GOD EATER「Past you and Now I」   作:Pumpghost

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どうも
今回はフランの回想シーンになります。



白を想う黒-You in somewhere-

上半身だけをこっちに向いて頭を下げる稀羅さんを見送る中、脳裏では、その姿に重なりつつある少年の影があった。忘れそうな度に何度も出てくる彼。今はどうしているのだろう。

やがて稀羅さんの姿も消え、頭ではある記憶がリフレインする。

あれからもう10年って、時間は残酷ね。

 

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『彼』と会ったのは私が5歳の時。親を亡くし、どっかのサテライト拠点の病院に移送されていた。そこで私は単に児童というだけではなく、患者として扱われた。病名は覚えていない。一応ながら急性ショックによる言語不自由化といった症状だった。それに対し、自分としてはただ心を閉ざしたようなもんだった。誰とも話したくなかった。また親しくなった誰かを失うことが何より怖くて。そしてその先に自分が壊れるてしまいそうで。

ショートカットに、みんなとも難なく話せる今の私とは違い、あの頃は、顔を隠してしまいそうなくらい長い髪に、服は真っ白でなんの柄もない地味なワンピースといった格好だった。そして体のど真ん中にぽっかり穴の空いたクマさんの人形、テディベアを抱きかかえていた。

これだけではなくすもんか、と。

病院に入り、1ヶ月。私を担当していた主治医はある少年を連れてきた。

 

「さあ、フランちゃん、新しいお友達ですよ。ほら、君も。」

 

ボサボサとした黒い髪の毛の、目がキラキラしていた男の子。あの時、髪で顔を隠していた私の顔を、彼は見たのかな。

「あのこ、ひとりでいたいみたいですよ?」

 

細高い、男としては珍しい声。

「うむ。そうか。なら私は失礼する。後は頼むぞ、ケイル。」

「はい。」

 

彼らから目を離し、テディベアを見下ろす私。男の子がベットの隣にやって来た。

「よこ、すわっていい?」

 

頭をコクっと返事をすると、ゆっくり腰掛けた。

 

「ぼくはけいる、けいる-おるふぃすというんだ。きみは?」

 

かつてこの子以前にも、私を治療しようと派遣された、たくさんの医者がいたものの、結局はあちらが泣き顔になって帰ってしまうの繰り返しだった。

 

「……フランチェスカ。」

「そっかあ、でもながいなあ……あのさ、ちぇすかってよんでいい?」

 

はっとした。その呼び名は、両親だけが私を呼ぶ時に使ってたものだ。

「……うん。」

なぜか声が出る。

あれ、もう喋らないと決めてたのに。

「ありがとう。ちぇすかってこえきれいなんだね?」

「……!」

 

彼の対応が今までの医者とは大違いで、頭がついて行けなかった。それに声のことで褒められたのも初めて。

 

「……」

 

何も言えずに黙りこくってしまった私にその子はそれ以上の質問はしなかった。むしろ、

 

「つかれたのかな?ごめんね。めい……わく?かけてしまって。」

 

まだまだ不器用な表現を一生懸命口に出す彼。そんな彼が同じ年ごろなせいか、思わず心を寄り添えてしまう。

 

「それじゃあ、きょうはさよならするよ。おやすみ、ちぇすか。」

 

何も言わなく、いや、言えなくなった私にそう声をかけ、部屋を静かに出て行った。

「……おやすみ……っ」

 

自分にびっくりした。二度と声をあげないと、開かないと決めた喉と口は確かに彼にむけて挨拶をした。それを私が意図的にやったのかどうかは曖昧すぎる。それでも、久々に声を出し、もっと喋りたいという欲が微かにあったのは気づかない訳がなかった。

後日から、来る日も来る日も、彼は短い時間でもちゃんと会いに来てくれた。私がなかなか喋らないのはすでに分かっていたせいか、一回声を出すと彼はすごく喜んでくれた。そいやって目に見えるくらい、私の1日の話す量が増えたのは言うまでもない。

 

同時に彼についても色々知ることになった。名前はケイル-オルフィス。歳は私より3つ上の9、それで少しだけ背が高かった。出身はかつて米国といった地域のため、2ヶ国語も話せた。アラガミの被害に会い、この地域に移住し、それから医者の親父と仕事を一緒にしていた。

毎日ケイルが、自分の身長に合わない長い白衣を着て、その丈を床に引きずりながら来るのを

 

「似合わない。」

 

と言うと、悔しさと嬉しさが混じった顔になっていた。

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そして、彼と出会ってかれこれ半年以上の時だった。

「こんばんは、ちぇすか。」

「こんばんは。」

挨拶は自然になり、

 

「きょうはおもしろいことあった?」

「ううん、またまずいごはんと、おなじけしきだけ。でもそとでいぬにあった。」

ここまで話せるようになってた。忍耐強い彼のお陰だと言える。

 

「いぬって、ああ、あのくろいわんちゃんか。しってる。」

「かわいかった。」

「そうだね。でもさいきんはまちのねことあそんでるのもおおいみたいよ?」

「ねこ?」

「それもかわいいどうぶつ。」

「こんどみせて。」

「うん!いっしょにおそとへさんぽしにいこう。」

「うん。」

 

もう1つ、私ができるようになったこと。それは、笑うこと。髪で隠れた顔だから誰が気づくかはさておき、微笑むことができた。これはケイルが最も私を大きく変えてくれた点。

「そうだ、きょう、ちぇすかのたん……じょう……び?だときいたよ。それで、びょういんのみんなでちぇすかにぷれぜんと。」

 

彼が取り出したのはまさかの白いテディベア。胸のまえで抱いている黒いテディベアといいペアになりそうだった。

「……これ、だれが?」

「だから、びょういんのみんな!」

「……ありがとう……。」

 

そしてその日、家族を失って初めて嬉し涙を流した。もちろん、意味が分からないケイルは混乱してたけど。

「え?ご、ごめん。いやなのかな?このクマさん。」

「ううん、」

 

2つのテディベアを力いっぱい抱きしめた。

「どっちも大好き。」

「……そっか。よかったあ。おめでとう。」

「うん!」

黒いテディベアは、9歳の誕生日に親から貰ったものだった。親が死んで、ずっとそのテディベアだけが自分の理性の頼りだった。そして、医者たちは、この汚なくなったテディベアを新しいものに変えようとしたが、そんなの、私が望むはずがなかった。

私がクマさんが好きなのを知ったケイルからこそ、みんなにこのテディベアを選んでとお願いしたのだろう。

「これで、くろいくまさんにもともだちがふえたね。ひとりでさみしそうだったよ。まえのちぇすかみたいに。」

「え?」

そこまで考えていたなんて信じられなかった。むしろ大人の医者に囲まれ、寂しかったのはケイルのはずなのに。

「これで4にん!たのしくなりそう!」

「ありがとう。だいじにする。」

「うれしいな、そういわれると。そうだ、もういっこ。」

2つ目に出したのは厚い本。タイトルは分からない文字だった。

 

「これ、おとうさんからもらったよ。なんだっけ、こどもむけではないけど、おもしろいぞといわれた。」

「でも読めない。」

「大丈夫、これからまいにちよんであげる。ちぇすかにも、くろいくまさんにも、しろいくまさんにも。」

「たのしみ。これ、なんてよむの?」

 

タイトルを指差すと、

「six treasure、えーと、むっつのたから?」

「むっつ?」

「はやくよんでみよう。えーと、」

それから、たまに悩んでもしっかり訳して物語を読んでくれるケイルの声を耳にしながら、その後日からも彼と過ごす時間は長くなった。ゆったりと流れるその時間が幸せだと思えて仕方がなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しかし、神様はそんな私たちを許してはくれなかった。ほんの一夜のアラガミの襲撃で、全てが狂いだしてしまった。

夜、いつもどおりケイルが来るのを楽しみにしながら、彼がくれた本を一枚ずつめくっていると、建物が激しく揺れ出した。自ずと2つのテディベアをぎゅっと抱く。これがアラガミによるものだと頭で瞬時に気づいた。

「……けいる、どこ?」

 

無意識に彼を呼ぶものの、いるはずがない。その時だった。

「フランちゃん、いるかい?」

 

私にケイルを紹介した、主治医のおじさんが来た。

「はやく動かないといけない。大事なものだけ持っておじさんについて来なさい。」

「けいるは?」

「彼はきっと無事だ。まず、君がしっかりしないと。」

「けいるにあいたい。」

「いつか会えるさ。そのためにも今はおじさんについて来なさい。」

 

仕方なく両手いっぱいにケイルがくれたものを持って、おじさんに続いた。そのまま運搬車両に乗り、ずっと南へ向かった。

後に分かったことは、彼は家族を非難させるため、自宅に帰らざるを得なかったらしい。ただ、その後彼がどこに行ってしまったのか、そして何をしたのかが全く分からなくなった。

そうやって、たった1年のケイルとの生活は無情にも幕を下ろした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これかな……」

自室で棚をいくつか調べ、ちょうど良さそうな細い金糸を見つけ、笛の穴に通した。それを首にかけて眺める。笛が窓からの夕日に照らされ、綺麗に輝いた。

ベッドに寝転び、枕のそばにに置いといた白いテディベアを抱いて、顔を埋める。

「ケイル……結局どこに行ったの?」

 

11歳に、お世話になっていたサテライト拠点に廻る噂があった。とある神機使いが、まる半年は保つくらいの食糧を送って来たと。名前はオルフィス。

そして、単純すぎた私は、その噂に身を任せ、神機使いになるため応募したものの、適合する神機が見つからず、オペレーターになった。本当は、向こうからオペレーターの仕事を要請されたもので、私はケイルに会うためだけに、迷いなく受け入れた。

「極東支部にもいないなんて……」

 

オペレーターになって、真っ先に彼について調べたものの、自分は常にどこかへ移動するフライア、彼は遠くの極東支部所属になっていた。最近になって、極東支部に着く前日に極東の神機使いの名簿を調べたが、彼の名前はなかった。どこかへ転属したのかもしれない。だけど、悔しい。それもあまりにも。

 

「……稀羅さん。」

 

そして浮かぶあの人の顔。

神機使いの候補面接で、彼と会った時は、目を疑った。ケイルの面影を残す、大人びた顔。そして唯一、

名前が違う。

で、表は落ち着きは保ったものの、心は動揺しっぱなしだった。

彼が緊急事態で怪我をして病室に入った時も、彼が心配だということよりも、眼鏡を外し、安らかに寝息をたてる彼があまりにもケイルに似ていたからだ。さらに、あの本を渡した時、それをじっくり眺める横顔。以前何度も目にしたその顔に惚けてしまったが、流石に稀羅さんもおかしく思ったのだろう。それほどあの人はケイル、彼に似ている、度が過ぎるほど。

「はやく戻ってよ。ケイル。じゃないと、貴方が大人になったようなあの人に……同じ感情を持っちゃうから。」

正直、フライアに残るのは自分からの申し出だった。理由は……10年前のあれと同じだ。稀羅さんを失うのが……ケイルを失うようなことになりそうで、それがたまらなく怖い。

泣きそうな顔を誰にも見せまいと、テディベアをさらに強く抱いた。




こうやって設定を自分なりにする時、時期設定に頭を抱えます。
なんとか合うようにしないと!
って必死になっちまいますね。
それではしばらく戦闘シーンがお預けでしたが、まあ、次回からガンガン書いていきます。
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