GOD EATER「Past you and Now I」 作:Pumpghost
「もうすぐ目は覚ますでしょう。今は安静にさせてください。」
「はい、どうもありがとうございます。」
頭に薄く包帯を巻いたエリナさんが寝かされたベット。その横に座って彼女を見守る。
「それでは私はこれで失礼します。」
「はい、お疲れ様でした。」
そしてこの極東で看護師を務める女性が一礼して病室を出て行った。左胸に名刹が着いてあったが、さっきは状況が状況で、のんびり読む暇もなかった。
「全く。手間のかかせる奴ね。」
静かに寝息をたてるその顔はどこまでも無邪気だ。
こんなに小さくて幼い子が第一前線に駆り出されるのも、結局はご時世の影響かな。
「エリナ!」
「ちょ、しーっ!」
いきなり病室に焦った面相で入ったコウタに、肝を落とされそうになった。
「……あ、寝てるか?」
「そう。少し落ち着け。」
「ご、ごめん。具合はどうなの?」
「頭を軽く切っただけだって。特に内部に影響はなし。多分すぐ起きるだろうね。」
「よ、よかったあ……」
彼に椅子を出した。コウタは座りながらエリナさんの包帯から目を離せない。
「記憶喪失とか、障害とかはないんだよな?」
「ないない、安心しろ。」
「よかった。こいつになんかあったら……」
「……?」
やっと落ち着いたみたいだが、続きを語らない。
それとも、今は無理に言わせない方がいいかな。
「……こいつの兄貴に合わせる顔がねえ。」
「……兄貴?」
突然、また彼の口が開いた。
「'エリック'という俺と同じ、第一型世代の神機使い。」
「引退してるのか?」
と言いながらも、実は答えは見えてしまっていた。
「いや、KIA判定だ。およそ3年前に。そして今年、エリナが入ってきたんだ。」
「……狙いは、復讐か?」
「さあ。とにかく、俺は彼女を守ってあげないといけない。じゃないとエリックさんに申し訳が立たないから。」
「状況が状況だったでしょ?あまり自責すんなよ。」
「いや、本来なら俺も同行するはずだったんだ。でもてっきり、'小型だし、2人なら十分だろ'とか思ってしまったから。」
「でも緊急事態だったんだぜ?予想できないに決まってるじゃん。」
「それでもだよ。俺は……隊長としてやっぱ未熟すぎるな。」
また黙りこくってしまった。彼を慰めようとするも、どう言えばいいか困る。自分の口下手さを嘆きたいところだ。
「……なあ、稀羅さんよ。」
「うん?」
「ブラッドの副隊長だって?」
「そうだよ?」
「どんな感じだ?」
「さあね。ただ、ほとんど隊長が仕切ってるもんだからさ。」
「そうか……」
「……どうして?」
「なんか参考になるもんでも欲しかった。」
「……ないよ。あったとしても必ずコウタさんに合うとも限らないし。」
「なんで?」
「人間そのもの色々だから、ある隊長さんのやり方が他の隊長たちに通用するわけないでしょ、ってこと。」
「……」
「こっちからも聞きたいけど。」
「何?」
「コウタさんの前の隊長さん、最初から上手だったの?」
「……あいつか。いや、多分不器用。」
「じゃあ、今のあんたもそうじゃん。」
「……」
「初心に戻って学び直すって思ってみれば?」
「……ありがとう。」
「いやいや。」
こっちとしてはむしろ調子乗りすぎた気がする。
気持ちに害がなければいいんだが。
「とりあえず、今回のことは反省しないとな。」
「……へい。がんばれ。」
「うん。」
「そんじゃ、俺はお先に。エリナさんよろしく。」
「うん、そういや、赴任早々、こんなミッション付き合わせて悪かったな。」
「いいよ、こっちも得たものはある。」
「得たもの?」
「こっちの話。さて、後で歓迎会で会おうぜ。楽しみにしてるから。」
「……任せろよ。」
「あいよ。」
少しずつ晴れてきたその顔を見れてよかった。病室後にする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「人間そのもの……か。」
稀羅の言葉。痛いほど現実的で、しかしながら優しく心に届く。新米と聞いたのに言っているのは一人前だ。
「あの副隊長もしっかりしてるねえ。」
「そうね、ぬわあっ!びっくりした!」
寝てたよね?明らかに寝てたよね?あれ、違う?
稀羅が出てから真っ先に目を覚ますってのは……流石におかしい。
「お、おま、いつから?」
「ん、コウタ隊長が入ってきた時。」
「えええ?」
「あんな大声で入ってきたら誰だって起きるでしょ?」
「ぐっ……」
「んもう、大げさすぎ。未だに隊長としての感じがイマイチなんだよねえ。そう、威厳みたいなものが。」
「ぐうっ……」
「はあ、先が思いやらちゃう、絶対にうちら、極東の史上最弱の第一部隊になっちゃうね。」
「……」
しくしくしくしく。
「泣かないでよ、だらしない。」
「泣かすなよ!」
「それよりさ、」
「何だよ?」
「隊長……あたしさ、今日どこが悪かったのかな?」
急にエリナがシュンとした顔つきになった。
「うん?どこがだ?」
「だーかーら!さっきのミッション!あのヴァジュラ、危険度7だし、レベル9のあたしの神機なら絶対できるはずなのよ!どうしてやられちゃったのよ?!」
「いやー、どうしてと言われても。その……いつも通りだと思うけど?」
キリッとこっちを睨むエリナが怖い、ね、怖いよ!
「へー、そう?つまり、ガードなしバースト切れ回復拒絶万年突進攻撃切り替え遅延リンクバースト皆無撤退知らず他諸々……ね?」
「面倒な文字並べて、最後可愛く決めなくて結構です!」
「で、なんだと思う?」
「うーん、ごめん、全部だと思う。」
「そうなんだ。えとえと、ガードなしバースト切れ回復きょ……」
「もうやめて!」
「何よ、人がせっかくがんばって直そうとしてるのに、指導はおろか、応援もないの?」
「あのさ、指導ならいくらでもしたぞ?俺の喉が乾き切るまで。」
「実戦でのレクチャーなかったでしょ?」
「したよ!でもいつも開始からさっさと突進するお前がな!」
「突進ね、万年突進攻撃切り替えち……」
「もういいです!」
ダメだ。ペースが維持できない。完全に呑まれてるな。他の隊長はこんな時どうすんだよ?
「そもそもの論で、」
「……なに?」
「コウタ隊長の指摘が弱いよ!」
「……はい?」
「なんかほら、もっとビシッと言って欲しいなあ……とか。」
「び、ビシッと?」
「そうよ。例えば、回復について、コウタ隊長いつもあたしになんて言う?」
「それは…… 『回復した方がいいぞ、』とか、『そろそろ回復しろ、』とか……」
「それがいけない。」
「断言すんなよ。てかなんで?」
「あれー、稀羅さんがあたしに回復錠を投げながらなんて言ったけ、そうだ。『これ使え、』それと、『死にたくなかったら黙って飲み干せ、』と。」
「……」
「コウタ隊長には無理かなあ。」
「……逆にそこまで言っていいんだ。」
すごい、まるっきり迫力が違う。これが、俺が他の隊長さんとの差なのか!
「でもなあ、コウタ隊長の優しさも捨てがたいなあ。」
「どっちにすればいいんだ?」
「それは隊長の課題。とにかく隊長も変わってくれないと。そうじゃないと、いつまでもあたしとエミールあのままだよ?」
「うぐぐっ……」
この2人の関係はどうも毎日波乱なのはよくわかってる。
「仕方ない。ここは稀羅とミッションに同行しながら、やり方を改善していこう。それが早道だ。」
「おお?やる気になってくれたあ。あたしも同行しようかな?」
「なんでお前まで?」
「え?だって、稀羅さんもシエルさんも、戦うの上手だから真似したいなあ、と。」
「武器が違うぞ?」
「そんなのわかってるわよ!とにかく、」
エリナが頭の包帯をほどき始めた。
「あたしはやる。お兄ちゃんに及ばないまま死ぬなんて、あたしが自分を許さないんだから。」
「……」
「だからコウタ隊長もしっかりしてよ、ね?」
「わかった。」
今不器用でも、たくさんの改善方法を探り、なおそれに努力し続ける彼女が微笑ましい。
なるほど、エリックさんが妹さんをあんなに愛でたのはこう言うことか。
「うわ、なに隊長ヘラヘラ笑ってんの?気持ち悪い。」
「酷くない?!」
まあ、これはアウトとして。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……なんかやけに騒がしくなってないか?」
「そうですね、エリナさんがお目覚めになったのでしょうか?」
「にしては随分早いな。」
病室の前で待ってくれていたシエルと合流し、エントランスに降りるエレベーターを待つ。が、どうも病室からガーガーうるさい声が廊下に響く。
「元気そうでよかったです。」
「そうね、てっきり気を落としたのかと思いきや、その真逆とは。」
「君のおかげもあるでしょうね、」
「へ?」
「いえ、なんでも。」
その顔いっぱい笑顔を浮かべるシエルのせいでさらに気になる。まあ、いいや。
「あ、そう言えば先ほど神機整備士の方から、用事が済んだら格納庫へ来るように言われました。」
「俺も?」
「はい、特に君にいいたいことが多いと。」
「ものすごくやばい雰囲気がするのは俺だけですか?」
絶対ろくなことはなさそうだ。こりゃあ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「つまり、端的に言うと……」
ゴクリ
乾いた唾が喉をいじめる。
「神機の扱いが荒いのよ!」
「はい?!」
格納庫、そしてここで、俺の神機の総合メンテナンスを行っている方が、極東のエンジニアの'楠リッカ'さんだ。ここでは第一整備班の副長を担っているらしい。が、この銀髪のポニテールの女が俺を見て早速言い出したのは、神機の哀れな状態だ。
「そもそもフライアでちゃんとメンテナンスはしたの?あたしがそこをああだこうだ言う権利はないけど、ここははっきりさせて!残酷だよ。一言で。」
「……残酷、ですか?」
「そう、どうしたの、この刀身の刃、ボロボロだよ?ほら。」
彼女がデジタル化で写した刀身の表面には、浅い亀裂と穴が無数だ。
「こ、ここまでって……」
「これは3時間以上かけても治るかどうかだよ。一応がんばってはみるけど、綺麗にできるのは亀裂くらいかしら?穴は刀磨きでもしない限り、無理だね。」
「総計の修理時間は?」
「一からやったらざっと12時間は欲しいね。」
「12時間?!」
まる半日戦えない。もうミッションなしで一日が終わるな、うん。
「稀羅ってさあ、神機のレベルあまり気にせず強いアラガミとやってるわよね?」
「は、はあ。でも多少は気にしますが……」
「本当なの?あんた今日、危険度7以上のアラガミたちとやったのよ?」
「7?確か、俺のは……」
「6ね。しかも装甲は5。あのね?7以上になると、向こうも格段に細胞組織が硬くなって、簡単には倒せないのよ、絶対。」
「まあ、でも倒したから……」
「ダーメ、あんたたちブラッドは、その自慢のブラッドアーツがあったから生き残ったのよ?それにしちゃ、一般の神機使いたちは悔しくてしょうがないんだから。」
言葉を失った。そう、あの時ブラッドアーツで、なんとかエリナさんを助け、俺も無事に生還した。もしやあれがなかったら。
「とにかく、今後アラガミのオラクル攻撃を無理矢理刀身で弾く真似はよして。最悪、折れるから。」
「はい。そうします。」
「あとは、銃身と装甲だけど、そこまで傷が多くはないね。あんま使わないのかしら?」
「どっちかというとかわすか、当たるかどっちかです。」
「ますます危険だね、稀羅の戦い方。」
そう言われましてもですね。
なんだか複数の機械アームに囲まれ、あちこち直してもらっている神機にすまないと思った。
「とりあえず急ぎ直してるから。今後は気をつけて…で、辞めるわけないよな?」
「多分、はい。」
「あたしがお勧めしたいのは、この極東を機に、神機の耐久レベルを最大まで上げとくか、それとも戦闘を強引にやらないか、ね。」
「でも、いざと今日みたいな緊急事態では、こっちの意思なんて反映されないじゃないんですか?」
「それもそうだけど。」
リッカさんがパネルから手を離し、収納される神機を眺める。
「相手を見極める、と言いたいの。あたしは。わかった?」
「はい。」
「うん、よろしい。まあ、初対面からこんなきつくするのは性に合わないけど、」
「すんません。」
「いいの。それで。」
少し微笑む彼女を見て安心していいのかどうか。
「リッカさん、私のはどうでしょうか?」
シエルも俺たちの会話に心配になったようだ。
「シエルの?大丈夫。大きな傷はないし、ただ銃身の銃口が少し汚れてたからそれの洗浄作業かな?」
「ありがとうございます。」
「うん、うん、やっぱ女の子からかな?扱いが繊細だね?」
「そんなことは……」
うわあ、羨ましいを越えて自分が虚しくなる。
とにかくそろそろ気にしないとな。修理で12時間だ。ましてや壊れたらどんな結果になるか。
こっちに刃先を向いた神機がまるで俺を恨んでいる様だ。
「それより、あんたたち歓迎会はいいの?」
「へ?確か6時だとか。」
「今5時半だよ?そろそろ行けば?迷い始めたら遅れるかもしれないし。」
「そうですね。行くか、シエル?」
「はい。ではリッカさん、しばらくよろしくお願いします。」
「こちらこそ、がんばってねお仕事。」
「ここらへんで失礼します。俺の神機、よろしくお願いします。」
「うん、ここの作業はいつでも任せて。あ、でも強化とかの費用はちゃんと払ってよね?」
「……はい。」
リッカさん目が一瞬ギラギラしてたのは気づかなかったと言うことで。
エリナとリッカのファンのみなさま!
今回は自己的すぎる解釈にお詫び申し上げます!
エリナがワガママすぎたかな
リッカが厳しすぎたかな
という思考がはまれませんー!
せめて次回からは原作に沿ったほうがいいかな。
とりあえず次回としては、歓迎会は適当にとばし、ギルのエピソードに力を入れてみます。歓迎会はやっぱオリジナルの方がいいですね、何度見ても。