GOD EATER「Past you and Now I」   作:Pumpghost

6 / 30
初陣-twenty-three heads-

悩み始めて10分弱。俺からいい話題は出るはずもなく、考えるふりしながらナナの閃きを待ってた。

 

「うーん……ねえ稀羅、ちゃんと考えてる?」

「してる。浮かばないだけ、」

 

ごめんなさい棒読みの嘘です。正直に、ナナがこう悩んでいるのを眺めているのがただ楽しい。

 

「……むー、もう無理。」

投げ出しますか。せめてあのロミオさんさえ残ってたら、何かしらで盛り上がったかもしれない。なんとなく話が上手そうなひとだったからな。ったく、都合良く逃げやがって。

 

「うー、こんな時は何かを食べてながら考えよう。それで絶対いい案が出る。」

体格並みに大きい白い袋がまた出た。ナナはおでんパン1個をかじり始めた。食べながらって、むしろその味に興味を乗っ取られそうだが?

 

「うんうん、やっぱりおいしい。」

 

はいそうですか。普段どんな生活を送ってるのかもう目に見えだよ。

 

『業務連絡です。』

 

無線に慣れずに、フランさんの声がした時、つい周りをキョロキョロしちゃった。訓練で使いまくったのにも。

 

『稀羅さん、ナナさん。ラケル博士からのご指名です。博士の研究室へ向かってください。』

へえ、こっちが気にしてた方がわざわざ指名か。

 

「研究室ってどこですか?」

『その建物の8階です。』

「えい、今行きます。」

 

話題が底を尽きてしまったし、進みそうにないし、ちょうどいい。

 

「りゃけりゅはかしぇー?」

せめて全部食ってから話さない?

 

「知り合いか?」

「そんな気がする。」

「どういう意味だよ?」

「……ううん、わかんない。でも何処かで会ったことはあるかもー。」

「そう?」

 

もしかたら俺とちょっと似てる感じかもな。一部しか知らず、記憶が微妙な状態。

 

* * *

 

エレベーターで8階に降りたら、何故かジュリウスさんとまた会った。

 

「ああ、来たな。ラケル先生からの召集か?」

「はい、そちらは?」

「同じくお前たちに用がある。ラケル先生の後でいいからもう一度来てくれ。」

「了解。」

「お、ジュリウス!」

 

俺たちの後ろの通路から声がした。ん、この声は……さっきお逃げなさった誰かさんだな。ちょい挑発気味で声をかけてみることにした。

 

「おやおや、これはロミオ先輩ではございませんか?」

「げっ、お前らは。」

 

ロミオさんは一歩遅れにこっちのことを気づいた。うわ引いてる。あきらかに引いてる。あの、引きたいのはこっちですよ。

 

「ロミオか、二人と同じ用か?」

「ラケル先生にな。んで、そっちこそどうしたんだジュリウス。この時間帯にこのフロアってのは珍しいね。」

「この二人に用があってな。」

「あ、そう……んじゃー俺は先に!」

「あ!先輩!待ってください!」

 

ああ、また逃げようとしてる。彼の心情が読めるはずもないナナは彼を追って、両開きドアの部屋に入った。

 

「ロミオとはもう挨拶を済ませたのか?」

「向こうがこっちに声をかけてきた感じでしたけど。」

「にしては様子が怪しいな。何かあったか?」

「……本人に聞いた方が良さそうです、それは。」

説明すれば長引きそう。あと、自分の口から言わせた方が、聞く側としては面白い。もちろん第三者の立場として。

 

「誰に対しても気楽に接する彼からは、あまり見れない表情だった。」

「気楽、ですか。」

「ああ、俺が奴から欲する唯一の長点さ。」

一見完璧そうな人でも、どこかしら望むものがまだあるんだな。自分より他人をよく見るってことか?

「……そんじゃ、あとで伺います。」

「下のロビーで待ってるぞ。」

「へい。」

 

* * *

 

ラケル博士は、その名声とは裏に車椅子の生活を強いられている女性だった。雑毛のない綺麗な金髪と真っ青な瞳は、まるでジュリウス隊長に似ていた。かなり長期間車椅子で過ごしたせいか、体が細く小さい。黒い喪服の様なドレスは、見る人の気持ちを瞬時に鎮めてくる感じだった。

今度召集されたのは、ブラッドの候補生のみらしく、俺らが秘める血の力ってやつについて聞かせてもらった。まだまだ未確定要素ばかりのその力は、見つけた人も、持つ人も悩ませるものだった。

人の強き意志に基づき、その本性を見せるという血の力。つまり、個人差が激しく、それによる効果もそれぞれ。

結局のところはこれだ。詳しく分かっているのは何一つないということ。最後にそれを聞かされては、まるで俺たちがその力の実験体にでもされてる気がしてたまらなかった。

 

* * *

 

ラケル博士の説明が案外長引いたのにも、ジュリウス隊長はちゃんとロビーで待ってくれていた。

 

「そんじゃ、俺はここで。」

 

メンツを一瞥したロミオさんは、今度こそみたいな勢いでまた早足で去ってしまった。うん、でもこれからどんどんからかうにはちょうどいい感じの人だ。

 

「うーん。先輩どうしちゃったんだろ……」

 

色々知らないことが多いナナはナナで鈍いというか。いつか教えた方が。

 

「さて、二人とも先日の訓練は上出来だった。」

「あ、どうも。」

「よかったー!」

「今日は外でより実践的なことを行う。神機を整備次第、指定ポイントまで来てくれ。」

 

場所はかつて人で盛んだった大都市……今は単なる廃墟だ。そういやこの写真って先ディスプレイで見た気がする。地名が……'何かしらの亡都'だったか?

 

「先に行ってる。」

 

ジュリウスさんはテキストファイルを渡し、2階に登って行った……適当すぎじゃないかと思うけどな。なんかもっとブリーフィングでもするんじゃないのかと期待したんだが……。

 

「ねえねえ、これって実戦?」

「さあ。単に外で動いてみよう、だけじゃない?」

 

不明な点を抱くまま、神機の整備しに向かう。

 

* * *

 

「ではそろそろ時間だ。2人とも行けるか?」

「……さっきみたいのはごめんですけど。」

「あ、あたしも。」

 

ヘリでざっと20分飛んで着いた、廃墟の都心地。これがまた悪趣味とも言える風景で、どっかしら必ず割れてたり壊れてたりしてる多数のビル群、発生源の不明な池に陥没した地面、人の管理を離れて勝手に育ち過ぎた草木……都心の衰退のはずが、自然に還元されていくのを見てる様だ。

ここでジュリウス隊長と合流するとこまでは良かったが、いきなりアラガミ1体が俺たちのいる丘の上に攻めてきた。んまあ、隊長がうまく追い払ってくれたからいいけど。で、要するにちょっとしたショックを受けた訳だ。

 

「安心しろ。今のはレアなケースだ。」

だったらなんでそんなケースを俺らが味わう必要があるんですか?

 

『かなり突拍子なものでしたね、サポートします。』

 

あ、この声はフランさんだ。隊長から実践だと言われたし、オペレーターも入るのか。

 

「いいんですか?俺はど素人ですよ?」

「さっきも言ったが、お前たちが実力さえ発揮できれば問題になるような相手じゃない。」

「だからさらっと言わないでください。」

「うわああ、本物のアラガミだあ。」

 

いきなり突きつけられた課題に困惑してしまう俺とナナだが……ここまで来ちゃったらやるしかないかな。

 

「はあ。了解です。せめて死なせないでください。」

「ああ。もちろんだ。」

 

複合コアでちょっとばかり強化した神機を肩にのせた。

 

「ねえねえ、稀羅。あのアラガミたち……ダミーに色塗ったと思っていいよね?」

「……よし、それで行こう。」

 

緊張感がかなり和らいだ。ダミーだと思った途端にこの安堵って……。

 

「またアラガミが登ってくる前に行くぞ。」

 

隊長に続いて丘を飛び降りた。さっき攻めてきたアラガミはいないが、代わりに変な茶色の布を被った独眼のアラガミが3体いた。地面に足が埋れてるみたい。

 

「下がってアラガミの行動を把握しろ。稀羅、10時方向、ナナ、12時方向!俺は2時方向を預かる。奴らは移動はできないが、砲撃に注意しろ。」

「了解。」

 

10時方向のやつを目掛けて走る。するとそのアラガミの目から何か放たれた。弾丸なのかと、左にかわすが何もなかった。ただ自分が先いた地点が妙に黒く光ると思ったら、何かが炎上した……便利な攻撃ね。

 

「賢いけど、遅いね。」

 

至近距離まで詰め、神機をその黄色い独眼に突き立てた。柔らかな感触と真っ赤な血しぶきとともに、深々と刺さった。

 

「うおら!」

 

そのまま神機を右にひねって切り上げる。アラガミの上半身が宙に舞い、それをキャッチするようにプレデタフォームで捕食。

 

「ちっ、死んだかよ。」

 

素材だけで、力はみなぎらない。

 

「てやああ!」

 

残り2体は、ナナに潰され頭部の形を失い、ジュリウス隊長に全身が切傷で大出血を起こす有様だ。ナナはともかく隊長はどうやってあんな短時間にたくさん斬れるんだよ……。

 

「終わりか?」

「あ、もうおわり?」

「みたいですね。」

 

ダミーと想定したこともあってか、何より相手が動けない奴でよかった。

 

『アラガミ反応多数、近いです!』

 

……今倒したばかりなんですが?鼓膜を叩くフランさん声に誰もが警戒する。

 

「種別は?」

『オウガテイルと思われます。』

「よし、迎撃するぞ。」

「あいあいさー!」

「了解。」

 

返事の直後にこっちから見える角から、4匹のアラガミが一気に出てきた。あ、こいつら先丘の上に登ってきた種別じゃん。それよりどれもが違う方向を向いていて誰を狙ってるのか判定ができない。

 

「っ!稀羅とナナで前方の二体を仕留めろ!後方はこっちが預かる!」

「ちぇ!」

 

最前のアラガミの頭を、地面に埋めた左足を軸に、思いっきり右の方に飛ばす。幾つかの血雫が眼鏡のレンズを汚した。

 

「よしっ!」

 

頭が消えた首を頂く。同時に望んでたあの力みなぎる。視界もくそも失った赤子の恐竜のアラガミはフラフラしてはあっちで倒れた。

 

「てえい!」

 

俺の右から走ってきた奴を、ナナが顔の側面にハンマーを当ててそのままぶん回した。

 

「あ、あれでいいのかよ?」

「多分!」

 

飛ばされたアラガミは、壁に激突し地面に伏した。それからピクリともしない。

 

「毎日あんだけ飯を食うくらいはありますな……」

「ナナ、素材の回収をしろ!」

 

一振りで2体の頭を切り落とす隊長さんからの指示に、

 

「いっただきまあす!」

 

プレデタフォームを展開するナナだ。

 

『っ!隊長!複数のアラガミの反応を再び捕捉!」

「なっ?数と種別を!」

『同種別です、数は……そんな、12?』

「先まで何の反応もなかったはずだ!」

『さらに、その後方で4体捕捉、危険です。』

「適当に蹴散らし撤退するしか……」

 

少し弱気になってないんですが、隊長さん。

 

「もうここまできたら全部ぶった切って帰りましょうよ。」

「調子に乗るな!いったん撤退体制を取れ!」

「と仰っても、もう目の前ですよ!」

 

突進してくる2体。

 

「うわあ、稀羅、危ないよお!」

「ああ、もう死ね、クソが!」

 

肩に神機を構えた。そして微かな感覚で手に力を入れ直す。

 

「はああ!」

 

データでは……チャージクラッシュとか言ってたな。このバスターだけが出せる唯一の技。体内のオラクル細胞を一時的に活性化させ、その影響を神機に移して刀身の長さを2倍に延長する。やがて神機がうずうずしい紅いオーラに包まれる。

 

「てや!」

 

一気に縦に下ろす。そして派手なエフェクト共に、2体の6割以上が切断され俺の両肩を掠りながら後ろに転がった。

 

「っ!」

「うそ!」

 

隊長さんもナナも驚いたが、放った自分も驚いた。これこそ規格外の技じゃないですか……

 

「後方3体!ナナ、援護にまわれ!」

「りょ、りょーかい!」

 

またかよ。しつこい奴ら。

ナナが先方の二体を一気に右に追っ払おうとすると、真ん中の一体がジャンプした。

 

「え?」

 

二体を飛ばしたばかりのナナの頭に、かぶりつく勢いで降下するアラガミを

 

「頂くぜ、その体……全部!」

 

できる限り大きくプレデタフォームを開き、半分以上を捕食した。ひっ千切られた下半身の足が力なく落ちた。

 

「おお、来たきた。」

 

さっきよりも大きく体に力がみなぎった。

 

「後方7体が一気に出現、散らばって行くぞ!稀羅は左側面から、ナナは正面、俺は右側面から攻める!」

「もう全部もらうぜ!」

 

一度活性化した体はまったくおさまる気配がしない。こっちに来る1体を頭上から叩いて、脳味噌みたいなのを液体にし、そのままその後ろの1体にすれ違い様で神機を咥えさせ、尻尾の所まで横長く切れ線を描いた。更にナナが腹を砕いた野郎をおまけに捕食、そして隊長さんと逆方向から突き、鈍い剣先を脇腹に押し込んだ。

 

「稀羅速い!」

「いい腕だ。」

 

7体は呆気なく肉片に変わった。そしてズルズルとその死体は地面の下に引きずり落とされた。

 

『凄い……、初陣でこんなに。』

 

フランさんも予想以上の働きに惚けたみたいだ。

 

「フラン、後方隊の4体は?」

『あ、はい、只今戦域に侵入、距離近いです。』

「一旦スタート位置まで戻るぞ!」

「了解。」

「りょーかい!」

 

警戒しながら後ろに進むと、4体が出てきた。

 

「……ここで一度ブラッドアーツを見せておこう。君たちもこの調子なら、すぐに扱える。」

 

隊長さんが一歩前に出る。

 

「ぶらっどあーつ?」

 

ナナも俺も初耳だ。

 

「戦況を覆す大なる力だ。俺たちブラッドのみが成せる特殊技だ。」

 

ロミオさんが言ってた例の必殺技ってやつか?

 

「あれ、待ってください。あの4体を一気に?」

 

流石にそれは……。と思う刹那、隊長さんがロングソード特有の構え、ゼロスタンスをとる。すると、

 

「力が、みなぎる!」

「うわ、これ何だ、先よりずいぶん強い。」

 

捕食で無理やり敵からエネルギーを奪った時のように、体が活性化した。

 

「今から放つ、少し離れろ。」

 

ほんの一瞬、隊長さんの神機が紅く光り、妙に白い空気みたいなものを纏った。

 

「はあっ!」

 

それは本当に瞬く間に起きた一撃だった。急なスピードで動き出した隊長さんが真っ直ぐダッシュしながら放った一振りが、4体に全て当たる。が、それだけでは止まらず、当たった箇所から無数の剣閃が発生する。傷はその剣閃に深く、さらなる致命傷を促した。

この光景がわずか2秒満たさずの状況で、ナナと俺は口が閉じない。なるほど、先隊長に死んだ野郎がああなってなのも納得だ。

 

「これがブラッドアーツだ。」

 

隊長さんが戻ってきた。

 

「己が強く望むにつれ、さらに発展していく、一種の必殺技でもある。これをどう生かし、どう使って行くかは全て君達の意志次第だ。覚えておけ。いいな。」

 

辛うじて頷いた。その初陣は、後にも忘れられない激戦だった。3人が倒したアラガミは総計23体。普通の新人は決して味わえない疲れがあったが、裏では比べもんにならない達成感がそこにあった。




初陣書きました!
うわあ思いっきり字数増えとるわ
すみませーん!!!
でも読んでくれた方、本当に優しい方です。
今後もだんだん戦闘シーンが増えるでしょうね。何か指摘ございましたら、どうぞお願いします。
次もよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。