流れは原作
雲一つない青空の下、一面が鮮やかな緑色の草原。
その草原に一人の女性が立っていた。ただこの草原にはあまり似つかわしくない八卦の萃と太極図を描いた中華風の服に日傘をさしている。
綺麗な金髪に整った顔立ち、すれ違えば10人中10人全員が振り向くであろう美人。
そんな金髪美人は慣れた手つきで日傘をたたみ遠くの方を見つめている。
そんな少しのことでも絵になる彼女は今━━━━
とても戸惑っていた。
◆◆◆
どうも皆さん、気がついたら草原に日傘をさして立っていました。
八雲紫です。正確には八雲紫に憑依転生した者、であっていると思う。
何故だろうかこんな挨拶を前にもしたような気がする。それに妙に体が馴染んでいるというかまるで長い年月をこの体で過ごしていたような感じがするが気のせいだろうか。多分気のせいね。
私は東方projectの中でも八雲紫が一番好きだったから嬉しいような気がするけどまさか自分がこんなことになるとは思ってもいなかった。でもどうせなら八雲紫の式とか隣でサポートする側とか親友とかになりたかったです!
まあそんな贅沢をいってる場合じゃない。とりあえず日傘をたたみましょう。日傘をたたみあたりを見回してみる。
んー、緑に緑に、緑。あたり一面緑色の綺麗な草原。精一杯深呼吸すればかなり気持ちがいいことこの上なし。
辺りを見回していると一本の木が生えているのが確認できた。
とりあえず行く宛もないことだしそこまで行くことにしよう。
何事もなく無事に到着。木の下は木陰になっていて涼しく快適。木に背中を預け腰をおろす。
八雲紫といえばスキマ、とりあえずこれが使えなければ八雲紫と名乗れるわけがない。
とりあえず、こうなんというか開け!って感じに念じてみる。
すると目の前の空間が裂け中からは沢山の目がこちらを覗いているようなモノが目の前に現れた。裂けた端、両端にはリボンのようなものがついていて想像通りのこれぞスキマといった感じ。
沢山の目がこちらを向いているが特に気味が悪いとかそういったことはない。少し怖い気持ちもあるもののスキマの中に入ってみる。
入るとすぐに後ろで入ってきたスキマが閉じてしまった。少し焦ったがどうやらここにスキマを開きたいと思えば開くらしいのでひと安心。
中はかなり広いそれこそ端の方が地平線のようになっていてどこまで続いているのか分からないくらいには広い。スキマの中に入った感想はなんというかとても落ち着く。まるで自分の家にいるような感じだろうか。
ひとまずここなら誰にも邪魔されることなく能力や弾幕の練習ができるはず。それにこのスキマの中も探検したいことだし、では早速練習に取り掛かりましょう。その後探索ね♪
さて探索を始めてどれだけ経っただろうか。スキマの中はかなり広大で探索する場所がかなりあった。探索している間にもスキマを使ったりする機会がかなりあった。
能力と弾幕その他諸々のことは片手まで出来るようになった。
それに探索してたときにこの扇子も見つけた。なんかかなり高級そうなソファーの上置いてあった。多分あそこがスキマの中心だと思う。
なにはともあれ大分長い間スキマにいたような気がするからさっさと外に出ることにしましょうか。
私は扇子を手に持ってスキマを開きそこから外に出る。出てみれば元の広い草原........ではなく周りには木が生い茂っている場所に出てしまった。おかしいわね、さっきと同じ場所にスキマを繋げた筈なんだけど。
まあ、いくら使えるようになったからといって絶対に失敗しないとは限らないわけで少しのミスぐらいは大目に見ることにしよう。
幸いなことに森の奥深くという訳ではなくちゃんとした道があるからそこを辿っていけば問題はないはず。
折角扇子を手に持って出てきたわけだけどこれなら日傘に方が絶対にいいはず。という訳でスキマから日傘を取り出してさす。スキマでその辺を見て街か村でも探してそこに繋げてしまうのもいいかもしれないけれどやっぱり自分の脚で探していくってのもなかなかに良いものだと思うの。
という事で道なりに進んで行きましょう。
それから少したちそれなりに進んでいるもののやはりというべきかあまり風景は変わらない。でも自然に囲まれているってのは悪くはない、悪くはないのだけどさっきから気になることが一つ。
どうやら今は人間ではなくスキマ妖怪、つまり妖怪になっているおかげでちょっとした違いや違和感など感覚がとてつもなく鋭くなっているらしい。だからさっきから私のことを尾行してきている三人程だろうかいつになったら出てくる気なのか出てくるなら早くしてもらいたいのだけど。
折角いい気分で散歩の様なことをしていたのにつけられるのはあまりいい気分じゃないわ。もういっそのことあからさまにも見えるくらいの隙でも作ってみましょうか。
そう思い私は歩みを止めてそれっぽく空を眺めてみる。すると動きが止まったことでチャンスだと思ったのか三人が私を囲むように飛び出してきた。
「よお、そこの姉ちゃん。女の一人旅はかなり危険だぜ」
「そうそう特にそんな貴族みたいな格好してる奴は特にな!」
「なんだったら俺たちが護衛でもしてやろうかぁ?」
うーん、なんというかこれだけ聞いたら親切な人が忠告してくれてるようにも聞こえるけど見た目が完全に盗賊的というか山賊的というかそんな格好で言われてもあ、じゃあお願いしますとは言えないでしょう。話を聞く限り私のことをどこかの貴族かなにかだと思っているようだしここは世間知らずのお嬢様的な感じに振る舞っておきましょう。
「あら、護衛してくださるの?でも私なんかにそこまでしてくださらなくてもいいんですよ」
「なに、心配しなくてもいいって俺たちに任せな」
どうやら何をいっても下がる気はないらしい。それなら丁度いいしどれくらいの強さなのか調べてみることにしましょ。
「そうですか......。でも護衛ってのはあなたたちみたいなのから守ることなんじゃない?気づかれてることも知らずに着けてきたまぬけな盗賊さん」
それを聞いたと途端盗賊たちは腰に指していたナイフを抜きこちらに向けてくる。
「おい!お前舐めたこといってんじゃねえぞ状況わかってんのかよ、おい!」
「ふふふ、怖い怖い。でも逃げるなら今のうちよ」
この言葉にさらにイラッと来たようで二人が一斉に私に向かって走りだしナイフで斬りかかってくる。残りの一人は弓矢を使って狙っているようだ。多分二人の攻撃で仕留めきれなかったときのために狙っているんだろう。
私は二人の攻撃を真下に開いたスキマに入ることで回避する。相手からしたら私が急に消えたように思えるはず。そして少し離れた場所にいる弓の人の後ろにスキマで現れる。三人は私を探して辺りを見回している。私はこっちよ~、あなたの後ろ。
「何処いきやがった!あの女っ!――――ぐぁ!?」
弓の人の背中に軽めの弾幕を放つ。するとそのまま二人の元まで吹き飛ばされそのまま動かなくなってしまった。
……死んでないでしょうね、そこまで強くやったつもりは無いんだけどもまあ次はもう少し手加減することにした方がいいかしらね。
「ふざけやがってこのクソ女!」
おっ、そんなことを女性に向かっていっていいと思っているのだろうか。皆は絶対にそんなこと言ってはいけません。私との約束よ。
二人は怒りのままこちらに向かって再度斬りかかってくる。それを今度は扇子を畳んだ状態でナイフを弾き勢いをそのままにして振り抜き二人のナイフをへし折る。
ナイフは扇子と打ち合った音とは思えないガキンッという音をたて呆気なく折れてしまった。
二人は驚いているようだがそれがとてつもなく大きな隙になっていることには気づいているのだろうか。がら空きになった腹部にさっきよりも軽めの弾幕を放てばさっきの弓の人のように吹き飛ばされ片方の盗賊は起き上がろうとしたが起き上がることができずにそのまま気絶。ただ最後の一人は何とか耐えたようでよろよろと立ち上がりこちらを見ている。
「お、おまえ........一体何者なんだよ!?」
聞かれたのならば答えてあげましょう。私は扇子を開き口元を隠し背後にとびきり大きなスキマを広げ盗賊を睨み付ける。なんか背後のスキマからなにかオーラ的なものが出ているような気がするけど気のせいよね。
「私は妖怪の賢者にして境界の管理者八雲紫。私と出会ってしまったあなたたちはただ運が無かっただけきっと次はうまく行くはずよ、きっとね。それはそうとあなた神隠しって知ってるかしら?」
「か....神隠し....」
「そう神隠し。まあ簡単にいってしまえば人がその場所から跡形もなく消えてしまうことって思えばいいわ」
私がそう教えてあげると何を思ったのか顔を青くして震えだしそのまま逃げていってしまう。何度もこちらを振り替えって私が追って来ていないかを確認しているらしい。でもそんなことをしていれば前にも注意があまりいかないし足元何て確認もできないだから、こうしてあげれば。
走っていた彼の姿がフッと消える。まるで本当に神隠しにあったかのように彼の姿は完全に消えてしまった。まあ本当は彼が行く先にスキマを開いて落とし穴みたいにしていただけなんだけれど上手く引っ掛かってくれたようで何より。
それじゃあこの三人には悪いけど逆に持ち物を物色させてもらいましょ。スキマを使って三人を集める。さっきスキマに落ちた盗賊も含めて全員が伸びている状態。さてそれでは物色物色。
持ち物を一通り見てみたけど使えそうなのはこちらの通貨と思わしきものくらい。あとははっきり言って要らないものばかりだった。さてとじゃああとはこの盗賊達をどうするかなのだけど……起きるの気長に待つとしましょう。
ぼやける視界のなか何とか目を覚ます。どうやら俺は気を失っていたらしい。だがなぜ........!?
そうだ、あの訳の分からない女から逃げていたと思ったら急に足元の感覚がなくなって気を失ってしまったんだ。アイツはどこに。
まだ近くにいるのかもと思い辺りを見回すがそれらしきものは何一つない。さっきまでのことは夢だったのかと思ってしまうくらいだ。両脇には仲間の二人が横になっている。
やはり夢だったのか思い息を整えていると
「あら、ようやく起きたのね」
と突然女性の声が聞こえてきた。そう一見綺麗なこの声には聞き覚えがある。俺達が襲ったアイツの声、どこにいるのかと辺りを見回すがどこにも姿は見えない。するとまたどこからか声が聞こえてくる。
「今回は命まで取ったりはしないわ。でもそうね、約束してもらえるかしら?私のことは誰にも話さない絶対に秘密にすると、もし誰かにいったりすれば━━━」
そこで声が途切れたかと思うといきなり辺りが暗くなった。今はまだ昼間のはず、おそるおそる上を見上げて見るとあまりの光景に声さえ出なかった。
空があるべき場所にはなにかよく分からないものがありそこからこちらを覗いている大量の赤い瞳が広がっていた。そして自分の正面少し上の辺りの空間がゆっくりと裂けさっき俺達を倒した正体の分からない女が出てくる。そいつは長い金髪を前に垂らしていて顔が見えない状態になっていて這い出すようにして上半身だけを見せている。
「もし、誰かにいえばあなたは━━━」
またそこまでいって動きが止まったかと思った次の瞬間に顔を両手でガシッと掴まれていた。そのま顔を固定されたまま近づかれて
「人知れず消えることになるわよ、ずっと見ているから忘れないことね」
ここで俺の意識は途切れた。
うーん、少しやり過ぎただろうか。折角起きたのに今度は泡まで吹いて気絶してしまった。
ただこの脅かしているときの感覚、相手が驚いている表情を見ているとなんというか、こう凄く快感という感じ。この感覚は癖になりそう。でも流石にこれはやり過ぎてしまったわね、反省反省。
次にやるときはもっと簡単に軽くからかうくらいにしておきましょう。彼らには悪いけどここに放置でいいでしょう。そこまで危なくなさそうだし。
さてとそれじゃあまた道なりに進んで行きましょう。いつかは着くはず気長に行きましょ。
結構な距離を歩いてしまった......まさかここまで距離があったとは思いもしなかった。
でもようやく着いたあとはこの街、名前は分からないけどここで役場的なところで色々聞ければ問題ない。
とりあえずそこのおばさまに聞いてみましょう。ギルドって言った方がいいだろうここの住民というかこの世界は結構ファンタジーな気がしてきたし。
「すこしお聞きしてもいいかしら?ギルドは何処にあるかご存知?」
「あらあら、これはまた美人な方がいらっしゃったね。ようこそ駆け出し冒険者の街アクセルへ。そこの通りを真っ直ぐいって右に曲がれば看板が見えてきますよ」
「そう、どうもありがとう。それじゃあまた」
そういって軽く頭を下げて先を急ぐ。後ろからさっきの人が貴族様が何の用かしら?とかいっているのが聞こえるけど私は貴族じゃないのよね。
さてさてやって来ました。冒険者ギルドここまで来るまでに大分注目されていたようだけどそんなに珍しい格好してるかしら?
それはいいとして早速ギルドに入りましょう。中からは多くの話し声や食器などの音が多く聞こえてきて賑わっていることがわかる。
「あっ、いらっしゃ......い、ませ....」
ギルド内に入ると赤毛のウェイトレスが最初は元気よく、後ろにいくにつれて途切れ途切れになって最後はぼーっとこちらを見ている。そのせいなのかギルド内もさっきの喧騒が嘘のように静まり返ってしまっている。
「....!、お仕事のご案内でしたら奥のカウンターへ、お食事でしたら空いている席へどうぞ!」
そんなに緊張しなくてもいいと思うのだけど....
仕事の案内は奥のカウンターね。仕事ってのはつまりは冒険者ってことね。そう思いカウンターへと向かっていく。カウンターに居るのは私と同じ金髪をしたやけに胸が大きい受付嬢。
「はい、今日はどうなされましたか?」
「そうねぇ、できれば冒険者になりたいのだけど」
そういうと後ろがざわざわっと騒がしくなった。
「えー、っとお連れの方がいらっしゃらないようなのですが……」
ん?なるのは私なのだけど。この姿だと流石にこれから冒険者になるというようには見えないということか。だからといって変える気はさらさらない。
「なるのは私なのだけど、いいかしら」
「え!?」
この言葉に受付嬢が驚きさっきよりも後ろがざわつき出す。
「それで結局のところどうなの?」
「あっ、はい!なれます。ただ冒険者登録には1000エリス必要です」
1000エリス、エリスっていうのはこっちでの通貨の単位らしい。とりあえずさっきてにいれたこのエリスってのを袋に入ったまま渡す。これなら勝手に1000エリス抜いてくれるでしょう。
「はい、これで足りる?」
「えーと.......はい問題ありません。ではこちらにご記入お願いします」
そういって財布に入りそうなくらいのカードをこちらに差し出してくる。どれどれ、名前、身長、体重、年齢その他諸々をざっと記入して受付嬢…金髪ちゃんでいいかしら、金髪ちゃんに渡す。
「はい、え~とヤクモ....ユカリさんですね。ではユカリさんこちらに手を置いてください。そうすると今のユカリさんのステータスがこちらのカードに表示されます」
なんというかまるっきりゲームの中というかそんな感じなのね。指示にしたがって手を置いてみると一瞬だけ光りあとは特になし。
「はい有難うございます、へ?はああぁぁっ!?な、なんですか!?この数値!?幸運が少し低いですがそれ以外が全てあり得ない数値ですよっ!中でも魔力がずば抜けて高いです!紅魔族でさえこんな数値はでませんよ!こんなの今まで見たことありません、あなたはいったい........」
その叫び声にも等しい声を聞きまたまた後ろが。
幸運が少し低い以外全てね、まあ八雲紫としては当然といえば当然これでもし全て平均値ですね、何て言われでもしたらその場で崩れ落ちていたでしょう。
「す、凄いです....これなら全ての上級職になれますよ。ん?これは賢者?ですかね。でもこれ最初の方が読み取れなくなってますね」
カードを私も覗きこんでみるが確かに前の部分が塗りつぶされているような感じになっている。でも私にはこの塗り潰されている部分に心当たりがある、多分あれでしょうね。
「そうね、この賢者にするわ」
「え!?で、ですがこれは初めてのことなのでどんな職業かわかりませんがよろしいんですか?」
私は肯定の意味を込めて軽くうなずき金髪ちゃんを見つめる。
「わかりました。では冒険者ギルドへようこそユカリ様、スタッフ一同今後のご活躍を期待しています!」
ではこれからいざ!冒険に!といって飛び出していきたいのはやまやまだがこういうのはクエスト的なものを受けないことには始まらないわけで。かといってどれが良いのかはまだ分からない。
「ところで金髪ちゃん、なにかいいクエストとかないかしら」
「金髪ちゃん!?え…ええとですね。やはりまだ冒険者になったばかりですので採取クエストと比較的簡単なジャイアントトードの討伐などがいいかと。確かジャイアントトードはそこのクエストボードにあったと思います....金髪ちゃん?」
それならそのジャイアントトードってのを受けましょうか。
クエストボードからジャイアントトードの依頼を見つけて手に取りそのままギルドを出ていこうとしたのだが一人の男性に呼び止められた。
「おいおい、姉ちゃん。あんたまさか一人で行こうってのか」
声の方向を見てみるとそこにはなんというかザ・世紀末的な格好をしたモヒカン頭がいた。まさかこれが俗にいう新人狩りってやつだろうか。
「姉ちゃんがいくらいいステータスしててもはじめからソロってのはちと厳しいと思うぞどうだ俺とパーティー組まないか」
と思ったらただの優しい人だった。人は見かけによらないとはこの事ね。彼がパーティーを組む提案をした時周囲からズルいぞとか先越されたとか聞こえてきたがそこまでパーティーメンバーに飢えているのだろうか。
「そうね......折角のお誘いだけど遠慮しておくわ」
「そうか、それじゃあしょうがねえな。無理言ってもわりぃしな」
人は見かけによらないってのは本当にあるものだと再度実感したけどこの人やはり世紀末な見た目で少し損してる気がする。
何はともあれ今度こそクエストに出発ね。
私は期待を胸にしギルドを出ていくのだった。
ただ、後ろの方では私がクエストに成功するか戻ってくるかで賭けが始まっていたが今のうちに私が無事にクエストクリアで戻ってくる方に全額かけておくことをおすすめする。
チュートリアル盗賊は今後の出番はないです