次でカズマとアクア登場します
「それで....説明してくれんでしょうね。八雲紫」
「ええ、それは勿論。ですがもう少し態度と敵意を改めてくださるかしら。女苑?」
私と女苑は対面する形で座っている。横のソファーには紫苑とゆんゆんがこっちを心配そうに見つめている。....紫苑は相変わらずぼーっとしてるけど。
「あんたのそういう..話すときくらい扇子しまいなさいよ!」
「あなたもそのメリケンサックしまってくれないかしら」
女苑と紫、お互いバッチバチに敵意をむき出しにしていつ殴り合いになってもおかしくない状態。ゆんゆんは気が気でなかった。
(あの、シオンさん。二人はいつもこんな感じなんですか?)
(んー....そうでもない。女苑は素直じゃないだけ..紫は、よくわかんない)
(えぇ....)
一色触発のなか先に折れたのは紫の方だった。口元の扇子を机に置き女苑を見つめる。
「女苑、勘違いしないで欲しいんだけど私は紫苑を拐ったり変な事をしたりもしてないわ。これからもする事はない」
「そんなこと....」
「女苑、紫の言ってること本当だよ。優しいし私のこと家族っていってくれたし」
「そこよ!姉さん、八雲紫が優しくしてくれるってそんなの裏があるに決まってる!」
なんというかなかなか信用されないものね。でもたしかにあの、八雲紫がいやに優しくしてきたら絶対に裏があるって思うのは分かるわね。だってもし邪仙が笑顔で近づいてきたら絶対に警戒するものね。それと同じよ。
「まあ、疑うのは勝手だけど今はお友だち同士仲良くしてなさい。ゆんゆんだってこんな会議みたいなことしに来た訳じゃないし。はい、これさっきのフルーツ」
「........」
「そんなじっと見なくても平気よ。毒なんて入ってないから」
こうも疑われると流石に困っちゃうわね。これは特大の厄介の種を持ち込んでくれたようね、ゆんゆん?
「ん?どうかしました?ユカリさん」
うーん、すごく無垢で純粋な笑顔。なんでこれで友達いないのかしら。
「そういえばシオンさんとジョオンちゃんは姉妹なんだよね?」
「ええ、そうよ」
「ゆんゆん....どこで女苑と?」
たしかにそれは私も気になる。どういう経緯で知り合ったのやら。紫苑が言うには稼ぎにいって戻ってこなかったらしいし。
「えっと、ジョオンちゃんとはたまたまクエストで一緒になったんです。最初はお金がいるってことでクエストを一緒に行ってくれる代わりに報酬は山分けっていうので」
ゆんゆんとは既に面識があったわけね。ということは初めて会ったときからゆんゆんて既に疫病神憑きだったのでは....。考えないでおこう。
「それから泊まるところもないとのことだったので
なるほどね....つまりそこから
「そこから二人はお互いを意識し出すようになって禁断の関係に....」
「ちょっ!?なに意味の分かんないこと言ってんのよ!!」
「えっ!?ジョオンちゃん..そんな...でもこれも友達なら普通なんだよね!えっと、ふつつかものですが、そのよろしく..お願いします」
「えっ!?ちょっとゆんゆん!?」
「女苑....私は..応援するよ」
「姉さん!?なんで眼を合わせてくれないの!誤解だから!」
フフフ、女苑ちゃん私をボロクソに言ってくれたお礼は返したわよ。精々在らぬ誤解を解くのに奮闘する事ね。結構大変よ誤解を解くのって、特にこの二人はね。
「女苑....」 「ジョオンちゃん....」
「ああッ!!もうなんなのよぉ!!」
この後何故か女苑にメリケンで腹パンされたけど私は元気です。ゆんゆんも紫苑も女苑も何だかんだで楽しそうだったしよかったわね。久しぶりの姉妹揃っての会話だもの、ゆんゆんという友達もいるわけだし邪魔者は退散して紫苑の結界改善にでも勤めましょうかね。
◆◆
――色々あった翌日の朝
今日も今日とて日課である、もはや娘と言っても違和感がなくなった紫苑を起こしにいく。でもいつもとちょっと違うことがあるのよね。まずは紫苑を起こす。
部屋に入ると相変わらず幸せそうによだれを垂らして爆睡している。
....すぐに起こさずに紫苑の横へと腰掛け頭を優しく撫でる。最初はとんでもない人物と出会ってしまったと思ったけど今じゃ家族と言うまでになった。
「ん....んん......」
ふふ、まったく本当に幸せそうにしちゃって。
「ん..ゆか..り?」
「あら、起きたのね。ご飯できてるから仕度しなさい」
「んん....あと2時間..」
「せめて5分にしなさいよ」
「んー、紫お母さん..分かったー」
ん、ならよろしい。このやり取りは朝の恒例行事みたいになってる。最初はママ、お母さんはやめろって言ってたけどまったく気にならなくなったわね。
問題は新規さんの方。我が家には新しい住人が増えたから一応様子を見に行かないと。紫苑の直筆の看板のかかった横の部屋、音を発てずに気配を消して部屋へと入る。
中にはこっちもぐっすりと眠っている少女が一人。こっちは紫苑と違ってよだれは垂らしていない。綺麗な茶髪、紫苑の寝相は結構悪い。ただそれはお屋敷で生活を始めてから。かなりリラックスしているんでしょうね。地面と違って柔らかいしね。
対する今目の前にいる少女は随分と寝相がいいわね。....頭は爆発してるけど..。
壁には小さいシルクハットにサングラス、いかにもブランドもののバッグ、ジャケットがかけてある。ソファーには脱ぎ捨てられたミニスカ、ネックレスに指輪などのアクセサリーが一緒に置いてある。さぞかし綺羅びやかに着飾っていたんでしょうね。まあそれが彼女みたいなとこあるしね。
『依神女苑』、私八雲紫の同居人『依神紫苑』の妹。最凶最悪の姉妹の妹の方。疫病神。
それが今私の目の前で眠っている。散々人を胡散臭いとかいっておいてゆんゆんと一緒に帰らずに姉がいるなら私もと半ば強引に部屋に押し入ってくつろいでいたらしい。
という訳で新人には八雲家の洗礼を受けて貰いましょう。用意するのはフライパンと手頃なメイス。先端が丸いとなおよし。それじゃあ....せーのっ!!
――バアァン!!
耳をつんざくような音が部屋に木霊する。
「ぎゃああああああああッッ!?ああああああっ!?なにッ!!ぐふっ!?」
ぐっすりだった女苑はベッドから飛び起きそのまま床に落下した。
あー、耳が..耳栓しておいたのにここまで響くとは。今度はお玉あたりでやることにしよう。それにしても女苑平気かしら?さっきから床を転げ回ってるんだけど....。
「あんたッ!!ふっざけんじゃないわよ!!何してくれてんのよ!頭が割れそう....」
「おはよう、いい朝ね。よく眠れたかしら?..なにどうかしたの?そんな、叩き起こされたみたいな顔して」
「叩き起こされたのよあんたにね。それに最悪の朝よ..姉さんにもこんなことしてるんじゃないでしょうね」
「それは安心して、紫苑にはそんなことしてないから。女苑、あなただけよ........起きるといつもそんな風になってるの」
女苑の寝起きの頭はいつもの茶髪お嬢様縦ロールのギャルぽいスタイルだけど今はなんというか..そう、ソフトクリームみたいにモワァッとなってる。
「うっさいわよ....」
「まあ、いいけど....朝ごはんできてるから早く来なさいよ」
それだけ告げ女苑の部屋から出ていく。女苑だけだったら来ないかもしれないけど紫苑が来ればもれなく女苑もやって来るでしょ。
それまではゆっくり待つとしましょう。でも出来れば早く来てほしいわね。折角作ったんだし。
「それで..あの八雲紫がなんのつもりよ....」
「女苑..そんなに疑う必要ないと思うよ。それより美味しいから女苑も食べよう?」
「姉さん..ちょっとは疑ったりとか....まあ、味はたしかにいいわね。紫の癖に」
「最後のは余計でしょ。女苑」
私の読み通り女苑は紫苑と一緒にやって来た。ご丁寧にあのソフトクリームヘアをお嬢様縦ロールにセットしてね。なんというか姉思いというべきか過保護というべきなのかはよくわからないけど美しき姉妹愛だと言うことにしておこうかしら。
「それで女苑、あなたはこれからどうするの?またその辺に出ていくのか――」
「姉さんと離れる気は無いわよ!」
「ならここに住む気でいるのね」
「うっ....それは..あ、あんたが出ていけばね!」
「じょ、女苑ダメだよそんなこと言ったら..紫はちょっと女苑の事をからかってるだけで....本心は」
「さっさと食べていくよ姉さん!私たちだけでも平気だし!」
「え..あ....女苑..ま、待って..」
紫苑、そんな悲しそうな顔しないでよ。私まで悲しくなってくるじゃない。....でもジャイアントトードの唐揚げを咥えたままじゃちょっとシュールなんだけど出来ればもうちょいそれっぽくやってくれない?
でも女苑の気持ちも分かる気がする。妹として姉が心配だってのも分かる。ちょっとツンケンし過ぎだけどね。飯だけ食って本当に出ていったわよあの二人。この広い屋敷も一人は久しぶりだけど....どうしようかしら。
まあ、ゆっくり待っていればそのうち戻ってくるでしょう。それまでは結界を維持して待っていればいいか。
いや、待って....紫苑にあげたあのミサンガそろそろ交えどきだったわね。あれが切れたら不運が『不運貯蓄器』にいかなくなる。
つまり私にすべての不運、不幸が降りかかってくるわけで....イヤァ!?それは絶対に嫌なんですけど!
「不味い、これは本当に不味い。暴走馬車に跳ねられるのはなれてはいたけどアレ以上の何かがやって来たら....うぅ、想像もしたくない。せめてこっそりと渡せれば....なら早速行動に移さないと」
まずはスキマで二人の位置を確認....確..スキマが開かない!!またなの!?ということはつまり....よし、超細心の注意をはらって玄関までいきましょう。大丈夫、気をつけていれば悪いことは起きない。
ほ、ほらね!なにも起きることなくここまでこれた。あとは階段を下りるだけ....ここで不運だと落ちたりするんでしょうけど慎重に降りれば問題ない!
ほら、一段一段ゆっくり。なんだやっぱり問題ないじゃな――あっ
紫はそれはそれは慎重に足を動かしていた。かなり腰の引けた体勢で女苑が見たら笑うことだろう。そんなゆっくりと降りていた紫だったが不運にもゆっくりと足を踏み外した。スキマも何故か開かない。
この時の紫の目はどこか遠くを見つめ何か悟ったようだった。
「がぁッ!?ぐふっ!あ゛っ!あああああああああああッッ!!!げふっ!」
勢いよく一番下まで落ちよろよろと立ち上がる紫。
「せ、せめてここまで来たら..外にいるかだけでも」
なんとか扉の取っ手へと手を伸ばし掴もうとした時、その扉がいきなり開き....
「ぶッッ!?」
紫の顔面にぶつかった。
「あっ....紫、ごめん。戻ってきたよ..ただいま」
「お、おか..えり..どうして戻ってきたのよ、タイミングバッチリね」
「えっと、私のぬいぐるみ忘れたのと..これ切れちゃったから。雨も降ってきたし....」
ぬいぐるみを忘れたね..あんなに大事にして肌身離さず持ってたのにね。それに....
「ふう....切れちゃった、ね。それにしては随分切り口が綺麗ね。まるで何かで切ったみたいにね、紫苑?」
「そ、それは..」
目を反らしてあわあわしだす紫苑。これはわざと切ったしわざと忘れていったわね。戻ってきてくれたのは嬉しいけどそれをやると私が現在進行形で不運になるからちょっと複雑。
「紫、女苑とも仲良くしてくれない?」
「ええ、勿論よ。最初からそのつもり――でッ!?」
再度開かれる扉、しかもさっきよりも勢いよくまるで蹴られたかのよう。
「八雲紫っ!!仕方ないから厄介になってやるわよ!言いたいことがあるなら言ってきなさいよぉ!」
声をあげながら女苑が現れる。だが紫の返事はない。
「女苑、紫今ので気絶した..あと紫は足元、踏んでる。....女苑さすがにお姉ちゃんもこれは怒るよ...!」
「えっ!?ごめん姉さん!..てかなんでこんなとこで寝てるのよ」
「いいから..運ぶよ、女苑」
「う、うん。分かった」
貧乏神と疫病神に運ばれていく災難なスキマ妖怪だった。
女苑はお姉ちゃん子