この素晴らしいスキマ妖怪に依神姉妹を   作:片腕仙人

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赤い爆裂魔女っ子

カエルリベンジ戦


12話

ジャイアントトードに丸呑みにされた翌日。私、八雲紫は復讐に燃えていた。絶対にあのカエルどもは一匹残さず全滅させる。そのためには....

 

「ゆ、紫..そこまでしなくても....」

 

「いいえ、駄目よ紫苑。もしあの時みたいにカエルの近くで切れたりしたらまたあの時の二の舞になってしまうわ」

 

「だからって....」

 

「あんた、これはやりすぎでしょ..」

 

紫苑の腕は防具店から籠手を買い漁ってそれを私が掛け合わせた防具でガッチガチに硬められている。片腕だけ防御力最高という変な装備になっているが女苑と紫苑には分からないでしょう。なぜここまで私が必死になっているのかが。

 

でも貴方たちもカエルの胃袋の中に入ってみれば分かるわよ。ぬるぬる、ねとねととした生臭くて暖かい粘液を身体中に浴びる。しかも消化中のよくわかんないものが足元にはあって....うぇ..思い出したくない。

 

だから私はここまで厳重に整えているのよ。これなら切れる――

 

「紫、あの時切れたのはカエルのせいじゃなくて..何もしてなかったのに自然に切れたんだけど....」

 

「....マジで?」

 

それじゃあ、いくら厳重に装備を整えても無駄?かかった費用も労力も無駄?結構な値段だったのに?

 

「.....」

 

「いや、なんでこっち見んのよ」

 

「....財産を消費させる程度の能力のくせに

 

「はぁ!?それは関係ッ!....くっ!」

 

関係ない!と言い切りたかった女苑だったがあながち否定しきれないと自分でも思ってしまいぐっと力を込め握り拳を作って震えていた。

 

「紫、女苑も悪気があるわけじゃない..と思う。あとこれ動きづらい」

 

「はぁ....ならいいわ。これは外しましょう。..あのカズマって子にでもあげるわよ」

 

「また、行くわけね。でもいいの?また頭からパックリいかれるわよ」

 

「....それは、多分平気よ。クエストもまだ達成してないし嫌でもやらなきゃなのよね」

 

「あっそ、姉さんも十分気をつけてよね。私、姉さんをカエルの口から引っ張り出すなんて嫌だからね」

 

たしかに紫苑がもしもパックリといかれでもしたら抵抗なく飲み込まれそうではある。クエスト達成まであと数匹、ぱぱっとやってしまいましょう。

 

 

 

 


 

 

 

昨日と同じ、あまり思い出したくないけど私がカエルの胃袋の中に入ることになった場所までやって来た。どうやらカズマ達は先に来ていたみたいね。

 

冒険者にしては軽装というよりもろにジャージのカズマ、やかましい水色、それと昨日はいなかった全体的に赤い魔女っ子みたいな少女。新しいパーティーメンバーかしらね。

 

「あっ、ユカリさん..えっと昨日はあの後大丈夫でしたか?」

 

「ええ、まあ..なんとかね....ちょっとトラウマだけど..」

 

「プークスクス!カズマから聞いたわよ!あなたカエルに飲み込まれたんですってね~!この女神アクア様を蔑ろにしたむく――ぐふっ!?」

 

言い切る前にその場に蹲る自称水色女神改めアクア。ちょっと強くやり過ぎたかしら?無意識に弾幕を放っていたわ。

 

「それで、そっちの子は新メンバーかしら?」

 

「ねぇ..アクアってやつ平気なの....」

 

「....あー、コイツは放置でいいぞ。自業自得だし、それとこっちは仮加入的な感じで。名前は....」

 

カズマがどこか渋りながら名前を言おうとしたとき赤い魔女っ子が前へと出て来てバッと謎のポーズをすると声高らかに口上的なものを言いはじめた。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを――」

 

「紅魔族ね」

 

「紅魔族....だね、女苑」

 

「そうね、これは紅魔族ね..」

 

私、紫苑、女苑の意見は完全に一致した。めぐみん、これがあだ名だったらまだ分かるわよ。ただ普通ならこんな名前つけない。なんか、こんなこと前にも覚えが....。

 

「おい、人の名乗りを邪魔しないでくださいよ....では改めて..我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操りし者ッ!..決まりましたッ!」

 

どこか満足げな表情のめぐみん。なんなのかしらね、紅魔族ってこの名乗りをしないといけないきまりでもあるの?....まあそれはどうでもいいとして『爆裂魔法』。たしか上級魔法だったはず、もしもその『爆裂魔法』を巧みに操るというのであれば彼女は爆発系魔法の使い手。

 

こちらとしても是非この眼で見てみたいわ。そして覚えさせてもらいましょう。....というかここって駆け出しの街のはずなのに上級魔法使える人多くない?本当に駆け出しの街なの?

 

「えっと、ユカリさん臨時ではありますがパーティーとして一緒に..ってことでいいんですよね?」

 

「ええそうよ、あとこれあげるわ。ちょっと色々あって使わなくなった籠手。多分売れば結構な値段にはなると思うからそれで装備を整えるのもいいと思うわよ」

 

「あ、ありがとうございます!って重ッ!?」

 

そうなのよね....色々掛け合わせたせいで相当重いのよね。だからといって捨てるのもね。....ん?

 

突然くいくいっと袖が引かれる。さっきまで謎のポーズをとっていた紅魔族のめぐみんが私のそばに来て見上げてきている。

 

「えっと、さっきからカズマが言っているユカリというのはあのユカリであってますか?」

 

あの紫?私ってそんな噂になるようなことしてな....したわね。エンシェントドラゴンとか..。何故だろうどこか目を輝かせているような気がする。

 

「ええ、まあ多分その紫であってると思うけど」

 

「ほ、本当ですか!!あのエンシェントドラゴンを討伐したという賢者ユカリなんですね!私感激です!こうして本物に会えるなんて!」

 

「「「エンシェントドラゴン?」」」

 

カズマ、紫苑、女苑の三人が不思議そうに見てくる。あっ、そういえば討伐したのは紫苑と女苑と出会う前だったしカズマに関しては最近交流が増え..はじめたところだし。

 

「まあ、あれよ。でっかい羽根の生えたトカゲを倒したってだけよ。大したことないわ」

 

「何を言ってるんですか!!エンシェントドラゴンですよっ!国から賞金の懸けられたモンスターですよ!」

 

「なに紫、あんたそんなの倒してたの?」

 

「なんか....凄そう..」

 

「ユカリさんてやっぱり凄い人だったんだな....」

 

そこまででもないと思うんだけどね。たしかに大きさはエンシェントって感じではあった。多分、剣とか弓で倒そうとしたら強敵ではあるでしょうね。因みにエンシェントドラゴン頭は我が家に飾ってあります。インテリアとしてはかなりエンシェントしてたわよ。

 

私の話しはいいとして早いとこクエストを始めないかしら?あんまりここにいたくないのよね..カエルいっぱいだし。

 

「ほら、私のことはいいからクエストよクエスト。そのために仲間も増やして来たんでしょ?」

 

「ああ、そうだった。おい、アクアいい加減起きろ。始めるぞ」

 

「う..うぅ..何が起こったのよ....っ!!ちょっと!!そこのユカリとか言う奴!ふざけんじゃないわよッ!!いきなりあんなことしなくてもいいじゃない!私がなにしたってのよ!」

 

なにしたって、少なくとも私の事を馬鹿にしたでしょう?自分も捕食されてたにもかかわらず自分の事を棚にあげて。

 

「おい!アクアそんなことよりもクエストだ!それでめぐみんどうすればいいんだ」

 

「爆裂魔法は最強魔法。その分魔法を使うのに準備時間が結構かかります。なので準備が整うまであのカエルの足止めをお願いします。ユカリも見ていてください!私の爆裂魔法を!」

 

はいはい、余すことなくしっかり見てるからね。爆裂魔法習得のためではあるけど。ただ爆裂魔法って準備時間が必要なのね。となると詠唱とかそういうのが必要ということかしら?

 

....少し使い勝手が良くないわね。でも詠唱を空中とか相手の範囲外で行えばどうということはなさそう。覚えていても損することはないでしょう。

 

カズマが剣を抜きアクアが杖を構える。なんかこっちを睨んでくるんだけど相手は私じゃなくてカエルよ。カエルの方を指差してあげる。カエルは今のところ2体だけ。

 

遠い方のカエルは爆裂魔法で、近いのは自分とアクアで対処。カズマはしっかりと周りが見えててパーティーリーダーとしてはまずまずかしら。

 

「おい、アクア。お前一応は元なんたらなんだからたまには元なんたらの実力見せてみろよ」

 

「元ってなによッ!?ちゃんと現在進行形で女神よ私は!!」

 

「女神?」

 

「を自称しているかわいそうな子だよぉ。たまにこう言った事を口走るけどそっとしておいてほしい」

 

「かわいそうに....」

 

カズマとめぐみんにそう言われ涙目になるアクア。でも今度こそっ!!と気合いを入れカエルへと特効していった。ただやかましいだけじゃなくて表情だけでもやかましいとは....それにあの子まったく学んでないじゃない。昨日はあれでパックリいかれたのに。

 

「震えながら眠るがいいッ!『ゴッドレクイエム』ッ!!ゴッドレクイエムとは女神の愛と悲しみの鎮魂歌!相手は死ぬッ!!」

 

そう高らかに説明しながら勢いよくカエルの口へと入り込む自称女神アクア。......カエルは死にましたか?それとなんで絶対に悲しみを入れるのか、昨日のえっと..『ゴッドブロー』だったかも愛と悲しみだったでしょ。

 

「ねぇカズマ、あのアクアって子....馬鹿でしょ」

 

「はい、知力低いんです....でも流石は女神身を挺しての時間稼ぎか....」

 

なんか今のだけでカズマが苦労してるんだなということがわかった気がする。女神(自称)が己を犠牲に強大な敵(カエル)を足止めしていると辺りが薄暗くなり風が吹き始める。

 

めぐみんの掲げている杖へと魔力が集中していくのを感じる。めぐみんは杖を掲げた状態のまま詠唱をはじめた。

 

 

――黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう

 

――覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!

 

――踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。

 

――並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!

 

――これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法

 

 

――『エクスプロージョン』ッ!」

 

言い切ると同時にカエルのいた場所に天まで届くほどの巨大な火柱があがり爆風が辺りへと吹き荒れる。ついでにアクアを咥えたカエルもぶるぶる震えてその辺に飛んでいった。

 

「あうあう..」

 

「紫苑、私に掴まってなさい。吹き飛ばされでもしたら大変よ。女苑も捕まってもいいのよ?」

 

「へ、平気よ!そんなにやわじゃないし!」

 

紫苑はがっしりと私の腕に掴まっている。女苑はそう言ってはいるけど私の影へと体を隠している。素直に掴まればいいのに。私も扇子を広げ顔の前で広げておく。

 

爆風がおさまりさっきまでカエルがいたはずの場所にはまだ燻っているクレーターだけが残ってカエルは完全に蒸発していた。この威力なら覚えていてもやっぱり損はしないわね。でもちょっと嫌なのがあの詠唱。本当にあんなこと言わないといけないの?ちょっと恥ずかしいのだけど..

 

 

少しだけ気持ちが揺らいでいると近くの地面が不自然に盛り上がる。

 

ん?あっ、さっきの爆発のせいでカエルが地面から出てきてる。

 

「めぐみん、離れた方がよさそ....うよ..なんで寝てるの..」

 

「ふっ....我が奥義である爆裂魔法はその絶大な威力ゆえ消費魔力もまた絶大..要約すると限界を越える魔力を使ったので身動き一つとれません....近くからカエルがわきだすとか予想外です..」

 

ん?....ちょっと待って..紅魔族って産まれつき魔力が高いはず..よね。その紅魔族が一発撃っただけでこうなるの........使えなッ!?えっ!?爆裂魔法ってそんなに魔力使うの!?

 

撃っただけでこれじゃあまったく意味ないじゃない!どうしよう..覚えるのやめようかな..爆裂魔法..

 

「ヤバいです..食われます..ユカリさん達ちょっと助け、くぷっ!」

 

「「「あっ」」」

 

三人で呆気にとられている間にめぐみんが食われた。

 

「紫、めぐみん..助けないと..」

 

「そう..ね..とりあえず三人で弾幕撃てばなんとかなるでしょう」

 

「あー、その方がいいわよ。アイツら体もヌメッとしてるから」

 

三人でカエルの前へと陣取る。

 

扇子を構えその先からレーザーを放ち胴体を貫く。紫苑はボロいお椀を掲げそこから「貧」「厄」といった不吉な漢字ワードの弾幕を飛ばしている。女苑はブランドバッグを振り回し宝石や金のような弾幕を放っている。

 

私、紫苑、女苑の弾幕にさらされたカエルはめぐみんを咥えたままドスンと仰向きに倒れた。口を少しだけ開いてみるとぬるっとめぐみんが飛び出してきた。....うわぁ..汚い..。

 

「助けてくださりありがとうございます..でももうちょっと早くしてほしかったです....」

 

それは..まあ..ごめんなさい。気づけばアクアを咥えていたカエルはカズマが倒していた。あれ?もしかしてこのパーティーで強くてまともなのってカズマだけなんじゃ....。

 

カズマがストレスで死なないことを祈ってるわ。

 




まだ不運は起こらない
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