「ルナ..これ、お願い..」
「シオンさん、今日はジョオンさんと二人だけなんですね。少しお待ち下さい」
そういい奥の方に向かっていくルナ。ここのギルドは受付カウンターがあるんだけど何故かこのルナのカウンターだけがよく混んでるんだよね....なんでだろう?
「女苑、女苑..ルナの魅力ってなんだと思う?」
「えっ!?そ、そうねぇ....む、胸?」
「......女苑」
「そ、そんな顔しないでよ姉さん..ぱっと見たらそう思うじゃない!」
....わからなくもないけどそうなのかな?でもたしかに大きかった..紫も大きかったし外にいた変な騎士の人も大きかった。もしかして金髪だと..大きい?
「ど、どうかしたの姉さん」
....そういうわけでもなさそう。
「姉さん..何か言いたいことでもあるの」
「女苑はありのままの姿でいいからね....」
「??、う..うん」
うん、人はそれぞれだからね。私も紫も女苑のこと好きだからね。
女苑に姉として優しい眼を向けているとルナがクエスト報酬を持って戻ってきた。
「お待たせしました、シオンさんジョオンさん。クエストクリア報酬を20万エリスです....あのぉ..シオンさんそんなにじっと見つめてどうかしました....きゃっ!!いきなりなんですか!」
「姉さんッ!?」
あー、凄い柔らかい..これは紫がつつく理由がわかった気がする。女苑もどう?これはやっておかないと損するよ。女苑の手を掴んでルナの胸に当てる。
「えっ....あっ、凄い」
「でしょ..これは凄いよ紫よりも大きいし」
「あ、あのぉ..そろそろいいですかぁ....」
二人でしっかりと堪能したところで報酬を受け取ってルナには別れを告げて長椅子に腰かける。相変わらずギルドは賑やかだなぁ。紫がここは駆け出し冒険者の街だって言ってたけど駆け出しの街でここまで賑やかなんだから他の大きな街も気になる。いつか皆で行ってみたい。
少しだけ物思いに耽っているといつの間にかカズマが戻ってきていた。
「女苑、カズマのところ行ってみようか..」
「姉さんだけだとアイツになんかされても対処出来なさそうだし勿論私もいくわよ」
「カズマは....そんなこと、しない..よ?」
あっ..でもさっきパンツ振り回してたしもしかしたら変な人なのかも....
「カズマ..昨日ぶり....元気」
「ん、シオンとジョオンか。まあ元気だけど」
「ねぇ、なんでその人泣いてんのよ」
エリ..クリスが泣いてる。何か悲しいことでもあったのかな。カズマが口を開きかけたとき隣にいる金髪の騎士みたいな人が一歩前に出てきた。
「彼女はカズマに盗賊スキルを教える際にパンツを剥がれたうえに有り金全部むしりとられて落ち込んでいるだけだ」
「おいっ!あんたなに口走ってんだッ!?」
どこか恍惚とした表情で言っている騎士の人。やっぱりあれカズマだったんだね。女神様も大概災難だね..紫にパッドと上げ底っての盗られるし、カズマにはパンツ盗られるしで....
「財布返すだけじゃダメだって..じゃあいくらでも払うからパンツ返してって頼んだら自分のパンツの値段は自分で決めろって....」
「おいッ!?待てぇ!!間違ってないけど本当に待てぇ!!」
「あんたッ!そこまで最低な奴だったのね!姉さんに近づかないでくれる!!」
「いや!待って!」
「カズマ....いくらなんでも..最低だよ..」
アクア、めぐみんの目が信じられないものを見るような目をしているの。女苑も蔑んだような目でカズマのことを見てる。クリス平気かな..幸運の女神らしいけど現状不運の女神に見えるよ。
....私が言うのもなんだけど。
「さもないとこのパンツは我が家の家宝として生涯奉られる事になるってッ!!」
うわぁ....これは..ちょっと....私でも嫌だなぁ..。ギルド内の女性冒険者とウェイトレスさんたちの目がすっごい冷たい目になってるよ..女苑も....あっ、女苑の目が完全に汚物を見るような目に..
「あんた..姉さんに近づいたら..潰してやるわよ」
「ヒェッ...」
「....クリス、大丈夫?クリスって本当にあれ(女神)なの?....幸運なんか低そうだけど」
「うっ..それは、一応高いんだけどねぇ..あははは。心配してくれてありがとうシオン」
エリス様の時とは違ってやっぱりだいぶフランクな感じがする。そして胸も平たい..身軽そう。
「あー、シオン?どこ..見てるのかなぁ~?」
どこも見てない....よ?そんなに詰め寄らなくても紫みたいにからかったりしないよ。でも今考えてみると幸運の女神様からパンツを剥ぎ取るカズマって実は凄いんじゃないかな?普通は無理だよね。
「『スティール』ッ!」
クリスと話しているとカズマの声が聞こえてきた。カズマはめぐみんに右腕を突き出していた。あれって私も教えてもらった物を一つ盗るスキルだったはず。
カズマはゆっくりと手を開いて盗った物を広げる。
するとそれはここからでも確認ができるもの、黒い三角の形をしてリボンのついた布....なんかめぐみんがもじもじして..あっ。
「なんですか..ステータスがあがって変態にジョブチェンジしたんですか....スースーするのでパンツ返してください..」
うん、だよね....パンツだよねめぐみんのパンツ。でもなんでだろう..あれって盗れる物はランダムの筈だけどなんで....パンツ?
パンツってそんなに高価な物でもないと思うんだけど。
「姉さんこんな奴の近くにいたら危険よ!あっち行こう!」
「待ってくれッ!!もう一度チャンスをくれ!頼む、こんなはずじゃないんだッ!!」
「....うーん、まあいいよ」
「姉さんッ!?なんでそんなこと..」
「カズマもワザとじゃない..と思うし..私だとどうなるのかちょっと興味あるから..」
女苑は心配してくれてるけどそんなに心配する必要ないと思うけどね。盗られて困るものは私持ってないし。
「じゃ、じゃあ..いくぞ。『スティール』!!」
カズマの手がまばゆい光を放ち輝きだす。そしてカズマの手に握られていたのは....パンツ、ではなく紫苑の持っている黒い猫のぬいぐるみだった。
「あっ....私のぬいぐるみ..」
「いよっっっしゃあああああっ!!どうだっ!見たか!俺はパンツを狙っていたわけじゃないんだ!!」
ここで喜んだのは勿論カズマ、これでパンツ脱がせ魔の汚名を受けることも女性冒険者からも冷たい視線を向けられないとガッツポーズをしてぬいぐるみをぐるぐる振り回している。
それが良くなかった....嬉しさのあまりついつい力が入ってしまっていたカズマ。そんな風に扱えば必然的に良くないことが起こってしまう。紫苑のぬいぐるみは紫が結界のために多少は補強をしてはいるがいたって普通のぬいぐるみ。
辛うじて千切はしなかったもののカズマの手から滑り落ち飛んでいく紫苑の大切なぬいぐるみ。ぬいぐるみが床に落ちると同時にバリンッとガラスでも割れるような音が鳴り響く。
「ああっ!?私のぬいぐるみ!あわわわっ..ど、どこぉ....どこいったのぉー!」
飛んでいったぬいぐるみを探しに涙目で床を探し回る紫苑。カズマへの視線はさっきよりも冷たいものになっていた。
「あ....えっと..その....うぐっ!?」
「おい、あんた!覚悟はできてんでしょうね!!」
カズマの首もとへ掴みかかる女苑。今にも殴りかかりそうな勢い、というよりも既に拳を振りかぶっている女苑。それをなんとか止めようと腕を掴むアクアとめぐみん。なんとか押さえているが長くは持たないだろう。
「ジョオン!待ちなさいって!カズマもワザとじゃないのよ!」
「そうです!カズマから聞きました!カエルを殴り飛ばせる腕力でカズマを殴ったら死にますから!!」
「女苑....なにしてるの....」
「姉さん!それ無事だった?姉さんの大事な物でしょ?」
紫苑が戻ると同時にカズマをポイッと捨てすぐに姉のもとへと向かう女苑。
「うん、ちょっとほつれちゃったけど....平気だったよ」
「シオン..ごめんな。そんなつもりじゃなかったんだ..」
「うん、わかってるよ....カズマはそんなに悪い人じゃないし..」
ほつれちゃったけどこの程度ならいくらでも直せるから平気..でももし千切れでもしたら泣いてたかもしれない....それに下手したら能力も暴走してたかも....。
「シオン、さっき凄い音したけどそれは平気だった..のか?」
「うん..あれは私もよく分からな..ん!?」
突然眼を見開き固まり鼻を押さえる紫苑。
「ん?どうかしたのかシオ..ん゛!?なんだこの臭い!クサッ!?」
「姉さん?どうかし..うっ!?」
女苑も謎の異臭を感じて鼻を押さえる。
そして周りの冒険者やウェイトレスも謎の異臭にざわつきだす。
「カ、カズマぁ....何よぉ~この臭い。私の鼻が曲がりそうなんですけどぉ!!」
「たしかに酷い臭いです!これはキツイです、カズマまさか....」
「いや!俺じゃねぇから!!」
カズマや紫苑、その他の冒険者達がギルドの入り口に目を向けるとそこにはニッコニコ笑顔だが目が完全に据わっている紫がたたずんでいた。服はボロボロ、頭から血を流して何故かびしょ濡れでとてつもない異臭を放っていた。肩などには生ゴミのような物もぶら下がりかなり汚い。
◆◆
「ユ、ユカリ....えっとどうしてそんなところに立って..って臭ッ!?」
「あんた、いったいなにがあった――クサッ!?なによこれ!?」
「あんたらさっきから臭い臭い言い過ぎなのよ..私だって好きでこうなったわけじゃないのよ」
紫苑も鼻を押さえ、うぅ..と臭そうにしている。他の冒険者たちも同じく鼻を押さえている。
まったく、私だっていきなりの出来事で驚いたんだから....。そんなに臭いものでも見るかのような表情はやめてほしいのだけど。まあ実際に臭いことに変わりはないんだけど。
「それで....紫。なにが..あったの..うぅ」
「その前にちょっと着替えてきてもいいかしら....私もこの格好は限界だから」
そう言ってたカズマたちの元を後にしてルナの元へ向かう。私が近づくと冒険者とウェイトレスが全員一気に動いて私から距離を取る。しかも口々に「臭い」 「クサッ」 と言っている。
.......ちょっとイラッとくるわねこれは。いつか覚えてなさいよ。
「ルナ、ギルドにシャワーってある?」
「は、はいありますけど..うぅ、酷い臭いですよ紫さん」
....ねぇ、ルナ。なんかそのいいかた誤解を生みかねないんだけど..ルナが悪いのよ。カウンター越しにルナの肩をがっしりと掴み微笑みかける。
「ユ、ユカリさん!臭いです!離れてください!!」
「ちょっと!!それだと私自体が臭いみたいじゃない!」
肩を掴んだままこっちに引き寄せて強引に抱きつき体を密着させる。
「いやあああああ!!クサいッ!?臭いですぅ!うううううっ...酷いですよぉ....」
「まあまあそう言わずに一緒に綺麗になればいいじゃない。さあ、行きましょう。シャワーが私たちを待ってるわ」
ルナの抵抗も虚しく紫にずるずると引きずられ奥へと消えていった。
パンツ以外も奪えるスティール