この素晴らしいスキマ妖怪に依神姉妹を   作:片腕仙人

16 / 21
緊急クエスト


16話

正門へと集まった冒険者達。冒険者以外の街の住民達は急いで戸締まりをして家の中へと逃げていっている。ただ緊急クエストの報告は突然、街にもアナウンスはあったが急に避難しろと言われても『はい、わかりました』とはいかない。

 

ほとんどの住民が避難の準備に手間取っている状態。この状況を正門まで向かう間見てきたけどかなり深刻な事態なように見える。

 

「紫..緊急クエストってなに?」

 

「それが、私もいまいちわからないのよね」

 

「はぁ?あんた私達よりも冒険者してたのに知らないの?」

 

たしかに私は紫苑と女苑よりも冒険者歴は長い、女苑が言うことも分かるけど....緊急クエストなんてそんなしょっちゅう起こらないでしょ。私も経験するのはこれが初めてなのよ。

 

とりあえず正門で待ってれば何か分かるでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

冒険者の集まった正門、そこへと向かってくる緑の巨大な影。絶えず形を変え常に変化し続けるそれは完全に一つの生き物のようにも見える。その正体は謎の緑の物体の集合体。

 

「紫..女苑..これって....」

 

「ええ..完全に..あれよね..」

 

「....『キャベツ』..よね..」

 

私たちは街へと迫り来る『キャベツ』の大群を見て三人揃って間抜け面をさらしていた。だって考えてもみてよ『キャベツ』が群れで空を飛んでやって来るとか....話に聞いただけでもそんな事言ってる奴の正気を疑うでしょ。

 

 

........それにしてもあのなんか..ぶわっ!て動くの何かににてるような気がするのよねぇ..なんだったかしら。....あっ!そうだあれよ!鰯とかが群れになって身を守る時とかにそこに向かって捕食者が突っ込むとそこだけぶわっ!って形を変えるあれ、あれに似てる。あとはコウモリの群れが動く様子にも似てる。

 

「な、なんじゃこりゃあああああああ!?」

 

そうね、私たちの言いたいことをカズマが代弁してくれたわ。なによ..これ..。

 

「なに?カズマもそうだけどあなたたちも知らなかったの?この世界の『キャベツ』は飛ぶわ。味が濃縮して収穫の時期が近づくと簡単に食われてなるものかとばかりに。街や草原を疾走する彼らは大陸を渡り海を越え最後には人知れぬ秘境の奥で誰にも食べられずにひっそりと息を引き取ると言われているわ」

 

「え....息、引き取るの?」

 

た、たしかにそこまでいくなら死なずに生きなさいよ。完全に無駄でしょその行動。しかしその話だとこのキャベツはただのキャベツじゃなくて渡りキャベツって訳ね....なんか自分で言ってて頭が痛くなってきたわ。

 

「なあ、俺もう帰って寝てていいか....モンスターの襲撃とかじゃねぇのかよ..」

 

「緊急クエストがキャベツ....てっきり本気で行かないと駄目な奴かと思ったけど杞憂..てレベルじゃなかったわね..」

 

「あれ..美味しいのかな女苑」

 

「....飛んで跳ね回るキャベツとか食べたくないんですけど..」

 

他の冒険者達はめちゃくちゃやる気だけど私、女苑、カズマ、紫苑....は食べれるかどうか気にしてるだけね。紫苑以外の私を含めた三人はやる気ゼロに近い。

 

「皆さーん!今年も収穫の時期がやって来ましたよ!今回のキャベツは出来が良く一玉一万エリスですよ!!捕まえたらこちらに納めてくださーい!」

 

へえ..一つ一万エリスねぇ~....ん?一玉一万?ぱっと見ただけで数百、下手すれば千はいるキャベツ。しかも納品、収穫ということは食べれるということ......よし、やるか。

 

「紫苑、女苑今の聞いたわね..」

 

「うん..聞いた、食べれるんだねあのキャベツ」

 

「へえ、一つ一万ねぇ..」

 

扇子構える私に女苑の背後へくっつく紫苑、おもむろに取り出したメリケンサックをはめる女苑。

 

「「「収穫だあああ!!」」」

 

「えええええええッ!?いきなりやる気にッ!?」

 

なに驚いてんのよカズマ。当たり前でしょ一体で一万エリスよ?しかも食べれるとくればやるしかないでしょ。あのねこっちだってね三人分の食材と食費、いくら蓄えがあるからといって貧乏神と疫病神と共に生活している以上最悪の状況に備えなければいけないのよ。

 

なによりここで多く収穫すれば食材の費用を押さえられる!しばらく食卓がキャベツ一色になるかもだけどアレンジもそれなりに効くから問題なし。むしろ紫苑あたりは豪華になって喜ぶはずよ。となれば早速収穫といきましょう。

 

扇子をキャベツの大群に向けて振るう。すると私の左右に二つずつ魔法陣が展開されそこから紫色のレーザーが放たれる。放たれたレーザーはキャベツを貫き切り裂いていく。そしてそのキャベツは地面に落ちるまえにスキマで回収、用意された檻へ直送する。

 

私や紫苑、女苑の三人だけだったら問題なくスキマをフルで使えるんだけど今回は人目が多いからちょっと細工をしないと使えないのがめんどくさいけど仕方がない。こうでもしないと叫ばれかねないのよ。いきなり何もない場所が裂けてそこに目玉が大量にあったら誰でも恐怖でしょうからね。今回は魔法陣に見えるように細工しておいた。

 

「それぇー、女苑頑張れー」

 

「いや!姉さんもやってよ!――オラッ!!」

 

「私も..頑張ってるよぉ....もぐもぐ」

 

紫苑も弾幕を女苑の後ろから撃ってキャベツを捕まえてる....いや食べてるわね..あの子。女苑は相変わらずキャベツを殴って叩き落としてるし..意外と硬いと思うんだけど..キャベツ。逞しいって言うべきなのか、脳筋というべきなのか....。

 

「紫っ!あんたのアレで一気に回収しなさいよ!そっちの方が楽だし早いでしょ!意外とコイツ等硬いのよ!」

 

と、言いつつキャベツを殴りつける女苑に私は少し恐怖を感じる。だってキャベツに女苑の拳の後がくっきり残ってるんだもの..あの子筋力スゴすぎない?それとスキマでごっそり捕獲できなくもないけどそれは最終手段。それをやったら最後、他の冒険者にキャベツがいかないわよ。

 

「なぁ、ユカリ....そのビームってやっぱり俺には覚えらんないのか?ダメもとで今度教えてくれたりとか..」

 

「カズマッ!!これはいい機会だ、クルセイダーとしての私の実力見ていてくれ!!うおおおおおおおっ!」

 

そういって走っていく金髪女騎士。

 

「カズマ、ほら見ていてあげなさいよ。新メンバーでしょ」

 

「いや..まだそういう訳じゃ....というか俺の良くないセンサーがビンビンに反応してるんだよ..アイツはめぐみんやアクアと同じタイプだって」

 

一見普通の騎士に見えるけど....たしかに気になる点はいくつかあったわね。女騎士様はキャベツに向かって両手剣を振るっている。あの大きさの両手剣ならキャベツくらいならやすやすと真っ二つにできるでしょう....当たればね。

 

「ふんっ!!はあ!!」

 

「ねぇカズマ..逆に凄くないあれ....」

 

「い、一発も当たってねぇ..やっぱりなんかあんのかよ..何で俺のパーティーってこんなヤツばっかり」

 

うーん..運が悪かったんじゃない?女神と言い張る変人に、一発限定爆裂紅魔族、攻撃の当たらない騎士..色物パーティー過ぎないかしら。それにしてもあの騎士凄いわね、未だに一発も当たってない。あそこまでいくともう一種の才能じゃないだろうか。

 

「ぐあっ!?」 「ああっ!?」

 

キャベツ襲来から....やっぱりなんか言ってて馬鹿みたい..でもまあいいわ。キャベツ襲来から少し経って大分数も増えてキャベツの本隊が到着して密度と突撃の頻度がかなり増えてきている。こうなってくるといくらキャベツといえど侮ることはできない。

 

あのスピードで体当たりされれば当たり処によっては死まであり得てしまう。現に他の冒険者達は倒れてなんとかキャベツの体当たりを防いでいる者が大半。そして不幸にも身動きがとれなくなっている冒険者に向かってキャベツが体当たりを仕掛ける。だがそれを身を挺して守ったのはあの女騎士。

 

次々とキャベツが体へと当たりその衝撃で鎧が剥がれ服が破れる。

 

「無茶だ!あんただけでも逃げてくれッ!!」

 

「馬鹿を言うな!..んっ..倒れた者をっ..見捨てるなどできるものか!!....んぁ..」

 

「早く逃げてッ!騎士様!」

 

「あんなになってまで....騎士の鏡だ!」

 

....なんだろう、この..なんとも言えぬ違和感。たしかに自らの体を犠牲にして仲間を守る。それは騎士の鏡と言えなくもない..ないのだけどぉ..何故ッ!頬を赤く染めているのッ!?

 

「....くっ..んんっ..は、んぁ...ンンっ!」

 

「ねぇカズマ、あれって....」

 

「言わないでくれっ!..考え..たくっ!ないッ!!」

 

「でもほらあれどう考えても....」

 

「ま、まあ、その....」

 

「んっ..あっ..はぁ..んん!」

 

((やっぱり悦んでるぅー!?))

 

カズマ達の新しいパーティーメンバーのあの騎士、絶対にドMでしょ。キャベツに突っ込まれて喜んでるし。....ちょっと後ろから弾幕撃ってみようかしら、それ。

 

「ああんッ!!くっ..んんっ..」

 

「ごめんなさい。騎士様、誤射よ」

 

「んぅっ..こ、この程度..なんともないッ!前からはキャベツ、後ろからは魔法..しかもなかなかの威力....はぁ、はぁ、な、なんというご褒....んん!そこの魔術師の人私には構うな!どんどん撃ってこいッ!むしろ撃ってくれッ!!さぁ!はやくッ!!」

 

「........」

 

「......カズマ、あなたも苦労してるわね」

 

「おう..わかってくれるか....」

 

今度カズマだけでもなにか奢ってあげましょう。多分この調子じゃ体が..精神の方がもたないかもしれないし。

 

 

 

――光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし爆炎よ

 

 

ん?あっ..この厨二な感じの詠唱は....めぐみん。あの子やっぱり頭おかしいんじゃない?こんな状況で爆裂魔法撃とうとしてるんだけど!?まだ向こうにはあの騎士と紫苑と女苑もいるんだけど!?

 

すぐに紫苑、女苑をスキマ(魔法陣細工済み)で引っ張りこっちに連れてくる。

 

「あうっ....」

 

「ちょっ!紫あんた何すんのよ!」

 

そのまま騎士も引っ張ろうとした瞬間に巨大な爆発が騎士とキャベツを飲み込んだ。哀れ女騎士は爆発四散..することはなく「ああああんっ!」というなんとも扇情的な声をあげ恍惚の表情で吹っ飛んでいった。

 

そのあとは何事もなくキャベツを収穫して無事に緊急クエストはクリアとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで!なんで私たちは報酬も貰わずに家に戻ってきてんのよ!!」

 

「女苑、そんなに怒鳴らなくても....」

 

「だからルナも言ってたでしょ..報酬は用意するのに時間が掛かるから明日まで待ってくれって」

 

私たちはカズマや他の冒険者と別れてお屋敷へと戻ってきていた。何よりも大量のキャベツを保管と早速料理して今晩のおかずにしないといけないしね。でも変ね何かを忘れているような気がするのよねぇ....。

 

「まあいいわ。紫苑、女苑、今日はこのキャベツでキャベツパーティーといきましょう。材料費も実質ただだしラッキーね..んん、なんかちょっと寒いわね」

 

二人の前でキャベツを持ち仁王立ちする紫。そのとき少し強めの風が吹き紫のスカートを翻す。

 

「ッ!?」

 

「なっ!?」

 

「へくちっ!うう..ん?どうかしたの二人でそんな驚いたような顔して」

 

私の顔と下の方を交互に見る紫苑と女苑。いったい何してるのよ、そんな頭を振って。

 

「ゆ、紫..あの..その..」

 

「ね、姉さん、いいわよ。私が言うから....えっと紫あんたちょっとどこかに違和感とかない?」

 

違和感?たしかに言われてみればなにかが足りないような気も..。

 

「言われてみればそんな気が..」

 

「紫、気を確かに持ちなさいよ。あんた今....ノーパンよ。多分上も着けてないんじゃない?」

 

..........ッ!!

 

すべて思い出した!そうだった!私は今ッ!この風が吹く度にスースーする感覚、動く度に一部分が直接布に擦れる感じ..私はカズマに下着をまるまる剥がれたままだった!!

 

「あ..あああああああああっ!!私まだ下着返してもらってない!?じゃあ、今まで私はずっと....う、うああああああっ!!」

 

 

顔を真っ赤にして屋敷へ駆け込んでいく紫。

 

「....姉さん、私たちも行こうか」

 

「そうだね..女苑..紫..平気かな..」

 

「はぁ..忘れるもんかしらね..普通気づくでしょ」

 

女苑はやれやれといった感じに頭を振って紫苑と一緒に屋敷へと向かっていった。その日、紫は部屋に籠って出てこなかったとか。

 

 




カズマ、最強のおかず(意味深)をてにいれる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。