この素晴らしいスキマ妖怪に依神姉妹を   作:片腕仙人

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パッド入り


7話

銀髪少女に着いて行くこと数分、私たちはギルドの裏手までやって来たわよ。ということはやっぱり...

 

「見なさい紫苑やっぱりそういうことだったらしいわ」

 

「うん、口ではああいってたけどこんな人目のないところに連れてくるってことは...やっぱり」

 

「ええ、ここできっと私たちの身ぐるみを剥いで金目の物を全部奪っていく気に違いないわね、最低の女ね」

 

「ちょぉぉぉっと!?違うってばぁ!!なんで信用してくれないかなぁ...」

 

いやね、だっていきなりタダでスキルについて教えますって言われて着いていったら人目のない場所に連れてこられた。そんなのもうここで犯行に及ぶためにやって来たとしか。

 

「「.........」」

 

「うっ....本当にまだ疑ってるよ...ま、まぁいいや。まずは自己紹介しとこうか。あたしはクリス、見てのとおり盗賊だよ」

 

「「やっぱりそういうことじゃん」」

 

「違うってば!!職業が盗賊ってだけだって!!」

 

職業盗賊、つまりは盗人。なにも間違ってないじゃない。何が違うのかしら?とりあえず紫苑は後ろに隠しておこう。

 

「....す、スキルって言うのは基本的には冒険者カードの現在取得可能なスキルってところにあるスキルをスキルポイントを使って覚えていくんだけどそっちの子はたしか冒険者だったよね。初期職業の冒険者はまずはスキルを目で見てスキルの使用方法を教えてもらうとスキル項目に追加されるんだ」

 

へぇ、そんなシステムだったのね。冒険者ってスキルポイントが多めに必要なだけで意外と万能な職業なのではないだろうか。そこからはクリスがスキルを実演、『敵感知』、『潜伏』、『罠解除』といういわゆる盗賊スキルを見せて説明してくれた。

 

紫苑は実演を見て目を輝かせていた。貧乏神ってのを除けばやっぱり楽しそうにしている少女にしか見えないわね。なんだかほっこりしてきたわ。

 

(おっ?なんかあっちの子は好感触ぽくない?よし、このまま)

 

「さて今度は私の一押しスキルだよ。そぉれっ『スティール』!」

 

クリスがそう叫ぶと私が持っていた扇子が消え彼女の手の中に。

へぇ...そう。

 

「ふふん!このスキルはね相手の持っている物をなんでも一つランダムで奪いとる色々と使い勝手のいいスキルなんだよ!」

 

「なるほどね...そうやって金品を巻き上げてるわけね」

 

「やっぱりそっちが目的なんだ....」

 

「あっ...違うから!これは実演しただけで!ほ、ほら多分今のでスキルの欄にこのスキルが登録されたはずだから確認してみて!」

 

二人でジト目クリスに向けつつ紫苑のカードを確認する。するとたしかにクリスがさっき使ったスティールが取得可能スキルの欄に表示されていた。

 

その欄を指でさわるとカードが光を発して字が濃くなった。これで覚えたの?なんかずいぶん簡単ね。

 

「あっ、覚えられたんだね。じゃあさっそく実戦してみよう。この扇子と...これでいいかな。当たりは扇子、ハズレは石だよ。やってみてね」

 

紫苑は恐る恐るではあるが手をクリスへと向ける。

 

「...『スティール』」

 

紫苑の手が輝きそこに握られていたものは...

 

「え、なにこれ」

 

「....土」

 

「....あー、えっと...なんでだろぉ...」

 

扇子どころか石ですらない。手にあったものは少量の土。いったいどこからスティールしたのよ。これならせめてハズレの石の方が運が悪かったで.....運?

 

「ねぇ、クリス。このスキルって何かステータス補正ある?」

 

「えっ、一応は幸運値だけど」

 

「はい、ゴミスキル。使えないわ」

 

「こんなスキルいらない」

 

「えっ?あっと、もしかして幸運値低い?」

 

低いなんてもんじゃないわよ、この子の場合はね。ある種、特別なのよねなんせ貧乏神ですもの。

 

「最低よ」

 

「えっ?」

 

「この子の幸運値は最低、というよりもマイナスに振り切ってるの。そんな子に幸運値補正のスキル教えるとか...クリスさんは本当に盗賊の鏡なんですわね」

 

「....さすがの私でも...これは傷つくよ...こんなことしなくても...」

 

「わあああああ!!ごめん!そんなつもりじゃなくて!!はいこれ返すから!それとこんなのしかないけどこの携帯食料あげるから!」

 

「ありがとう、美味しい」

 

「食べんのはやっ!?」

 

紫苑も立ち直ったし扇子も戻ったし今度はこっちの疑問にこたえてもらいましょうか。

 

「じゃ、じゃあ、私はこれで...冒険者頑張ってね...」

 

「少し待ってもらえるかしら?」

 

クリスは、んあ?と間抜けな感じに振り返る。なんかずいぶん疲れてるようね。そんなことはどうでもいい。疲れてたいなら勝手に疲れていればいい。私にはずっと気になっていたことがあったのよ。

 

「ねぇ、あなたはなんなのかしら?」

 

「....え?それってどういう?」

 

返してもらった扇子を開き顔を隠し表情を悟られない、交渉だったりの時によくやるポーズをとる。

 

「あなたの名前はなんなのかしら?」

 

「紫、クリスって言ってたけど」

 

そうね、たしかに彼女はクリスと名乗った。でもそれは事実ではあるけど本質的には事実ではない。片手で紫苑を制する。

 

「そ、そうだよ...私は盗賊のクリス――」

 

「ええ、そうでしょうね。たしかにあなたはクリス。盗賊のクリス。だから私はそちらの名前を訪ねているのではないのよ。本来のあなたに対して訪ねているの」

 

クリスはどこか驚いたような表情をしたがすぐにとぼけ始めた。

 

「え、えっと、なんのことか、わからないなぁ...」

 

あちら様はあくまでもしらを切るつもりらしい。ならいくつかのお話でもしてあげましょうか。

 

「そう、ならそうね...とある噂話でもしましょうか」

 

 

 

 

―――少し前にとある人物がこの世界に現れたらしいわ。

 

 

その人物は経緯はどうあれ冒険者となったらしいわよ。

 

その冒険者になった人物はすぐに初心者では出来ないようなクエストをいともたやすくこなしていったわ。

 

周りの冒険者達はその偉業に驚愕し歓喜していたらしいの。

 

宴会のおこぼれにありつけるからかもしれませんがね。

 

でもそのなかでただ一人疑いの目で見ている者がいたのよ。

 

 

 

 

 

クリスの表情が少しだけ強張る。

 

 

 

 

 

―――その少女はその人物がこの世界に現れたときから監視していた。その人物が何者でなんのためにやって来たのかを監視していたんでしょうね。

 

暫くしてその人物は一人の少女とであったわ。

 

そこからその人物の生活は少し変わったけど監視していた人物はそれどころではなかったでしょうね。

 

なんせこの世界にはいないはずの少女がいつの間にかそこにいたんだから。

 

そこからはよりいっそう注意深く監視していたんでしょうね。

 

 

 

 

クリスの額には玉のような汗がにじんでいる。

 

 

 

―――でもそれが良くなかった。

 

 

注意深く監視し過ぎて監視対象に気がつかれていたことに気がついていなかった。

 

そして彼女はそんなことも知らずに接触する機会が巡ってきたことにこれはチャンスだと思って接触してきた。

 

罠だとも知らずにね。そしてその少女は漸くその真実を知ることとなった。本人たちを目の前にしてね。

 

 

「実に奇妙だと思わないかしら、なんだか今の私たちに似てない?監視者があなた、冒険者と少女が...私とこの子」

 

 

辺りは不思議と静まり返り喧騒が嘘のように物音がしない。

 

「....あっ、はははっ!...お、面白い話だね。で、でも私はそんなことしてないし...!?」

 

 

「どうかした?なんだか酷い顔よ」

 

クリスはどこか怯えたような表情でこちらを見つめている。

 

 

 


 

 

「どうかした?なんだか酷い顔よ」

 

 

その一言だけでまるで心臓を鷲掴みにされらような感覚に陥る。たしかにあたしはあの人を見てきた。でもあの口ぶりじゃあ最初からあたしが監視していたのはばれていた。

 

「な、なんで!体がっ!」

 

せめてこの場から離れようと後退りしようとしたのに体がピクリとも動かない。一歩、一歩、私へと近づいてくる。近づくにつれて辺りの気温が徐々に下がっているような変な感覚。

 

近づくにつれて彼女の後ろがゆっくりと歪み始める。そしてソレが現れた。どこまでも続くような暗闇、そこにあるいくつもの赤い瞳がこちらを見つめている。

 

息が詰まる。今までに体験したことのないような恐怖。身体中から汗が噴き出し震えが止まらない。

 

また一歩、一歩と近づいてくる。後ろのソレは大きさを増していき辺り一面を覆い尽くした。さっきまでは明るかったのに今では真っ暗、光は一筋も射し込んでいない。気づけば上下左右すべての方向が暗闇に包まれ赤い瞳がこちらを覗き込んでいる。

 

頬に冷たいなにかが触れる。それは彼女の手。いつの間にか触れられるまでの距離まで近づかれていた。彼女の笑みが目に焼き付き離れない。咄嗟に目を閉じ見ないようにする。

 

それと同時に感じる浮遊感。

 

その浮遊感が消え恐る恐る目を開けるとそこはどこかもわからない草原だった。

 

「は...はぁ...ゆ、夢?...」

 

さっきまではとは嘘のような明るく輝く太陽、どこまでも広がる草原。きっと夢だったんだと自分に言い聞かせる。

 

「よかった....夢だったんだ....」

 

「んなわけないでしょ」

 

「ひやああああああああああああああああッ!?」

 

耳元でいきなりあの人の声が聞こえ飛び上がってしまう。それと同時に腰が抜けその場にへたりこんでしまう。

 

「ひやあああってそこまで驚くことないんじゃない?」

 

「紫、あれは誰でも怖いと思う。私も怖かった」

 

「そう?そうかしらね?..次はもう少し手加減しましょうかねぇ」

 

「へ?え?な、なに?どういうこと?」

 

もう頭のなかがぐちゃぐちゃ、さっきまでの雰囲気は消えたどこか柔らかい雰囲気に変わった彼女。いつも見ていたのと同じ。さっきのはいったいなんだったの...。

 

 

 

 

 

「へぇ~、それでその姿が本来の姿って訳ね」

 

「は、はい。そうなんです。クリスは私が地上に来る時の仮の姿でして」

 

 

今私の前にはゆったりとした白い羽衣に身を包み、長い白銀の髪と白い肌青い瞳をしたどこか儚げな美しさを持った少女がいる。

 

場所はギルドの裏手から移ってどこかの草原。どこかというと私にもわからない。適当なところに繋げたわけだし。

 

「それで、結局なんで監視なんかしてたの?それと名前は?」

 

「えっと、私の名前はエリスっていいます」

 

エリス?エリスって言うとこの世界の通貨と同じね。

 

「それよりもユカリさん!なんですかあれは!!本当に怖かったんですからねッ!」

 

まあまあ、それは悪かったって。やり過ぎたのは紫苑にも言われてわかってるから。でも私も散々監視された訳だしおあいこってことでね。

 

「それでなんで監視してたわけ」

 

「それは...その、まったく身に覚えのない方がいらっしゃると思って気になって...もしかすると悪い人かもしれませんし女神としてはほおっておくことはできないので」

 

「それで、あなたから見て私たちはどうなの。排除すべき存在かしら」

 

「いえ、その必要はありません...怖かったですけど」

 

「よかったわね。紫苑、女神の御墨付きよ」

 

「女神にそういわれても運気なんてあがらないよ...」

 

そうなのよねぇ...女神にオッケーですって言われても別に運気がよくなってくれるわけじゃないのよねぇ....はぁ~辛い。というかそもそもの疑問なんだけどなんで女神が盗賊なんてやってるの?

 

「エリス、あなたなんで盗賊なんてやってるのよ。女神なんでしょ?」

 

「えっとそれはですね―――」

 

 

エリスが言うにはこういうことらしい。盗賊をやっているのはなんでも先輩女神のアクアとか言う奴が異世界に日本人を転生させた際に持たせているチートアイテムの悪用を防ぐためだとか。そのために盗賊として神器回収をしているらしい。あと義賊みたいなこともやってるとか...ふーんそっか。

 

「なるほどね。神器回収」

 

「はいそうなんです」

 

「つまりその神器回収でどこかの家に忍び込んで神器を回収。善からぬことに使われている金品を盗んで貧しい人たちに配っていると」

 

「はい」

 

「そして...どんどんその盗みの魅力にとりつかれしまいには新人冒険者から身ぐるみを剥ぐようになって....貧しい人達からもわずかな金品を盗み取り始めその欲求を満たしていると...なんて..極悪非道なことをッ!」

 

「つまり私たちに近づいたのも金品を奪うため...私ぬいぐるみくらいしかないのに...これも持ってくの...」

 

「はい.....はい?...違いますよッ!?そんな盗みに快楽とか見出だしてないですから!!」

 

「「えっ!?そうなの?」」

 

「いや、なんで二人してそう思ってるんですか!?」

 

いやぁ...だってねぇ...紫苑。

 

最初は出来心でそこから...てのはよくある...

 

そうよね、てことはやっぱり

 

うん、多分...

 

「ちょっと!!二人で目だけで会話しないでください!!もぉぉ!!」

 

あら、私たちが目だけで会話してるのよくわかったわね。さすがは女神と言うべきかしらね。でもまだ気になることがあるのよね。それは上半身の一部分。クリスの時に比べて少し...いや随分と大きくなったわね。大きさはルナ並かしら?でもちょっと違和感が。

 

「エリス、あなた随分立派なもの持ってるわね。羨ましいわ」

 

「り、立派...ですか?」

 

当の本人はいまいち理解してないみたいね。胸元で手をくいっとしてジェスチャーで胸のことだというのを教える。

 

「?...あっ!えっと、えへへ、そのありがとうございます。えへへ」

 

「でもなんか違和感があるのよね...その胸」

 

「へ?...そ、そんなことないですよ...本物です!ホ・ン・モ・ノ!」

 

「何をそんなに焦っているの、別に偽物とは言ってないわよ。でもやっぱり怪しいわね...大きすぎるのよ、あなたのそれ」

 

あっ、エリスの表情が凍った。....ちょっと私もスティール(スキマ)してみようかしら。普通にスティールしたら大したもの取れないでしょうけど私独自のスティールなら楽勝。

 

「エリス、それ『スティール』」

 

「え...ユカリさん残念ですがわたしこう見えても幸運の女神なのでそう簡単には――」

 

「ねえ、紫苑なんか凄い物てにいれたわ」

 

「...なに、これ...」

 

これはね、ムネパッドっていってね。吸血鬼のメイドとかがよく着けてるやつよ。それにしても7重パッドはやりすぎじゃない?いまやエリスにはさっきまでの小高い丘はなくなって平野が広がってる。

 

「にしても盗ったら盗ったで...なんかこっちが悲しくなってきたわ...」

 

「紫、これ食べれたりしないの?」

 

紫苑はエリスのパッドをぐいぐいと引っ張っている。紫苑、パッドは食べ物じゃないわよ詰め物よ。

 

「....えっ!?いつの間にッ!?か、返しくださあああい!!わた、わたしのパッドぉぉぉッ!!」

 

エリスはなんとか取り返そうと私の前で飛び跳ねている。まったく揺れてない。しかも私がパッドを頭の上に掲げているせいでまったく届かない。身長的にこうしたら絶対に...ん?

 

「ねえエリス、あなたパッドだけじゃなく上げ底ブーツまで履いてるの?うわっ...凄い上げ底」

 

「うわああああああああああああっ!!なんでえええええ!!返して!返してええええ!わたしのパッドと上げ底おお!!ああああああああっ!」

 

 

それ言ってて悲しくない?

 

 

その後は私がスティール(スキマ)でエリスの偽乳のパッドを一度返してもう一度奪い盗ったりとからかったり暴走したエリスに胸を鷲掴みにされたりと一騒動あったけど何だかんだでその神器回収に協力するとこになった。

 




パッド神
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