この素晴らしいスキマ妖怪に依神姉妹を   作:片腕仙人

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ボッチと貧乏とスキマ


8話

エリス様との出会いから数日、本人いわく幸運の女神らしいけど私の運気はまったくあがっていないわよ。むしろ酷くなってきてる。

 

私が拠点として購入したお屋敷だけど買った当初はピカピカの豪邸といっても過言ではなかったけど今は壁は蔦まみれ屋根には穴が空いてるし何故かずっとこのお屋敷の上だけは雷雲が漂ってるしで隣の空き家のお屋敷とは全然違うわね。

 

隣は綺麗なのにこっちは....ああ、まあそれを考えてもあんまり意味ないわね。隣の芝生は青く見えるものよね。それにここ数日はほとんどお屋敷に籠りっきりだった。

 

結界を弄って行き詰まっては息抜きのために外をぶらつき馬車にはねられ。

 

あるときは紫苑と一緒に出掛けてバケツが私だけに落下してきてびしょ濡れになり。

 

またあるときは折角買った食材を馬鹿デカイ鳥にかっさらわれた。

 

そしてギルドに顔を出せば 「ユカリさん、なんだかやつれました?」 と言われる日々。

 

でも、でもようやく、ようやく完成した。

 

「フフ、フフフフフフ。やったわよ、ついにこの時がやって来たわ。紫苑ー!紫苑どこにいるの?」

 

「んー....どうかしたの紫。そんなに叫んで...隈凄いけど平気?」

 

ンフフ、そんなの寝れば治るのよ。それよりもいまはこっちが重要なの。

 

「紫苑、貴方のぬいぐるみ貸してくれない?」

 

「いいけど....?」

 

紫苑からぬいぐるみを受け取りそのぬいぐるみに結界を施していく。特に見た目には変化がないけどしっかりかかっているはず。それと....

 

「手を出してくれるかしら?」

 

紫苑の腕に紫色のミサンガを着けてあげる。そしてぬいぐるみも返す。紫苑がぬいぐるみを受けとるとその二つがわずかに紫色の光を発した。

 

「よし、これで完璧ね。さすがは私!」

 

「紫なにこれ?」

 

「それはね貴方の自分も含めて不運にする能力を抑制する結界よ。ぬいぐるみとミサンガが揃って初めて効力を発揮するものなのよ。貴方の溜め込んでしまう不運を貴方に集めるんじゃなくお屋敷の地下に作った『不運貯蓄器』に溜め込めるようになるわ」

 

「『不運貯蓄器』....?」

 

「名前はどうでもいいのよ、とにかくこれで貴方はそれがある限り不運に見舞われなくなる。能力や身体能力なんかはそのまままったく影響ないから心配しないで。ただやっぱり定期的に放出しないといけないわ。そこは変わらないわね」

 

「じゃあもう....ひもじい思いもしなくても済むの?私裕福?」

 

いやぁ....必ずしも裕福になれるとは....紫苑は貧乏神、その現実は覆すことはできない。だから必ずしも裕福に暮らせるとは限らない。

 

「裕福は無理かもしれない、貧乏神という事実は変わらないから」

 

「そっか....そうだよね....やっぱり私はみんなの嫌われ者....」

 

「そうかしらね?私は貴方のこと嫌いじゃないわよ。それに絶対に裕福になれないって訳じゃないわ。貧乏神といっても限度があるし私も試行錯誤してる。それに私だってクエストで稼ぐし貴方も協力してくれれば――――」

 

「すれば?」

 

「――毎日美味しいご飯が食べれるわよ」

 

「!?」

 

「どう?やってみる?」

 

紫苑はぬいぐるみを握りしめ頭を縦にブンブン振りまくっている。ふふふ、よしよし。そんなに頭を振ってると倒れるわよ。

 

「ん....なんで頭、撫でるの?」

 

「んー、そうねぇ....私は貴方と出会う前はかなり裕福だったわ」

 

「うぅ....それは....」

 

「話は最後まで聞きなさい。でもね、裕福ではあったけどどこか物足りなかったのよ。それでも貴方を拾ってからは運は悪くなったけど毎日がとっても充実した日々に思えたわ」

 

紫苑を優しく抱き寄せ目を閉じ額を合わせる。

 

「例え他の誰かが貴方を嫌っても私は貴方のことを嫌いになったりしない。私は紫苑、貴方のこと好きよ。だってもう家族でしょう」

 

額を離して紫苑へと微笑みかける紫。

 

「えあ..あうあう....あの..その...うぅぅ..」

 

言葉にならないといった感じに紫苑は紫から目を反らす。ただ顔は真っ赤で耳まで真っ赤。このままでは頭から湯気でも出るのでは? というほど。

 

もう一度紫苑を優しく抱き寄せる紫。

 

「なぁに?紫苑、照れてるの?ふふふ」

 

「むっ....紫....」

 

「何かしらぁ?可愛い紫苑ちゃん?」

 

「....そういうの胡散臭い」

 

「なぁっ!?」

 

「あとちょっとウザイ」

 

「ぐはぁッ!?」

 

その場でガックリと膝から崩れ落ちる紫。それを見てわずかに微笑む紫苑。

 

「紫、クエスト行こ」

 

「え、ええ....。わ、わかったわよ....今いくわ」

 

紫は気がついていなかったがこの時の紫苑の表情はどこか晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 

という訳でやって来ましたクエスト目的地。受注したのはちょっとした採取クエストで近くの森へやって来たんだけど......

 

「紫苑、あれなんだと思う....」

 

「わかんない....変人?」

 

 

紫と紫苑の視線の先には一人の少女が樹の前に立ちなにかをしている光景が写っていた。黒に胸元がガッツリ空いた上着にピンクのスカート、髪はセミロングの黒髪、それをリボンで束ねている。スタイルもよく開けた胸元からは立派な北半球が顔を出している。

 

 

んー、あんまりこう言いたくもないけど変人よねぇ....こんな森のなかで樹に向かってひとりで話しかけてるなんてね。今もほら――

 

『わ、我が名はゆ、ゆんゆん....もう一回やり直し..我が名はゆんゆん。アークウィザードにして上級魔法を操る者。やがて紅魔族の長となる者!....うぅ、やっぱり恥ずかしい』

 

なんか名乗りの練習してるみたいだけど、こんな場所でひとりであんなのを練習するってなんか....悲しいわね、それに見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ。

 

「紫、これからどうする?」

 

「そうねぇ、もう少し見てみましょうか。なにか面白いことが起こるかもしれないしね」

 

「.....そういうところは変わらないね」

 

そう?私は面白いことがあるなら見届けたいし、害がなければ参加したい人種なだけで盗み見が趣味って訳じゃないのよ。

 

二人は黙ってその少女を見続けている。二人は別段なんともないだろうが少女からしたらたまったものではないだろう。折角こんな人気のない場所までやって来て練習をしているのにバッチリ見られてしまっている。少女が気がつけばきっと顔から火が出る思いだろう。

 

『よし……名乗りはこれくらいにして次は....私ゆんゆんっていうのその、私とお友だちになってくださいっ!!』

 

すぐそばに生えている花に話しかけ始める。だが不思議なことに彼女が話しかけるとさっきまで元気だった花がくたっと下を向いた。

まるで顔を反らすかのように。

 

『ええッ!?なんでぇ!?.....つ、次は大丈夫....なはず....』

 

少女はよし!と気合いを入れると立ち上がり――やべ、こっち来た。紫と紫苑のいる草むらへとやってくる。

 

「えっと、草さん....私と....お友だちに....なってください!」

 

「えっ、嫌です」

 

「へ?ええ!?しゃべった!!でもって断られた!?」

 

(紫、どうするつもり?) (ちょっとイタズラしてみたくなったのよ)

 

紫苑は自分も不運だが大概この少女も不運だなと思ったが口には出さないようにした。

 

「え、えっと....私草さんとお話するの初めてなんです....だ、だからこれを機にお友だちに....なって..くれませんか....?」

 

「だから嫌ですぅ。なんでならないといけないんですか?」

 

「うぇぇええ!!なんでぇぇぇ!せ、折角お友だちが増えると思ったのに....あっ、お金あげればいいんだ!前もそれで友達にッ!」

 

え....待って、今すごくあり得ないことが聞こえたんだけど気のせい?金で友達?それは友達という名の体のいい財布なのでは?

 

「あんた人に金を渡して友達になってもらってたの?」

 

「えっ....はいそうですけど。変、ですか?」

 

「変も何もッ....ちょっと待っててくれるかしら?」

 

悲しい彼女には一度待っていてもらって紫苑と相談する。

 

(ねぇ、紫苑。友達って買うものだっけ?)

 

(違うと思う....私も嫌われてたけどお金でってのは..無いと思う)

 

(そうよね。絶対財布として使われてただけでしょうね)

 

(......私もお金貰えるかな?)

 

紫苑?ソレだけは絶対にやめなさい。いくら友達のためなら金を惜しまないめっちゃ都合のいい財布だとしてもソレだけはダメ。いくら貧乏でもいくら落ちぶれても人として堕ちてはダメよ。

 

(.............わかってるから)

 

本当でしょうね....まあいいわ、紫苑にそんな度胸無いだろうし。とりあえずこの可哀想な娘にはちょっと助言だけしておきましょう。

 

「あんた、そんなの友達じゃないわよ。今すぐ縁を切りなさい」

 

「そんなぁ!?友達ですよッ!?....もしあの人達と縁を切ったりしたらもう....悪魔しか、友達は..いない....」

 

ぷるぷると震えながら涙目になる少女。なんか....この子にちゃんとした友達とかそういうの教えた方がいい気がしてきた。だってもう聞いてるだけでヤバイもの悪魔が友達とかそのうち命よこせとか寿命よこせって言われてもはいどうぞって渡しかねないわよ。

 

きっと友達って言う『魔法の言葉』(彼女限定)を付け加えるだけで二言返事でオッケーするでしょ。草むらから少女の前へと姿を見せる。紫苑も傍らに引っ張り出す。

 

「えっ!ええ!?あの、今までのってあなたが....。あっ!えっ..もしかして私の自己紹介も....見て、ましたか?」

 

「ええ、バッチリ」

 

「うん....最初から最後までね」

 

「あ..ああ....いやぁぁぁあああぁぁぁ!!忘れてぇぇ!!

 

嫌です、忘れません。

 

 

少女の悲鳴が名も無き森に木霊したのだった

 

 

 

 

 

 


 

 

「それで気分はどう?落ち着いた?」

 

「は、はい..すみませんでした」

 

私と紫苑が全部見てたことを知った彼女は盛大に取り乱して今までずっと『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』とかいって転げ回ってたのよね。

大分落ち着きは取り戻したけど。

 

「私は紫、こっちは紫苑。それで改めてだけど....どちら様かしらお嬢さん?」

 

「えっ!....あの、そのぉ....」

 

少女はどこかそわそわとどこか落ち着きがない。やがてよし!と気合いを入れてこちらへと謎の構えをとると....

 

 

「我が名はゆんゆんっ!アークウィザードにして上級魔法を操る者。やがて紅魔族の長となる者!....うぅ」

 

そう高らかに宣言し顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。

 

「恥ずかしいならやらなきゃいいじゃない」

 

「....ゆんゆん?変な名前」

 

「へ、変じゃなッ!..あの、やっぱり変ですか?」

 

まあ変でしょうね。ゆんゆんなんて名前普通はつけないでしょ。あだ名だったりしたらまあ違和感は....無いわけではないけど納得はいく。あー、でもこの子『紅魔族』って言ったわね。

 

「紫苑、ゆんゆんってのはたしかに変な名前だけどこれはしょうがないのよ。彼女たち紅魔族ってのは瞳が紅く産まれつき魔力も知力も高い、ただ何故かみんな名前が変なのよ」

 

「紅魔族..ゆんゆん..どこでそんなこと知ったの?」

 

「街の図書館でね」

 

紫苑はぼーっとゆんゆんを眺めている。この子そういえばアークウィザードって言ったわね。これはもしかするとちょうどいいかもしれないわ。

 

「ゆんゆんだったわね。もしよかったらいくつか魔法を見せてもらってもいいかしら?タダが嫌ならパーティーを組んでもいいしなんならあなたの欲しがってるお友だちになってあげてもいいわよ。本当のお友だちにね」

 

といっても友達ってそんな「お友だちになってください!」って頼み込むよりも自然と付き合ってる間になってるものだと思うのだけど。

 

「ほ、本当ですか!!はい!それならいくらでも見せちゃいますよ!やったあ!!今日は記念すべき日ね!お友だちが二人も出来たんだからっ!やったー!!」

 

ぴょんぴょん飛び跳ねて体全体で喜びを表しているゆんゆん。この喜びようはちょっと異常な気もする。あっ、そういえば紫苑の意見聞いてなかったわね。

 

「紫苑はいい?」

 

「まぁ、別に問題ない」

 

そう、それはよかったわ。でもゆんゆんにはちょっとした決断をして貰いましょう。普通だったらすぐに決められるだろうけど彼女はちょっと特殊だから結構な決断になるかも。

 

「ゆんゆん、私たちが友達になるかわりにさっきのお金でお友だちになった人とは縁を切ること。いいわね」

 

「えっ!?でも....」

 

「ならこの話はなかったことに――」

 

「!?、うぅぅッ....わ、わかりました..後でこっそりと

 

「あっ、後でこっそり~なんて考えないことね。そんなことしたら即刻辞めるわ」

 

「は、はいぃ!!」

 

よし、これで集り屋の虫は消えるでしょう。私や紫苑の友人にそんな集られるような人がいるのはちょっと嫌だし何よりゆんゆんのためにもならない。根はいい子そうだしそのうち友達も増えるでしょ。とにかく今は魔法を見せて貰うことにしましょう。

 

さあ、ゆんゆん、紫苑行くわよ。

 

 

そうして三人は森を後にした。

 

 

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