これからかなり投稿する速度が遅くなります。
申し訳ありません。
一年と半年。
―――炎の呼吸壱ノ型、不知火。
日が落ち、納戸から早々に起きた僕はこれまで覚えた呼吸を竹を標的に鍛錬をしている。型で斬った竹はポトリと地面に落ちた。それを拾い上げ断面を確認する。
「―――うん。完璧」
滑らかでサラサラ。上手く切れているのが分かると自然と頬が緩む。それから手に持った竹を放り投げると、もう一度、竹から距離をおき、他の呼吸の連度も確かめる為に刀を振るった。
それから少し、時間が経ち金継が小屋から出てきた。
「ゆくぞ」
「はい」
型の練習は基本的には広い森の所で行うのだ。何時ものようにすたすたと一人で歩いていく金継に歩調を合わせ付いて行っていると、ふと声を掛けられた。
「雷電を行え」
「は、はい! ―――」
常中から雷電に呼吸を変える。すると、僕の周りに稲妻が起こり、ジリジリと電気の音が聞こえてくるのが分かった。
「その状態で雷の呼吸と他の呼吸を上手く合わせ、調和させて型を繰る出せば鳴神の呼吸を放つことが出来る。それを心に刻め」
「刻みます」
修行場に到着すると直ぐに修行は始まった。
と言ってもここ最近金継から学んではいない。一日中鳴神の呼吸をする為に色々な呼吸を混ぜて行っているので教えることが無いといったほうがいいか。
この場所に来ても、金継は岩の上に座って唯僕を見ているだけだ。偶に岩の上からこうしろだとかああしろだとか言ってくるが、基本的には見ているだけ。
「始めろ」
「はい。―――すぅー......」
雷の呼吸と他の呼吸を上手く合わせて、調和させる......。雷と水......。水の呼吸の仕方を雷の呼吸の中に織り交ぜる。
すると、僕の周囲には稲妻と一緒に水が現れ、波打っている。水と稲妻は段々と大きくなっていき、地面一帯に大きな水溜りが出来上がり、その上を強い稲妻が一定の間隔で鳴り響いている。
―――鳴神の呼吸壱ノ型。
型を出そうとした瞬間周りの水と稲妻は霧散した。
「ダメだな。二つの呼吸の比率がバラバラだ」
「比率......ですか。どうやって測ればいいのですか?」
「そんなもの勘以外ない。試行錯誤しながら鳴神の呼吸の比率を探し出し、その比率を身体に刻み込め。近道何てない」
そう言いながら顎を摩る金継を一瞥しながら、身体を休めていると拳が飛んでくるので直ぐに先ほどとは少し変えて呼吸を再開した。
「は、肺が痛い......」
「まだまだだな」
胸を手で押さえながら何時ものように金継にお酌をしている。殆ど一晩中肺を酷使していたら痛くもなる。そう思いながら空いた杯にどんどんお酒を注いでいく。
「一つ聞いていいですか?」
思い出した。あのことを聞かないと。
「何だ」
「匂いを消す方法ってありませんか?」
「いきなりどうした。そんな事聞いて」
「いいえ。私も一応年頃ですので......」
訝しげな表情で僕の顔を見ると、顎を摩りながら思い出すように口を開いた。
「―――鬼殺隊に居た頃。他の柱が外の国から来た、香水と言う物を持っていた。霧吹きで一吹きするだけでしばらくの間、その香水の匂いを身体から漂わせることが出来る」
「それは何処で手に入れることが出来るのですか?」
「知るか。自分で調べろ」
僕の疑問に一蹴すると「それより早く注げ」と不機嫌な声で催促する。
「すみません」
「―――金を寄越せ。お前が寝ている間に買って来てやる」
「......え? い、良いんですか?」
信じられない。あの金継が僕の為に何かをしてくれるなんて......。もしかして、僕を試しているのか? これで僕がお願いしますと言ったら「教えを請うている奴が師に使いを頼むな」とか言いながら頭に拳骨を喰らわせられるんじゃないか? それとも本当に善意から言ってくれているのか? いやでも―――。
短い時間の中、色々なことを想像していると。「何か無礼なことを考えているな」と言われ結局頭に拳骨を貰った。
「ふっ! はぁ!」
次の日、金継は修行に来なかった。「少し遠くに行っていたから今日は一人で修行しろ」と言うと布団の中に潜り込んだ。無惨さんから貰ったお金の詰まった背嚢を金継に預けていたのだが、何故かお金が減っていなかった。しかし、三本のガラスで出来たビンに入っている香水が納戸の戸の前に置かれていたから何処かで買って来たのだろう。
もしかして、贈り物のつもりなのか?
今日はその事ばかり考えてしまう。ここに来た時と比べて金継との関係は近いものになっている。その事に関しては嬉しいし、仲良くなれるのならもっと仲良くなりたい。しかし、この先、もし無惨さんに金継を殺せと命令されれば殺せるだろうか? 僕は人間じゃない鬼だ。金継は人間、敵同士なのだ。殺せるだろうかではない殺さないといけないのだ。でも実際、その時が来たら......。
「カァー! カァー!」
考えながら鳴神の呼吸をしていると雫さんの鎹鴉の鳴き声が聞こえた。その鴉は急降下し、僕の頭の上に止まる。
「こっちに移って」
「オテガミ! オテガミ!」
刀を鞘に戻すとてのひらを頭の上に持っていき、移らせる。そして、足に付いた手紙を外すと今度は肩に止まらせ手紙を開いた。
『菜種梅雨雫です。つい先日、柱が一人、上弦の鬼に殺されました。本題はここから。柱に欠員が出来た為、この度なんと左近次が水の柱として就任することになりました。すごいでしょ? 左近次に会うことがあったら祝って上げてください。それと、相変わらず貴方の居る山の方向を見ていることがあります。それとなく探りを入れているのですが、中々尻尾を出しません。これからもう一度聞いてみますが、かなり手強いですね。また、何かあったら報告します。それでは』
「ふふ」
口に手を当て、小さく笑う。そして、手紙を丁寧に折りたたみ、袖の下に仕舞うと肩に乗っている鴉を手の上に乗せ、短い言葉を何度か話し覚えさせた後に空に飛ばした。
「カァー! カァー!」
鴉が無事飛んでいったのを確認すると、深呼吸を行い。気を引き締め直すとゆったりとした動作で刀を抜き、鍛錬を再開した。