The Elder Scrolls:Souls Wind   作:まむかい

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現在、第一章は大きく改修を行なっており、話数に変更がなされている部分がございます。
6/19早朝以前にしおり機能を使用した方に関してのご案内を活動報告にてさせていただいておりますので、お困りの読者の皆様はそちらをご覧ください。
また、このメッセージは現在読み進めている最中の読者の皆様におかれましては改修に伴う内容の変化などはございませんので、そのままお楽しみいただけると幸いです。

では本編をどうぞ。



厭世(遠征)

 ストームクローク達、とりわけ遊撃として領内を忙しく往復するリクとレイロフの手引きにより、いたずらに増えていく被害者の数は大いに減少し、ヘルゲン市民の避難は滞り無く進み、あと一歩のところまでやってきていた。

 

 しかし、竜を相手に戦況を無理やり拮抗させている兵士たちの旗色は、時間とともに悪くなる一方であった。

 

 広がり続ける炎により、燃えていない部分のほうが少なくなった戦場では、熱と煙によって、金属鎧を着ていた上級の兵士達から先に倒れていく為に、指揮官のいない小部隊が増え、独断で動き始めるものも多くなっていた。

 

 また、それらの影響は特に重装で固めていた帝国軍に顕著であり、指揮を失い砦を彷徨う彼らがストームクロークとぶつかれば、無用な戦闘が起こるのは必然であった。

 

 ストームクロークも燃え盛る火に紛れて、過激な思想を持つ部隊が帝国憎しの憤怒を顕に、救助をそっちのけで戦場に参加するようになっており、二つの陣営同士が互いを食い合うことで、対処がさらに遅れてしまう悪循環の坩堝だ。

 

 黒煙に混じる厭世の気配に、戦場がじわじわと苛まれていた。

 

 ────その中で、彼らだけが例外であるという事もまた、有り得ない。

 

 最後であろう生存者を未だ無事な砦の中に逃すことの出来たリクとレイロフは、脱出のため自分たちを待つストームクロークらのもとへ戻る際、あまりの劣勢に追い込まれ、撤退もままならぬ帝国軍の姿を見た時、ここに来て大きく衝突し、意見を違えるのだった。

 

 レイロフが胸ぐらの布地を掴み、リクを締め上げて憤怒の形相を顕にする。

 

「ここでお前は帝国の真の姿を見ただろう。ひどい誤解に基づいた罪でお前を捕らえ、処刑しようとしたんだぞ! 」

 

「……だが、見過ごせないんだ。これ以上の命を、ここで奪わせたくない」

 

 しかし、リクがその意思を曲げることはなかった。

 レイロフは掴んだ灰の前掛け、よく見れば凝った装飾の施されたそれに込める力を強め、暫く睨み合う。

 

 なおも真っ直ぐに自分を見据えるリクに、レイロフは掴んだその手を離す代わり、ここまで協調してきた戦友の無事を願うが為に、説得を続ける。

 

「助けた命を、無駄にするなと言ったはずだ。……それに、帝国軍を助ければ戦争は長引き、お前が救うより多くの血が流れるぞ」

 

「……すまない。ここで君を納得させられる答えは出そうにない」

 

「なら、ここで俺と砦に────」

 

 レイロフが合流予定の砦へとリクを再度引っ張ろうとした、その時。

 

「────だから、僕はあの竜を撃退してみせよう」

 

「……いま、なんて言った? 」

 

 レイロフの言葉を遮るように放たれたリクの言葉を、レイロフは一瞬、理解できなかった。

 

「今回に限り、勝利の条件は単純だ。あの竜が居なくなれば、この戦いは終わるのだろう? 」

 

「……また冗談か? そんなこと……無茶が過ぎる」

 

 出来るはずがない。

 人間、それも片耳の聞こえていない男が、竜に勝つなどありえないからだ。

 それこそ、伝説には伝説、竜を滅する人竜。

 

「お前が、伝説の竜の血脈(ドラゴンボーン)でもない限り」

 

「────ならば、僕は今から竜の血脈(ドラゴンボーン)で在ろう」

 

 レイロフは、リクの言葉を咀嚼することに、またも時間が掛かった。

 荒唐無稽な発言に気を取られた間に、リクは服を整え、やけに古めかしい無骨な一礼をしてみせた。

 

「……なに、竜退治には覚えがあるんだ。君に助けてもらった命だって無駄にはしない」

 

 そう言うと、リクは踵を返した。

 

 遠くなっていくリクの背中を呆然と眺めながら、レイロフの内側で、衝撃、呆れ、怒り、諦念、期待、それらの感情がない交ぜになる。

 

 実際、彼の放った大言壮語は恐らく冗談ではなかったのだろうことも、この短くも濃い死線を共に潜ることでレイロフはよく理解していた。

 

「あまりに無茶で、無謀な行いだ」

 

 だが。

 

 それ以上に、レイロフの心が大きく震えてゆく。

 強大な伝説の竜に、ただの人間がそのすべてを以て立ち向かう。そんな夢物語に、身を投じようという男に────

 

「……それが、たった一人であるならば」

 

 ────このような啖呵を切られて、奮い立たぬノルドは居ないのだ。

 

 レイロフは、戦場へ向かうリクを呼び止めた。

 

 そして、無闇な衝突を防ぎ、竜のみを狙うという覚悟を示す為。

 ストームクロークとしての鎧を一息に脱ぎ去り、そばに落ちていた、灼けた襤褸きれを外套のように纏った。

 

「この戦争を終らせる前に、世界が滅んでは困りものだ」

 

「────俺も戦おう、友よ! ソブンガルデへの手土産に、ヤツの首を持ち帰ろう!! 」

 

 そう言い切ったレイロフの顔は、軍人としての強張った表情ではなく、戦での栄光を尊ぶノルドらしい、覇気に満ちた笑みを湛えていた。

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