The Elder Scrolls:Souls Wind   作:まむかい

11 / 21
考え直せ

 

 ヘルゲンを襲った災禍から引き起こされた一連の惨劇を収束させるべく、前代未聞の黒竜退治へと乗り出したリクは、改めて戦列に加わったレイロフと共に、一路黒竜を目指して歩みを進めていた。

 

 ────ストームクロークとして戦わないとは言えど、帰還を含めて一時間。本格的な脱出の開始までしか時間は掛けられない。

 

 自軍への忠義とリクへの信頼の両者を折半したレイロフから言い渡された前向きな妥協案とも言えるそれは、黒竜へ到達するまでの道程における、すべての無用な会敵を避ける事ができねばならない程度には逼迫したものであり、迅速な隠密行動のためには、時に燃え盛る家屋の中を通る必要すらあった。

 

 そうして、縦横無尽に暴れる黒竜へ対抗するべく、戦地を転々としながら立ち向かう帝国軍の編制へと最接近した時、現在における指揮系統の最上位であるテュリウス将軍の周囲を哨戒していた帝国兵、レイロフの旧知であるというその男に、二人の姿は不運にも見咎められたのだった。

 

 

 

 

「つまるところ、お前はあの“妄想屋”の竜狩り騎士団のお仲間になりたいってわけか。ええ、レイロフ? 」

 

 怪訝そうな顔を隠さないこの男はハドバルという。

 精悍な顔立ちとレイロフ同様に鍛え上げられた肉体が特徴的である彼はリクにも覚えのある顔で、処刑の際に名簿を片手に罪人リストを管理していたノルドの男のようであるらしかった。

 

 ハドバルもリクを覚えていたようで、既に逃げたものだと思っていたんだが、と罪人であるリクにすら無事であった事への安堵と心配を含んだ表情を浮かべる程度には心根の優しい人物でもある彼だったが、こと竜退治を行うとなると、こちらで手を打つ、任せておけという言の一点張りで、二人のこれ以上の行軍を頑として拒んでいた。

 

 それは、ストームクロークの陣営と言える二人に帝国軍の領分を侵されたくないという点も勿論含んだが、それ以上に、竜という理不尽極まりない災禍の中に飛び込む愚を、いずれ刃を交えるであろうとも、かつて友人であった男とその新たな友にして欲しくはないという、軍人としては感情的かつ、竜に挑もうなどと言う愚に逸った無謀な二人組に対してのみは正論とも言える意見であった。

 

「お前達のした市民の救助行為に関しては、むしろ大いに感謝している。それに免じてここでは見なかったことにしてやる。だから早く……」

 

「御託を並べている暇などない。行くぞ、リク」

 

 レイロフはハドバルの言葉を遮り、リクを先導するべく歩き出す。

 しかし、ハドバルは食い下がるように二人を呼び止めた。

 

「待て! それ以上進むなら、我ら帝国への明確な敵対と見做すぞ! 」

 

 帝国。

 その名前がハドバルの口から出たその瞬間、ぴたりとレイロフの足が止まる。

 勢いをつけて振り向いたレイロフの表情は、明らかに怒りの滲んだものへと変貌していた。

 

「帝国だと? はん、構うものか! もともと、お前達と意見が合うなどと端から思っていない」

 

「────それこそ、ストームクロークを志したあの日よりも前からな」

 

 そう吐き捨て、一方的に話を打ち切ったレイロフは、リクを待たずして苛立たしげに足を駆け始め、リクもそれに追従した。

 

 ハドバルは、二人の姿が見えなくなるまで歯を噛みしめながら睨み付けていたが、それでも、ついぞ剣を抜く事だけはしなかった。

 

 それが一体どういった意図を含んでいたのか、未だこの世界に疎く、何より彼と交わした言葉も多くないリクに分かるようなものではなく。

 

 ヤツとは同郷だった。

 俺達はお互い喧嘩っ早く、いつもいがみ合っていた。

 

 道すがら、振り向くことなくそう溢したレイロフの、言動に似合わぬ哀しげな調子からすべてを察した気になるのは、あまりに低俗で失礼極まりない事で。

 

 レイロフとハドバル。

 同郷の友でありながら袂を分かった二人の男達の間でしか、きっと理解し得ないものなのだろうとリクは感じた。

 

 今から行う竜退治はあくまで夢物語、現実に歓迎される所業などでは決してない。

 改めてそれを認識しながら、なおも二人は歩みを止めることなく、燃え盛る戦場を掻い潜り進んでゆくのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。