The Elder Scrolls:Souls Wind   作:まむかい

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嵐衣の熊

 

 避難した塔には、馬車に捕らえられていた十数人のいずれ劣らぬストームクロークの精鋭兵士と、その長ウルフリックの姿があった。

 レイロフに連れられてやって来た、この場においては唯一の部外者であるリクの姿はやはり見咎められる事となったが、そのような些事よりも余程逼迫している現状について話すために、彼らストームクロークは疑念を話題の端に追いやっていた。

 

「首長、あれは恐らく、伝説の……」

 

 レイロフはウルフリックに一礼して進言する。

 しかし、ウルフリックは言葉を遮るようにして、

 

「伝説は村々を焼き払ったりはしない」

 

 と、これは現実に起こった惨事であると言外に告げる。

 

 ウルフリックは突如起こった未曾有の事態を正しく受け止め、現状において最善の手を掴むべく、既にその優れた頭脳を働かせ始めていた。

 そして、簡易的な作戦を即座に打ち立てては伝達したのち、獅子のように鋭い視線をリクへ向け、彼を見定めるように言葉を投げた。

 

「リクと言ったな。お前は何が出来る」

 

 作戦内容について大きな引っかかりも覚えず、部外者であるために無用な衝突を避けて押し黙っていたリクだったが、ここでやっと口を開くことを許され、ウルフリックを含む多数の観察の目に気負うこともなく答えた。

 

「武器があれば戦士を。触媒があれば魔術師を」

 

 リクの言はかなりの大言壮語ではあったが、それが事実であるとばかりに言い切った彼の胆力に免じて、ストームクロークらは一応の合意を示した。

 そして、リクに対して自身が抱いた直感を信じる事にしたウルフリックは、この修羅場にて必要になるかもしれないと馬車から持ち去っていた上級騎士の甲冑一式と、自身の予備であった、現代において最高の鍛冶場であるスカイフォージにて鍛えられた鋼鉄の剣と盾、さらにスタンダードな木製のロングボウと鉄の矢束をリクに渡した。

 

「ならば戦士だ。ノルドは偉大な戦士にこそ敬意を払うものだからな」

 

 戦士が戦士に武器を渡す。

 ノルドたちはその行為をとりわけ重要視していることを先程の馬車の中の会話にて察していたリクは、無言で頷き、素早く装備を整えていく。

 その順序は手慣れており、それは自然と、彼が先程の言の通りにかなり場馴れした人物であるという事の証明にもなっており、予備であるものの、武具を下賜する事に決めたウルフリックの直感にさらなる説得力を与え、これなら使える兵の数に加えられるだろう、と概ねの兵士たちに改めて判断されるに至った。

 

 しかし、「おい」というウルフリックの声に対して装備を整え終えたリクが振り向くと、ウルフリックはリクへ質問をひとつ投げ掛けた。

 

「お前の鎧だが、逃げ傷が妙に多いのが気になった。……本当に戦えるのか? 」

 

 最後の確認。

 それは目の前の男が臆病風に苛まれた退役兵などである可能性を考えた物で、恐れなき前進を是とするストームクロークにこの場で一時的に数えるにあたって、最も重要な事項でもあった。

 リクはウルフリックの質問に間髪入れずに答える。

 

「戦えるさ。……それと、この逃げ傷だが────どちらかと言えば、死に傷だ」

 

 リクは得意げにそう言うが、これに対する、ストームクロークらの反応は芳しくなかった。

 と言うよりも、彼らを取り巻く雰囲気に、冷たい呆れが混ざっていくように感じられた。

 

「……おい、それはもしかして冗談か? 」

 

 リクは、不死人である事を生かしたジョークを放った。

 しかし、ストームクロークの兵士たちは不死ではないが故に、笑いどころが判然とせず、全く通じなかったのだ。

 

 彼らを代弁したレイロフに突っ込まれる事で滑りを自覚したリクだったが、既に兵士たちはリクに興味をなくし、既に作戦の準備に勤しんでいる者も現れていた。

 

「うーん……3点、と言った所だな」

 

 一人で先程のジョークに採点をしつつ頷くリクにレイロフは呆れの表情を隠せずにいた。

 

 だが、奇妙な冗談を飛ばす程度には余裕を持ち、精神的に安定しているのだろうと思考を切り替え、作戦に万全を期すべく、リクに武具の手入れについて声を掛けた。

 

 しかし。

 

 その場においてウルフリックのみは、その答えの端に表れた確かな戦場への自信を逃さず汲み取っていた。

 

 

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