The Elder Scrolls:Souls Wind   作:まむかい

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豪傑の戦

「──ウォオッッ!! 」

 

 奇襲を掛けた山賊達を迎え撃つべく、斧を構えたレイロフが力強く吼える。

 それは、ノルドの戦士、古くはアトモーラ大陸を故郷とする北の戦士たちの末裔たる彼らの、生まれ持った能力(パワー)を解放する合図だ。

 

 叫びによって自身を活性化させ、恐怖をも塗り潰す激情で自らを奮い立たせる戦技、ウォークライ。

 世代を超えて受け継がれていった、のちにシャウトおよびスゥームとして伝えられることになるこの種族的な能力(パワー)は、効果の内は動きや思考に精彩を欠く所があるものの、膂力が直接増加する、強力な特性を有している。

 つまるところ、比率で言えば二倍を超える人数の差を覆すには、まさにうってつけの物だった。

 

「さあ来い、意気地なしども! 」

 

 筋肉が隆起し、一回り大きくなった肉体から繰り出される、古代の斧術による独特の振り上げと振り下ろしの剛撃を以て、山賊のひとりの顎と脳天を斧で二度に渡って両断すると、山賊は歪な縦一文字に裂かれた頭部から脳漿と血液を噴き溢し、程なくして地面に崩れ落ちた。

 

「ハッハァ!! 」

 

 レイロフは勝利の酩酊に任せ、笑みとも、威嚇とも取れる獰猛な歓声を上げる。

 その声と敵の血に塗れたその凄惨な姿に、相対していた山賊たちは勝機を見出せず、尻込みせざるを得なかった。

 

 ────レイロフの豹変は、彼の使用した戦技、ウォークライに由来する。

 自身に眠るその血を呼び覚ますことで、ノルドであれば誰でも祖に抱く、遥か古代に在った北の戦士と同化し、その力や技巧のみならず、戦場に対する心構えすらも同じくするのが、ウォークライという戦技だ。

 これさえ使用すれば、ノルドの幼子も老爺も、等しく強靭な心と身体をもつ戦士の一人となり得る。

 

 だが、それは同時に欠点でもあった。

 北の戦士に共通した、戦を楽しむ狂人の気質をも取り込む事になるという事が、足かせとなる場合もなるのだ。

 ノルド以上に勇敢な戦士であれば、その変化を油断や慢心と名付け、正気でない怪物のように扱って勝機を見出す。

 また、北の戦士たちの仇敵、彼らの征伐を押し留めた古代の怪物たちや魔術に長けた古代のエルフたちなら、下等な種族が強化された程度で怖気づくことなど決して無い。

 

 ────だが、ここは現代で、相手は人ひとり。その欠点は事実上、ないに等しい物だった。

 

 火事場を襲うだけと高を括っていた一介の山賊が、その凄絶な猛威を一身に受けることに耐えられる道理は、まるでなかった。

 

「く、くそっ……この、化け物がぁっ!! 」

 

 山賊は勝機のないままに、半ば捨て鉢の思いで逃走を図る。

 残りの仲間を見捨てることに関して罪悪感はない。

 もとより気に入らない者たちばかりが集まっていたし、機を見て他の山賊と組めばいいだけであったからだ。

 それに、些細な出来事に気を取られれば、自分はあの“化け物”に殺されてしまうのだから仕方ない、囮となって後腐れなく死んでおいてくれと、利己的な結論すらも出していた。

 

 そうして、ただ目の前の猛威から遠ざかることだけを考えた山賊の行動は、しかし、すべてがレイロフの読み通りであった。

 

 レイロフは崩れ落ちた山賊をおもむろに担ぎ上げると、逃げた山賊に向かって、その豪腕を使って投げつけた。

 すると、山賊は自身と同等の質量を持ったそれの勢いに飲まれて呆気なく吹き飛び、直線上にあった焼けた家屋の壁に打ち付けられる。

 動物の毛皮を使用した簡素な鎧に火が燃え移り、背中や腕を容赦なく焦がされる痛みにもんどり打ちながら家屋から離れた山賊を、レイロフが止めとばかりに全体重をかけて腹を踏み抜くと、山賊はひゅう、という小さな呼吸音を残して気絶した。

 

「ふん、意気地なしめ。まともに戦ったこともなさそうだ」

 

 気絶した山賊を一瞥し、斧を一振りして血払いを済ませ────ウォークライの効果が切れ、心を支配する激情が醒めてゆく。

 そして、安全を確認したレイロフは血流の活性による頭痛からふらりと脱力し、その場で静かに座り込んだ。

 

 遠い先祖たる北の戦士の血を呼び覚ますウォークライは、強い力を得る代わりに、戦場において無視できないレベルの集中力を消耗し、また、肉体への負荷を過剰に掛ける性質上、その反動も大きい。

 

 かの父祖達ならいざ知らず、現代ノルドの勇士たるレイロフであれど、もう一度戦闘をこなすには少しの休息が必要だった。

 

 その為、レイロフは現状において戦力としては数えられない自身の安全を確保し、集中力を回復するべく呼吸を整えながら、背中を預けた友リクの戦いの様子を伺うことにしたのだった。

 

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