人を護る、それが警官だ   作:虎の虎

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2話 警官として

「例の警官が、また鬼と対峙したそうだ」

 

「人間なのに、よく生きてましたねぇ」

 

 任務の最中、突如"水柱"の冨岡義勇さんが口を開いた。例の警官とはここ最近、鬼殺隊の身でないにもかからわず、素手で鬼と戦い、人間を守っている警官の事で、今では、鬼殺隊基柱の中でも話題に上げられる程。

 

「でも、それがなんだっていうんですか? 鬼殺隊でもない人間が、そのような行動をしてたら、身体がいつまでもつか、わかったものじゃありませんよ」

 

「……奴は、鬼舞辻無惨の呪いについて知っていた」

 

「え?」

 

 足が止まる。

 

「どういうことですか」

 

「奴は、鬼を鬼舞辻無惨の呪いで殺した」

 

「なんと……」

 

 鬼舞辻無惨の呪いは、鬼殺隊の中でも知っている者は、少数である、それをただの一般人である警官が知っている筈も無い。

 

「……正直、彼は知りすぎている」

 

 

 

 

「なんか寒気が、夏だぞ? 誰か噂してるのか?」

 

 警官の本拠地で、昨日の対峙で痛めた身体を癒す。幸い、警官の仕事も多くはなく、大体は1部のお役人によって、取り締まっているため、俺たちの出動は少ないのだ。

 

「……呪いをつけてまで、配下を信じねぇのかよ、あいつは。だから部下に見放されるんだ」

 

 鬼舞辻無惨の顔を目の前に思い浮かべながら、ボソッと愚痴を吐く。あのクソったれな顔が、余計に腹立たしたを覚える。どこまでも冷たく、そして鋭く、他者をどうとも思わないその卑劣な姿勢、本当に馬鹿げている。

 

 そして常に統括及び傍観者の位置を保ち続け、めったに人の前に現れようとしねぇ。自分が死ぬのが怖いか? 陽の光が怖いか? 奴らはそんな思いをしながら戦ってるんだぞ? いつまで、ふざけている気だ。

 

 滞ることの無い奴への不満が、次々に発せられる。周辺の同僚から『大丈夫か?』と心配させてしまった。俺は『すまねえ』と頭を下げ、気休めに外へと出る。明るい陽光が、俺と街を突き刺している。この陽光を浴びたら、奴は死ぬ。だが、奴は自分の根城に閉じこもる。これだから"臆病者"は嫌いなんだ。

 

「鬼舞辻無惨……。てめぇはもうすぐ殺される、今の鬼殺隊は、かなり育っている。時間の問題だと思え……なーんてな」

 

 もう俺は何とか言える立場じゃない。鬼も殺せなければ、人も殺せない。変な規約に縛られた生活だが、前の生活よりは、ずっとマシだ。

 

 今は鬼殺隊に任せるしかない、俺にやれる事は何一つない。

 

 俺は、鬼殺隊に入りはしないが。

 

「……まったく。ん? なんだ?」

 

 眩しく照らされる陽光の間から、一匹の烏がこちら目掛けて飛んでくる。いきなりすぎて状況が掴めないが、大体察した。ベラベラと喋る時点で、鎹烏だということは間違いない。

 

 烏は俺の前に止まった後、耀哉の口調で『また会ったね』と告げた。

 

「おい、何の用だ。俺は鬼殺隊には入らねえぞ」

 

「それはわかっている。でも、君は行かなきゃいけないはずだよ」

 

「は? どこに」

 

「今すぐに、那谷蜘蛛山へと行きなさい」

 

「はぁ!? 冗談じゃねえ、なんで一般人の俺が、鬼のいる場所に喃喃と行かなきゃなんねぇんだ!!」

 

「……"十二鬼月"がいる。と言えば、どうだろう」

 

「なっ……」

 

 十二鬼月……それは鬼舞辻無惨直属の配下というべき存在で、他の鬼と比べ物にならない程の強さを誇る。特徴としては、眼に自分の数字が刻まれている事だ。よって、すぐに見分けがつく。

 

 俺は、とある十二鬼月に多少の因縁がある。

 

「……"猗窩座"か?」

 

「いや違う、別だ。だが、手がかり位には、なるんじゃないか?」

 

「……っち、アンタと話すと、なんか変な気持ちになるんだ。……場所を伝えろ」

 

 ここから約数里、なるほど、そう遠くはないか。何でも耀哉の言うことには、鬼殺隊士がこれまで数名派遣されたが、誰一人として帰ってきてない、という事だった。そんな場所に一般人を巻き込むなんざ、正気の沙汰じゃねえな、と俺は笑った。

 

「……わかったよ。死んだら、墓参りぐらいしてくれよな」

 

「もちろんさ」

 

 そう言って、鎹烏は去っていった。俺は警官の長に休養を頂き、那谷蜘蛛山へと足を進めた。十二鬼月がいるってことはおそらく、柱も出撃している事だろう。柱に殺される前に、猗窩座の居所ぐらいは、吐かせなければならない。

 

 この時の俺の眼は、酷く黒みがかかった赤色に染まっていた。

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