人を護る、それが警官だ 作:虎の虎
歩き始めて数時間、ようやく目的地である那谷蜘蛛山が眼前に迫ってきた。空はすっかり夜となっている、つまりこの山は今、死地といっても可能ではないだろう。その証拠に、先程から悲鳴がうじゃうじゃと鳴り響く。やはり、今の鬼殺隊士は成長してないのか?
「こんな所に一般人を送り込むとか、正気の沙汰じゃねえな」
入口に迫ると、ついには鬼殺隊士の死体まで拝むことが出来た。なんでだ、なんで最終選別を生き残った者が、こんな場所でくたばってるんだ、おかしいだろう。呼吸も使えたはずだろうに。
こうやって死体を拝むと、過去を想起してしまうのは何故だろうか、自分が鬼殺隊になれなかった事への劣等感か? それとも……。
「……こんな事している場合じゃないな。俺の目的を果たさなければ」
屍を踏み越え、山を登る。周囲は無数の蜘蛛の巣が張り巡らされており、油断していると、新しい上着が穢れてしまう。本当にこんな場所に、十二鬼月はいるのだろうか? もしかして、耀哉が出したデマか? いや、あいつがそんな事するはずないか。
その蜘蛛の巣の数に答えるかのように、俺の足元には多くの蜘蛛が群がってきた。色とかの見た目ですぐに予感できる程、俺はヤバい生き物だと痛感した。というか、これに気づかない奴とかいるのだろうか?
「木の上を乗り継いで行くしかねえな。地上よりはマシだろう」
木の上に登っても、蜘蛛は当然登ってくる。もしくは、元々その木に止まっていた蜘蛛が、俺に糸を飛ばしてくる。だが、飛ばしてくる糸は、木の枝で簡単に斬れる。日輪刀じゃないと斬れないとなっちゃ、完全に詰みだった。
どんどん乗り継いで奥地へと移動していくと、とんでもない光景を目撃する。
「やめて、きゃああああ!!」
「な、なんじゃこりゃ」
鬼殺隊同士の斬り合い……いや、一部の鬼殺隊士が一方的に斬りつけていると言った方が正しいだろうか、どちらにせよ地獄絵図なのには間違いない。
「おいテメェら、何してやがる!!」
鬼殺隊士が振り下ろす緑色の日輪刀を素手の両手で止める。さすがは日輪刀、止めただけで血が止まらない。俺が鬼殺隊になっていたら、こんな危ない物を担いで、鬼と戦っていたのか、いや? それも悪くねえな。
だが、一度決めた道はもう踏み外さないって決めてるからな。鬼殺隊には絶対に入らない。
「だ……誰だ」
「紅 煉瓦、警官だ」
「け、警官!!? なぜここに、もしかして、刀の件か!! だが、なぜこんな所にまで来る」
「安心しろ、俺は事情を知ってる一般の警官だ。それよりも、鬼ではなく人間を斬ってる方が、罪に問われそうだがなあ?」
「お、俺だって、こんなことしたくねえ!! あ、よ、避けろ!!」
「ちっ……!!」
堂々と振り下ろされた日輪刀を素早く避ける。なんだ? こいつ癸だろ? なんでこんな早く動ける? 柱には及ばないが、既にかなりの階級は積んでいるはずだが?
ズサッ
肩に奴の日輪刀が掠める。激痛と同時に眼前には血飛沫が浮かぶ。久しぶりに感じる痛覚だ、その瞬間、血が光を反射し鏡となった事で、俺の後ろに、もう1人の鬼殺隊士が、日輪刀を振りかざしている様子と、その背中に、糸のような物が繋がっているのが見えた。
「……っと!!」
俺は踏ん張りをつけ、右に避けた後、後ろにいた鬼殺隊士の背中当たり目掛けて、木の枝を振った。すると、鬼殺隊士はバタっと倒れ動けなくなった。
「なるほど、糸か」
操られてる原因が掴めたのなら簡単だ。
「こいつ、糸を」
「……へっ、さて。待ってろよ、すぐに解放してやっから」
まずはこいつらを片付けることから始めよう。どうせ、本命の十二鬼月はこの山の奥地に、潜んでいるだろうから……。