じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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本日も遅刻じゃあぁ!
ごめんなさーい!

土日って用事あると平日よりも筆が進まないんすわぁ。
許してヒヤシンス。

あと、私の前半後半で話を分けがちな構成にも目を瞑ってクレメンス。


蝶って美しいよねぇ(遠い目)

カナエを少し怒らせてしまってから数刻。

未だに俺は屋敷に帰らず蝶屋敷のカナエの私室に滞在していた。

だって、帰っても誰もいないし好きな人の側にいたいじゃん。

 

「ふふっ、この体勢、落ち着くわ〜」

 

「幸せ以外の言葉が出ない」

 

「なんで私を巻き込むのよ!」

 

座った状態でカナエがしのぶをあすなろ抱き。

そのカナエを俺が後ろから更にあすなろ抱き。

三人順番にくっついた状態でなぜかカナエの私室にいた。

 

「仲直りしたなら二人でいちゃいちゃしてればいいじゃない」

 

「ほら、しのぶがさみしいかなーって」

 

「仲間はずれは良くないだろ?」

 

「お付き合いしている男女の居る部屋に入る度胸なんかないですよ」

 

普通恋仲二人のいる部屋に入るなんて気まずくて出来ないし、入ったとしても追い出されても文句の言えない事だ。

それでもここにしのぶがいることが許されるのは……

 

「俺もカナエもしのぶが大好きだからなぁ」

 

「しのぶが邪魔なんて絶対にないわよ」

 

「これは、喜ぶべきなの?」

 

困惑のしのぶ。

一般的な彼氏彼女ならば家族を追い出してまで二人きりになろうとするのかもしれないが、俺たちは特殊すぎる。

俺もカナエもしのぶを追い出したりは絶対にしない。それどころかカナエが「しのぶも一緒にどう?」なんて言ってしまう始末。

 

「そのうちしのぶの前で接吻とかし始めるかもな」

 

「そういうのは人気のないところでやるものでしょう!」

 

「姉さん、しのぶに隠し事はしないわ」

 

「そこは隠しなさいよ!」

 

「しのぶになら見られても恥ずかしくない」

 

「恥ずかしがれっ!」

 

俺からは見えないけれどしのぶの顔はきっと真っ赤になっていることだろう。

こんな良く分からない状況でよくわからない会話に付き合わされるしのぶの不憫さといったらない。

 

「纏楽くん、今日夕飯食べて行って」

 

「ん、ありがとう」

 

できる限りカナエと一緒にいたいので喜んで承諾する。

あぁ、このまま一生仕事なんて来なければいいのになんて思う俺と、もっと強くなるために鍛錬や実践をしなければと思う俺がせめぎあっている。

いっそこのまま鬼を狩れたりしないだろうか。

こんな状態の鬼殺隊士がいたら鬼も困惑してしまう、その隙をついて頸を斬るという作戦、悪くないと思う。

 

「あの、私は寂しくなんてないから、二人でゆっくりしてて。私がご飯とかやってるから」

 

気を使って俺たちから離れようとしてくれるしのぶ。

そんな気を使わなくても俺たちはしのぶがいてもやりたいことをやるからいいのに。

ということで

 

「断るっ!」

 

「しのぶは寂しがり屋だからダメ」

 

「なんでよっ!あと、寂しくないってば!」

 

「しのぶは絶対陰で寂しくて泣いてそうだよな」

 

「しのぶだけ仲間外れは可愛そうだもの。この状況が納得いかないなら、しのぶも纏楽くんとお付き合いすればいいのよ」

 

「なんでそうなるのよっ!纏楽さんにはもう姉さんがいるでしょ」

 

……確かに、カナエはなぜか俺としのぶも恋仲になることを異様に勧める。

いや、確かにしのぶのことも好きだし、胡蝶姉妹二人がそろって恋人になったなら色んな制限とか気遣いとかなくなりそうだけれども。

 

「今回纏楽くんと同時に柱になった音柱様はお嫁さんが三人もいるらしいから平気よ」

 

「何が平気なの!?」

 

「俺も二人養えるだけのお給料もらってるから安心しろ」

 

「纏楽さんもそっち側なんですか!?」

 

カナエの意志は俺の意志みたいなところあるから。

 

「なんで恋仲になった次の日に私を輪に加えようとするのよ!二人で仲良く幸せになってなさいよ!」

 

「三人で幸せになりましょ?私は纏楽くんもしのぶも大好きなの。だから大好きなみんなで一緒にいたいじゃない」

 

「姉さんが私と纏楽さんがすっ、好きなのはわかってるけど、なんで私が纏楽さんとっ」

 

「だって私は二人のこと大好きだし、しのぶも私と纏楽くんのこと好きでしょう?」

 

そうだったのか。

確かにしのぶは出会った当初は俺に噛みついていたけれど、今はそんなことはない。

でもそれでしのぶが俺のこと好きというのは早とちりが過ぎると思う。

本当に俺のことをしのぶが好いてくれるのならば嬉しい。俺も毎度毎度しのぶの頭を撫でて頬をいじるくらいにはしのぶのことが好きだ。

 

「す、好きじゃない!確かに感謝してるし、尊敬してるけど!」

 

「それで、纏楽くんも私としのぶのことが大好き。ならみんなで一緒になりましょうってなるじゃない」

 

「話聞いてる!?纏楽さんに出会ってそんなにたってないのに恋愛感情とかないから!」

 

「嘘つかなくて大丈夫よ?私も纏楽くんに出会ってからそんなに時間はたっていないけど、好きになったもの」

 

俺に至っては最終選別の時に出会った瞬間に一目ぼれしてしまったから、恋に時間は関係ないのだろう。

なにか些細なきっかけでも、好きになってしまえばそこから沼のようにずぶずぶともっと好きになる。

 

「そのっ、私はともかく、纏楽さんは私のことを好きになる理由はないじゃない!」

 

あれか、俺に対して相当な頻度で毒を吐いていたことを気にしているのか。

でも大丈夫、俺はそんなこと気にしていない。

確かに俺がしのぶの事を恋愛感情で好きかどうかは俺もあいまいなところがある。

カナエに乗せられているだけといわれれば否定はできないかもしれない。

でも、しのぶの事は好きだし、いつものように頬や頭をこねくり回したいという感情は絶えず湧き出ている。

 

今は恋愛感情という意味でしのぶを好きではないかもしれないけれどそれでもいつか必ず俺はしのぶの事を恋愛対象としてみてしまうと思う。

だって胡蝶しのぶという女は、胡蝶カナエの妹なのだから。

その見た目も心根も似通っている。今でさえしのぶに対していい感情を抱いているのだから大人っぽくなったしのぶに俺が陥落させられないはずがない(ちょろい)

 

それにそれに――

 

「しのぶ、俺たちがカナエに勝てるわけないだろ」

 

これなのだ。カナエが本気で動いている。

この時点でカナエのことが大好きな俺たちが勝てるわけがない。

そして俺はしのぶの事を好きであるし、しのぶも俺に一定以上の好意を持っている。

なら、俺たちがカナエに勝てる道理などないのである。

 

「うぅぅぅぅ」

 

しのぶはきっと顔を真っ赤にしてうなっているのだろう。

もしかしたら恥ずかしさからか涙まで浮かべているかもしれない。

 

「ふふふっ、しのぶ、どうする?」

 

これは悪魔のささやきにも等しい言葉だった。

だから胡蝶しのぶは——

 

しのぶが何か言葉を紡ごうとした瞬間、俺の鎹鴉が叫んだ。

 

『緊急ー!緊急ー!スグニ北西ノ村二向カエェェ!』

 

 

 

 

 

鬼だか何だか知らねぇが、俺の幸せな時間を奪った罪は重い。

俺は鬼よりも鬼の形相で走っていた。

正直カナエの「気を付けてね」を聞いて足が重くなった。

ほんとに仕事に行きたくなかった。

 

道中、俺と同様に現場に向かっている天元と杏寿郎の父である槇寿郎の二人と合流した。

柱三人が投入されたこの状況、これはただ事ではない。

間違いなく十二鬼月が出現したとみていい。

 

そして、その予想は当たっていた。

 

重苦しい空気があたりを包み込んでいる。

到着した先には血に濡れた水柱の姿があった。他にも隊士たちが血に濡れ地に伏している。

 

そして、鬼殺隊最強の一角水柱を瀕死に追いこんだ犯人は——

 

刀を携えた立ち姿。六つの目に顔に痣。

そして目に浮かんだ上弦 壱の三文字。

こいつこそ、十二鬼月最強の鬼。

 

「上弦の壱だと!?」

 

鬼側の最高戦力の一角を担う上弦、その頂点が佇んでいた。

なるほど、最高戦力である柱を三人も送り込むわけだ。

きっとお館様の命令で今動ける実力者を総動員しているのだろう。

 

この鬼相手にはそれだけの戦力を注ぎ込まなければ勝てない。

それが刀を交えていない今でもわかる。こいつはやばい。

 

「……柱が三人。だが足りない。——月の呼吸」

 

消えっ——

 

熱界雷っ!

 

俺の細胞が危険を察知した瞬間に体が動いた。

俺と槇寿郎さんの二人が斬り上げで神速の横薙ぎを跳ね上げ——

 

「ぐあっ」

 

無理だ。これには勝てない。

雷の呼吸の使い手であり動体視力には自信のある俺が、ぎりぎりまで反応することができなかった。

俺と槇寿郎さんがかろうじて反応して軌道を逸らしたが、広範囲の横薙ぎに俺も天元も体を斬り裂かれる。

 

だが、まだ戦える。

どうせこんな化け物相手には逃げるなんて行為が無意味なことがわかっている。

なら——

 

霹靂一閃 神速八連

 

俺が動き出すと同時に槇寿郎さんも動き出す。

天元も一息遅れて動く。

的を絞らせないように三方向から。

 

きっと距離をとってもあの技の射程距離からして無意味。

なら、接近するしか手はない。

 

一振りから生まれる無数の斬撃、それがこいつの特異性。

鬼にして全集中の呼吸の使い手。

技のキレ、速度、威力ともに今の柱の誰よりも上。

 

神速の俺の抜刀術、槇寿郎さんの不知火、天元の爆発する二刀をたった一振りから生まれた斬撃で受け切られる。

だが、俺たちの攻撃はこれで終わらない。

 

霹靂一閃を放ち終わりすぐに弐ノ型稲魂による同時の五撃を続けて放つ。

槇寿郎さんも天元も一撃では終わらない。

 

俺の刀による多方向から放たれる五撃を流れるような刀さばきで受け、そのままの流れで俺の眼前に刀が迫る。

臆すなっ、もっと体を低くして踏み込め!

 

続けて技を放てっ、たとえすべて防がれたとしても上弦の壱の時間を一瞬でも奪うことができたのなら俺以外の誰かがこの鬼を斬る!

 

一振り一振りが広範囲の技であるこの鬼の剣戟が俺の体を傷つける。

肩が、腹が背が、足が裂ける。

くっそ、ふざけるなよ。

 

刀を振るわずとも発生する斬撃を身をひねり、刀をこれでもかと高速で振るい致命傷となり得そうな斬撃だけを防ぐ。

例え雷の呼吸で最も手数の多い陸ノ型電轟雷轟でもすべてを防ぐには至らない。

 

天元の爆発を併せた斬撃も、炎の呼吸による威力でもこの鬼には届かない。

柱三人による攻撃で、四肢の一つも奪えない。かろうじて肉を裂くことは数度できているがすぐに再生し、無数の斬撃が俺たちを襲う。

 

「……よく磨かれた剣技だ」

 

「はっ、アンタみたいな強い侍に褒められるなんて光栄だね」

 

どうする、ここからどうすれば勝ちにつながる?

正直、三人とも傷が多い。致命傷こそ避けているものの、それも時間の問題だろう。

 

「日が昇るまで耐えるのも無理そうだなぁ」

 

「一ノ瀬、お前の速さなら頸を狩れるか?」

 

ははははっ、槇寿郎さん冗談きついっすよ。

 

「俺と宇随でなんとか隙を——」

 

「……作れると思うか?」

 

上中下段に複数の横薙ぎ。

無数の斬撃も付随するのはお決まり。

 

体が地面と平行になるように跳んで迫り来る二つの斬撃の間を抜ける。

三日月のような無数の斬撃が俺の体のいたるところを裂くが気にしない、止まっていられない。

 

シィィィィィィ

 

雷の呼吸 漆ノ型鳴雷神

 

神速かつ高威力の一振り。

ギィンと鋭い音がして防がれる。

 

止まるなっ!

 

参ノ型聚蚊成雷っ!

 

回転分身斬り。今の俺なら前後左右、四方八方から一つ一つの斬撃が爺さんと同等の速さと威力を誇る。

止まるな、つなげろ、酸素をもっと体に取り込め、血液を体の隅々までいきわたらせろ!

 

俺が背後から斬りかかり、前方から槇寿郎さんの伍ノ型炎虎、天元の二刀を回転させながらの斬撃が迫る。

 

「……月の呼吸 伍ノ型月魄災渦」

 

すべての方向へ複数の斬撃。

鮮血があたりに散る。

 

気が付けば俺たち三人も水柱同様地に伏していた。

 

三人とも意識はある。

傷は深いが四肢の欠損もない。

だが間違いなく心が折れる一撃。

 

ここまでしても上弦の壱の頸に刃は届かない。

 

「素晴らしい剣技だったが痣も発現していない状態ではこんなものか」

 

このままでは、死ぬ。

出血も三者ともに相当なもの。

腕や足が無事なのが奇跡だ。

 

……死ねない、このまま死ねない。

 

俺には死ねない理由があるのだった。

カナエに気を付けてねと言われた。生きて帰って来いと、そういう意味で言われたのだ。

ならば立て、このまま寝ていても死ぬ、ならばせめて少しでも可能性のある方へ。

 

「……鬼になる気はないか?」

 

「ぐ、前にも言われたっ、言葉だな」

 

息も絶え絶え。

足も震え、手も震えるのを呼吸で黙らせる。

まだ動く、まだ刀を振るえる。目も見える。傷は深い、間違いなく重症だがまだ死ねない。

 

「下弦を狩った黄色い羽織の剣士。今の打ち合い、これだけの実力であるならばすぐに十二鬼月にも迎え入れられる」

 

寡黙そうな鬼が口を動かしている間に止血の呼吸。

少しでも威力の高い技を放てるように体勢を整えろ。

 

「悪いんだが、俺は子供が欲しいんでね。鬼になる気はない」

 

「残念だ」

 

シィィィィィィ

 

「……ならば死ね」

 

視界の端で槇寿郎さんが立ち上がろうとしているのが見える。

天元も今呼吸を整えている。

なら今俺が時間を稼げ。

 

「月の呼吸 拾陸ノ型月虹・片割れ月」

 

捌ノ型迅雷万雷

 

上空から降り注ぐ無数の斬撃を斬撃と斬撃の隙間を縫って駆けていく。

緩急と足運びで的を絞らせず、時には斬撃を刀で逸らす。

 

頭が裂ける、傷ついた肩がより深くえぐられる。

だが、これを決めるまでは止まるな。

足を動かせ、ここで止まればもう立ち上がれない。

 

カナエが、しのぶが蝶屋敷で待っている。

だから、止まるな、放て最高の一撃をっ。

 

「拾肆ノ型 兇変・天満繊月」

 

やばい、これは捌ノ型じゃあ——

 

「玖ノ型煉獄っ!」

 

「響斬無間っ!」

 

槇寿郎さんと天元が身を挺して螺旋状に放たれた無数の斬撃を受け止める。

俺も必死に躱し、逸らし、傷ついて前進する。

 

「生生流転っ!」

 

倒れていた水柱の人が加勢する。よく見ればこの人の目はつぶれ腕も片方しか残っていない。

それでも今この瞬間こいつの頸を斬るために立ち上がってくれた。

 

なら俺もそれに応えなければならない。

カナエとしのぶのもとへ帰るためにも、こいつの頸を狙えっ!

 

シィィィィィィ

 

——雷の呼吸

 

新たに生み出した技。神速の抜刀術である漆ノ型と同時に斬撃を放つ弐ノ型を組み合わせた神速の連撃抜刀術。

 

 

 

玖ノ型 雷煌

 

 

 

蒼い雷が轟音とともに煌めく。

幾重にも重なった蒼い雷は雄々しく、猛々しく、それでいて美しく煌めく。

そんな蒼い雷は無数の月を斬り裂き、その輝きを、煌めきをもって上弦の壱の頸に届く——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——べべん。

 

 

 

 




皆さんお待ちかね上弦。
弐より先に壱と対面してしまいましたね。
予想を裏切るのってやっぱ作者の醍醐味だと思うの。

……連続投稿そろそろ疲れてきちゃった。

感想評価いただきたい(直球)
いつも新しい感想来てないかな?評価増えてるかな?って気になってるの。
そしてモチベが上がって指が動くの。
だから感想評価をくれぇ!
いつも感想書かない人も書いてくれぇ。

頼むよぉ、いつ死ぬかわからないんだよぉ。感想評価くれよぉう(善逸並感)

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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